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Bank of JapanPress conferenceOct 14, 2021Asahi Noguchi, Board Member

野口審議委員記者会見(2021年10月14日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

二点質問させて頂きます。まず、本日の金融経済懇談会で、どのような意見交換をされましたでしょうか。また、ご感想もあれば教えてください。二点目は、鳥取県の経済の現状に関する認識や展望について、ご意見をお聞かせください。

§2Asahi Noguchi

本日の金融経済懇談会では、鳥取県の行政や金融経済界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や地域が直面する課題などについて、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望もお伺いし、大変有意義な意見交換ができたと思っています。ご多忙の中、本日ご出席頂いた皆様に、この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。懇談会での話題は多岐にわたるものでしたので、本席で全てを網羅することはできませんが、席上で伺ったお話を私なりに整理して申し上げたいと思います。まず、鳥取県の経済情勢については、足許で持ち直しの動きが一服しているといった趣旨のお話が聞かれました。例えば、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、宿泊・飲食をはじめ対面型サービス業を中心に厳しい状況が続いているとのお話がありましたほか、世界的な半導体不足や感染症が拡大する東南アジアからの部品調達の遅延といった供給制約により、自動車や電気機械等の生産が下押しされているというお話がありました。感染症の影響という観点では、既に採用した外国人技能実習生が日本に入国できずに人員計画に支障が生じているといった声もありました。このほか、対面型サービス業の中にもコロナ後の需要回復を見据えた設備投資を行う動きがみられるとの声もありました。

§3Asahi Noguchi

また、先行きについては、感染防止と経済再生の両立を図っていく中で、足許で再開された「#WeLove 山陰キャンペーン」への期待の声が聞かれた一方、コロナ後の消費行動等の変化が読み切れないといった感染症の影響の不透明感を懸念する声も聞かれました。コロナ禍が長期化する中で、行政や金融界、経済界の皆さまからは、資金繰り支援や雇用維持などの面での様々な支援のほか、コロナ後を見据えた販路開拓や事業再編・新規事業などへの支援もしっかり行っているとのお話がありました。また、持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素化も含めたSDGsへの取り組みや、移住やワーケーションなどによる関係人口を増やす取り組みなどを進めているというお話を伺い、大変心強く感じました。日本銀行としては、本日頂きましたご意見を踏まえつつ、松江支店、鳥取事務所を通じ、鳥取県の金融経済情勢を丹念に調査し、鳥取県経済を支えておられる方々の様々な取り組みをサポートしてまいりたいと思います。それから、鳥取県経済の現状については、「持ち直しの動きが一服している」と認識しています。やや具体的に申し上げると、企業部門につきましては、設備投資は持ち直しを続けているものの、生産は部品や原材料の供給不足の影響がみられ、足許では横ばい圏内の動きとなっています。

§4Asahi Noguchi

また、個人消費につきましても、この夏場にかけて変異株により感染症が再拡大したことで、宿泊・飲食などのサービス消費が厳しさを増したほか、天候不順等も加わり、衣料品や家電製品などのモノの消費にも下押し圧力がかかるなど、足許では全体として弱含んでいます。もっとも、先行きについては、当面、感染症や供給制約などを巡る不確実性が高い状況が続くと想定されるものの、ワクチン接種が進捗し、感染症の影響が和らいでいくもとで、当地経済も再び持ち直していくものと考えています。更にその先を展望し、鳥取県経済が持続可能な経済発展を実現していくうえでは、人口減少や少子化による需要減少、人手不足、後継者難という課題に取り組んでいくことが求められます。この点、懇談会でも申し上げましたが、当地では、コロナ後のインバウンド需要を睨んだ観光情報の発信など県外需要の取り込み、鳥取砂丘などの自然環境を生かしたワーケーションの促進、副業に着目した県外居住者や企業とのマッチング支援など、様々な取り組みを官民一体となって精力的に進めていると承知しています。脱コロナ禍の時代は不確実性に満ちていますので、こうした課題への対応についても、柔軟かつ迅速に対応していくことが重要になると思いますが、全国で人口が一番少ないという鳥取県の「小ささ」が逆に強みにもなり得ると思います。

