雨宮副総裁記者会見(2021年12月8日)要旨
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§1Question
本日の金融経済懇談会に出席されて、出席者からどのような意見や要望が出されたかという点と、懇談会で聞かれた意見を踏まえて、徳島経済の現状に対する認識と先行きの展望についてどのようにお考えかという点を教えて頂ければと思います。
§2Masayoshi Amamiya
私ども日本銀行が各地域で行っている懇談会ですが、コロナ禍の影響で、オンライン形式での開催を長い間余儀なくされてまいりましたが、今回徳島県には直接訪問することがかないまして、私にとっても大変久しぶりにこういう形で、対面形式で開催させて頂くことができました。やはり直接顔を合わせてお話しをさせて頂くと、地方経済の雰囲気や温度感がはっきりと感じられ、改めて、その有り難みを実感したところです。本日は徳島県の行政や経済界、金融界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や地域経済が直面する課題などについて、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見・ご要望もお伺いし、大変有意義な意見交換ができたと思っています。懇談会での話題は大変多岐にわたるものでしたので、全てを網羅することはなかなかできませんので、私なりに整理して申し上げたいと思います。まず、足許の徳島県の景気については、厳しさは残るものの、全体としては、改善方向に向かっているという見方が多く聞かれたと思います。
§3Masayoshi Amamiya
ただ、先行きについては、各種部材の供給制約あるいは物流の混乱、更に原材料価格上昇による生産活動や企業収益への影響に対する警戒を強めておられるということのほか、やはりなんといっても、新型コロナウイルス感染症の動向や、今現在では、変異株の影響についても大変不透明感が強く、見通しが立てにくい状況にあるという認識が多く示されたように思います。こうした経済情勢に関する認識については、私どもの支店や事務所の認識と軌を一にするものかと思いました。ただこうした大変厳しい情勢の中でも、行政や金融界、経済界におかれては、様々な形での支援策を講じておられ、現在の状況という点について申せば、地元企業への資金繰り支援や、雇用維持の取り組みが進められていますし、中長期的な課題として、これは大変色々と示唆に富むご意見を頂いたのですが、 DXの推進やSDGsを意識した対応といったことを強化しているとのお話を伺いました。私ども日本銀行に対しては、引き続き緩和的な金融環境を維持してほしいというご意見や、カーボンニュートラルに向けた設備投資につながる、私どもが最近導入しました気候変動オペに期待する声も聞かれました。
§4Masayoshi Amamiya
また、多くの方がおっしゃったのは、原材料価格が上昇する中で、賃金を引き上げていくためにも、販売価格を引き上げる必要があるので、そうした企業の生産、収益、賃金、物価の好循環をもたらせるように、2%の物価上昇を目指した政策を継続してほしいとの声も聞かれたところです。私どもとしましては、本日頂きましたこうしたご意見なども踏まえながら、高松支店ならびに徳島事務所を通じて、徳島県の金融経済情勢を丹念に調査し、県経済を支えておられる関係者のご努力が、更なる成果につながっていくよう、中央銀行の立場からサポートしていきたいと思いました。それから、二つ目のご質問で、経済の現状と先行きの展望ということですが、まず足許については、ただいま申し上げた通りであり、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、全体として持ち直しということだろうと思いますし、先行きの懸念材料というのも、やはり変異株の懸念も含めた感染症の動向は不透明感が強いですし、供給制約や原材料価格の上昇といったことにも注意が必要であると思います。
§5Masayoshi Amamiya
やや長い目で、展望ということで、本日伺った意見や、私どもの事務所・支店の調査も踏まえて申し上げますと、徳島県経済が持続的な発展を図るためには、人口減少あるいは少子高齢化といった構造的な問題に加えて、デジタル化という、これは以前からの課題ですが、感染症の拡大により更に浮き彫りになった課題に対処していきながら、地域の魅力や活力を向上させていくということが重要となると思います。この点、当地においては、様々な取り組みがなされていて、国内屈指のブロードバンド環境が早くから整備され幅広く活用されていますし、環境負荷の少ない街づくりですとか、LEDを中心とした産業振興の取り組みが継続的に行われています。それから、本日も話題が出ましたが、女性が広く活躍している全国有数の地域でもあります。こうした、DX、SDGsあるいは女性活躍といった点全て、これまでの当県の取り組みの積み重ねが基盤となっており、おそらく当県の強みではないかと思います。今後ともこうした各種の取り組みが継続され、地域に更に拡がることで、徳島県経済がますます発展することを期待しています。私どもとしては、高松支店と徳島事務所を通じて、情報収集、意見交換を行い、こうした地域活性化に向けた様々な取り組みに中央銀行の立場から、少しでも貢献できるよう努めてまいりたいと思っています。
