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Bank of JapanPress conferenceJun 2, 2021Seiji Adachi, Board Member

安達審議委員記者会見(2021年6月2日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日の金融経済懇談会では、どのような議論をされたのか教えてください。また、静岡の金融経済情勢についてどのような現状認識をしているのか、お願いします。

§2Seiji Adachi

まず、本日の金融経済懇談会ですが、静岡県の経済界・金融界を代表する方々から、地域経済の現状に関する貴重なお話を数多く頂きました。この場を借りて、改めて有意義な意見交換ができたことを感謝申し上げます。そのうえで、まず足許の経済状況は、――これは二つ目のご質問になりますので、詳細はそこでお話しさせて頂きますが――基本的には、昨年のちょうど今の時期に大幅に悪化した後、昨年下期以降は持ち直し基調ということで、概ね回復傾向にあるというところかと思います。特に静岡県は、製造業が非常に盛んといいますか、非常に大きな企業もありますけれども、製造業の回復が非常に大きい状況だと思います。一方で、他の地域も同様ですが、対面型サービス業を中心とした非製造業は、依然として苦戦が続いている状況だと理解しています。ただし、企業の業種や規模等によってかなりばらつきが大きいということですので、その辺のばらつきに関しては、ご出席して頂いた方々から有用なミクロの情報を得ることができたところです。もう一つがアフターコロナといいますか、ポストコロナに向けての動きで、静岡県の方々は、業界および政策といいますか、自治体の方が一体となって、アフターコロナのもとでどのように新しい成長基盤を作っていくかということにかなりご尽力されていることを理解しました。改めて感謝申し上げます。

§3Seiji Adachi

日本銀行としましても、それをサポートすべく、色々政策を考えていきたいということです。特に、静岡県の場合は、大都市圏からの移住者が増えているほか、いわゆるワークライフバランス的なところもありますし、今回のコロナ禍でのいわゆる巣ごもり消費に強い業種、例えば楽器やプラモデルといった産業もあり、そういった強みも活かしながら何とかコロナを克服しようと頑張っておられるという姿だと理解しています。二つ目の、現状については、足許全体としては回復感がみられ、持ち直し基調なのですが、こちらも業種によってばらつきが出ているというお話を伺いました。非常に大きな話としましては、これも日本全体の傾向ですが、自動車産業の回復および足許グローバルで進行しつつある設備投資の恩恵を非常に受ける工作機械や電機関係のメーカーなどは、足許業況の改善が著しい状況だとお聞きしました。ただし、そうは言っても、足許、例えば半導体不足のような話が出てきていますし、色々なところで原材料の不足感、例えば木材、これは紙などの業者では原材料の価格が高騰したり、そもそも物流面の制約で物が届かないことがあるといった形で、これはコロナからの回復期特有の現象だと思いますが、多少供給面でのボトルネックの影響が懸念されている状況です。

§4Seiji Adachi

一方、対面型サービス業を中心とした非製造業においても、特に大都市圏の主要地域で緊急事態宣言が発令および延長されたことで、苦戦されているという話をお聞きしました。ただし、長引くコロナ禍ということで、業態転換や高付加価値というところにビジネスチャンスを見いだし、多少価格は上げるけれども、その代わり非常に質の良いサービスを提供するといった形の対応をされている企業も多くみられるということでした。こちらも、足許非常に厳しい環境ですし、今後も不安材料はありますが、非常に頑張っておられるという印象を受けました。

§5Question

静岡県の経済界の方からどんな指摘や要望がありましたでしょうか。また、その受け止めがあればお願いします。

§6Seiji Adachi

今回の懇談会でのご要望事項としては、いま政府と一体となって取り組んでいる、特に中小企業を中心とする支援へのニーズはまだ強いということで、そちらの対応をお願いしますという話はありました。他には、特に要望という話ではなく、むしろ今までの政策対応をベースに、自助努力によって企業の改革をするといった前向きな企業の話を多くお聞きしました。

§7Question

午前中の講演の中で、静岡県の経済に関して心強く感じている動きとして、次世代産業の育成、DX、デジタル人材、広域経済圏などいくつか挙げられましたけども、個人的な見解で構わないのですけど、どの点が一番注目されて、期待していらっしゃるかというのを聞かせて頂けますでしょうか。

§8Seiji Adachi

本日皆様にお伺いしたお話で、私として非常に印象に残ったところは、静岡県を中心として一大経済圏を作ろうという動きがあり、山梨県、長野県、新潟県等を含んだ広域経済圏を作って、その広域経済圏でそれぞれの県の強みを活かして協調するというところです。ここで、例えばDX化や、特に製造業の強い静岡県を中心とした動きではあると思うのですが、サプライチェーンの再構築という話がコロナ禍では製造業の課題として出てきたと思うのですけれども、そのサプライチェーンの再構築というところで、静岡県を中心とした広域経済圏を作って強みを活かしていけないかという試みがなされているというのは、日本の将来の経済モデルを考えるうえでも非常に注目できる話ではないかと思いました。

