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Bank of JapanPress conferenceMay 26, 2021Hitoshi Suzuki, Board Member

鈴木審議委員記者会見(2021年5月26日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の懇談会ではどのような意見交換が行われたのかを教えてください。また、山口県経済の現状について、今後の見通しも含めて教えてください。

§2Hitoshi Suzuki

本日の懇談会では、山口県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題についてのお話や、日本銀行の金融政策運営に関する貴重なご意見を頂き、大変有意義な意見交換ができました。この場をお借りしまして、改めて御礼申し上げたいと思います。懇談会の場では、多岐にわたるお話を伺いましたので、全てをご紹介することはできませんが、私なりに席上で伺ったことを整理して、印象・感想を申し上げたいと思います。まず、山口県の経済情勢について、新型コロナウイルス感染症が長期化する中で、宿泊・飲食を中心とする対面型サービス業は厳しい状況が続いている一方で、財消費が底堅く推移しているとの声や、生産も、半導体不足の影響への懸念が聞かれたものの、全体としては外需の回復を背景に持ち直しの動きが続いているとのお話を多く頂きました。こうした中、行政や経済界、金融界の皆様方からは、企業の資金繰りや雇用維持、消費喚起の面などにおける様々な支援を通じて、今後とも企業や家計を強力にサポートしていきたいとのお話があり、大変心強く感じました。これに関連して、金融界の方々からは、日本銀行の強力な金融緩和措置が、資金調達環境の安定などを通じて、経済を支える効果を発揮しており、とりわけ新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペが、地元企業の資金繰り支援の一助となっているといったお話を頂きました。

§3Hitoshi Suzuki

他方で、当面の資金繰り改善に効果を挙げてきた実質無利子・無担保融資については、感染症の影響が長期化しているもとで、将来的な返済負担を懸念する声も多く聞かれたところです。私どもとしましては、こうしたお話も踏まえつつ、山口県の金融経済情勢について、今後も下関支店を通じてきめ細かいモニタリングを続け、中央銀行の立場から経済の持続的な成長の実現や金融システムの安定の確保を図りながら、山口県経済を支える関係者のご努力がより大きな成果へとつながっていくようサポートしてまいりたいと考えています。次に、山口県の現状と見通しですが、山口県の景気は、「新型コロナウイルス感染症の影響によりなお弱い状況ながら、全体として持ち直している」とみています。県内総生産の4 割弱を占める製造業では、昨年夏以降の自動車生産の回復が、加工業種から素材業種まで幅広く波及しています。また、県内でウエイトが高い化学についても、アジア各国向けを中心に、プラスチックや医薬品、好調なIT関連需要に支えられ、増加基調が続いています。一方、個人消費については、飲食・宿泊を中心とする対面型サービス関連を中心に大きく下押しされた状態が継続しています。もっとも、財消費では、外出控えなどによる下押し圧力がかかる中でも、内食需要や巣ごもり需要を背景に底堅く推移しており、個人消費全体としては引き続き持ち直しの動きが続いています。

§4Hitoshi Suzuki

先行きについても、持ち直しを続けるとみていますが、感染症が長期化する中、経済の下振れリスクは引き続き高い状態にあるため、注意が必要である、このように考えています。

§5Question

午前の懇談会では一定の範囲内の金利変動は市場機能にプラスに作用するというような発言がありました。最近の債券市場ですけれど、再びまた長期金利の動きが小幅になってきています。こうした相場状況についての受止めと何らかの対応が必要なのかということについてのお考えをお願いします。

§6Hitoshi Suzuki

3月の金融政策決定会合では、市場機能の維持と金利コントロールの適切なバランスをとる観点から、長期金利の変動幅について上下に±0.25%程度であること、これを明確にしました。こうした観点から、国債買入れオペの実務的な対応として、事前に示す買入れ予定額について、レンジから特定の金額に変更するとともに、長期金利が変動幅の上限または下限を超える惧れがある場合以外は、買入れ額を調整しないことに変更しました。こうしたもとで、長期金利については、経済・物価情勢に応じて、明確化された範囲内で変動することを想定しています。もとより、日本銀行が、意図的に長期金利を変動させることはありません。ご質問の趣旨は、そのように変更したけれども実際には動いてないということで、個人的には残念な思いもするところではあります。ただ、長期金利の変動に影響を与える様々な要因、例えば一つには海外の金利の状況があり、海外の金利が上昇しますと、そちらの債券を買うために日本の国債を売るということで日本の金利が上がるという形で調整が図られるという、裁定取引の行動があるわけですけれども、ご案内の通り、特に影響がある米国の金利は今年の年初から 3月頃にかけて非常に上昇しましたが、ちょうど点検の発表をした頃から実は落ち着いて、やや低下傾向にあると、こういったようなことがありました。