§6Question
先ほど、中長期的な目線で、徳島の全国に注目されているようなところをおっしゃられたのですが、これは今日、懇談会の冒頭でも挨拶されていましたけれども、LED企業の集積であったり、ブロードバンドでサテライトオフィスの誘致であったり、上勝町でやっている「葉っぱビジネス」といったかなり具体的な例を挙げていらっしゃいましたが、今のお話の中ではそうしたことが全国に先取っている例という受け止め方でよろしいでしょうか。
§7Masayoshi Amamiya
本日の挨拶でも触れましたし、今ご指摘頂いたこともありますし、本日の懇談会でも様々な方からそうした取り組みについて随分色々なご紹介を頂きました。それだけでなく、例えば、2016年に温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指す「脱炭素社会」条例を制定されていることや、2019年ですか、既に国に先立って 2050年の温室効果ガス実質ゼロを宣言するといった脱炭素社会の実現に向けた取り組みを先取りする形で目標を掲げられておられます。本日の懇談では出ませんでしたが、私どもの徳島事務所から色々話を伺っていますと、水素で走る燃料電池バスの運行ですとか、空港での水素ステーションといった取り組みが様々な形で行われていることも大変印象深く伺いました。おそらく、この後大事なことは、こうした取り組みを更に横展開していくことと、全国的にもより発信力を高めていくということで、徳島県のこうした取り組みが更に大きな成果につながっていくのではないかと期待しています。
§8Question
コロナ対応の資金繰り支援策の延長の是非について伺います。コロナの感染状況は、オミクロン株を含めて不透明感が引き続き強い一方で、支援策の延長の是非の決定が遅くなると金融機関の実務面の負担が大きいといった指摘もございます。今後、金融政策決定会合は、12月、来年1月、3月とありますけれども、延長の是非について決定するのはいつ頃が望ましいのか、特定の月日をお答えするのは難しいということは承知のうえですが、この支援策の趣旨ですとか、資金繰りの状況を踏まえて、副総裁は大枠でどのようにお考えを整理していらっしゃるのか、お聞かせください。
§9Masayoshi Amamiya
ご指摘の「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」につきましては、基本的な考え方としては、こうした緊急措置あるいは臨時措置については、制度を始めるときも終了するときも、あるいは場合によっては再開するときも、情勢次第で臨機応変に対応するということが大事だと思います。従って、そこのポイントは情勢次第という、情勢の判断が大事になってくるわけです。今はご指摘の通り、色々不確実性が非常に高い時期ではありますが、そうはいっても、制度の予見可能性や安定運営という観点からは、3月末に終了する措置について、ぎりぎりまで判断を先送りすることは適当ではないでしょうから、12月か 1月には判断をするということが基本になるかと思っています。
§10Question
今日の講演の中でも、今後、感染状況ですとか供給制約が緩和されていけば、経済全体の回復傾向は次第に明確になっていくという見通しでありましたけれども、先ほども指摘があった通り、オミクロン株についての不透明感というのは強まっています。このオミクロン株に関しては、不透明かとは思うのですが、経済回復に与える影響ですとか、今後の金融政策に与える影響をどのようにみていらっしゃるのか、ご見解をお願いします。
§11Masayoshi Amamiya
そもそも新型コロナウイルス感染症の動向の先行きそのものが不確実であることに加えて、今、新しく発生したオミクロン株という変異株の動向も、更に不確実性を加える要因だと認識しています。経済の先行きを展望しますと、私どもの先行きの中心的なシナリオとしては、ワクチンの効果もあり消費が徐々に回復していき、アジアのサプライチェーンも正常化していき、更に政府の経済対策の効果といったこともありますので、こうしたことを背景に、来年前半には回復が明確化するとの見方を中心的なシナリオと考えています。もっとも、こうした中心的なシナリオに対しては、相当大きないくつかの不確実要因があり、そもそも感染症の動向への懸念が残る中で、消費マインドがどの程度回復するかということも不確実性がありますし、アジアのサプライチェーンが復旧するとしても、現在は、より中長期的な観点からも、半導体需要がコロナ禍を経て相当大きく拡大していますので、中期的な需給の逼迫は残る可能性があるという点も含めて、供給制約がどうなるかという点もあります。更に、世界的には物価上昇が続いており、一部では、金融政策の先行きについて、色々な議論が起きていますので、こうしたことが市場に影響を与える可能性もあります。
§12Masayoshi Amamiya
加えて、今ご指摘の変異株という不確実性が加わったわけですので、現段階では、先ほど申し上げたような中心的シナリオは維持しながら、こうした不確実性要因について、一つ一つ丹念に丁寧に点検しながら情勢を判断していくことになろうかと思います。
§13Question
