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Bank of JapanPress conferenceMar 24, 2022Goushi Kataoka, Board Member

片岡審議委員記者会見(2022年3月24日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Question

二点質問させて頂きます。一点目は、本日の金融経済懇談会において地元経済界の方々とどのような意見交換が行われましたか。二点目が青森県経済に対する印象や先行きの課題について、どのようにみていらっしゃるのかをお伺いできればと思います。

§2Goushi Kataoka

最初のご質問ですが、本日の懇談会では、新型コロナウイルス感染症の影響が続く中で、オンライン形式の開催となりましたが、青森県の行政や金融経済界を代表する方々から、地域の現状や課題、あるいは日本銀行の金融政策運営に関する貴重なお話やご意見を多数頂きました。大変有意義な意見交換ができたものと認識しています。まずはこの場をお借りしまして、ご出席頂きました皆様方に厚く御礼を申し上げたいと思います。懇談会で伺ったお話やご意見・ご要望につきまして、私なりに整理しながら印象や感想を申し上げたいと思います。まず、青森県の足許の景気についてですが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、宿泊・飲食をはじめとした対面型サービス業を中心に厳しい情勢におかれているほか、製造業でも、供給制約に伴う原材料や部品などの不足により、生産活動への影響を受けているという現状を伺いました。また、足許のウクライナ情勢を受けて、先行きの不透明感が増しており、原油や原材料価格の上昇が企業経営に与える影響を懸念する声が聞かれました。

§3Goushi Kataoka

その一方で、デジタル化対応のためのシステム投資など、ウィズ・アフターコロナを見据えた投資の支援に注力されているとのお話が経済団体の皆さまから聞かれたほか、コロナ禍において地方への移住の動きが進む中で、首都圏など県外から県内に移動される方が増加していることや、継続的な起業への支援が奏功し、若い方を中心に事業を立ち上げる動きが強まっているといった力強いお話もありました。こうしたもとで、行政や金融界、経済界では、中小・零細企業の資金繰り支援、雇用維持や多様性の確保に向けた施策を引き続きしっかり行っていくというお話が聞かれました。また、青森県では、人口減少や若年層・女性の県外流出、「2025年超高齢化時代」の到来が大きな課題となっており、先行きの県内経済への影響や労働力不足に対する強い危機感が聞かれました。一方で、青森県は、安全安心で優れた農林水産品、美しい自然、郷土料理や名所・旧跡、豊富なエネルギー資源などを有しており、こうした多彩な地域資源を活かして、青森県の抱える課題を克服しようとする取り組みが、産学官金の連携のもとで着実に進められており、大変心強く思っている次第です。また県内主要都市では、地域・市街地の再開発が進められているなど明るい話題も聞かれました。金融面では、感染症が長期化するもとで、いわゆるゼロゼロ融資の返済期を迎えることによる資金繰りの悪化を懸念する声が聞かれました。

§4Goushi Kataoka

一方、地域金融機関がこうした企業の声に寄り添い、積極的に資金繰り支援を行っているほか、中小企業の課題解決に向けてコンサルティング機能を発揮し、本業支援を強化しているとのお話もありました。日本銀行としましては、当面、感染症の経済・物価への影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じていく方針です。今後とも青森支店を通じて、青森県の金融経済動向を丹念に調査し、政策運営に活かしていく所存です。それから、二点目の青森県経済に関する印象や先行きの課題というお話ですが、まず、青森県経済の現状につきましては、青森支店が公表している通り、「新型コロナウイルス感染症の影響からサービス消費を中心に厳しい状態にあるなか、供給制約の影響もあり、弱含んでいる」と判断しています。個人消費をみると、感染再拡大の影響を受けて、飲食・宿泊など対面型サービス消費に対する下押し圧力が強い状態が続いています。また、生産は、供給制約の影響から増勢が一服しています。もっとも、設備投資は、食料品における内食需要の獲得を企図した工場新設や、電気機械における世界的な受注増に対応するための能力増強投資に加え、小売業における新規出店投資が複数みられることもあって、製造業・非製造業ともに増加しています。先行きについては、ワクチン接種の進捗などから感染症の影響が徐々に和らぐもとで、経済は持ち直し基調を辿ると考えています。

