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Bank of JapanPress conferenceFeb 10, 2021Toyoaki Nakamura, Board Member

中村審議委員記者会見(2021年2月10日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の懇談会ではどのような意見交換が行われていたのか、出席者からの意見も踏まえて頂いて、県経済の現状に対する見解についてお答え頂ければと思います。次に、全国的に話題となっている地銀の再編について、高知県の金融機関に対する認識をどのように思われているのか伺えればと思います。

§2Toyoaki Nakamura

まず本日の金融経済懇談会の内容ですが、高知県の行政や金融経済界を代表する方々から、コロナ禍における現状と課題、今後を見据えた産業振興に向けた取組み状況などを伺いました。今回はオンラインでしたので、残念ながら現地で直接お話を伺うことはできませんでしたが、有意義な、時間を大幅に超える意見交換ができたように思います。この場をお借りして、ご出席頂いた方々や、関係者の皆さまに深く御礼を申し上げたいと思います。本日の懇談会では、多岐にわたるお話を伺いましたので、一部、印象的であった点についてお話をしたいと思います。まず、高知県の景気に関しては、昨年12月以降は、当地における感染者数の大幅な増加ですとか、Go To トラベルキャンペーンの一時停止等の影響を受けて、やはり飲食・宿泊関連を中心に厳しい業況にあるという話がございました。他方、将来の成長機会を確保していくという観点から、当地の主力産業の一つである農業分野などで、デジタル技術を活用して生産性の向上を図るというようなプロジェクトが進められているとか、関西圏との連携強化を通じて、観光や外商の推進が検討されているといったお話も伺いました。それから、当地の構造的な課題の一つである人口減少への対応として、雇用面において、若年層の労働力の定着や、海外人材の受入れに注力をしているというお話もございました。

§3Toyoaki Nakamura

金融面では、感染症の影響により業況の厳しい地元企業への資金繰り支援が積極的に行われているということが確認できました。加えて、取引先企業の事業基盤強化の支援策として、ヒトの流れ、商流を作るという観点から、中小企業の情報発信プラットフォームの構築などの取組みが進められているというお話もございました。本日伺いましたこれらのお話を踏まえますと、当地の経済は、巣ごもり消費の再拡大などを中心に基調としては持ち直していますが、対面型サービス業種を中心に足許強い下押し圧力がかかっているということも改めて認識したところです。そうしたもとにおいても、当地の金融システムは、全体として安定性を維持しており、業況が厳しい企業等への資金繰り支援も積極的に行われていることが確認されました。更に、このような厳しい状況下でも、ポストコロナを展望した取組みが積極的に進められていることを大変心強く感じました。皆さまのご努力の成果が、今後積み上がって持続的な成長へとつながっていくことに期待しているところです。日本銀行としましては、緩和的な金融環境の維持を通じて、足許の厳しい状況を乗り越える努力と、将来を見据えた前向きな取組みの両面について、当地の経済をしっかりサポートしていきたいと考えております。

§4Toyoaki Nakamura

それから、高知県内の金融機関の現状認識ですが、コロナ禍において企業の資金繰り支援、それから中長期的な課題解決に向けた取引先の支援をしっかり行うことで、地域経済を支える中心的な役割を果たしておられると認識しています。ただ、長い目でみますと、低金利環境の長期化、それから人口減少などの構造要因を背景に、国内の預貸業務は収益性の低下が続いています。更に足許では、感染症の影響から、不透明感が一層強まっていると思われます。こういった環境の中で、地域経済が持続的に発展していくためには、それを支える地域金融機関の経営基盤の強化が一層重要になりますので、その具体的なあり方自体は、あくまで各金融機関がご自身の経営判断としてなされると思っています。この中で、経営統合も確かに一つの選択肢と考えられますが、単独であるとか、他の業態とのアライアンスも一つの選択肢と考えられます。それらによって経営基盤の強化を進めていくことは、色々と可能性があると思います。より一層経営基盤の強化を行い、引き続き地域経済を支える中心的な役割を果たして頂くことは、変わらず期待しています。目的は経営基盤の強化であり、そのための施策は、金融機関ご自身がベストと考えるものを選ばれると思っています。

§5Question

関西圏との連携強化というお話が挙がっていましたけれども、緊急事態宣言の延長とかですね、なかなか状況が不透明な部分があります。これが県の関西圏の経済戦略に及ぼす影響、今後の展望なんかちょっと思うことがあれば、おっしゃって頂けますでしょうか。

