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Bank of JapanPress conferenceDec 2, 2020Masayoshi Amamiya, Deputy Governor

雨宮副総裁記者会見(2020年12月2日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

まず、本日午前中の秋田県金融経済懇談会で、経済界の代表ら10 名の方と意見交換されました。どのような議論がありましたか。次に、秋田県は日本最速のペースで人口減少が進んでいます。秋田県経済が人口減少という課題を乗り越えて発展していくには、何が必要だとお考えでしょうか。

§2Masayoshi Amamiya

本日の懇談会では、秋田県の行政や経済、金融各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題に関する貴重なお話、それから日本銀行の金融政策運営、あるいはプルーデンス政策運営に関するご意見等を数多く頂きました。今回はご案内の通りオンラインによる開催となり、現地を訪問して直接お話ができなかったことは大変残念でしたが、おかげさまで大変有意義な意見交換ができたと思います。この場をお借りして、本日懇談会にご出席頂いた方々に深く御礼を申し上げたいと思います。そのうえで懇談会の話題を全て網羅することはなかなかできませんので、いくつかポイントを絞ってご紹介したいと思います。まず、秋田県の景気ですが、持ち直しの動きがみられるものの、新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい状態が続いているとの見方が多く示されました。業種別にみますと、製造業は、電子部品・デバイスを中心に生産が緩やかに持ち直しているとの声が聞かれました。一方で、サービス業について、県や市によるプレミアム付きの宿泊・飲食券などの需要喚起策の効果は出始めているものの、感染症の影響が長引く中で、なお厳しい状態にあるといった声が多く聞かれたように思います。最近の内外における感染症の再拡大に対しては、経済に与える影響を大変懸念する声が多く聞かれたように思います。

§3Masayoshi Amamiya

多くの出席者の方々から、アフターコロナあるいはウィズコロナのもとでの、やや長い目で中長期的にみた県経済の課題のご指摘も多くありました。例えば、県内企業の新たなサプライチェーンの構築や、デジタル・トランスフォーメーションの推進、また、非常に多くの方が指摘されていましたが、秋田県が強みを持つ再生可能エネルギーの導入拡大に取り組むことが大事との見方が示されました。今申し述べた再生可能エネルギーという点では、洋上風力発電所の建設による雇用創出や地元経済への波及効果を期待する声も聞かれました。何人かの方からは、直面する課題として、人口減少を挙げる声が聞かれました。この点については、官民一体となって若者の県内定着や移住促進に取り組んでいるとの声が聞かれました。秋田県では、企業でテレワークが普及する中で、首都圏などの企業に勤めながら、秋田県への移住を促す新たな取組みを進めていること、あるいはワーケーションの受入態勢を整備しているといったお話も伺いました。金融機関の方々からは、感染症の影響で厳しい状態にある地元企業の資金繰りを積極的に支援してきているとの声が聞かれました。

§4Masayoshi Amamiya

また、もともと地域経済が有している構造的な課題でもありますが、感染症の影響で社会構造が更に大きく変わるもとで事業承継をどう進めるかといった課題が挙げられ、例えば、人材の紹介などを通じて、取引先の経営の持続性確保に向けた取組みを支援していくといったお話を伺いました。この点は心強く感じたところでもあります。こうした声を踏まえて、私からは感染症の経済・金融面への影響を注視しながら、企業等の資金繰り支援や金融市場の安定維持に努め、経済活動を下支えすることを通じて、秋田県経済の発展にも貢献してまいりたいと申し上げました。二つ目の人口減少という課題の中で、経済が発展するために何が必要かということですが、やや長い目でみますと、経済発展あるいは経済成長に必要な要素は、労働の投入量と、設備などの資本ストック、生産性という三つの要素になります。人口が趨勢的に減少していることを踏まえると、労働力の供給そのものを高める努力も必要ですが、様々な省力化投資等を通じて、生産性を引き上げるという取組みが重要となります。本日の懇談会でご紹介がありましたが、秋田県では、今年の3月に「第2 期あきた未来総合戦略」を策定され、そこで「人口減少社会における誰もが活躍できる社会づくり」を重点プロジェクトとして掲げたうえで、結婚や出産等で離職した女性や高齢者の就業支援を行っているとの説明がありました。

