政井審議委員記者会見(2020年2月6日)要旨
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§1Question
本日午前行われた金融経済懇談会でどのようなやり取りがあったのかということについて、まず伺いたいのですが、中でも新型コロナウイルスの関連で県内でも感染者が出て、宿泊のキャンセルが 1 万人を超えているという状況もあって、先行きがどうなのかなという感じが致しますが、どういったやり取りがあったのかということを教えて頂ければと思います。それを踏まえたうえで、奈良県経済の現状と見通しを教えて頂けますでしょうか。
§2Takako Masai
まず、本日の懇談会では、奈良県の行政や経済界、それから金融界を代表する方々から、地域経済の現状や直面する課題への取組みに関する貴重なお話を伺いました。大変有益かつ示唆に富む意見交換をさせて頂き、懇談会にご出席頂いた方々には、この場をお借りして深く御礼申し上げたいと思います。席上で伺ったお話やご意見について、私なりに三点に整理しながら感想を申し上げたいと思います。まず、一点目ですが、当地における人手不足についてです。懇談会の参加者の多くの方々から人口減少に加え、若手を中心とする県外就職率の高さが、当地における人手不足の原因になっているとのご指摘がありました。また、当地企業が前向きな事業を進めるうえで、人手不足がボトルネックになっていることが懸念されるというお話もございました。人手不足の対応については、公民が連携して求人・求職マッチングの充実に努めているというお話や、女性人材の確保に向けた会員企業の支援に取り組んでいるとのお話も聞かれました。また、奈良県は女性管理職の割合が高いという力強いお話も伺いました。このほか、開業支援などによる「若者の働く場の確保」や、県内企業の再生や事業承継を後押しする施策など、経済活性化に向けても取り組んでおられるということであり、女性の活躍機会の拡充も含めた人手不足対応の進展とともに、奈良県経済の今後の発展を期待させて頂いているところです。
§3Takako Masai
二点目は、インバウンドをはじめとする観光振興についてです。当地には、文化・自然遺産が豊富にあり、国内外から多くの人々を惹きつけてきていますが、同時に、いわゆる「通過型観光」とも称されていますように、宿泊者が相対的に少ないということもあって、一人当たりの観光消費額を引き上げるのが課題であるというお話を伺いました。この点については、ホテルなどの宿泊施設の建設が計画的に進められているほか、町家や古民家などの歴史的な建築物の保存や活用などを積極的に進められているとのお話もありました。こうした取組みを通じて、当地の観光資源のポテンシャルが十分に発揮されることを期待しております。最後に、地域金融機関の地域に根差した取組みについて、一言申し上げます。地域金融機関は、長引く低金利環境のもとでも、資金供給面だけではなく、地域の課題解決に向けて事業支援に取り組まれているほか、自治体や関係機関との連携における仲介役としての機能発揮などに努められています。例えば、管内の地域金融機関では、ファンドの活用なども通じて、これまで地域経済の諸問題を解決する中で培ってきた目利き力と、それから外部の知見などを合わせ、古民家の再生や旧市街地の活性化などに取り組む事例が複数みられていると伺いました。
§4Takako Masai
こうした取組みを通じて、当地の観光拠点としての魅力を高め、関連産業の事業を創出し、資金需要を掘り起こしつつ、雇用の創出など、地域経済の活性化に貢献するという強い決意も伺ったところです。当地経済の課題としては、人手不足、観光資源の更なる活用といったことが指摘されるわけですが、行政、事業会社、金融機関など、様々な関係者の取組みが、こうした諸課題への有効な処方箋となって、地域経済の活性化に繋がっていくことを期待させて頂いています。二つ目のご質問としまして、奈良県経済の現状と今後の展望というところでお話をさせて頂きますと、まず私どもの大阪支店では、奈良県を含めた関西経済の景気について、「一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている」と判断しています。主要項目別に申し上げますと、輸出と生産は、海外経済の減速の動きが続くもとで、弱めの動きとなっていますが、半導体・電子部品などIT関連財では、持ち直しの兆しが窺われています。また、研究開発を含め、企業の設備投資は積極的であり、良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費もしっかりしています。この間、インバウンド消費についても、基本的には、長い目でみた場合には高水準で推移しているとまだ判断しておりますが、後程、新型コロナウイルスの件については若干のコメントを付けさせて頂きたいと思います。