§9Question

午前中の挨拶文の中で、2%の物価目標について、ポストコロナは 2%の物価安定の目標を実現する大きなチャンスになるかもしれないというふうにご指摘されました。個人的に、コロナが、消費者のマインドとして将来に対する漠然とした不安を増やしたり、また外出や外食をしなければ貯蓄率が上がるということに気づいて節約志向になったりするのではないかというふうに思ったのですけれども、どういう意図でこのように述べられたのか、また、2%物価目標の達成の実現の可能性についてはどれ程あるというふうにお考えなのか教えてください。

§10Seiji Adachi

まず、コロナ禍をいわば奇貨としてということだと思いますが、価格自体、特にサービス産業の方々の提供する価格を上げていく行動が起こるのではないかというのは、実際に起きているかどうかというよりも、取りあえずコロナが収束して、また人々が外出等を自由にできる世界が来ることを前提とした話というのが一つです。ですので、あくまでもコロナが収束する前提での話なのですが、例えば、昨年支給された給付金が殆ど使われていないという話があります。確かに将来不安といったものもあるかもしれないですが、基本的には緊急事態宣言等で外出を――これは抑制を強制的にされているのか、自主規制なのかという部分はありますが――規制されていて、使いたくても使えない状況があると理解しています。そのような状況がコロナの収束で終わるとすると、特に旅行や外食というのは、おそらく皆さん行きたくて仕方がないけれども行けない状況ですので、おそらく今貯めている貯蓄からお金を出すことによってある程度は戻ってくると思います。

§11Seiji Adachi

その過程で、コロナが収束したといっても完全にウイルスが無くなるわけではありませんので、提供する業種は、例えば、コロナ対策を十分行う必要があるとか、人員に対する制約や、材料や提供するものに対する制約もあると思いますので、そこで価格はある程度引き上げたとしても、それによって需要が一気に落ち込む度合いはコロナ前に比べると少ない可能性もあると考えて、そういった指摘をさせて頂きました。ただ、そこはあくまでもコロナが収束したときに企業がどう考えるかということに依存していますから、やはり企業が価格競争をしないと勝ち残っていけないとなると、価格を引き下げて再びデフレというリスクも当然あるという不確実な状況はもちろんあると思います。

§12Question

挨拶の中で、ある程度の継続的な値上げが社会的に許容されるような経済環境を整えていけるのが、日銀としてできることではないかというご指摘だったのですが、具体的にどういう政策ツールを強化あるいは維持することが最も有効とお考えなのかというのが一点目です。次に、海外の話なのですが、アメリカではインフレ率が最近加速していまして、市場ではテーパリングですとか、早ければ来年の利上げがあるのではとの観測が浮上しております。そうした将来のFedの政策変更の可能性や、それについての市場の思惑というのが、日銀の政策およびアジアの新興国、資金フロー、金融政策にどう影響を及ぼし得るのか、数年前にFedのテーパータントラムで市場が荒れたときがありましたが、その当時との情勢の違いも踏まえて教えて頂ければと思います。

§13Seiji Adachi

まず、本日朝の懇談会の私の挨拶で述べたことですが、現状では、基本的には長期戦といいますか、ある程度辛抱強く現状の緩和を続けていくことで、物価が基調的に上がっていくのをみていくことしかないかと思っています。ですので、例えば、物価の上がるスピードをサポートして加速させるといったツールは、少なくとも私個人では思いつかない状況でして、もしそういったものがあるとすれば、既に行っていると思います。ですので、3月の点検のインプリケーションの一つとしては、2013年以降、非常に積極的な金融緩和を行っており、デフレからの脱却というのは実現できたのかもしれないですが、目標となる 2%には程遠い状況であるというところで、それ以前のデフレスパイラルの状況から脱したという意味では効果があったということですが、そこから先は、2013年に行った政策を更に強化したらそのまま上がるのかと言われると、それはちょっと厳しいのではないかというのが一つの結果だと思いますので、そこは辛抱強く行うということだと思います。二点目はなかなか難しい問題でして、日本銀行として対応するのは、円高が来るか来ないかということに集約されると思いますが、それは事前には分からないことです。実際にテーパリングを行うかどうかも分からないですし、コメントは控えさせて頂きます。

§14Seiji Adachi

もし万が一、テーパリングを始めたときに円高になれば、何かをしないといけないという話が出てくるかもしれません。ただ、それは事前には分からないということです。ただ、最近の動きからすると、米国の長期金利の上昇局面で、新興国へのフローが米国に逆流したかというとそういうことはないということや、テーパリングを行ったことによって、例えば、米国の長期金利が下がるのか上がるのかということでも、かなり状況は変わってくると思います。米国の金利が下がれば、いわゆるリスクオフという話になりますので、話は変わってきますが、今回テーパリングをもし行うとすれば、そういう話ではなく、インフレ懸念といった話かもしれないので、そうするとまた話が変わってくるわけです。円高にならない可能性もありますので、今回については、この段階で何か事前に考えることができない状況ですし、マーケットですので、そこはその場で対応していくということしかないと考えています。状況はきちんと注視しながら、そのときに適切な政策を考えることに尽きると思います。