§5Masayoshi Amamiya

また、成長産業の振興を図りながら新卒の県内就職の促進や、大都市圏等からのUターン就職などを通じた、新たな雇用機会の創出にも取り組んでおられるとのことでした。人口動態をみても、若者の大都市圏等への進学・就職に伴う、いわゆる「社会減」の拡大に最近ようやく歯止めがかかったという報告もあり、この辺が重要な課題だと思います。それに加え、生産性を上げる努力が必要で、当地でも製造ラインへのIoTの導入や、建設現場におけるICT建機の活用、あるいはドローンを活用したスマート農業など、最近色々な産業分野において、ICT技術を活用した省力化や生産性向上に向けた取組みが進んでいると伺っています。官民一体となったこうした取組みが、秋田県経済の成長力を高める方向に作用することを期待しています。

§6Question

県内企業は幅広い業種で新型コロナウイルスによる打撃を受けています。こうした状況に対し、県内の金融機関に期待することをお聞かせください。また、「地域金融強化のための特別当座預金制度」について、県内の金融機関が置かれている状況を踏まえて、その狙いをお聞かせください。

§7Masayoshi Amamiya

本日の懇談会でも金融機関の方々から、金融情勢について詳しい説明を伺いました。秋田県経済でも、新型コロナウイルス感染症の影響が相当大きく影を落としており、県内では、売り上げの減少に直面している企業等の借入需要が高い状況が続いていると伺いました。こうした中で、県内の金融機関は、政府や日本銀行による様々な支援策も利用しつつ、これに積極的に応えてきているとのことでした。実際にデータをみると、県内の 9月の貸出の前年比は2.8%と、2015年以来の伸びとなっています。また、経営環境が変化した県内企業の支援を目的に資本性ローンの扱いも始まるとのことで、県内の金融機関は金融仲介機能を発揮して、地域経済を支えることに大きく貢献していると思います。更に、県内の金融機関は再生可能エネルギーの関連産業などの新しい地域産業の育成に努めておられるほか、高齢者が元気に暮らせるようなまちづくりということで、地域の再開発支援も行っているとのことです。また、最近では、地方銀行と信用金庫、信用組合の間でM&Aや人材紹介にかかる連携協定が締結され、高齢化が進む秋田県内企業の事業承継に向けた支援も進められているとのことです。私どもとしては、こうした金融機関の取組みを通じて、地域が活性化し、金融と実体経済活動が相互に支えあう形で秋田県経済が発展していくことを期待しています。

§8Masayoshi Amamiya

そのうえで、私どもの制度について申し上げますと、秋田県の金融機関は今回の難局に積極的に対応されていると思いますが、長い目でみると、低金利環境の長期化に加え、人口減少や成長期待の低下などの構造要因を背景に、国内の預金・貸出業務の収益性は低下を続けています。秋田県では、全国で最も早いペースで人口減少が続いており、県内の金融機関の経営環境が厳しさを増しているとのことですので、私どもとしては、地域の企業や家計が活力を高めて、地域経済が持続的に発展していくうえでも、地域金融機関が十分な資本と収益力を確保することや、地域の課題を解決するような付加価値の高い金融サービスの提供をしていくことが重要と思っています。そうした地域金融機関の経営基盤強化に向けた取組みを後押しするために、今回の新しい制度を導入したということです。もちろん、秋田県の金融機関の皆さま方もこうした様々な起業や創業支援を通じて積極的に取り組んでおられますし、店舗の統廃合による経営効率化も着実に進めていると認識しています。日本銀行としては、今回、私どもが導入を検討している制度がこうした取組みを後押しすることを期待している状況です。

§9Question

日銀による新型コロナの「特別プログラム」について伺います。午前中の懇談会でも雨宮副総裁は言及されていましたが、感染症の影響を踏まえてこの期限の延長というのを必要があれば考えていきたいとおっしゃっていたと思います。今、コロナの感染が再拡大している中で、現時点でこのプログラムの延長の必要性をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。関連して、菅首相が、来週にも追加経済対策を策定するという方針を示しているわけですが、日銀としても12月の決定会合で延長というのを決めれば、政府・日銀一体となって、コロナに立ち向かっていくという姿勢を示すことにもつながると思うのですが、今回の会合で延長を決める可能性がどの程度あるのかについて、伺えればと思います。