§5Asahi Noguchi

当地には、鳥取砂丘、日本海に代表される豊かな自然、カニや和牛に象徴される魅力的な食、そして豊富な温泉資源といった魅力もありますので、そうした地域の魅力を高め発信しつつ、鳥取県経済が更なる発展を遂げられることを大いに期待しています。

§6Question

ご挨拶の中で、年末以降、経済の回復がより明確化していくものとみているということなのですが、地方、特に鳥取も同様のペースと考えていますか。その理由等もお教え頂ければと思います。

§7Asahi Noguchi

現在、緊急事態宣言が解除され、徐々に対面型サービスも含めた経済の正常化が期待される状況にあります。その中で、鳥取も含めた地方経済の状況について、今日伺ったお話の中で一つ印象的だったのは、地方経済でシェアの大きい観光業がこのコロナ禍によって、かなり大きなダメージを受けたということです。それから、製造業もかなり回復が進んでいたわけですが、この夏頃から東南アジア等のコロナ変異株の拡大によっていわゆる部品調達の供給制約が顕在化して、その影響をかなり足許では受けているということを伺いました。しかし、今回、緊急事態宣言が解除されたことで、特に観光業に関しては、かなり明るい展望が見えはじめているというお話を伺いました。「#Welove 山陰キャンペーン」といった観光業を対象にしたキャンペーンで旅館等での予約が埋まってきているという声も聞かれました。今まで日本経済の中で、一番大きなダメージを受けていたこの観光や宿泊といった対面型サービス――地方経済の場合にはこの対面型サービス、インバウンドも含めて観光や宿泊に依存している地域がこれまで多かったと思います――が、いよいよ、ここにきて回復するという展望が見えてきたということは、非常に私は期待を持てると思います。

§8Asahi Noguchi

そういう意味で、日本全国もさることながら、特に観光業に依存してきたような地域――おそらく鳥取県もその一つだと思います――が、今後、年末にかけてかなり経済の活性化が期待できるのではないかと考えています。

§9Question

野口審議委員の午前中の挨拶の中で、コロナの特別プログラムに対して、感染症の経済への影響が十分に和らいでいけば縮小させるべきものであるがその判断は慎重でなければならないというご発言があったと思います。そうすると、現在、来年3月末までの期限で行っていますが、その後の延長も前提に考えなければならないという趣旨のご発言なのでしょうか。それとも、今のコロナの感染状況をみて、どのようにプログラムのあり方を考えるべきなのか、お考えをお聞かせください。もう一点が、これを縮小させるべきものというところが、大体どういう状況に至った時にその判断に至るのか、その辺りの審議委員のお考えを併せてお聞きできればと思います。

§10Asahi Noguchi

今ご指摘頂いた「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」は、特にコロナ禍で状況が悪化したことへの対応ということでありましたので、新型コロナウイルス感染症が収束していけば、その中で徐々に手じまいというか、そういう方向にするというのが原理原則ではあります。ただ、実際にやるということになると、色々な問題を考慮しなければならないということになります。まず最初に、新型コロナウイルス感染症がかなり収束したとしても、また第 6波や第 7 波といったような変異株の拡大は十分あり得ます。その兆候が起きたときに、一度やめてしまったものを再びやるというよりも、そういう可能性がある限りは、ある程度そういう制度も維持させなければならない、維持させていく必要があるということです。それから、現在、公衆衛生上の措置を、新型コロナウイルス感染症がだいぶ減ってきましたので、縮小させているわけですが、それも徐々に、きわめて徐々に石橋を叩くように行わざるを得ないということです。その間は、当然経済への影響は残るわけです。完全にコロナ以前のように自由に飲み食いができるという状況になるには、やはり相当な時間を要するということが言えるわけです。3月末までにそういう見通しがつかない、完全に以前と同じようにできるという見通しがつかないのであれば、やはり当面それは延長、その他の措置を取らざるを得ないということになると思います。