§6Toyoaki Nakamura

従来から検討をしてこられた関西圏との連携強化の施策については、濵田知事からも本日お話を頂戴しました。日本全国と同様に、2019年12月頃まででしょうか、経済としてはかなり順調に成長の方向にきていたと思った矢先にコロナが起きて、影響を受けているというお話がありました。ただ、コロナの影響ですので、方向感としてこの状況が未来永劫続くとは思っていないと知事もおっしゃっていましたし、私自身もそのように考えています。従って、ワクチンの接種によって、この不安が解消されていくことで、今までの取組みが更に効果を出していく方向に早く戻ることを期待しているといったお話でして、私自身もそういう方向感を持っております。この前の展望レポートの見通しの中でも、ワクチンに対する期待があるということで、これがどういうマインドの変化にいつ表れてくるかまだ分かりませんが、不確実性が高いので、その点については時間の経過を待つしかないと思います。しかし、その先には今まで行ってきた結果が出てくることを期待しています。

§7Question

マイナス金利政策に関して一つお伺いしたいのですけれども、今後更に経済が下押しされるような状況が発生した場合、マイナス金利の深掘りというものが有力な選択肢になるのでしょうか。あるいは、副作用が大きいので、これは回避すべき政策なのでしょうか。お考えをお聞かせください。

§8Toyoaki Nakamura

現在、マイナス金利の話は、日本だけではなく、世界各国でも出ている話であり、今後、景気の下押しがあったときに一体どうなるのだというお話だと思いますが、これは、3月に向けて、今行っている金融政策が効果を出すように色々と点検しています。その中でこういった話も当然検討しなければならないと思いますが、だからどうだという話を申し上げる段階には至っておりませんので、本日はここまでにさせて頂きたいと思います。

§9Question

午前中の講演の中で、資産買入れに関してですね、市場機能に影響されるということを述べられていました。ETFに関しては講演でも言われてたのですけれど、JGBの買入れに対して現状中村さんがみてらっしゃる問題意識というか、副作用みたいなことがあったらお伺いしたいのですけれど、よろしくお願い致します。

§10Toyoaki Nakamura

日本銀行は今まで随分と資産買入れを行ってきているわけですが、金融政策としては、随分しっかりと効果が出てきている、発揮されてきていると認識しています。資産買入れについては、その効果と副作用が市場機能面や金融機関収益といったところにまで波及していることは、前回の 2016年の「総括的な検証」の際にもそういった検討を実施し、ご承知の通りの結果であったと思います。それから4年経っていますので、この前黒田総裁が申し上げましたように、その効果と副作用をしっかりと点検し、副作用を減らしながら効果を出していくために、運営の方法等についての問題点があるかどうかを点検しようとしています。あれから1か月程度で、これからまだ点検の時間がありますので、その点検の結果を3月に申し上げますので、もう暫くお待ちください。政策自体の枠組みは変えませんし、効果も出ているということですが、懸念点もありますので検討したいと思います。

§11Question

ETFの話の中で、講演で資産買入れ・保有の長期化によって、市場機能に影響が生じ得るというところで、中村審議委員がお考えの影響というのがどういうものなのかというのをもう少し具体的にお話し頂ければ。

§12Toyoaki Nakamura

ETF買入れで影響が出ているというのは、皆様方が色々と言われているように、市場機能に影響があるのではないかとか、官製相場と言われる方もおられますし、持っていることによって日銀の資産が随分膨らんで、その分市場の取引が減っているのではないかという市場面の問題などもあると思います。ETFに限らず、資産の多様な買入れの一環で実施していますので、それについてどのような効果と副作用の関係になっているのかを評価していきたいと思います。ETF買入れについては、日本の場合はマインドが欧米とやや異なり、何かあるとすぐ振れるといいますか、デフレマインドが非常に強いです。良いことがあっても、心の中では、なかなかずっと続かないだろうという恐怖感といいますか、常にリスクをみながら生活していくというマインドが強いです。従って、何かあるとドンと落ちるという、経済の実態とやや合わないリスク・プレミアムの拡大が起こりやすいので、日本としては、欧米とは違って、株式市場のリスク・プレミアムに直接働きかけないと振れ幅が大きいだろうということで、ETF買入れという施策を導入したわけです。従って、このマインド自体がきちんと変わっていかなければならないので、そういった経済の変化が今後起きてくるだろうと期待しているのですが、そういった面での影響が、日本の場合はあるということです。

§13Toyoaki Nakamura

買い方といった運営の方法については、執行部の方で今色々と検討といいますか、点検をしていますので、私どもとしても、意見交換しながら、ETFだけではなく資産の買入れ方法等の運営の仕方について、点検したいと思っています。

§14Question

今のお話の中で官製相場というお話も出たのですけれども、現在の市場の状況はですね、バブル期以来の高値だったり日本もするわけなんですけれども、例えば企業業績との関係などでどうみてらっしゃるか。日銀がまだ支えるべき状況があるのか、リスク・プレミアムとの関係などでですね。どう感じていらっしゃるか、ちょっと教えて頂ければと思います。

