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Bank of JapanPress conferenceJun 30, 2021Junko Nakagawa, Board Member

中川審議委員就任記者会見(2021年6月30日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

本日、審議委員にご就任なさって、現在の心境と今後の抱負について語って頂けますか。

§2Junko Nakagawa

本日辞令交付を受け、審議委員を拝命した中川と申します。昨年来、新型コロナウイルス感染症の影響が続いている状況は、皆さんご理解の通りかと思います。こうした環境の中で、経済や物価の下振れリスクも、引き続き注視が必要な状況と認識しています。こうした局面で、このような重責、つまり審議委員に就任することは、身が引き締まると同時に、責任の重さを痛感しています。私のバックグラウンドを簡潔にお伝えすると、30年近く金融市場に身を置いてきました。皆さんからご覧になれば一つの会社・グループの中でのみの経験ですが、色々な側面から金融市場に携わって、直に触れてきました。直近は、機関投資家という立場で仕事をしてきましたが、その昔遡ったところでは、お客様の財務をみさせて頂く仕事、その後は自分自身が所属している会社・グループ全体の財務に携わりました。その経験から言いますと、日本の金融や経済情勢の変化が、企業の行動・企業のあり方に大きく影響を及ぼすことを痛感してきました。また、日本以外の情勢、場合によっては政策も、大きく影響を及ぼすということも痛感した経験があります。こうした市場や環境の変化の複雑さ、その影響の拡がりのスピードや大きさも、やはり多少なりともみて経験してきました。

§3Junko Nakagawa

こうした経験を活かして、審議委員としての職責をしっかり果たせるように、執行部の説明、それから他の政策委員の意見を聞く機会も多々あると聞いていますので、しっかり自分の意見も持ちつつ議論を重ねて、今後の政策運営に貢献していきたいと思っています。

§4Question

二点お願い致します。まず一つ目が、日銀の異次元緩和が始まってから 8年余りと、金融緩和が長期化しておりますが、2%の物価安定目標の達成がなお実現できていない状況です。審議委員に就任するにあたり、これまでの黒田総裁をはじめ日銀の金融政策運営をどのように評価していらっしゃるのか、2%の物価目標に向けて、今必要な政策は何だとお考えになっているのか、お伺いさせてください。そして、二つ目が日銀のETF購入策についてです。日銀がETFの購入策を通じて株式市場に介入しておりますが、今ほどお話もありましたように、アセットマネジメント業界ご出身かと思いますが、この政策をどのように評価されていらっしゃるのか、在任中に出口戦略にめどをつけるべきかどうか、今後の政策運営についてご所見を伺わせてください。またそのうえで、運用にあたり信託報酬の一部が野村アセットマネジメントさんの方にも支払われてきたかと思いますが、審議委員の就任にあたって、利益相反に当たるのではないかという見方もあります。こちらについて、ご自身としてどのように整理されていらっしゃるのか、是非お考えを聞かせてください。

§5Junko Nakagawa

まず一点目ですが、2016年の「総括的な検証」、それから3月に実施されました「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」、こういったものを拝見して、2%の「物価安定の目標」を実現するために、引き続き現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、これを継続していくことが適当であり、そのために持続的な形で金融緩和を継続していく、それと物価安定、それから経済・物価・金融情勢の変化に対しては、躊躇なく機動的かつ効果的に対応していくという方針が重要であるとされています。この理解のもと、本日拝命したばかりですので、次回の金融政策決定会合が7月中旬と伺っていますが、これまでのこうした情報、それからこれから頂く事務方からの情報を踏まえて、私なりにきちんと情報を咀嚼して、私なりに理解して、そしてその場で議論して進めていきたい、意見を持っていきたいと考えています。それから、ETFの購入についてですけれども、日本銀行のETFの購入は、金融緩和の一環と認識しています。株式市場のリスク・プレミアムに働きかけることを通して、市場の不安定な動き、例えば企業ですとか、個人の方のいわゆるコンフィデンスの悪化につながるのを防止する、ないし緩和することで、経済や物価にプラスの影響を及ぼすことを目的に実施されていると認識しています。