§7Hitoshi Suzuki

そうした意味から上昇するあるいは下落するといった外部的な要因はあまりなかったということ、それから国内においては、もちろん12月から 3月に向けて点検ということで、その中において長期金利の変動幅がおそらく一つのポイントであろう、と事前には総裁、副総裁の会見などの中で、色々と憶測が飛んだような部分もあると思いますが、そうしたことによって、多少その動きがあったものが確認できて、落ち着いたといったようなことではないかと考えています。それからまだ 2 か月程度しか経っていない中において、もう少し動いてほしいような気持ちもありますけども、中長期的に動く要因があるときには動くのではないかなと考えています。

§8Question

現状のコロナの経済に与える影響の見通しについてなんですけれども、懇談の中でもお話がありましたが、やはり現在の緊急事態宣言の延長などの話なども受けて、鈴木審議委員自身として下振れリスクについてどのように考えていらっしゃるか、あとやはり今コロナオペの対応がかなり地域金融機関にも、影響、効果を与えているようですけれども、その延長について現時点では6月期限となっていますが、委員自身として、延長の考えについてどのように考えていらっしゃるか、その辺りの受止めをお願いします。

§9Hitoshi Suzuki

まず、緊急事態宣言、これが更に延長されるのではないかという観測もあるわけですが、新型コロナウイルス感染症が変異株の増加を伴いつつ拡大する中で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの公衆衛生上の措置が講じられているわけで、こうした中、当面は、個人消費は対面型サービスを中心に低めの水準で足踏みした状態が続くとみています。一方で、財の消費は堅調なほか、世界経済が総じてみれば回復しているもとで、輸出は増加、前回出た数字は伸び、金額とも非常に高いものでしたが、企業の収益が改善し、設備投資が持ち直すなど、所得から支出への前向きの循環メカニズムも徐々に働き始めていると考えています。こうしたもとで、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、その後は、回復していくだろうとみています。ただし、以上の見通しについては、感染症の影響を含めて、不確実性が大きいと認識しています。特に、当面は、変異株を含めた感染症の動向や、その経済動向への影響に注意が必要であり、下振れリスクが大きいと考えています。また、経済のリスク要因が顕在化すれば、物価にも相応の影響が及ぶ可能性があり、引き続き、経済・物価の動向をしっかりと注視していきたいと考えています。

§10Hitoshi Suzuki

コロナオペの延長ですけれども、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されており、当面の経済活動は、低めで推移するとみられます。こうした状況で日本銀行では、感染症の影響への対応として、昨年3月以降、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」を含む強力な金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてきており、引き続き、これらの措置をしっかりと実施していくことが重要であると考えています。「特別プログラム」は、現時点では、本年9月末が期限となっていますが、必要があれば、更なる延長も検討します。そのうえで、具体的な判断のタイミングについては、今後の情勢を踏まえて適切に考えていきたいと思います。午前中の懇談会の中でも、経済界、金融界、様々な方に共通してありましたのは、やはり足許の資金繰りは落ち着いていて、現時点における資金需要はそれほど強くないということですけれども、今後返済が始まる時期が近付いてきます。

§11Hitoshi Suzuki

そうした時期に、実際にキャッシュフローが十分に戻ってきていない、そういう中で返済が始まるというのは当然また新しい資金繰りの厳しさというものが出てきますので、その際に、色々とサポートするような施策などを検討頂きたい、このようなお話もありましたので、そうしたことも踏まえて当面は9月に関しての延長云々ということを考えるのだろうと思います。

§12Question

鈴木委員は、午前の挨拶の中で、ETFの買入れについて、日銀のETFの保有量が増えていくと、財務の健全性の面でリスクが高まるといった趣旨のご発言がありました。ETF、REITの買入れについては重要な緩和ツールの一つということ、そういったこともおっしゃっていましたけれども、現時点で保有ETFについて出口戦略を明確化するべきだという声もありまして、ETFの出口戦略について鈴木委員のお考えをお聞かせください。