§11Asahi Noguchi

その辺りは、あくまでも状況次第ということであり、この感染に伴う不確実性をまずは十分に配慮して考えなければならない、きわめて慎重でなければならないというのが私の考えです。それと、これを手じまいさせていくという場合ですが、その場合でも、今度は日本銀行が本来の使命としている 2%の「物価安定の目標」がありますので、それを阻害しないような形で、上手く手じまいしなければならないということにもなります。その辺りも配慮すると、突然これを打ち切ってしまうと、それはかなり大きなショックがマクロ経済にかかるということも当然あり得るわけです。そういうことも踏まえて、これをどのように調整していくのかを考えなければならないと私は思います。

§12Question

足許、原油が上がって為替も円安になって、輸入コストも上がっていると思います。業種とか会社の規模によって違うのでしょうが、交易条件の悪化による経済の下押しへの影響を現状どのようにみているかをお伺いします。

§13Asahi Noguchi

特に最近、エネルギー価格、原材料価格の上昇が非常に目立っています。それに伴って、企業物価の前年比も5%、6%と上がっています。これは当然、交易条件の悪化という形で、特に輸入しているものは値段が高くなっていくということです。しかし、それを販売価格に転嫁することはなかなか難しいということで、交易条件の悪化の影響は現在生じつつあるわけです。ただし、これが企業、もちろん個々の企業、業界、分野にもよりますが、現状では必ずしも重石になっていない、むしろ企業の収益は上がっているという状況です。それは、そういった原材料価格の上昇自体、世界経済が回復する中で起きているということが一番大きいと思います。当然、日本企業も足許では供給制約の問題がありますが、基本的には輸出と生産が好調であり、そういった交易条件の悪化があっても、十分吸収できる、吸収してかつ収益を上げることができているという状況であろうと思います。しかし、これがさらに長引いていくということになれば、当然、企業や業種によっては、むしろそういった原材料価格上昇の影響が非常に大きくなって、それを販売価格に転嫁できないという状況が続いていくと、これはいよいよ企業収益に影響を及ぼしていくということになる可能性もあるわけです。

§14Asahi Noguchi

ただ、これはあくまでも状況次第であり、今後、日本経済も新型コロナウイルス感染症がだいぶ収まっていけば、経済の正常化が見通せるようになり、そうなるとペントアップ需要も拡大していくという状況に変わっていきます。企業も、今まで価格転嫁がなかなか難しかったけれども、それができるようになり、当然原材料価格も上がっていきますが、国内の物価や賃金もだんだん上がっていくということになれば、交易条件は必ずしも悪化しないということになります。そうやって物価や賃金が上がっていくということ自体は、まさにこの金融緩和の目的であったわけであり、それ自身は非常に望ましいことです。そういうことが実現できれば、交易条件の悪化も問題化しないと考えています。

§15Question

野口審議委員は午前の挨拶の中で、これまでの政策対応にあたっての財政政策の重要性について詳しくお話になられましたが、足許で財務省の矢野次官が政策論争、ばら撒き論争になっているということで、国家財政の先行きについて強く懸念を示す論考を寄稿されて話題になっています。これについて野口委員の率直な受けとめをお聞かせください。二点目は、同じく挨拶の中で、これからペントアップ需要が出てくるモメンタムを金融緩和で維持していって、ひいては物価目標の達成につなげていくということが重要だとおっしゃいましたが、このタイミングでというか、近い将来、金融政策として追加緩和を打って、モメンタムをより確かなものにしていくと、そうすべきだというお考えはございますか。

§16Asahi Noguchi

まず財務事務次官の論考に関してですが、世間で様々な議論がなされていることは、私も側聞はしていますが、これは財政政策にからむ問題であり、基本的に政府あるいは国会が決めるべき問題でありますので、私から何らかのコメントをすることは差し控えさせて頂きたいと思います。一般的にこの財政の問題についてお話しをさせて頂くと、財政の問題は、長期的な財政の維持可能性という問題と、それからもう一つ、今のコロナ禍もそうですが財政支出を拡大して経済を支えなければならない状況にも対応しなければならない、という二つの課題が常にあるわけです。これは、常にこれまでも論争の種になってきたわけで、それは論者によっても相当見方が違うほか、経済の局面によっても私は違うと思います。ですから、その違いというのは、やはり最終的には国会あるいは政府が有権者の民意を反映した形で決めるべきものであると考えています。それから二点目の今後の追加緩和の可能性に関してですが、各国の状況をみると、ペントアップ需要が非常に大きく拡大した後に、賃金や物価がかなり上昇しています。今日もお話しさせて頂いたのですが、例えば今年の初めの状況ではどんな政策当局も含めて誰も予想していなかったような状況が今、世界各国では起きているわけです。