§10Masayoshi Amamiya

私どもは、この春から行っている「3つの柱」に基づく金融緩和策がしっかりと効果を発揮していると思いますので、現在の措置をしっかり実施していくということが基本になると思います。ご指摘にもありましたが、世界的に新型コロナウイルス感染症の拡大が収まっていないといいますか、再拡大しており、先行きは不確実性が非常に高いです。当座、企業の資金繰りについては、相当の手当てがなされていますが、景気の回復テンポが非常に緩やかでかつ不確実性が高い中では、おそらく企業金融にストレスがかかる状況が続くと思います。従って、当面、この感染症の帰趨や、その経済や金融に対する影響を注視しながら、「特別プログラム」についても、必要と判断すれば、期限の延長をする考えです。タイミング等々についてのご質問がありましたが、現段階では引き続き感染症の動向やその影響をしっかり見極めながら、適切に判断していきたいと思っています。

§11Question

コロナ対策ですけれども、単純な延長ではなくて、制度自体の更なる拡充の必要性について、副総裁はどのようにお考えでしょうか。

§12Masayoshi Amamiya

今申し述べた通り、この企業金融を支援する政策については、新型コロナウイルス感染症の動きや企業金融の動向を踏まえて検討していきたいと思っています。具体的な政策の内容に触れることは控えますが、感染症の動向や経済・企業金融に与える影響、これまでの制度の利用状況を踏まえて、適切に判断していきたいと考えています。

§13Question

副総裁も先ほど触れられましたが、今の景気の現状、足もとのコロナ感染症の動向について、午前中の懇談会の中でもありましたが、下振れリスクみたいなものを可能性としてどれだけ高くみているか、金融政策に与える影響も踏まえて教えて頂ければと思います。また、秋田の質問でもありましたが、地銀支援制度についてです。秋田県以外にも、全国を踏まえて、改めて日銀としてこの政策の導入の目的についての副総裁のご所見と、正式な案の決定は大体いつ頃を目指していらっしゃるのか、その辺りについてもお伺いできればと思います。

§14Masayoshi Amamiya

まず、景気動向についてのご質問の趣旨は、新型コロナウイルス感染症の再拡大等も踏まえてリスク評価がどの程度変わったかということかと思います。確かに内外で感染症の再拡大の動向がみられていますが、海外でも公衆衛生上とられている措置は、春先と比べると限定的ですし、わが国でも感染対策と経済活動の両立を図る政策運営が図られています。私どもが見通しを公表している展望レポートでは、もともと、非常に重大な公衆衛生上の措置が導入されるような大幅な感染拡大がなければという前提で考えており、その前提が妥当しなくなっているわけではないと思います。ただし、展望レポートでも指摘している通り、感染症の動向やその影響については、極めて不確実性が大きく、経済の動向については下振れリスクを意識して点検していくというスタンスはもともと持っています。そういう意味で、下振れリスクに注意すべき状況にあるということだろうと思いますし、この点は、本日の秋田県の経済界を代表する方々との懇談でも改めて確認できたところかと思います。

§15Masayoshi Amamiya

また、本日の私の挨拶の中でも強調しましたが、回復の特徴は二つあり、一つは先行き不確実性が高いこと、もう一つは企業や産業の部門や業種、あるいは家計でも年齢や家族構成など、その属性によって非常にばらつきが大きいことも特徴ですので、そうしたことも踏まえつつ、下振れリスクを念頭に置きながら点検しておくべき局面にあると思います。「特別当座預金制度」の狙いですが、この間、新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中で、わが国の金融機関は家計や企業の資金繰りを積極的に支援して経済を支えてきていると思います。この点は二つの比較で極めて明確で、一つ目は、リーマンショック後と比べて頂ければ、貸出や社債・CPの発行高の伸びが全然違いまして、今回、金融仲介機能がきちんと機能していることが分かると思います。二つ目は、欧米と比べても、例えば、金融機関の貸出態度のアンケート等をみても、欧米は金融機関の貸出態度が厳しくなっています。それと比べて、日本は非常に積極的に資金需要に応えており、企業アンケートでも貸出態度は緩和的です。これらの意味で、リーマンショック後と比べても、あるいは欧米と比べても日本の金融仲介機能が今回は発揮されていると言えると思います。ただし、長い目でみると、低金利環境の持続や人口減少、成長期待の低下といった構造要因の中で、地域金融は非常に難しい環境が続くわけです。

§16Masayoshi Amamiya

地域の経済が活力を高めるためには、地域金融機関は二つの条件を満たす必要があり、一つは地域経済を支えるための十分な資本と収益力を確保すること、もう一つは地域の課題を解決するための高度な金融サービスを提供していくことだと思います。その二つを支えるのが経営基盤の強化であり、私どもとしてはこうした地域金融機関の経営基盤強化に向けた取組みを後押ししたいという狙いで今回の措置の導入を決定したということです。タイミングについては、骨子を発表して、今、これを利用される可能性のある地域金融機関の皆さまと色々議論しているところですので、できるだけ早期に実現したいと思っています。

