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Bank of JapanPress conferenceFeb 27, 2020Goushi Kataoka, Board Member

片岡審議委員記者会見(2020年2月27日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会でどのような議論をされて、どのような成果をお感じになったのかお伺いしたい。

§2Goushi Kataoka

本日の懇談会では、当地を代表する行政や経済・金融界の方々から滋賀県の金融経済情勢などについて貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策についても、有意義な意見交換ができたと感じています。改めて、ご多忙な中、本日ご出席頂いた皆様に感謝を申し上げます。懇談会での議論について、印象に残った点を中心にお話しいたします。まず、当地の景気についてですが、昨年までは、「緩やかに持ち直していた」との見方がありましたが、本年入り後は、中国やわが国における新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、かなり慎重にみる見方がほとんどであったように思います。当地の主力産業である製造業からは、中国における生産の停滞や世界的な自動車販売の減少などを受けて、生産面は、足もと弱めの動きとなっていますが、中国からの部品の調達の遅れや受注の落ち込みが長期化する場合、影響がさらに深刻になると懸念する声が聞かれました。非製造業からは、暖冬で建設工事が順調に進んでいるとの声もありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、外出や観光が手控えられていることや、訪日外国人観光客が減少していることから、飲食・宿泊・観光を中心に業況が厳しくなっているとの声が聞かれました。なお、金融界の皆様からは、低金利環境の継続が収益にマイナスの影響を与えているとのご意見も頂きました。

§3Goushi Kataoka

新型コロナウイルスの影響が長期化する場合には、幅広い業種に深刻な影響が及ぶ可能性があることから、経済・金融面からのしっかりとした対策を求める声が多く聞かれました。私どもとしては、今後も、新型コロナウイルスの影響も含め、当地の金融経済情勢を丹念に分析しながら、中央銀行の立場から物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや、金融システムの安定性を確保することを通じて、当地の金融・経済の健全な発展をサポートしていければと考えています。

§4Question

講演の中で、フォワードガイダンスについて、条件を「2%の『物価安定の目標』と物価上昇率の実績値との乖離幅とし、それが一定水準を超えて拡大した場合に具体的に行動する」と提唱されていますが、これは乖離幅を超えてしまった場合に、ある意味、機械的に金融緩和を実施すべきとの理解で良いのか、また、乖離幅について、具体的にどのくらいが適当と考えているか、その根拠も含めてご所見をお願いします。

§5Goushi Kataoka

フォワードガイダンスについては、講演の資料に書かせて頂いた通りで、私の方からそれに加えて何か申し上げることはないと理解しています。ただ、ご質問の点ですが、現状、日本銀行は2%の「物価安定の目標」がある中で、現行の物価上昇率は消費税増税の影響を含めると+0.8%と、金融緩和を続けて6年、7年目に入ろうという状況ですが、なかなか目標を達成できていないわけです。こうした状況下において、やはりこれ以上の物価の下落ないしは物価上昇の遅れを日本銀行として容認しないという強いスタンスを明示するようなコミットメント、約束を打ち出す必要があるのではないかとの趣旨でお話しています。こうしたコミットメントについては、あまり厳しい約束をすると、そのことによって金融政策の自由度、手を縛ってしまうのではないかとのご意見もあろうことも承知していますし、そのあたりは程度問題だと思います。しかし、私個人としては、過去20年間ほど、物価上昇率がマイナス圏に沈んでいて、最近はプラス圏にはなっているものの、なかなか目標を達成できていない、物価目標2%のアンカーが確立されていない状況では、やはり強い意志をしっかり明示して、行動を伴うような約束をしていくことがとても大事なのではないかと認識しているところです。

§6Question

講演の中で、金融と財政の相互作用を含めた金融政策の効果を再検証し、金融政策の枠組みのレビューを検討しても良いのではないかと発言されています。この再検証は、政府と日銀の「共同声明」も踏まえた検証、あるいは「共同声明」の見直しを含めた検証という理解で良いのか、再検証・レビューの具体的なイメージについてもう少し説明をお願いします。

