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Bank of JapanPress conferenceNov 12, 2020Seiji Adachi, Board Member

安達審議委員記者会見(2020年11月12日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日午前中に長野県内の経済関係者の方々との懇談会があったと思うのですけれども、その場でどういうようなことが話し合われて、ご出席された皆様からどのようなご意見が出たか、それを踏まえて長野県の経済の現状をどうご覧になっていらっしゃるのか。また、今コロナの影響が尾を引いているところだと思うのですが、当面どういう取組み、施策が必要となると考えていらっしゃるのかということをまず伺います。次に、日銀の方も政府と歩調を合わせるような形で金融機関の経営統合を後押しするような施策を打ち出されていらっしゃいますけれども、長野県内では今のところそういった統合再編の具体的な動きというのはないのですが、長野県内の金融機関の今置かれている状況であったり、統合再編の必要性についてはどのようにお考えになるか。最後に、アメリカの大統領選挙の後、非常に株高が進んで株価が非常に高水準になっているのですけれども、その中で実体経済との乖離を指摘するような声もあるのですが、その辺の株価の現状なんかをどのようにお考えになっているのかをちょっと伺えればと思います。

§2Seiji Adachi

まず、本日の金融経済懇談会でどのような意見交換が行われたかですが、従来ですと長野の方に伺ってということだったのですが、本日はオンライン形式での開催となりました。ただ、長野県の行政、金融経済界を代表する方々から、当地の経済の現状や地域経済が直面する課題などについて、大変貴重なお話を頂いたと考えています。また、日本銀行の金融政策運営に関しての率直なご意見、ご要望を数多く頂きました。大変有意義な意見交換だったと考えています。まず、この場を借りて、改めて御礼申し上げます。そのうえで、実際に行われた意見交換の内容等を私なりに整理しますと、長野県の土地柄といいますか、製造業についてはIT関連業種の企業が数多く集積しており、製造業は自動車やIT関連を中心に4~6月期を底に持ち直してきているというお話を多く頂きました。一方、もう一つの特徴として、非常に風光明媚な環境を活かした観光関連のサービス業もありますが、やはり新型コロナウイルス感染症の影響から、非常に厳しい状態が続いているというご意見を数多く頂きました。ただし、足許にかけては、Go Toトラベル事業の効果が幾分出てきて改善しているのではないかという話も聞かれました。ところが、最近また感染症の再拡大という状況がみられつつあり、今後は企業・家計両方のマインドが委縮する状況になるのではないかということで、不透明感が強いという話を伺いました。

§3Seiji Adachi

日本銀行の取組みに関しては、3月以降、積極的に企業、特に中小企業の資金繰り支援や雇用維持のための施策――これは政府と一体となってということですけれども――に取り組んでいることに関しては、高い評価を頂いたということで安心しております。ただ、今後に関しても不透明感が非常に強いということですので、出席された方のご意見を集約しますと、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの期間延長や、必要であれば新たな措置の導入を前向きに検討して頂きたいというご意見を頂戴しました。この話を重く受け止めまして、今後の金融政策対応を行っていきたいと考えます。先行きに関しては、足許の感染症の再拡大によって不透明感がやや増しているというのが、この年末から来年初めくらいにかけての状況かと思います。ただ、長野県特有のビジネス環境が本日の話題としてありました。これは非常に前向きな話です。一つは、先ほど申し上げたIT等のハイテクの製造業が集積しているということで、このコロナ禍においてデジタル化を国全体が進めていく――これは政府の方針でもあるわけですが――という状況の中で、長野県にはITの強みを活かせる環境があるのではないかというご意見で、実際にそれに向けた前向きな企業戦略等を立案されている企業が出てきているという話です。

§4Seiji Adachi

もう一つが、いわゆる風光明媚な環境ということで、都市機能の分散化とも絡んでくるワ―ケーションにおける優位性を長野県は持っています。自治体、経済団体、金融機関等を含めて一体となって取り組むということで、こちらは本日のテーマの一つでもありましたウィズ・コロナの中での経済構造改革といいますか、前向きな姿勢がみえたということで、非常に期待しているところです。先般の措置につきましては、火曜日に決めて、本日は木曜日ですから丸二日ということで、一部に話としてありましたが、具体的にそれに対して何か検討しているといった話は特に現段階では聞かれませんでした。詳細については、特に地域の金融機関とも連携しながらこれから話し合いの中で決めていくことであり、それに従って色々対応を決められていくのではないかということです。現状は、日本銀行がそういう施策をとることを認識しているというところでとどまっている印象でした。