§17Asahi Noguchi

実際ペントアップ需要がどれだけ顕在化するのか、それからそれがどの程度物価や賃金に跳ね返ってくるのか、影響を与えるのかということは、当然私どもも含めて政策当局もある程度の見通しを立てますが、蓋を開けてみないと分からないというところが大きいわけです。これは現時点でも例えば今のインフレ率、世界各国が経験していて、米国で 5%ぐらい、これは予想以上に長引いているという、長引きそうだということで、一過性と言われていたことが違うのではないかという見方が改めて出てきたりという状況であり、その持続性も非常に不確実性が大きいわけです。そういう意味で、ペントアップ需要はその大きさも持続性も非常に不確実性が大きいということを考えると、現時点で何か追加的な手当が必要と前もって決めてしまうことは、なかなか難しいと私は考えています。あくまでも状況をみながら、適切に判断していくということに尽きると思います。

§18Question

国内の賃金についてお伺いします。今日のご挨拶の中で、米国の事情の違いとも触れられて、労働の供給制約的な面からの賃金の上昇は限定的なのではないかと、お話しをされていました。今後、日本の賃金の上昇に向けて、大きなトリガーとなりそうなことで注目している点や今後の見通しについてお話しください。

§19Asahi Noguchi

これも今日、私がお話しさせて頂いたように、コロナ禍の以前でもかなり、一部では人手不足ということが言われてきたわけです。実際、コロナ禍の前では、非正規雇用がかなり増え、正規雇用が並んで増えていたわけですが、2020年初頃、コロナの直前ぐらいにはむしろ非正規雇用よりも正規雇用の増加率が大きいというような状況が起きていたわけです。残念ながらそれが明確な賃金上昇につながるというところにまでは至りませんでしたが、失業率が一番低いところで 2.2%まで下がったという状況なので、部分的には賃金がかなり上昇しているような分野もあったと考えると、まずそのコロナ前の状態まで戻していけば、相当に賃金の上昇が顕在化する地合いというか、回復できるのではないかと私は期待しています。まずは、一刻も早く経済を正常化していくということが当然課題になるわけです。コロナ禍の中では、これは日本だけでなくて各国政府が相当財政支出をして支援をしてきました。日本の場合には、雇用を減らさないように様々な手当をしてきました。米国の場合はそうではなかったために、一時的に失業率の急上昇がありましたが、日本の場合はそこまでいかなかったわけです。そういう状況を考えると、日本の雇用を減らさないような様々な手当自体は賃金の上昇を弱める動きではありますが、しかし、もともとかなり人手不足の地合いがありましたので、そういうところにまず持っていく。

§20Asahi Noguchi

ペントアップ需要が顕在化していけば、意外と思った以上に早くそういうところまで回復してくるのではないかと個人的な期待ではありますが考えています。期待通りにいかなかった場合には、先ほどの話のように追加的な金融緩和がもしかしたら必要になるかもしれないということになりますので、その状況をよく注視していく必要があると考えています。

§21Question

経済について挨拶の中で、デルタ株の影響で経済正常化局面がやや後ろ倒しされたものと考えているというご発言がありました。今月展望レポートの発表もありますが、先行きの経済見通しについてその経済正常化局面の後ろ倒しというものが、具体的にどう影響してくるというように今のところみていますか。