§5Takako Masai
先行きについても、内需が底堅く推移するもとで、弱さがみられてきた外需も増加基調に復し、関西経済は緩やかな拡大基調を辿っていくとみています。奈良県経済については、本日の午前中の金融経済懇談会の席上でも申し上げましたが、製造業では、産学連携を促進させる取組みであるとか、そこから生み出されたアイデアを具体化していくというモノづくりの力というのが、当地を含めて関西のイノベーションを支えていく鍵となっていくと思いますが、そういった点、それから、インバウンド消費、内需の方に関しては、外国人観光客が全体的に増加していく中で、ホテルの施設の整備や建設が着実に進められてきており、これまでのいわゆる「通過型観光」といったものから、「滞在型観光」へのシフトといったところも意識されていますし、また期待されるところであると思っています。最後に、労働力では、女性活躍に向けて様々な取組みが進められる中、子育て世代の女性の就業率が 5年前よりも高まっているというお話も聞かれまして、県内経済の活力向上にプラスの効果を与えると期待させて頂いています。このように、当地は、産業面や観光面だけではなく、人材面での活躍の機会など、多くのポテンシャルを持っていらっしゃると思っています。
§6Takako Masai
今後とも、公民一体となって様々な取組みを推進していくことで、新たなイノベーションや変化といったものを伴いながら、従来以上の発展を遂げていかれることを楽しみにしておりますし、そうしていかれるものと考えています。最後に新型コロナウイルスが当地経済に与える影響についてですが、先程お話があったように、今のところで分かっているキャンセル、または午前中に聞かれた話ではあるのですが、これからなされるかもしれないといった不安をお話されるという事業者の方もいらっしゃると伺っています。そういったことも含めて、私どもとしてはその動向もしっかり注視していきたいと考えています。
§7Question
新型コロナウイルスについて伺わせてください。まず、新型コロナウイルスの現時点での影響について、注視されるとおっしゃっていたのですが、どのようにみていらっしゃるのかというのが一点と、それによって先の展望レポートで示されたような、この後の経済の回復というのが、見通しが変更される可能性があるのか、それと中国やシンガポールなどでもまた金融政策を打つというようなことを示唆する声が出てきていますけれども、この新型コロナウイルスの感染拡大によって金融政策が変更される可能性について、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。
§8Takako Masai
まず年初からの状況を少し振り返ってみますと、年明け早々には中東情勢の緊迫化を受けて金融市場が一部動揺するという場面もありましたし、その後、そういった事態の一段の深刻化がひとまず避けられたこともあって、センチメントの悪化は、結局のところ短期間に終わったということもあったと思います。その後は、金融政策決定会合で評価した通り、海外経済を巡る下振れリスクは、中東情勢を巡る地政学的リスクなどを含め、依然として大きいものの、米中間の通商交渉に進展がみられるなど、ひと頃よりも幾分低下したと言えたと思います。私自身も、リスクプロファイルはポジティブな方向に改善し、世界経済は、本年半ばにかけて回復基調を辿る蓋然性が相応に高まりつつあると評価していましたし、実際、金融市場では米国株を中心に高値を探る動きがあったと思います。もっとも、そこで新型コロナウイルスによる感染症の拡大に対して、WHOが「緊急事態宣言」を出され、中国の他、わが国をはじめとする各国で拡大防止のための各種の措置が現在講じられていると認識しています。こうした状況が、世界経済およびわが国の経済に与える影響については、現状、不確実性が高い状況にあるということもありますし、それから経済指標といったハードデータなどを待ちたいと思っていますが、まずいくつかの面から影響が生じ得るものと考えています。
§9Takako Masai