§7Goushi Kataoka

レビューの必要性については、私自身の意見として申し上げたところであり、ご案内の通りですけれども、政策委員会の決定として申し上げた話ではないということをまずはお話したいと思います。そのうえで、私自身の考えを申し上げると、まず虚心坦懐にこれまでの金融緩和の効果と副作用を検証することが必要であると考えています。それは、大胆な金融緩和を始めて6年を超えている中で「物価安定の目標」の2%からかなり距離がある物価の状況を踏まえると、金融政策の効果の検証をやっていく必要がやはりあるのではないかということです。その際、私個人は、金融政策単独の効果だけではなく、財政政策や成長政策との相互効果についても、どのような手段がどういうタイミングで実施された結果、経済に対する効果が高かったのか、低かったのか、といったところを、定量化できる話はできる限り定量化してしっかりした分析を行っていく必要があると考えています。これ自体は、2013年以降の日本銀行が行っている大胆な金融緩和政策は、安倍政権の経済政策、アベノミクスの一環であるという趣旨も併せてあるからです。加えて申し上げますと、昨今、経済政策手段として、財政政策、金融政策、成長政策の3つがありますが、従来ですと例えば経済の潜在成長率の低下に対しては、構造改革や規制緩和に代表されるような成長戦略をとれば潜在成長率が上がるという話がありました。

§8Goushi Kataoka

しかし、最近の状況は、例えば金融緩和を行うと、現状のわが国でも顕著なように、雇用情勢が逼迫化し、そのことにより必要が出てくれば発明の母になるという形で、新たな技術や投資が生まれたり生産性が高まるといったことがあります。すなわち、単純に規制緩和ないしは成長戦略等々が潜在成長率に資するという話ではなく、当然、需要を喚起することが結果的に生産性向上にも資するし、日本経済全体の成長力強化にもつながり、それぞれの政策の効果が色々な形で波及していきます。こうした議論が、わが国だけでなく、各国においても色々な形で出てきているということです。講演の中で申し上げましたが、「ジャパニフィケーション」という話の議論でも、1980年代以降は、わが国は不幸ながらバブル崩壊後の経済停滞を放置した結果として──需要側の停滞がまずは起きたわけですが──、設備投資や雇用を通じて潜在成長率の低下にもつながっていきました。潜在成長率の低下がまた需要側にも波及していく形で、需要と供給、各政策手段が非常に入り組んでいるような構造となってきています。従って、そういう相互依存関係を前提とすると、金融政策のレビューを行うこと、効果を検証することも大事ですが、効果を検証するにあたっては、その他の政策との相互依存関係も併せてみていくことが必要だと思っています。

§9Goushi Kataoka

枠組み云々といった話ですが、私個人としては、現状、これまでやってきた政策が、今申し上げたような観点に即したときにどの程度効果があり、何を成し得て何を成し得ていないのか、そこをまずは明らかにすることが重要であると思います。そのうえで、これから何をやっていくかという戦略については──常日頃、政策委員会でも検討していますが──、そうした政策効果の検証の中でやっていく必要があると理解しています。

§10Question

講演の中で、新型コロナウイルスの感染拡大の収束に時間を要するようだと消費が下押しされることが懸念されるとありました。昨日、国の方から2週間のイベント自粛の要請がありましたが、そのマクロ経済に与える影響をどのようにみているのでしょうか。

§11Goushi Kataoka

新型コロナウイルスについては、現状、どの程度の期間、どれぐらいの方々に、どういう形で波及していくのか、まだ先が全くみえない状況ですので、なかなか軽々に、経済への影響はこうであると発言することはとても難しいと思います。ただ、そうしたことを念頭において頂いたうえで申し上げると、やはり、よく分からない状況であるが故に、私自身もそうですが、病気の影響など分からないまま、一方で不安が出てくるわけです。こうした不安に対して、できる限り打ち消すような対応策を早期に立てて、経済政策としても、そうした不安に応えていくことが大事なのではないかと認識しています。

§12Question

今から約2週間──その期間が長いのか短いのか分かりませんが──、色々なイベントが中止や縮小すると思うのですが、その影響はいかがでしょうか。

§13Goushi Kataoka

実際どの程度のイベントが、どのような形で今後、自粛されるのか、ないしは、そのことによって国民の皆さんがどのように感じられるのかが現状ではよく分かりません。従って、そうした影響等について私がこのような場で発言するのは適当ではないと認識しています。