§6Junko Nakagawa

先ほど申し上げた3月に実施された「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」の中では、市場が大きく変動したときに、より大きな規模で買い入れることが効果的であるとも書かれていたと思います。繰り返しになりますが、本日就任したばかりですので、ここから執行部の説明も多々あると聞いていますし、7月の決定会合に向けて、私なりにしっかり準備をして、その場に臨みたいと考えています。それから、利益相反という点で、どう整理をされているかとのご質問を頂きました。そうした見方があることは承知しています。ただ、日本銀行の政策委員会の各メンバーの方は、ご自身の経験それから知識、特に経済・金融の分野、それ以外も含めたものを、個人としてご意見を持って議論を行い、そのうえで政策委員会としては9 人のメンバーの合議によって決定していくと認識しています。審議委員については、日本銀行法に基づく服務に関する準則において、「日本銀行の公共的使命を自覚し、職務の遂行に当たっては、公正を旨とする」とあります。また当然のことながら、守秘義務も課せられています。これらを踏まえて、公正・中立、これを守りながら審議委員として職責を全うしていきたいと考えています。

§7Question

先の金融政策決定会合で、日銀として、気候変動に取り組むというふうに打ち出しているのですけれども、ここへのご見解を伺えればと思います。

§8Junko Nakagawa

中央銀行という立場ですので、やはり、あくまで物価の安定、それから金融システムの安定という使命に即した形で関与を行っていくのが前提であると理解しています。金融政策面においては、今月の金融政策決定会合で、既にリリースもされていると思いますが、金融機関が、自らの判断で取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスする制度を導入するということで、7月の決定会合においてその骨子案を公表する予定と聞いています。こちらも、本日辞令交付を受けたばかりの立場ですので、7月の決定会合までそう日もありませんが、今後、私なりに理解を深めて、議論にきちんと参画していきたいと思います。

§9Question

金融政策に関しては、いわゆるハト派ですとかタカ派みたいな言葉で言われることが多いと思うのですけれども、ご自身のお考え、考え方というのはどちらになるかとか、その辺りを伺えればと思います。

§10Junko Nakagawa

都度、そのときに得た情報をもとにきちんと議論を重ねて、色々な方のご意見も頂きながら判断していくということで、ご理解頂ければと思います。

§11Question

二点お伺いしたいのですが、ETF買入れに関して、黒田総裁は国会等で、日銀がETFを買い入れているけれども、そのガバナンスの点では、運用会社がスチュワードシップコードに基づいてきちんと議決権行使をしているから大丈夫だというような説明をされていますが、野村アセットマネジメントとして、議決権行使の現場というのはどういう感じだったのかというのが一つ伺いたいことです。二点目は、同じくETF買入れに関してですが、日本銀行として、スチュワードシップコードに基づいて、アセットオーナーの立場から、運用会社がきちんとこの議決権行使ができているかきちんとチェックをしていくと、新しく日銀としてそういう試みを行うべきかどうか、これについてのご見解をお聞かせください。

§12Junko Nakagawa

一点目に関しては、運用会社各社そうだと思いますが、守秘義務等もありますので、コメントはここでは差し控えさせて頂きたいと思います。二点目に関しましても、立ち位置といいますか役割等もありますので、今の進め方ないしはオペレーションの仕方という形では、私は現時点では特に違和感を持っていませんが、もし必要であれば、会合等で議論がなされるものと理解しています。

§13Question

先ほど、日銀が大規模な金融緩和を長く続けているにもかかわらず、2%が達成できていないという質問がありましたが、そもそも物価上昇率2%を目標として設定している、この妥当性について、委員はどのようにお考えか教えてください。もう一点は、長く大規模緩和、超低金利政策を続けていく中で、金融機関、または金融市場に対する副作用が指摘されていますが、委員はこの緩和長期化の副作用についてどのようにお考えなのか、ご見識をお願いします。