§15Toyoaki Nakamura

私の感覚では、日本銀行が株価を支えているという認識はなく、従って官製相場とも思っていません。日本のPERがきわめて高いのかというとそういうことはなく、ニューヨークも結構高いです。ニューヨークでは、ETFを買うといったことは起きていないわけで、違うところに要因があるのだろうと思います。バブル期以来の相場といえばそうなのですが、2008年のリーマンショックが起きたときに、日本企業は相当傷みました。私がおりました日立製作所も、ちょうど私がCFOを務めており、過去最大の赤字を計上した時期でもありました。あのときに気付いたことは、雇用を守る、そのために事業ラインを維持する、ローパフォーマンスなビジネスを抱える、従って資金が成長分野に流れない、流れないので経済が良くなっていくと少しは良くなるのですが、次のリセッションが起きたときにまたドンと悪くなる。こういうことがリーマンショックのときに起きたのだと思います。ですので、その後の十数年、日本企業は随分改革を行ってきたと思います。働き方の改革や、ビジネスポートフォリオを変えていくといったことを行い、企業の収益力はかなり変わってきたと思います。変わってきたのが、株式市場で評価されているのだろうと私は思います。そこには、お金の流通量の問題もあるのだろうと思いますが、投資家が認識している企業の将来の成長が、今の株価に表れていると思います。

§16Toyoaki Nakamura

このコロナの時代は一瞬悪くなっているわけですが、現在、株式市場の投資家は、ポストコロナでどのように成長するのかというところをみていると思います。従って、リスクを取ってその成長の成果を刈り取りたいとなると、一律に買うということより、ポストコロナの時代に合った事業を行っているところが選好されています。残念ながらその結果、今金融の株は随分下がってしまいました。ひと頃とは随分逆の現象が起きており、これはビジネスモデルを変えて付加価値力をいかに高めるかということに注力をした結果が株価に表れ、それが合計すると東証の今の 720 兆円程度の時価総額になっているのだろうと思います。もう一言申し上げると、東証の時価総額は 720 兆円程度になったと思いますが、1990年頃は 560 兆円程度で、総額では増えてはいます。けれども、その間に東証一部上場企業は 1,000 社増えていますので、1社当たりですとやや小ぶりです。やはりこれからは、欧米と同じようにユニコーンがもっと日本の企業の中で増えて、それが上場して更に資金を調達して、成長して大企業になっていくといったダイナミックさが起きてくれば、1,000 兆円といった時価総額になっていくのだろうと思いますが、今はその過程にあると思います。ですから、このチャンスはポストコロナのときに出てくるだろうと、そういう経済を期待しているところです。

§17Toyoaki Nakamura

従って、バブル期以来という点については、企業業績との関係でいうと、その先の変化を期待されていると私は認識しています。

§18Question

今日の午前中の懇談の挨拶の中でですね、ETFの買入れの関連の質問なんですけれども、「タイムリーかつ効果的に対応できるよう準備しておくことが重要」というふうにおっしゃっていると思います。そのタイムリーというのがですね、具体的にはどのようなことが日本経済に起きたときにタイムリーに対応すべきなのかというふうに、どのようにお考えかということをお伺いできたらと思います。後ですね、先ほどETF以外の資産の買入れ全体でということをおっしゃっていたと思うのですが、例えば社債であったりCPであったりとかについての見直しだったりとか、その辺についてお考えのことがありますでしょうか。お願いいたします。

§19Toyoaki Nakamura

タイムリーで効果的というのは、要するに機動的に効果が出るようにということで、今、タイムリーかというとタイムリーではないだろうと思います。今回のショックというのは、確かリーマンショックのときよりも結局は大きいインパクトが世界的に起きていると思いますが、今後こういったことが起きたときに、全ての企業の調子が悪いということはおそらくないと思うのですが、全体的にリセッションが起きたとき、その原因が何かということです。日本の株式市場は下落しているけれども、欧米等は良いといったときというのは、そうではないのだろうと思いますが、世界全体でリセッションが起き、それが一時的なもので終わると思われるものであれば、日本の場合にはリスク・プレミアムが過度に動いてしまうというときには、少し直しておかなければなりません。リーマンショックの後にデフレが起きたということがありましたが、デフレになると本当に大変だと思います。私のように年齢を重ねていると、インフレや高度成長を経験していますので、そういう時代に戻るという確信めいたものを持ってしまいます。ところが、本日おられる方は大半が若いときにデフレと低成長を経験しておられるので、物心ついてから高成長とインフレを経験されていません。このマインドセットが、アメリカと違い、中国とも違います。