まず、中国国内の経済活動が抑制されているということが懸念として一つ挙げられると思います。また、今回と類似のものとして、過去に、2003年のSARSの流行があったと記憶していますが、当時と比べますと、中国の経済規模が格段に大きくなっていることや、グローバルなサプライチェーンが深化していることから、製造業のサプライチェーンの停滞などを通じて、わが国を含む世界経済への影響も懸念されるところです。更に、本日午前中も話題になったところですが、インバウンドといった内需関連への影響もあろうかと思います。国際金融市場でも、こうした懸念を背景にややボラティリティの高い状況になっているのかなとみています。世界経済やわが国経済や中国経済そのものへの影響の大きさというのは、今後の感染症の拡がり方にも依存しますので、この問題が世界経済およびわが国経済に与える影響については、しっかりと注視していきたいと思いますし、必要があれば必要な対応を取っていくということなのだと思います。もっとも、少し長い目でみれば、世界経済については、例えばITサイクルの好転などもあって、徐々に回復基調に復していくとみられていますし、わが国においては、経済対策の効果発現といったことも期待できますから、潜在成長率を幾分上回る緩やかな成長を維持するという見通しが、現時点で大きく変わったとはみていません。
§10Question
講演で、緩和が長期化することで運用利回りが下がると、そこに関して、政井委員も問題意識を共有していますというお話をされていたのですが、先日の展望レポートでも 21年度で+1.4%で、4月に出る 22年度の数字もどうなるかは分かりませんが、なかなか 2%への到達は難しいとなると、また更に長期化していくことが想定されるのですが、その場合、現時点で効果の方が上回っているという、効果と副作用のバランスが逆転してしまうタイミングというのが、いつか来る可能性もあると思うのですが、その辺りのこと、そこがそうなってしまう可能性と、そうなってしまった場合に打ち得る手立てというのはどういったものがあるとお考えなのか、そこを教えて頂けますか。
§11Takako Masai
ご指摘の点は、言い換えればリバーサル・レートのお話をされているのかと思います。リバーサル・レートといいますと、あまりに低金利が続くと、貸出が逆に伸びなくなってしまうといったお話だと思うのですが、その点でいえば、現在でも銀行全体の貸出の伸びは年率で大体+2%程度を維持しているという状況ですし、確かにマイナス金利を導入してから 4年が経ったところですが、未だにいわゆるミクロヒアリングでの貸出姿勢を伺っても、またアンケート調査などでも、融資に対する姿勢というのは積極姿勢を維持されていると認識しています。その観点でいえば、いわゆるリバーサル・レートなのかどうかという部分に関しては、そうではないだろうと思いますし、仮説の話ではありますけれども、これは私どもも、都度都度の金融政策決定会合で、当然のことながらしっかりその仲介機能に関してもみているところではありますが、仮に何か仲介機能に対して、そういったような兆しなり惧れなりがあるのであれば、当然のことながら、そういったものをより緩和して、その緩和が持続できるような施策というものをとっていくのだろうと考えています。
§12Question
貸出について、12月の会合で、いわゆる貸増、貸出増加支援制度について、仕組みを多少見直されて、どんどんどんどん貸していかなくても良いよと、最初に日銀から借りた時を上回っていれば良いというような仕組みに変えたと思うのですが、これの含意というのは、まだ貸出が伸びているとはいえ、だんだん鈍ってくる中で、ここから先、その貸出のブーストをかけていくことの、むしろリスクテイクについても講演でも話されていましたが、過度なリスクテイクとか、そういう懸念というのも念頭に置きつつ、そんなに無理するなという、そういった意味合いがこの見直しの中には含まれているのか、もしくはそうではないのか、その辺についてもお願いします。
§13Takako Masai