§13Hitoshi Suzuki

2%の「物価安定の目標」の実現には、なお時間がかかると見込まれることを踏まえますと、 ETFの買入れを含めた金融緩和の出口のタイミングやその際の具体的な対応を検討する局面には至っていない、これは他の委員も同じような答えをしてきているということだと思います。もちろん、先行き 2%の「物価安定の目標」の実現に近づく際には、出口に向けた戦略や方針について、金融政策決定会合で議論をして、適切に情報発信をしていくということになります。ETFの購入は諸外国の中央銀行でも行っているところはありませんが、今回の点検の作業において、非常に混乱している時に大きな規模でETFの購入を行うということが株式市場の安定につながったこと、そうしたことが経済・物価情勢に対してプラスの効果を与えているということを確認していますので、こうした金融政策が、まだ引き続き必要であるということです。ただし、ETF、そのもととなっている株式には、ご案内の通り満期がなく、こうしたものを購入していけば、残高がどんどん増えていく一方です。

§14Hitoshi Suzuki

それから午前中の懇談会の資料の中にもありますが、購入の原資は日銀当座預金と発券銀行券であり、日銀当座預金は金融機関から預かっているもので、それら全てのもとは国民の預金ですので、本来は今まで伝統的に行ってきているように、元本リスクの面で非常に安全である国債への投資ということで行ってきた経緯がありますので、私としますと、こうしたものについてどんどん残高が増えるということは望ましくないのではないかと考えています。

§15Question

コロナオペなどの資金繰りについて追加の質問をさせてください。先ほど、返済期限が近付いてきた時にまだ十分売り上げなどが戻っていなくて、今は落ち着いている資金繰りが再び逼迫するかもしれないという声があったというご説明だったと思います。その場合、つまり中期的には資金繰りの支援が 9月で終わってはまだ不十分で、また延長する必要性が高まっているというご認識なのかというところと、あるいは、何か新しい手立てが今後必要になってくるということなのか、その辺りについて鈴木委員のお考えを改めて教えてください。

§16Hitoshi Suzuki

昨年の春以降、急速に売り上げが減少し、常に出ていく支出があって、資金繰りに窮するという、特にサービス業を中心とした厳しい状況がある中において、政府・日本銀行では、企業の存続と雇用の維持ということを最大の目標として、資金の潤沢な供給、それから貸出の支援ということで、様々な施策をとってきました。ご質問のように、様々なリスク要因がありますが、今もワクチンが徐々に進んでいて、(65 歳以上の高齢者の 1 回目の接種率では)午前中に懇談会を行った山口県は全国第 2 位、第1 位は確か和歌山県だったと思いますが、東京では私のところにはまだ接種券が届いていないですけれども、それでも(全国でみて 1日当たりの接種回数が)100 万件にはまだ届かないにしても、50 万件を超えてくるとか、徐々に増えているということですので、いずれ収束に向かってくると思います。ただし、その時点で、先ほどのご質問にありますように、収束に向かってきても、従来の財務体質から比べれば借入が非常に多くなっている中において、キャッシュフローが従来よりも大きく増えていればいいですけれども、なかなかそうもならない状況になってきた時に、今までとは違う形での資金繰りの厳しさが出てきます。

§17Hitoshi Suzuki

その時点において、また違った形の様々な貸出促進支援といったようなことを、将来の政策がどうなるかは分かりませんし、現時点では何も決めておりませんので、申し上げられませんけれども、その時点で必要な政策を考えていくことになるかと思います。

§18Question

講演の後半のところで金融システムの安定を考慮しつつ、金融政策運営を図ることを明確にされたということですけれども、現状ではそのような心配はないんでしょうけれども、金融システムの安定を重要視して金融政策運営を修正しなければならない状況というのは想定できるのか、もし想定できるのであればどういうようなものを鈴木さんはみてらっしゃるのかお伺いしたいです。

§19Hitoshi Suzuki

日本銀行は、これまでも、金融政策運営に当たって、経済・物価の中心的な見通しに加えて、より長期的な視点からの金融面の不均衡のリスクを含め、政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検してきている経緯にあります。こうした点は、年4 回の展望レポートや、年2 回の金融システムレポートにおいて、これまでも公表してきているところです。この先、金融緩和が長期間続くと見込まれることを踏まえて、展望レポートを決定する金融政策決定会合において、金融機構局から報告を受けることで、金融政策運営に当たり、金融システムの動向に一層目配りすることにしたということです。ご案内のように、金融機構局から政策委員が説明を受けるというのは、今までも頻繁にあることでして、金融システムの安定については議論していたわけです。ただし、金融政策決定会合の中で、金融機構局から報告を受けるということはなかったということ、それがこれから年に4 回報告を受けることになります。中央銀行の金融政策で、例えば物価の安定と金融システムの安定という場合に、よくBISビューとかFEDビューといいますように、どういったウエイト付けをするか。