§14Junko Nakagawa

先ほど来申し上げていますが、今年の 3月に点検という形で、非常に情報を充実させた形での公表が行われています。その中に、物価の変動メカニズムの点検も含まれていたと認識しています。それらを踏まえながら、今後、執行部の新しい情報の提供も受けながら、議論を深めていきたいと考えています。それから、副作用という点では、点検の中で触れられている通り、今の金融緩和の政策は、「物価安定の目標」に向けて、より効果的で持続的な金融緩和を実施・継続していくためのもので、こうしたことを継続していくことが適当であると今の時点では理解しています。もちろん金融緩和を持続的な形で継続していくということが大事です。ただ変化があったら躊躇なく機動的に効果的に対応していくということが重要であるということも示されています。今の時点では、それに沿った形になっていると理解しています。

§15Question

先ほど、審議委員からご説明がありましたけれども、証券会社の一般職から、野村アセットマネジメントの初めての女性のトップになるという異色のキャリアを積まれていると思います。こういった観点から、ご自身の経験とか、視点の強みがどういうところにあるのか、また、新しい審議委員として、期待される役割というのはどういうふうに、どこら辺にあるというふうにご認識されてますでしょうか。

§16Junko Nakagawa

一般職で入社したこと、それからその後のキャリアが個別にどう影響したのかとか、どう積み上げてきたのかは、個々には申し上げません。ただ、冒頭申し上げました通り、一つのグループ内でしたけれど、色々な側面で金融市場に携わるという経験をしてきて、多くのお客様のお話を伺う機会もありましたので、こうした経験を活かす形で、今の審議委員という職を全うできればと考えています。

§17Question

二点ございます。冒頭お話がありました新型コロナウイルスについてなのですけれども、この影響が長く続いておりまして、金融市場のみならず事業会社さん、各企業の資金繰り等々でいまだに影響が続いていまして、日銀もこれに対する資金繰り対応策をずっととられております。この長期化する中で、中央銀行として果たすべき役割については、これまで中川さんご自身のお立場としてはどんなふうにご覧になっていたのでしょうか。政策対応をこれまで眺めてみてのご感想をお伺いできればと思います。二点目ですが、ちょっと繰り返しになってしまうのですが、2%の物価安定目標の達成にあたって、これが達成されるまでは今の大規模な金融緩和策というのは粘り強く続けるべきだというお立場であるという理解でよろしいのでしょうか。

§18Junko Nakagawa

まず中央銀行という立場においては、物価の安定と金融システムの安定という使命に即したものですので、そこに環境の変化、今回であれば新型コロナウイルス感染症の発生、その拡がり、変異株といわれているものの変化、こうしたものを注視しながら柔軟に――もともとの基本観としては、先ほど来申し上げているような3月に発表になった点検の内容に即したものではあるとは思いますが、その中にあっても柔軟に――対応していく、金融システムの安定も含めた使命を果たしていくのが、中央銀行である日本銀行の大きな役割であろうと理解しています。物価安定に関しては、もちろん色々な環境や情勢の変化等はあると思いますが、現状、まだ予断を許さないというのは冒頭申し上げた通りです。一方で、日本の景気の現状を考えますと、国内外、もちろん感染症の影響が本当に引き続き厳しい状況であるものの、若干、基調として一部持ち直してきているとみえなくもないです。先行きの経済活動の水準に関しては、当面、業種ですとかサービス提供のあり方、例えば対面なのかそうではないのかということによって、感染症の拡大前まで戻るのはなかなか難しいかもしれません。

§19Junko Nakagawa

しかし、個人消費は、感染症の影響が不安も含めて徐々に和らいでくることによって持ち直してくること、それから足許でも輸出や生産に関しては堅調な感じに見受けられていますので、この辺りが回復していくということであれば、感染症の影響の収束次第ではありますが、成長を続けるのかなと思っています。その辺の環境も踏まえて、今は「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」の内容に沿った形でやっていくということです。ただ、まだ変異株の流行で景気回復が遅れるリスクなど不確実性も高いとみていますので、物価情勢に関しても、足許、携帯電話の通信料の引き下げにエネルギー価格の上昇が加わって、ほぼ相殺した形で、消費者物価が前年比ゼロ近辺ということですが、この辺りを注視しながら、基本観としては、冒頭に申し上げた通り、点検の内容に即してやっていくということだとは思いますが、環境の変化には柔軟に対応しつつということだとも思います。以上