昨年末最後にあった金融政策決定会合で貸出増加支援資金供給の見直しを行ったわけですが、これは一言で言ってしまうと、かなりテクニカルなものが強かったのかなと思っています。ご案内の通りで、貸出増加支援資金供給については、2016年度に、貸出増加などに積極的に取り組んでいる金融機関を一層支援する観点から、貸出支援基金などの増加額の 2 倍に当たる金額をマクロ加算残高に加える措置を講じることになったわけです。この措置を受けて、本資金供給については、2016年度以降、残高が大きく増加したため、2020年度以降はいわゆる償還額が大幅に増えるということになりますから、今般の見直しに関しては、先行きそうした償還の増加が見込まれるもとで、本資金供給を利用して貸出を増加させてきた金融機関を引き続き支援していくという視点から、今の緩和の継続に資するように、一定の条件のもとで借り換えを認めることとしたものです。従って、今般の見直しによって、本資金供給を利用する金融機関は、償還時の市中貸出残高が、貸付実行時の残高を維持している範囲で、借り換えを行うことが可能となります。このため、金融機関の皆さんにとってみましたら、これまで本資金供給を利用して増加させてきた市中貸出をしっかりと維持していくことが期待されます。
§14Takako Masai
今回の見直しでは、市中貸出残高が償還時に貸付実行時よりも少なくなっている場合には、その減少額相当分は借り換えができなくなるため、金融機関は既存の貸出を維持するインセンティブを持つこととなります。また、本見直し後も、償還時の市中貸出残高が、既往ピーク値を更新している場合は、償還される貸付けの借り換えに加えて、市中貸出増加額の 2 倍相当額の新規の借入れが可能となるため、貸出を積極的に推進することへのインセンティブも維持できるだろうと考えています。こうしたことにより、金融機関の貸出増加を支援するという制度趣旨は、見直しの前後で特に何ら変わっているものではないと考えています。
§15Question
先程少しお話があった金融仲介機能に何らかの障害というか、何か問題となるべき状況が出てきた場合、今の緩和政策をより持続的にするための措置は当然とっていくということなのですが、これはそういう副作用が生じた場合に、現行の緩和政策の枠組みを維持したまま、そうした副作用に対応した措置を都度都度考えてとっていくという理解でいいのかどうか。また、仮にそうなった場合は、現時点でなかなか具体的なことは分からないのかもしれないのですが、イメージとしてどういった措置を講じ得るのかについてお願いします。
§16Takako Masai
まず金融仲介機能に関しての大前提として、現在、私が認識しているのは、今の金融機関に関しては十分な資本も有していますし、そういった意味では、仲介機能に対して何か問題が起こっているとは考えていません。また昨年10月のFSRでもそういった評価をしたと認識しています。当然、ヒートマップなどを使って様々な観点からそういった仲介機能、ないしはそういった積極的なリスクテイクの姿勢が前傾化していないかどうかとか、そういったものに関しては、様々な借り手、貸し手の立場からしっかりとモニタリングしてきているつもりですし、そのうえで、現状のところでは、そういった動きはみられていません。中でも、きちっと貸出姿勢は積極的に維持されていると認識しています。そのうえで、ご質問の点ですが、それは正直申し上げて、その時どういう状況になっているか、まさに経済情勢であるとか、市場情勢であるとか、物価情勢であるとか、その時その時で採り得る手段も大きく違ってくると思いますので、現時点で、こうなったらこうであるとか、こうなったらこの用意があるとお伝えできるものでもないと考えています。
§17Question
日銀は先般、6 中銀で中央銀行デジタル通貨の共同研究を開始するというグループに入ったと思うのですが、まず一部報道でその総裁レベルで 4月中旬に初回の会合を開くという報道があったのですが、その事実関係と、日本で中銀デジタル通貨の発行を仮に検討する場合の課題、特に日本の金融機関の色々な構造上、どういう影響があるのか、日本の銀行業界の特性なども踏まえて、今後のこの議論の行方あるいはこの課題についてぜひ教えてください。
§18Takako Masai
まず日程の件ですが、これからこういったことを検討する、始めるという段階にあるものですので、具体的なスケジュールはまだ決まっていないと認識しています。ご質問の中央銀行のデジタル通貨を発行すべきかどうかといったお話で、最近色々なメディアでそういった話題が取り上げられ、皆さん非常に興味を持たれていると認識はしていますが、今、テーマとしては非常に重要なのかもしれませんが、まず、一点は、わが国では現時点において、中銀がデジタル通貨を発行するという計画はないと思います。ただ、その一方で、技術革新のスピードも大変速いですし、また、決済サービスを巡る環境変化も非常に起こっているところですから、今後、中銀デジタル通貨に対する社会のニーズが急激に高まるという可能性もないとも言い切れないということなのかもしれません。そういったときに、そういった事態に的確に対応できるように、今回その 6 か国の中銀からなるCBDCグループに参加することになりましたが、その前からも例えばECBと共同で、いわゆる「プロジェクト・ステラ」といわれる共同で進めた、幅広い調査研究を既に行ってきています。今回のグループへの参画もこうした調査研究の一環として参加するものだと認識しています。