§5Goushi Kataoka

もっとも当面の間は、感染症拡大の影響やロシアのウクライナ侵攻の影響による下振れリスクには注意が必要です。中長期的な観点からみますと、講演でも申し上げた通り、青森県経済には、人口減少や高齢化社会の到来といった課題はありますが、将来の成長につながる前向きな動きがみられることも見逃せません。農林水産業の分野では、地域の中核を担う集落営農組織や大規模農業法人などが中心となり、地域の進展という視点から担い手の育成やコミュニティ形成に取り組む地域経営が推進されています。そこで生産された県産品は、世界で通用するブランドとして評価・認識され、海外でも取引されています。また観光の分野では、新たに世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」をはじめ、青森県の強みである自然環境や食・歴史・文化などの地域特性を活かしたコンテンツ作りを通じて、世界から選ばれる青森ツーリズムを推進しており、ウィズ・アフターコロナにおける青森県の基幹産業としての成長が期待されます。更に、エネルギーの分野では、太陽光、風力、バイオマス、地熱、地中熱など、青森県の有する地域資源を活かした再生可能エネルギー産業の振興に取り組まれており、今後は、県内産業の参入促進による裾野の拡大が期待されます。こうした動きは、青森県経済の将来の成長力を高める方向に働くと考えられます。

§6Goushi Kataoka

日本銀行としましては、青森支店を中心に、中央銀行の立場から青森県経済の成長と発展につながる様々な取り組みをサポートしてまいりたいと考えています。

§7Question

青森県の金融業界についてお伺いします。昨日、青森銀行とみちのく銀行の経営統合が認可されました。そのことに対する所感と今後に期待することを教えてください。

§8Goushi Kataoka

個別の案件についてのコメントは差し控えたいと思います。そのうえで一般論として申し上げれば、当地に限らず、地域経済は人口減少などの構造要因に加えて、感染症の影響を受けて厳しさを増しています。そうした地域経済を地域金融機関が将来にわたってしっかりと支えていくためには、経営基盤を強化するということが必要です。そうした課題を克服するために、金融機関の経営統合や合併は選択肢の一つになり得るのではないかと考えています。どのようにやっていくかは、各金融機関の経営判断です。それが大前提ですが、いずれにしても自らの営業基盤や収益力の強化・展望を踏まえ、経営統合等が自らの収益力向上につながるかどうかという観点から、今回のお話を含めて地域金融機関の意義をこれからもみていきたいと考えている次第です。

§9Question

足許で原油価格が上昇する中、為替相場では円安が進んでいます。片岡委員は追加金融緩和を主張されていますけれども、欧米が金融引締めに動くなか、日銀が利下げをすると、一段と円安が進む可能性があります。一段の円安のデメリットについて、片岡委員はどのようにみられているでしょうか。

§10Goushi Kataoka

円安が進むことによるデメリットについてというお話だったと思いますが、円安がもたらす影響は、輸入価格ないしは輸出価格の円建ての価格に対して影響するという短期的な経路と、輸出量の増加という意味での中長期的な経路、それから外貨建て資産の円建て価格になおした場合の資産効果と言われる影響の三つを中心に考えていく必要があると思います。この三つを合わせると、全体的な効果はプラスだと思います。ご指摘のマイナスの影響というのは、主に輸入価格の上昇を通じてという話になるかと思います。マクロ全体でみた場合、為替の影響がどれぐらいかというところは、今回、私の作成した午前中の金融経済懇談会の講演資料にも載せています。具体的には、図表8 になりますが、こちらは為替を通じた影響ということで、輸出・輸入価格の変化の両面を含めた為替レートへの影響をみていますが、全体からみると、非常に小さいというのが私自身の理解です。

§11Question

片岡委員は今年の 7月に任期を迎えられるわけですが、この間、毎回の金融政策決定会合で金融政策の現状維持に反対票を投じ続けておられました。講演と重なると思いますが、この間、物価目標が達成できていない理由をどう受け止め、併せて、追加緩和は必要という認識を示されながらも、具体的に議案としては提出されていませんが、それについての理由を教えて頂ければと思います。

§12Goushi Kataoka

2%に向けて金融緩和をやっている中で、なかなか目標に届いていないというところにつきましては、ボードメンバーの一員としては非常に責任を感じているところです。ただ、私自身、現状の政策に対してずっと反対票を投じていたというのは、やはりこのままでは、なかなか目標を達成できないと考えているからです。現行の金融政策に効果があるのであれば、更にそれを進めていけばより効果があり、そうすることによって、基本的に「物価安定の目標」が達成できるという期待のもとで反対票を続けている次第です。ただ、反対を続ける中で、なぜ議案を出さないのかというお話については、毎回の決定会合をご覧頂くとお分かりの通り、現状、反対をしているのは私一人です。こういう状況であれば、議案を提出しても結果としてはあまり変わらず、単純に決定会合の時間が延びるだけという状況になってしまうわけです。ですから、議論としての中身を重視するという観点からは、反対を続けているのですが、議案は出さないというスタイルで反対意見をしっかり議論していくことが重要ではないかと考えている次第です。