§5Question

今の株価のご認識については。

§6Seiji Adachi

確かにこの 2、3日結構急ピッチで上がってきて、今は少しだれてきていますが、マーケットの動きについては、何ともコメントのしようがないということです。ただ、現状まだ大統領が誰になるかが正式に決まったわけでもありませんし、仮に決まりそうだとしても移行期間に引き継ぎ自体が上手くいくかといった話もあります。マーケットは、今のところはプラスに出ていますが、今後どうなるかはまだ分からないと思っていますので、不透明性も含めて注意しながらみていくという段階だと思っています。

§7Question

金融機関の統合再編については、まだ措置として出たばかりということなのですけれども、県内金融機関の経営状況というか、統合再編をやっていったほうが良い状況にあるのか、それとも当面大丈夫だろうというような、その辺の認識というのは今どのようにお考えでしょうか。

§8Seiji Adachi

本日私がお話をお聞きした限りでは、各金融機関、各業態も含めて、今のコロナ禍の企業の資金繰り、特に中小企業の資金繰りに対して、非常にご尽力されているということと、正に我々の出番が来たというところで、かなり前向きに取り組んでおられる状況です。例えば統合が必要といった状況かどうかというのは、基本的には外部からみて必要という感じは特にしませんでした。もっとも、これは個別の金融機関の経営戦略等にも依存するところですので、私が発言するところではないと思います。

§9Question

今の質問の中にあった話とも関連するのですけれども、10日にコロナの対策として、経営統合とか収益力強化に取り組むことを条件に、当座預金の残高に付利をするということが発表されたと思います。改めてこの狙いといいますか、どういった意味合いというか、どういったことを期待してこういうことをされているのかということを教えて頂きたいのと、全国的な地銀の今の状況というか経営環境に関して、どのようにみられているのかについて教えてください。

§10Seiji Adachi

10日の措置については、もちろんコロナという状況もありますが、もともとの話としては、地域毎に色は多少あるものの、少子高齢化の中で人口が減少している状況や、その他諸々の要因で、収益環境がトレンドとして非常に悪くなっていくといいますか、停滞していく姿となる蓋然性が非常に高いということです。方向性としては、各金融機関の経営戦略がかなり強く左右しますので、こちら側から強制的に何かをするという話では全くないのですが、自然な流れとして、経営統合や、経営統合はしなくてもその前の段階で何らかの経営基盤の強化を、どこかの時点で行っていく必要があるというのが大前提となっています。その中で、今回のコロナの危機が訪れました。現状は、地元地域の中小企業を中心とする企業の資金繰りを各金融機関が非常に支援されていますが、逆に言いますと、今後信用リスクが高まってくる可能性も排除できなくなっています。そういう意味では、今回のコロナのショックが、もともとあった各地域の構造的な要因を浮き彫りにしたという面もありますので、ここで金融機関の経営基盤の強化を後押しするような政策を打ち出すのが良いのではないかという話で出来上がったと私は理解しています。

§11Question

講演の中で、先行き非正規雇用の動向を注視していく必要があるということでしたけれども、足許、非正規だけではなくて、非製造業のところでも、労働市場が結構厳しいかと思うのですけれど、その人たちが、例えば製造業に移って吸収されればいいのでしょうけれども、吸収されないと、雇用市場全体として悪化して、それがまた家計とか企業のマインドにも影響し、それが巡り巡って景気の下押しにも働くかと思うのですけれど、その辺のリスクに関して現状ではどのようにみていらっしゃるかお伺いできればと思います。

§12Seiji Adachi

現状、例えば労働力調査等でみますと、私の認識では雇用が累積的に悪化していく、その背景として企業の倒産や廃業がどんどん増えていくという状況にはなく、今のところは一服しているといいますか、限界的な部分にとどまっていると考えます。ただし、このところの感染の再拡大は、特に家計の消費意欲を委縮させてしまうリスクがありますので、現在コロナのショックでかなり大きな収益下押し圧力を受けている特定業種については、依然として、廃業や倒産のリスクが潜在的には大きくなる可能性があると思っています。そういう場合に、現時点ですぐに何か措置をとるわけではありませんが、積極果敢に措置をとっていくことが特に来年以降の課題ではないかと考えます。ただ、感染症再拡大の話も、この 2、3日に出てきたばかりですので、来年どういう姿になっていくのかもはっきりしませんし、一方でワクチンの話も出てきていますので、それらを踏まえて動向をしっかりみながら決めていきたいと思っています。

§13Question

今日の講演の中で、ウィズ・コロナの世界と今後の金融政策という中で、政府の改革路線なんかも念頭に置きながら、痛みを和らげるセーフティネットの存在がより重要性を帯びてくると、今後も経済動向を注意深くモニタリングしながら、緩和的な金融政策のスタンスを維持することが求められるということですけれども、ここですね、もうちょっと具体的にどういうことをイメージしていらっしゃるのか、例えば、そのうえで、どういったような政策が今後とり得るのかという点についてお伺いできますでしょうか。