先ほどの日銀のコロナ対応策の延長の是非についてですけれども、今日の午前中の講演の中で、コロナ対策について、資金繰りの支援と、主に大企業のCP・社債の部分での支援策の二つで成り立っていて、特に大企業の方については、CP・社債の発行環境はきわめて良好であるというご認識を示されていたと思います。今、おっしゃったように臨機応変に対応することが重要ということとなると、二つの主な構成要素のうち、大企業については資金調達環境が良好になっているので、必ずしも二つまとめてどうこうということではなく、それぞれ個別に色々と判断していく可能性はあるのか、今日のご講演の中でもそういった可能性が示されているのかどうか、という点についてお伺いします。
§14Masayoshi Amamiya
全体として、「特別プログラム」の来年の 4月以降の扱いについては、今ご指摘のあった点も含めて、まだ取り扱いを決めているわけではありませんので、基本的には 12月短観なども含めて──別にそれだけではないですが、それも含めて──、今後の企業金融あるいは金融仲介機能全般の動向を丁寧に点検したうえで、適切に判断していきたいと思っています。本日の講演では、一種の特徴点をいくつか切り出してご説明しましたが、全体として金融環境をみると、大企業については、今ご指摘のあった通り、CP・社債市場は良好な環境ですし、貸出市場をみても、むしろ借入れは大企業については返済モードになっています。一方、中小企業については、総じてみれば改善していますが、対面型サービス業などに一部には厳しさが残っているということです。個人に目を転じると、個人事業主については中小と同様一部に厳しさは残っていますが、住宅ローン市場は安定しています。こうした金融環境全体を更に点検しながら、政策のあり方については検討していきたいと思っています。
§15Question
コロナ対応は、昨年来、財政と金融の協調で民間部門の資金繰りを支援し、効果を発揮してきました。岸田政権のもとで打ち出された経済対策では、企業の資金繰り支援策の延長が盛り込まれましたけれども、日銀としては、金融緩和の継続で経済を下支えしていくということがコロナ対応として重要なのでしょうか。コロナ特別プログラムが来年4月以降も引き続き重要な役割を果たしていくとお考えでしょうか。この点についてお聞かせください。
§16Masayoshi Amamiya
政策としては両方とも重要だと思います。大きく言いますと、金融緩和については、私どもはコロナ対応だけに限定せずに、まず基本的な日本経済の改善、具体的には、2%の「物価安定の目標」ということですが、そうした物価上昇や賃金の上昇、企業活動の改善がうまく好循環になるような経済を目指して金融緩和を行っているという部分があり、この金融緩和の継続で、経済を下支えするという政策は、コロナ禍でも効果があると思います。それと並び、コロナ禍での緊急対応として私どもがよく申し上げているのは、企業金融の支援措置、円貨・外貨の大量の資金供給、そして、ETF・J―REITのオペレーションで、それぞれ金融仲介機能や市場の安定を維持するという政策を行っていますので、それぞれが重要な役割を果たしていると思っています。
§17Question
引き続きコロナ対応で恐縮ですが、コロナオペは現在残高が 80 兆円程度に膨らんでおりまして、いずれかの段階で終了した場合、期日の到来とともに、マネタリーベースの大きな減少も予想されます。マネタリーベースの拡大方針を継続するとしているオーバーシュート型コミットメントとの関係を含めて、コロナオペの残高減少が日銀の金融緩和姿勢と効果に与える影響、そしてオペ終了を議論するにあたって、こうした残高減少というのは、今後、政策対応について考慮すべき事柄なのかどうか、この点についてご見解をお願いします。
§18Masayoshi Amamiya
まず、ご指摘の通り、コロナオペは大きな残高になっていますので、どこかでこれを収めるとすれば、マネタリーベースは減少する可能性はあると思います。ただし、オーバーシュート型コミットメントは、ベースマネーの残高がトレンドとして伸びていくことを想定しています。そうした考え方に基づくコミットメントとの関係がどうなるかということは議論にはなると思いますし、色々な議論が出るかもしれませんが、基本的にはこのオーバーシュート型コミットメントは、今、私どもが行っている金融緩和政策の大きな柱の一つですから、そのもとで考えていくということになろうかと思います。
§19Question
コロナ対応策というのは、現状のものが、基本は来年の3月まで続くという認識でよいかということと、4月以降に関しては、一部は延長するけれども一部はやめるとか、そういうことに関しても、今後、検討していくのでしょうか。
§20Masayoshi Amamiya
まず一つ目のご質問でいうと、先ほども申し上げた通り、こうした緊急措置あるいは臨時措置は、そのときの状況に応じて臨機応変にやるものですので、この後事態の展開次第では、何らかの見直しや増強というのは、可能性としては当然あり得るわけですし、私どもも状況の変化に応じて、躊躇なく対策を講じると言っているわけです。今持っている制度は、もちろん 3月末までですが、もちろん事態は色々変化しますので、今の段階でどうこうと言うことはできませんが、状況の変化に応じて迅速に対応するといった原則はあるということです。それから二つ目のご質問についても先ほど申し上げましたが、現段階で「特別プログラム」全体の取り扱いを決めていませんので、それについては、この後の企業金融の動向を点検したうえで、判断していきたいと思っています。以上