§19Takako Masai
デジタル化社会において、中央銀行が提供する通貨、いわゆる中銀マネーがどうあるべきかというのは、確かにわが国の決済インフラの将来像を考えていくうえでも極めて重要なテーマだと認識しています。そうした観点から、今後も海外中央銀行との情報共有を一層強化していくということはもちろん、国内外の有識者や関係諸機関の意見なども踏まえつつ、例えばユースケースなどを検討するといったデジタル通貨に関する調査研究を更に深化させていくということは極めて重要な取組みだと考えています。
§20Question
午前中の講演で、物価に対するリスク要因として、第二のところで為替相場の変動ですとか、国際商品市況の動向というところを挙げられていましたが、それは多分、円高ですとか原油価格の高騰といったところが想定されているかと思うのですが、具体的にどういった水準ですとか、どういったことになると物価に対する影響、特にここで挙げられている企業や個人のマインドに対するネガティブな影響が出てくると考えてらっしゃるのか、具体的なところをお伺いできればと思います。二点目ですが、今後の金融政策の運営のところで、先程も質問がありましたが、低金利環境の継続というところで、講演では年金などの運用利回りの低下が経済活動に及ぼす影響ということもおっしゃっていたと思うのですけれども、これまで黒田総裁も年金等の運用利回りのことを念頭に超長期債の利回りの低下について言及されてきましたが、そうしたところと考え方にある程度共通しているというのか、超長期債の利回りがもう少し改善してくるといった、そういった考えが背景にあるというふうに認識してよいのでしょうか。
§21Takako Masai
物価のリスクのところで、例えば国際金融市場、ご指摘の通りの為替の水準や原油価格の水準というのは、ご案内の通り、ダイレクトに日本のCPIの物価の短期的な基調に影響を与えますので、その観点でいえば、当然注視しているということになります。その背景は、ご案内の通りで、2016年に「総括的な検証」でも明らかにお示しさせて頂いた通りです。わが国のいわゆる予想インフレ率の形成において、他の国に比べて、やはり経験値、経験による適合的な期待形成がどちらかというと強めに出ていて、中央銀行の目指す、例えば物価目標であるとか、そういった予想の期待形成のところに比べれば、それまでの足許の実績にどうしても長期的な物価の見通しも引きずられやすいという特徴があるので、特に現状の日本の状況においては、そういった短期的な変動にも注意して、それがひいては長期的な予想インフレ率に影響しないかどうかという観点から注視しています。従って、具体的な水準といったものが念頭にあるかというと、そういうものでもないのかなと考えています。二つ目は、いわゆる低金利環境が長期化してきて、そういったものが累積的になってきた場合に、例えば超長期のところで運用している年金であるとか、そういったところの利回りの低下が副作用の一つとして考えられるということは、これも 2016年の「総括的な検証」の時にお示ししたことだと思います。
§22Takako Masai
その折に、一番問題というか、経路として考えられるリスクとしては、そういった運用の金利の低下が、そのままひょっとすると金融機能の持続性の不安といった形で、家計や企業のマインドにネガティブな影響を与え得るという点で問題であると。それともう一つは、緩和の効用を考えたときに、中長期の金利の緩和の方が超長期の緩和よりも、より経済に対して効果があるという知見も得られていますので、その意味においては、超長期のところはそういった過剰なフラットニングであるとか、そういったものが契機として年金とか、そういったところの運用の利回りが過度に低下する、ないしは低下していくことが続くということを、家計や企業がみることによって、却ってマインドにネガティブな影響を与えるかどうかといった点で、注視していく必要があるとみています。従って、そういった意味では、そういったところも念頭に置いて、一昨年に、より柔軟な運用をしていくと決定したのもその一つの背景にあったと考えています。以上