§17Question

まず、追加付利の制度ですが、やはり導入の背景には、金融システムの将来的な警戒感といったこともあると思うのですけれども、そうした状況の中では、何かあったときにマイナス金利の深掘りをするとやはり副作用が強まるということで、なかなかそういう選択肢は難しいのではないかという指摘もありますが、この金融政策との関係について、どのようにお考えでしょうか。次に、話が全く変わるのですけれども、LIBORについてお伺いします。IBAが、ドル建てLIBORにつきまして、3 か月物などの終了時期を予定されている 2021年末から 1年半延期するという案を示しましたが、副総裁の受け止めと、円LIBORにつきまして、延期の可能性と是非について、現時点でどのようにお考えか、お願い致します。

§18Masayoshi Amamiya

まず、LIBORの方からお答えしますと、ご指摘の通り、関係当局とLIBOR運営機関が新しいステートメントを公表し、円などの4 通貨については、LIBORの公表が 2021年末で公表停止になり、ドルLIBORについては、2023年6月まで、一部の公表を継続する方針が示されました。ドルLIBORは取引高が巨額で複雑な取引が多いといったことを踏まえた判断と思われ、若干延期はされる可能性がありますが、基本的には最終的には公表が停止されるということです。ドルLIBORについて、2021年末以降も公表が続けられる可能性があるとしても、各国関連当局の公表によるとその適用対象は限定的に扱われるとのことです。従って、市場関係者、あるいは企業も含めて、今までLIBOR取引を利用してきた機関の方々は、これで猶予ができたと思わず、円滑な移行に向けてしっかり取り組むべきとの状況は変わらないと申し上げておきたいと思います。私どもとしても金融庁とも連携しながら、市場参加者や関係者の皆さまの移行対応をしっかりサポートしていきたいと思っています。「特別当座預金制度」と金融政策との関係ですが、これはあくまでプルーデンス政策で、金融政策とは一線を画した政策です。

§19Masayoshi Amamiya

これは日本銀行法で、法律上、制度上も明確になっており、日本銀行法の 15 条に政策委員会が決めるアイテムが並んでいるのですが、15 条の 1 項が金融政策関連で、これは金融政策決定会合で決めなさいとなっています。15 条の 2 項は、そのほかのプルーデンス政策や国際金融関係などが入っており、これは通常会合でとなっています。通常会合、金融政策決定会合という名前は法律には書いていませんが、これは明確に分かれています。分かれているのは、決して法律、制度上分かれているから分かれているということではなく、その根拠があり、三つくらい申し上げます。まず一つは、金利を付ける、あるいは量を増やすという政策についても、目的が市場全体の金利誘導のためにするのか、そうではない目的かによって違います。二つ目に、そもそも金利全体に影響を及ぼすかどうかという点では、今回の特別付利の制度は、金融市場全体の金利形成に影響を及ぼす可能性は極めて小さいと考えられます。三つ目に、仮になんらかの影響があったとしても、金融調節面でその影響を十分オフセットできますので、その意味で、これは金融政策とは全く一線を画した政策であります。ちなみに、中央銀行の政策は、ある意味で究極を言えば、いわゆるベースマネーやセントラルバンクマネーと言われるお金の量を増やしたり減らしたりすることで、それでしかないのです。

§20Masayoshi Amamiya

その手法を金融市場全般の金利形成に影響を及ぼそうとすると金融政策になりますし、例えば、最後の貸し手機能も日本銀行の資金の供給に端を発するので、実は手段は同じ部分があるわけです。ただし、目的や効果の出し方が違ってくるわけで、それで明確に制度も法律も分かれているのです。もし影響が出たらという議論をしだすと、例えば、最後の貸し手機能を発揮するために、個別の資金繰りに窮した金融機関に大量に資金を供給すると、その他の条件を一定にしてみれば、市場に対する資金供給なので、金利に影響を及ぼすかもしれないのです。では、LLRを金融政策決定会合で決めますかと言えば、これは違う仕組み・仕立てになっています。そういう考え方でこれまでも、例えばLLRの実行や、金融機関からの株式の買入れという政策、劣後ローンという政策は、通常会合で決めてきていますので、その意味で金融政策とは一線を画した政策であると思います。以上