§20Hitoshi Suzuki

日本銀行法においても、物価の安定と金融システムの安定という目的が書いてありますが、個人的に考えますのは、物価の安定という目的の達成のためには金融システムの安定も必要であって、その両立を図らなければならない、これはこれまでの懇談会での挨拶要旨の中でも書いてきていますけれども、今回の変更が、そうした流れ、特に従来から申し上げてきたような累積する金融システムへの副作用、これが更に長期間続く可能性があるということで、従来以上に金融システムの安定というものを重視して考える、そのために行っていこうということです。それが具体的にどのような形で現れるのかというご質問ですけれども、現時点においては、常に金融システムに問題が出てくるのではないかというリスクを孕みながら、足許ではまだ大丈夫であると、こうした認識をしているわけです。先ほどの話にもありましたが、今後コロナ関連での資金繰りの問題が落ち着いてきても、やはり少し過多となった借入の返済などが非常に重荷になるようなこと、それから、今回の金融機関の決算は 1年前にはもっと厳しいのではないかといわれていたわけですが、現実問題とすると、企業の存続維持がうまくいっていて、与信費用等が想定ほどには出なかったことで、金融機関の決算も、1年前の想定よりは悪くないということではないかと思います。

§21Hitoshi Suzuki

しかしながら、今回の点検においても、より長期間こうした低金利が続くことが想定されていますので、どこかの時点で金融システムの安定に黄色信号が灯る可能性があって、その場合にはそのことを念頭に置いて金融政策を考えなければいけない、そうした時期が来る可能性があると考えています。

§22Question

確認になるんですけれども、長期金利の変動についてお伺いしたいのですが、イールドカーブの形状については、金融システムの安定、そういった維持の重要性とかを踏まえた場合、ここから更にスティープ化する、そういったものが望ましいというふうにお考えでしょうか。

§23Hitoshi Suzuki

今の金融政策の中において、ご案内の通りに短期の政策金利は-0.1%にしている、この-0.1%が適用されている金額は決して大きくないわけですが、結果として何になっているかといいますと、無担保コールレートが、システム的にゼロから-0.1%の間で変動する、これが短期の金利となっています。これに対して 10年の金利はゼロ%程度ということで、日本銀行が完全にコントロールできるものではないですけれども、過去においてはこの長短金利のコントロールがうまくできているということです。一方で、従来から総裁をはじめそれぞれがいってきているのが、長期金利から超長期金利、長期金利がゼロ%程度ですから、それが前提になりますけれども、それよりも長い期間の金利について過度にフラット化することになりますと、特に保険・年金等の運用が困り、国民の年金資産など様々なものに影響して、それが消費者の心理にネガティブな影響を与えるということで、そうしたことにならないことが望ましいと申し上げてきているわけで、その辺の延長線上に、10年金利はゼロ%程度といいつつも変動幅がある程度ある、ということをしているわけです。

§24Hitoshi Suzuki

ただし、具体的に、例えば 20年は何%程度が適当とか 30年は何%が適当であるとか、そうしたことを議論して決めて、それを公表しようとしていることはありませんので、あくまで、短期金利の政策金利と 10年をゼロ%程度という現行の枠組みの中で、もう少し変動幅があって、イールドカーブが過度にフラットにならないようにと、それ以上のものではありません。

§25Question

先ほど来おっしゃっている日銀の金融政策であるとか、新型コロナ対策としてされているオペ等々を含めまして、今日把握された山口県内の状況、産業構造、金融経済情勢を踏まえまして、どのように山口県内経済に作用していくものなのかの見通し、期待等を伺えたらと思います。

§26Hitoshi Suzuki

山口県内の金融機関に対する現状の認識というようなことでよいかと思いますので、まず、山口県内の金融機関の現状認識でありますが、昨年来、感染症の影響が続く中、企業や家計の資金繰り支援、それから中長期的な課題解決に向けた取引先の支援をしっかり行うことで、地域経済を支える中心的な役割を果たしておられると認識しています。県内金融機関の収益環境を少し長い目でみてみますと、低金利環境の長期化に加えて、人口減少や成長期待の低下などの構造要因を背景に、国内預貸業務の収益性の低下が続いているところです。今後、コロナ後を見据えて、地域経済が持続的に発展していくためには、それを支える地域金融機関の経営基盤の強化が一層重要となります。金融機関が収益力や経営効率の改善を図るに当たって、単独で行うのか、あるいは経営統合や合併といった施策を活用していくのかにつきましては、あくまで各金融機関がご自身の経営判断としてなされるということだと思います。もとより一層の経営基盤の強化を行い、引き続き地域経済を支える中心的な役割を果たしていただくことは、変わらずに期待しているところです。以上