§14Question

枠組みのレビューについて確認ですが、財政・金融・成長政策の総合的な、相互補完的な効果について検証することが主だった目的であって、例えば2%の物価目標の在り方ですとか、今のYCCといった枠組みそのものの再検証ということでは必ずしもないとの理解でよろしいでしょうか。

§15Goushi Kataoka

少し混乱させてしまい申し訳ないのですが、私自身は2つの段階があると考えています。1つの段階は、これまで行ってきた政策が、実際どの程度効果があったのか、それは金融政策単体としてだけではなく、財政、金融それから成長政策、パッケージとしてみた時の効果も含めた形の検証だと思います。この第1ステップについて──2016年に「総括的な検証」を行ったわけですが──、これまでやってきたことについて検証するということをまず念頭においています。仮に、そうした状況の中で、金融政策をより強化していった方が良い、ないし金融政策の枠組みを変えていった方が良いといった可能性も、政策効果の分析の中から出てくると思いますので、そうした話は、別途、分析していくということかと思います。ただし、最初に申し上げましたように、こうした話自体は私自身の個人的な意見ですので、今、こう申し上げたからといってこうなるということでは当然ありません。私自身は、金融政策のレビューといった場合には、政策効果の検証をまずやるべきだと、そのうえで、どういう政策を行い、どういう戦略で目的を目指していくのかといった検討は政策効果の検証から自然についてくると理解しています。

§16Question

新型肺炎の影響が世界中に広がり、世界経済、日本経済に対する不安心理が拡大している状態ですが、こうしたリスクの拡大に対して追加緩和というのはどのくらい有効なのでしょうか。

§17Goushi Kataoka

こうした状況の中で、追加緩和という方策自体に効果があるのかどうかを考える前に、実際の新型コロナウイルスの状況、インパクトについて現状をしっかり分析していくことが、今、私どもにとってまず必要な状況かと思います。そのうえで、仮に金融政策上の対応を行っていく必要があるという局面においては、これは総裁も申し上げていますが、躊躇なく必要であれば追加的な措置を講じていく、というのが日本銀行の共通した考え方だと理解しています。その際の手段については、これも総裁からもお話していますし、従来、私もお答えしている通りです。様々な手段があると認識していますので、必要であればそれを躊躇なく行っていくという方針には全く変わりはありません。

§18Question

新型コロナウイルスの感染拡大により経済の下押し懸念が強まっていると思うのですが、片岡委員の講演の中で、政府と日銀の政策協調の重要性について触れていましたが、現時点では日銀独自で追加緩和を行う必要はないとお考えなのでしょうか。

§19Goushi Kataoka

現状、新型コロナウイルスの影響に対して、追加緩和を行うべきであるとまでは、私自身はまだ考えていない状況です。それは、新型コロナウイルスの影響、ないしは深刻度合いについて、良く調べていく必要があるのではないかとの認識にあるからです。そうした影響や経路、経済への影響も含めて、金融政策として何ができるかを考えていかなければならないので、そういう意味では、現段階で追加緩和をすぐに行うべき局面ではないような気がします。ただ、私自身は 1月の金融政策決定会合でも申し上げていますが、従来から、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムはないとの理解のもとで、講演でも申し上げているように、短期政策金利の引き下げによってイールドカーブをより緩和的な形状に変化させることと、本行として成し得るコミットメントの強化、の2本の柱を通じた追加緩和策を通じて物価を2%に近づけ、早期に目標を達成していくという政策が重要であると申し上げています。これ自体は新型コロナウイルスとは関係なく必要であると認識しています。

§20Question

今仰った物価のところで──PMIも8年振りの低水準まで下がってきてGDPも厳しい状況ですが──、改めて今の局面で、日本銀行がモメンタムをみて緩和の是非を判断すると仰っていますが、そのモメンタムが損なわれているとすれば、どのような手段をとるべきか教えて頂けますか。