§14Seiji Adachi

まず、構造改革という話が、当然あります。現状は、基本的に企業の資金繰りに関してはほぼ例外なく救うスタンスであり、政府も家計に一律 10万円を先日配りました。このように、みんな助けるという政策ですが、これはタイミングとしてはまだ早いかと思いますが、どういう形か分かりませんけれどもコロナの感染が収束した段階で、対策は絞られていかざるを得ない状況になると思います。そのときに、漏れた方々、特に私が注目しているのが非正規雇用で職を失われてしまう方がどんどん増えていく状況になってくると、これは直接金融政策の目的として明記していない話で、明記するとすれば日銀法の改正などももしかしたら必要になるかもしれないですが、インフレ率や物価とつながっていますので、デフレ圧力をもたらしかねない話になってきますので、明記しない形でも、そこについてはなるべく支えるということです。また、今どちらかというと収縮している感じのある業種や企業が、事業を再開するときに、また雇用が増えるという段階まで粘り強く緩和を続けていくということではないかと考えています。

§15Question

今の関連で、雇用ということで、講演でも、アメリカの方の話なんかも言及されていましたけれども、やはり 2%目標というものを掲げてきた中で、昨日も安倍元総理がおっしゃっていたのですけれども、雇用がほぼ完全雇用に近づいていて、2%目標を事実上実現されているということですけれども、この辺りについては、どう考えていらっしゃいますでしょうか。

§16Seiji Adachi

安倍前総理のご発言はさておき、まず、2%のインフレ目標自体は、少なくとも現段階におきましては、グローバルスタンダードと言ってよいのではないかと思っています。多少オーバーシュートといった話は各国ありますが、そういう中で、各国 2%のインフレ目標を掲げて、それに紐づけて金融緩和のスタンスを取っているという状況です。今実現されている、されていないという話とは別に、2%のインフレ目標自体をなくしてしまうと、実は政策自体のアンカーがなくなってしまうということで、むしろ政策の不透明感をおそらく高めてしまうのではないかと思っています。コロナの影響で物価上昇のモメンタムは確かに失われていますが、2%目標を掲げて粘り強くやっていくことがむしろ重要ではないかと思います。

§17Question

先ほどの構造改革の話なのですけれども、やはり構造改革が進展している過程では、セーフティネットの観点、先ほど言われた観点から、金融緩和もやはり構造改革が進展している過程ではやはり続けていく必要があるというご認識でよいのでしょうか。次に、追加付利の制度なのですが、これは金融政策として実施されているマイナス金利とか、そういったことをはじめとした超低金利政策の副作用を緩和するという意味合いもあって実施されたものなのでしょうか。金融政策への影響、関連という絡みでどのようにお考えか教えてください。

§18Seiji Adachi

まず、構造改革を進める中での金融政策の在り方ですが、基本的には金融政策が緩和的な環境にない中で構造改革を進めてしまうと、かなりマイナス、つまり構造改革の痛みが全面に出てしまいます。それによって、経済にとって長期的な効果をもたらすはずの構造改革が、短期的には非常に大きな痛みを伴ってしまい、その短期的な大きな痛みゆえに長期的な効果もなくなってしまうリスクが非常に高いと思われます。そういう意味では、構造改革と金融緩和的な環境は両立するものではないかというのが私の考えです。次に、日銀当座預金の付利の話なので、金融政策との境界のような話になってくると思うのですが、私の理解では、今回の付利は今マイナスになっている政策金利のコントローラビリティ自体を失わせるものではないと思っています。そういう意味では、現状の金融政策にとっての副作用はないと判断して、賛成したところです。今のマイナス金利政策は三層構造になっており、非常に限界的な政策金利残高に関してマイナス金利を適用し、全体のイールドカーブに影響を与えるという政策です。その中で、今回、地域金融機関の当座預金に対してプラスの付利をつけることで、マイナス金利を維持できなくなるかといわれると、それは十分コントロール可能であろうと考えています。逆に言うと、コントロール可能なように日本銀行の中で調整すべき話で、調整をすると考えています。

§19Seiji Adachi

そういう意味では、あくまでも個別の金融機関が経営基盤を強化するためのインセンティブを付ける、もっと言うならば、例えば金融庁や、独禁法特例法といったものも含めて、政府と一体となって地域金融機関の経営基盤の強化を促進するという意味でのプルーデンス政策ですので、マクロの金融政策とは完全に一線を画しているという認識です。以上