§13Question

午前の講演で、ウクライナ情勢を受けて、国内経済の下押しが強く増しているというお話がありました。一方で、物価は 1%台半ばというお話もあったと思うのですけれども、いわゆるスタグフレーション的な懸念という部分でどのようにお考えでしょうか。

§14Goushi Kataoka

午前の講演でも申し上げましたが、ウクライナ情勢につきましては、現状、足許の日本経済の統計にその影響があらわれているわけではありません。あくまでこうした影響の帰趨も含めて、どういう影響が出てくるかというのをまずみていくことが必要ではないかと私自身は考えています。そのうえで、どういう形になっていくのかという部分ですが、スタグフレーションといいますのは、定義としては経済成長率の低下、これはマイナスという話と、それから物価上昇率の拡大が同時に生じるという現象です。これ自体、わが国の場合、その物価上昇率が国内物価に転嫁して、コストプッシュのようなものが企業の生産を減少させるという形につながれば、スタグフレーションになっていくということだと思います。わが国の現状は、輸入価格を通じて物価が上がっているという状況の一方で、足許の経済動向は、コロナ禍もあって、消費を中心に弱い状況が続いているものの、先行きについては、コロナ禍の状況が改善していけば、消費や設備投資といったものが拡大していくことも期待されますので、必ずしも物価の上昇と経済停滞がより進むといったスタグフレーションとは、現段階では私自身は考えていません。

§15Question

前回の決定会合で、先行きの物価に対して結構プラス幅がはっきりと拡大していくという見通しを持たれていると思います。午前中の講演の中で、物価の上振れリスクに関しても注視されているということですが、4月以降、物価上昇はあくまでも基調が弱いので、取りあえず一時的であるという判断かと思います。その 4月以降でも確実にここまで原油が上がってきて携帯が下がれば、暫くの間、物価が相当強い数字が出るようにみえるのですが、日銀としてはオーバーシュート型コミットメントをやっているので、少しくらいの物価の上振れとか高止まりをしても、物価を標的にした金融政策の変更はちょっと考えづらいという理解でよろしいでしょうか。

§16Goushi Kataoka

物価の動向につきましては、おっしゃるように、今年の4月以降、一時的な原油価格の上昇、ないしは食料品価格等々の原材料価格の上昇分が効いてくること、それから携帯電話通信料の値下げ分が剥落しますので、そのことによってテクニカルに、少なくとも 1%台半ばを超える物価上昇率が長期化する可能性は当然あります。ただ、これ自体はいわゆる原油価格や原材料価格といった、わが国の国内要因に起因するわけではなく海外要因に起因する、かつウクライナ情勢も含めた地政学的なリスクや、そうしたわが国の経済動向とは関係のない要因から起こってくる物価上昇であり、一時的とはいってもなかなかそうした状況が改善されない限り、ないしは原油価格等々の商品市況が沈静化しない限り、物価上昇がかなり長引くリスクも当然あると認識しています。こうした情勢下の中、金融政策を現行の状況から変更するかどうかについてですが、これは講演の方でも強調させて頂きました通り、あくまで私どもは物価の基調というものをしっかりみていく必要があると認識しています。基調というのは、講演の中でも指摘した一点目として、消費者物価の上昇だけではなく、例えばわが国の国内所得全体のデフレーターであるGDPデフレーターの動きといった幅広い指標をみて、物価の動向をしっかり勘案していく必要があるということです。

§17Goushi Kataoka

GDPデフレーターの動きをみればお分かりの通り、消費者物価指数は上がっていますが、GDPデフレーターはマイナスの状況になっており、これは輸入価格が上昇することによる交易条件の悪化をストレートに反映しているというわけです。消費者物価指数とGDPデフレーターがともに上がり、なおかつそれが賃金の上昇を伴っているという話であれば、物価上昇はホームメイド・インフレになっているわけですから、政策変更といった話も視野に入ってくるかもしれませんが、現状は 2%だからといってそれとは真逆の状況になっていますので、政策変更をする必要がないという理解だと思います。それから二点目は、物価の基調をみる必要があるときに、様々な指標をみていく必要があるということです。例えば、特定の品目だけ上がっていて、そのことによって物価全般が上がっているということであれば、刈込平均でみた物価はあまり上がっていないということになります。それから物価観、ないしは物価のノルムといったところを表す指標である加重中央値をみると、0.2%~0.3%くらいと 0%台前半で、足許も殆ど変化がない状況です。講演の中でも強調させて頂いた通り、物価が2%を安定的に達成していた 1990年代前半の時期は、物価上昇率、実際のコア指数だけではなく、そうした基調的な指標も 2%を超える状況で安定的に推移していました。