§15Question

本日の午前中の挨拶文の中で、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムに関しての言及があったと思います。足許プログラムを取り巻く環境が変化しつつあるという言及もあったと思うのですが、安達審議委員として、今後何かマイナーチェンジしつつ継続するべきだというお考えなのか、それとも現状のまま継続すべきなのか、その辺りの考え方をお聞かせ頂ければと思います。次に、金融市場で 5月に日銀がETFを買わなかったというのが一つ話題になっていると思います。改めて日銀がこれまでETFを買ってきたことに関する評価、あとは今後についての安達委員のお考えをお聞かせ頂ければと思います。

§16Seiji Adachi

最初の点については、現状は、まだどうするか全く決めていないという言い方をすると変なのですが、むしろ情報収集をしている時期だと思います。ですので、本日の懇談会も情報収集の場として非常に有用だったと考えています。どうするのかに関しては、これから色々考える時期だと思います。もちろん、これは総裁もおっしゃっていますが、必要とあればやりますという話に尽きると思います。また、ETFにつきましては、色々な点検作業を3月に実施した中で、きわめて腑に落ちたといいますか納得できたのが、ETF買入の効果に関するリサーチです。要するに、非常にマーケットが荒れているときに思い切って出るというのが一番効果的で、ETFの購入に関しては色々なご批判を受けたこともあり、そもそもの政策目的が、リスク・プレミアムに働きかけるということで、要するにマーケットが荒れてリスク・プレミアムが少し上がり過ぎている状況を是正するといいますか、マーケットに「落ち着いてくれ」と促すのがおそらく本来の政策です。そういう意味では、5月にETFを買い入れなかったというのは、点検結果を受けての妥当な政策対応だったと思っています。

§17Question

今日の挨拶の中で、長期戦を想定せざるを得ないというふうにお話をされていますけれども、長期戦というのはどれくらいのスパンのイメージなのでしょうか。

§18Seiji Adachi

現在展望レポートで公表している年度までは、残念ながら届かないということが公表されているわけです。基本的には、どれくらい緩和をすれば、どれくらいインフレ率が上がるという関係が、おそらく色々な局面で変わってくるので、なかなか見通せないということだと思います。個人的には、おそらくインフレ率が、仮に 1%を超えてくるような局面になれば、ある程度加速していくのではないかと思っています。ただ、展望レポートで公表されている年度の中では、そこに行くか行かないかぐらいということですので、そこから更に戦いが続くことになるのだろうなということぐらいしか、今は言えないということです。

§19Question

先ほどのご発言の中で、物価上昇を加速させるツールというものがあれば既にやっているでしょう、というお話をされたのですけれども、そういう意味では、今後の政策の展開としては、物価 2%目標が展望できるまでは、ポストコロナで経済情勢が改善したとしても、現状政策を辛抱強く維持していくという考えなのか、逆にですね、ツールが見当たらない中で、ショックが起きた場合に躊躇なく追加緩和という話もされているのですが、そういった対応は実際に可能なのか、手段はありえるのか、そこについて教えてください。

§20Seiji Adachi

まず一つは、挨拶の中でも、コロナ禍が終わると、アフターコロナの中でもしかしたら価格が上がるかもしれませんといった話をしているのですが、要するにアフターコロナの中で正常化プロセスに向かうときの、物価やインフレ率の出発点がどこになるのかがまだはっきりしないというのがあると思います。ですので、その出発点が分からないと、どういう政策を取るかということは全く分からないわけです。例えば、予想以上に大幅に上振れた場合は、もちろん対応は変わりますし、逆にデフレになってしまった場合にも、当然対応は変わってきます。ですので、これは昨年から言っていることですが、アフターコロナで正常化に向かう局面のときに、インフレ率がそのときの出発点で大体どれくらいかをまずはみないといけないと思います。もう一つは、今の政策ツールの中で、割と重要というと言い方は変ですが、例えば、需給ギャップはどれぐらいか、需給ギャップに伴って自然利子率がどれぐらいか、それに対して政策金利の水準がどれぐらいかという、ギャップで金融緩和度を測るのが非常に重要だと思います。しかし、それを計算することが普通でも難しいのに、今コロナの状況の中でもっと難しいということで、その中で何か政策を打つのは、かなり不確実性やリスクが高いと思います。そういう意味では、当面、現時点では辛抱強くという話しかできないということです。

§21Question

静岡県内の地域金融機関について、今日の懇談会の中で参加者の方から何か質問等がありましたでしょうか。もし質問があれば、審議委員の方でどういったお話をされたのか教えてください。

§22Seiji Adachi

特に個別といいますか業態も含めて、金融機関にフォーカスした話はありませんでした。ただ、今コロナの状況であるということと、今後を見据えた場合に、企業金融に占める金融機関のウエイトと言いますか、役割が非常に大きいという中で、その金融機関の経営基盤自体、財務基盤自体が良くないと、企業金融に対する支援も上手くできないので、その辺は留意して経営を行いたいと思いますというお言葉を頂きました。以上