§22Asahi Noguchi

これは各国の状況、例えばワクチンの接種でかなり先行していたイスラエルとか、特に米国、英国といった国々では、半分くらい接種が終わった時点でかなりペントアップ需要が顕在化していたということがあったわけです。しかしその後こういった国々でもデルタ株といった変異株の影響で少し下押し圧力がかかってきたということがあったわけです。日本の場合、デルタ株がなければおそらくこういった米国や英国の状況にもしかしたら夏頃にはなっていたかもしれません。大体夏の終わりくらいには人口全体の5割くらいはもう接種が終わっていたという状況になっていたので、その頃にはかなり経済が活性化してもおかしくはなかったということです。しかし不幸なことに、この夏場、7月くらいから急速にデルタ株が拡大してしまったということで、そういうことは起きなかったわけです。むしろ新たに緊急事態宣言が導入され、そして延長されるということになったわけです。その分は当然、経済の正常化は遅れることになります。私のイメージでは、10月になってこの緊急事態宣言が解除されましたが、対面型サービスの制約はいまだにかなり強いわけで、正常化が十分に行われているというか、進んでいるという感じではありません。しかしながら、今日伺ったお話でもそうでしたが、宿泊などでは年末にかけてかなり予約が入っているというようなお話も耳にするわけです。

§23Asahi Noguchi

そういう状況を考えると、年末くらいにかけておそらくかなり正常化が進み、ペントアップ需要も、米国や英国のような急激ではないけれども、徐々に出てくるのではないかと思います。年末から年始、来年の頭くらいにかけて――これはあくまで私個人の見方であり、日本銀行でも色々今調査中ですが――、ペントアップ需要が徐々に顕在化してくるというか期待しているわけです。ただし、冬になってまた変異株が拡大して第 6 波とか第 7 波という話になると、また違った話になるわけです。その辺りの不確実性は依然残っているということだと思います。

§24Question

二点お伺いさせてください。先ほど交易条件のお話もありましたが、マーケットで、今スタグフレーションという形で、物価の上昇と景気の減速が併存していくのではないかという懸念が指摘されているかと思います。仮に今後、海外の物価上昇が国内にも波及してきた場合に、その物価上昇の仕方は安定的だと評価できるものなのかどうなのかということが一点です。もう一つ、G7の財務省・中銀総裁会議でCBDCの共通原則が今回初めて合意されたかと思いますが、CBDCの発行を巡る議論について、どう関心を持たれているのか、今回の共通原則の意義をどうとらえていらっしゃるのか、ぜひお考えをお伺いさせてください。

§25Asahi Noguchi

まず最初に、スタグフレーションの問題ですが、確かに、今一部でそういった議論が顕在化しているということは私も認識しています。これは端的に言って、物価の上昇が非常に激しいということかと思います。スタグフレーションというのはあくまでもインフレと不況の併存という状況です。そういう意味で今がそんなに不況かというと――不況になる可能性はあるかもしれないということは確かにその通りで、これからインフレになり、そのインフレが、人々の消費意欲を減らしていく可能性が出てくるかもしれませんが――、私自身は個人的に、現状では、そういう状況にはまだないであろうと思います。今起きていることは、あくまでも人々のペントアップ需要が一時的にですが盛り上がっており、その中で供給が追いついていない。特に米国は、このコロナ禍で働くことをやめて、そういう人たちがまだ十分に職場に復帰できていない、むしろ自発的に忌避しているという状況から人手不足が続き、賃金も上がっているわけです。そういう意味でいえば、物価も上がり、賃金も上がっているので、これはあくまでも需要が引っ張って、起きている現象であり、これは不況という言い方は少しそぐわないと考えています。

§26Asahi Noguchi

日本が今後、ペントアップ需要が顕在化するときもそういうことであって、もう既に企業物価も相当上がっていますので、局所的にはかなり物価が上がるというかたちで顕在化することがあり得ると思います。しかし、それがいわゆるスタグフレーション、つまり不況をもたらす可能性は、それほど私は大きくないのではないかと思います。それから二番目のCBDCの原則ですが、これはリテールCBDCの検討や開発についての指針や情報を与えるものです。この報告書が指摘している通り、CBDC発行の是非は、各法域が決定していくことになります。報告書の内容はG7の共通の価値観を反映しており、日本銀行にとっても、実証実験、今後の実証実験や制度設計面の検討を進めていくうえで重要な視座を提供するものと考えています。以上