§18Goushi Kataoka

そうした状態から比べると、わが国の現状の物価の基調を示す指標は、非常に弱い、基調としての物価は 2%に届いていないと判断ができると思います。それから、三点目として足許、物価上昇率がだんだん高まっていて、それが原油価格だけではなく、色々な品目の価格上昇を伴いながら進んでいる、裾野が拡がってきているということは事実ですが、物価上昇の勢いをみて、どれぐらい物価が伸びていくかという判断もできると思います。勢いということでいいますと、特殊要因を除いた物価上昇の勢い、これが先行き2年程度続くと仮定した場合の2%到達確率は、5 割を超えてきているわけですが、問題は100%という状態になり、それがずっと持続しないと安定的な物価上昇 2%達成という道にはならないということです。足許の状況は、特殊要因を除いても 5 割を超えている状態でまだ 100%になっていません。かつ 100%の状態がずっと続くという展開にもなっていません。まだまだ物価上昇の勢いという観点からみても、2%が安定的に達成できるという経済環境からは遠いのではないかと私自身は理解しています。現状において、わが国における金融政策の少なくとも引締め方向への転換は、ないのではないかということが私自身の基本的な理解です。

§19Question

これまでの質問とちょっと重複してしまうかもしれませんが、改めて二点伺います。まず、円相場ですが、1 ドル 120 円台を上回るドル高円安になっていまして、120 円というキャッチーなレートになっていることについて日本経済への影響はどうなのか、経営者心理への影響はどうなのかといったところでお聞かせください。また、先ほども在任中 2%目標の安定的な達成というのはなかったわけですけれども、2%を達成できなかった理由として、最も大きいと片岡委員がご覧になるのはどういった要因でしょうか。

§20Goushi Kataoka

現状のドル円レートの水準が日本経済にどういう影響をもたらすかという話については、私どもは為替レートの水準にコミットしているわけではありませんので、直接的なお答えは控えさせて頂ければと思います。そのうえで一点申し上げるとすれば、先ほども申し上げたように円安の経済効果は、短期的な輸出入価格を通じた価格影響と、それから数量を通じた輸出量の影響、そして資産効果といった部分に大きく分けられると思いますので、こうした部分を踏まえたうえでしっかり判断していくことが重要ではないかと考えている次第です。それから、在任期間ではまだ 3 か月超、それから金融政策決定会合では 3 回残っていますので、まだまだ期間はあると、悪あがきはできると感じてはいますが、このタイミングでなかなか「物価安定の目標」を達成できなかった理由というのは、これは色々なものがあるのかなという気はします。非常に難しい問題であると思いますが、やはりそうした観点で申し上げれば、結果が全てですので、現状の政策が私個人の立場からすれば十分ではなかったのではないかと感じている次第です。

§21Question

信用調査会社の調査によりますと、青森県の 2021年倒産件数が過去最少だった一方で、休廃業・解散が増加に転じているという調査がありました。新型コロナの政府等の資金繰り支援で倒産件数は減っているものの、休廃業・解散は後継者不足などで増加に転じているという話です。アフターコロナ、ウィズコロナで今年あるいはその先の展望について、お聞かせください。

§22Goushi Kataoka

倒産件数が減っている一方で、休廃業が増えているという状況については、倒産件数の減少は政策的な要因といいますか、政府、日銀ないしは地域社会を含めた政策的な効果が結構効いているのではないかと認識しています。そして、休廃業が多いというところですが、ご指摘のようなネガティブな側面がある一方、コロナ禍で新しい動きを進めていくという中では、やはり廃業が進む一方で、開業するとか新しい動きが出てくることが重要だと思います。廃業が進んでいるからといってネガティブに考えるだけではなくて、むしろポジティブな形に捉えていくことがとても大事だと思います。この点、本日の懇談会でも、いくつか明るいお話を頂きました。特に開業等々の話については、地元で AI 等の新技術を使った農業の振興や、そういったものを行うために若手の方が都会から青森の方にUターン、ないしはIターンの形で移って新規の事業を進めるといったポジティブな動きも進んできていると伺っています。こうした動きがより拡がっていくことが非常に大事ではないかと考えている次第です。(森本支店長)若干補足をさせて頂きたいと思います。事業承継の問題そのこと自体についても非常に大事なことだと思っており、実際に県内では、経済団体や地域金融機関といったところが承継問題に対してサポートを強化していると認識しています。

§23Goushi Kataoka

個別の案件について色々と時間のかかることだと思いますが、地道な取り組みが成果につながっていくことを期待したいと考えています。以上