§20Toyoaki Nakamura

ですから、日本の場合には、マインドに働きかけることはまだ当面必要なツールだと思うのですが、そのときというのは一時的な大きなリセッションがあったときだと思います。それから、社債、CPの見直しというのは、今 20 兆円を限度に買うことになっていますが、これについてどういう効果と副作用があるのかをよくみた上で決めたいと思います。本日はご容赦願い、3月のMPM後の会見で是非ご質問頂ければと思います。

§21Question

確認ですけども、今東京市場が歴史的な高値圏になってきていまして、中村委員としては現局面でのETF買入れは必要ないと、例えばデフレマインドの高まる状況でもないのかなと思いますし、先ほど世界的に、一時的に大きなリセッションが起きてる状況とも違うという中で、現局面でのETFの買入れは全く必要ないというふうにお考えでしょうか。

§22Toyoaki Nakamura

それそのものを点検で議論しますので、個人的な意見を申し上げてもハレーションが起きるでしょうから、本日は申し上げられません。そういうことも含めて点検では検討します。

§23Question

現局面で買入れをするというのは、タイムリーな買入れとは言えないということでしょうか。

§24Toyoaki Nakamura

今は現実に買っていませんので、執行部もそのように思っているということではないかと思いますが、株は少しのことで大きな影響が出る場合もあり、ボラティリティが高いということはあります。均して市場をよくみないといけないので、その辺についてはよく点検したいと思います。

§25Question

地方金融機関の再編についてお伺いいたします。記者会見冒頭の説明で、経営基盤の強化の選択肢のひとつに、経営統合、合併というお話がありましたけれども、高知県は全国の中でも体力の小さい金融機関が複数あります。また、日銀と政府が歩調を合わせたような形で経営統合を促しているような姿勢にもこちらは受け取れられるんですけれども、選択肢のひとつという中で、経営統合についてどのようにお考えでしょうか。

§26Toyoaki Nakamura

経営統合というのは、かなりエネルギーがいると思います。私も日本銀行に来る前は色々とそういった統合を行ってきましたが、かなり準備が大変というのもありますし、特にシステムが大体別々です。ですから、それを統合していく大変さは確かにありますし、いわんや日本の同じところでライバルとして戦っていたところが、一緒に机を並べて仕事するということを想像すると、マインド面でも懸念を感じられるかもしれません。経営統合が唯一無二の方法かというとそうではなく、これはあくまでも目的を達成するための手段のうちのひとつであり、目的は地域の経済を成長させていくことに大きく貢献して頂くことです。その中の手段として統合もあるかもしれないですが、アライアンスといいますか、連携をとれるような体制を作っていくというのもあり得ます。取引先も、ひとつの地域だけで事業を成長させようと思っても、人口が減少しているといった問題もあります。成長する上では、そこの場所だけで事業活動するのではなく、同じような技術を持っていたり、同じような市場を相手にしていたりということで、県外――それは本州であったり九州であったり北海道であったりするかもしれませんが、――とのネットワークを作り、新しい事業に連携して取り組んでいくといったことで、経営リソースをいかに強化していくかということが事業の中身を強くする、変えていく上で必要だと思います。

§27Toyoaki Nakamura

そういう取引先の成長期待に対して、地域金融機関がどう取り組んでいけるか、そのための手段として一体何があるのだろうかということをお考えになるのが私は良いと思います。統合がいいのか、合併がいいのか、連携・アライアンスを結んでやっていくとか、それは銀行だけではなく、他の証券会社であったり、事業会社であったりいうことで、それぞれがもっている技術や顧客基盤といったものを使って、取引先の成長に貢献できるような、高い付加価値を与えるようなサービスができるような方向で考えられるということが解ではないかと私は思っています。ですから、私も唯一の解が統合であるとは思っておらず、効果を出すにはどれが良いかということだと思います。(中山支店長)いま中村審議委員がお話しした件に若干補足させて頂きますと、審議委員の趣旨としては、今高知県の金融機関について経営統合が必要だという認識が具体的にあるかというと、それはそうではないというお答えであろうと理解しています。また日本銀行としても、そういった経営統合が必要だ、という認識を具体的に持っているわけではない、ということは申し上げたいと思います。

§28Toyoaki Nakamura

そのうえで、委員が申し上げたのは、高知の経済をこれから中長期的に支えていくために、個々の金融機関がより収益力と経営基盤を強くしていくことが必要であり、そのためにどういう選択肢を取り得るのか、という点については個別の金融機関が随時それぞれの実情に応じて、これからご判断をされていく、といった趣旨だとご理解頂ければと思います。以上