§21Goushi Kataoka

先ほども申し上げた短期政策金利の深掘り、引き下げと、フォワードガイダンスの強化というのが、日本銀行としてでき得る最初の追加策だと考えています。そのうえで、政府の財政政策、成長政策と金融政策も含めた連携がこれからの局面においては必要になってくる可能性が高いのではないかと考えます。更に申し上げると、財政政策は、経済への影響は非常に短期間で効いてきます。従って、即効性、ないしは、急速に景気が悪化するなど経済に影響が出てくるときに対応する手立てとしては、金融政策は決定するのは早いですが金利低下やフォワードガイダンス等を通じた効果が表れるには財政政策と比較するとタイムラグがあるので、少し不十分なのかもしれません。そうした意味も含め、これは政府がご判断されるところであるとは思いますが、財政政策や成長政策、その他の政策も含め、色々な手立てを日本銀行も含めた形で考えていく必要があるのではないのかと認識しています。

§22Question

金融経済懇談会の中で、低金利の長期化で地域金融機関の置かれている経営状況はかなり厳しいという話がたくさん出ていたと思います。今回の新型コロナウイルスの影響で地域経済が落ち込んでいくと、更に厳しさが増していくことも予想されると思うのですが、その辺りの現状認識をどのように考えているのでしょうか。

§23Goushi Kataoka

現状、新型コロナウイルスの感染拡大については事態が流動的であるので、影響を評価することはなかなか難しいという前提で述べさせて頂きます。滋賀県経済への影響としては、まず、製造業に関して、中国での需要下振れに伴う輸出減少が生産に与える影響や、中国の現地工場の生産停止や物流停滞により日本への部品供給が滞るといったサプライチェーン障害を通じた生産への影響、が考えられます。金融経済懇談会の席上でも、中国から部品が入って来ない、受注に影響が出てきているといった声が聞かれましたので、引き続き注視していく必要があると思います。また、非製造業に関しても、訪日客減少に伴うインバウンド観光への影響がまず考えられます。滋賀県の宿泊客数に占める外国人のシェアは 2018年で1割弱と低い状況ですが、実際に、宿泊客のキャンセルが発生している施設もあると伺っているほか、飲食業にも影響が出ているとの話も聞かれています。国内での感染拡大の収束まで時間を要する場合には、人の移動が制限されるので個人消費に大きな影響が出てくることになり、当然ながら、資金繰りなどを支える地元の金融機関にも影響は出てくると考えられます。

§24Question

低金利政策の長期化の中で、銀行の収益が厳しくなっているとの現状についてのお考え、受け止め方をお願いします。

§25Goushi Kataoka

低金利環境の持続について、金融機関の状況をみるにつけ厳しいという声が増えてきており、その点については承知しているところです。ただ、これを打破するためにどうしたら良いのかということですが、私自身の考えは、結局のところ、デフレから完全に脱却して、「物価安定の目標」を達成して、それにより、低金利ではなく、ほどほどの金利が維持できるような経済状況にしなければならない、それに尽きると思います。講演の「ジャパニフィケーション」の箇所で、低金利・低インフレ・低成長、この3点セットが揃っているのが日本であるという話をさせて頂きましたが、この状況を変えないと、銀行部門が低金利で苦しいとの話は収束しない、というのが私自身の考えです。

§26Question

1月の金融政策決定会合における「主な意見」と、本日の片岡委員の講演を踏まえると、1月の会合でも政策の枠組みのレビューについて提案されたのだと思います。申すまでもなく、新型コロナウイルスの影響を注視しなくてはならない、場合によっては果断な政策対応をしなくてはならない、という現局面で、同時並行で時間を要する政策レビューというのを行うべきかどうか。欧米もやっていることなので、現局面での政策対応と、少し長めの視野で行う政策枠組みのレビューとの関係についてお考えをお聞かせください。

§27Goushi Kataoka

私自身、金融政策のレビューに時間がかかるのであれば、なおさら早いうちにやらなければならないと認識しています。ですから、金融政策をどのような形で将来運営していく必要があるのか、何をやっていくべきなのかといったことについては、現状の経済状況がどのような形で推移するかといったところの見通しとセットになっています。当然、景気の状況、経済の状況が比較的安定している中で、レビューの作業ができれば、それに越したことはありません。ただ、現状は残念ながらそういうわけではなく、色々な意味で外部の制約もあり、その中で、日本銀行として、どのようなやり方が目標達成に向けて望ましいのか、金融状況、物価状況、それから国民経済、生活を改善していくためにはどうしたら良いのか、こうしたところは待ったなしの状況ですので、今新型コロナウイルスの問題があるからやらなくても良いとか、そういう話ではないと理解しています。以上