高田審議委員・田村審議委員就任記者会見(2022年7月25日)要旨
Full text
§1Question
最初に質問をお二方にさせて頂きます。まず、審議委員就任にあたっての抱負についてお伺いします。導入から9年余りになる異次元の金融緩和が効果を発揮していくために、これまでのご自身の経験を踏まえて、政策運営上、どのような役割を発揮していきたいか、お聞かせください。(高田委員)本日、辞令交付を受けまして、新たに審議委員になりました高田と申します。これからどうかよろしくお願いします。私自身は、今から40年前に大学を卒業して社会人になり、今年40年という節目に当たります。ちょうど40年前に銀行に入り、その後、証券会社、シンクタンクを経て、先日まで証券会社にいました。その間、多くの期間を、ディーリングルームを中心に市場業務や金融市場をみるアナリスト、それからストラテジスト、エコノミストとして従事してまいりました。同時に、日本銀行を中心とした中央銀行ウォッチャーとして、外部の目から日本銀行の動向をフォローしてきたわけです。ちょうど今から 40年程前になりますが、大学時代の頃から中央銀行の動きに注目してまいりまして、ある面で言いますと、中銀ウォッチャーとしての先駆け的な面があったのではないかと思います。同時にその間、1970年代以降の半世紀の状況は、世界が市場化していく、グローバル化していく、その中でも特に金融の拡大というものがあったわけで、その間私も実務家としてその流れを体験してきました。
§2Question
同時に、日本はバブル崩壊前後ということでもあるわけですが、そのバブル崩壊後の大きな苦境、それからストレス、そういうものにも金融機関の現場で立ち会ってまいりました。そうした観点からしますと、この40年にわたる歴史観を背景に仕事にあたっていきたいと思っていますし、特に、日本の場合はバブル崩壊以降のきわめてストレスがかかった状況にあった点を、歴史観としてみていきたいと思っています。単に目先のことだけではなく、そうした 40年間の内外情勢、中でもとりわけ日本がかなり異例であったということを背景にした議論もさせて頂きたいと思っています。ただ、あくまでも今申し上げた点は、外部のウォッチャーとしての立場であって、日本銀行の一員として、政策を担う立場というものは自ずとやはり大きく異なるわけです。それだけに、身が引き締まると同時に、責任の重さというものを痛感しています。外部から40年見続けてきた経験・知識というものをバックに、今後、日本銀行の中での調査を踏まえ、また同僚と議論しつつ政策に臨んでいきたいと思っていますし、日本銀行に対する国民的な負託に沿うべく、全身全霊を傾けていきたいと思っています。そういう意味では、今申し上げたような日本の特異性というものが、この9年半に起きた効果にも大きな影響を与えていたという部分がやはりあったのではないかと、私も就任にあたって感じている次第です。
§3Question
(田村委員)審議委員を拝命しました田村でございます。どうぞよろしくお願いします。足元、わが国の経済・金融を取り巻く環境が大きく変化している局面で、この審議委員という職を拝命しまして、その使命の重大さ、責任の重さを痛感しているところです。誠心誠意、その使命を果たすべく頑張ってまいりたいと考えています。私は、前職のときに経済調査の仕事をしていた時期もありますが、その頃から日本銀行は日本最高レベルの調査・分析機能を有しているとずっと思っていまして、これからそういう人たちと一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています。私の職歴ですが、民間の銀行に 38年余りいました。その中で、よく言われる金融は経済の黒子であるとか、経済の血液とも呼ばれていますけれども、実体経済を裏から支える重要な役割を持っていると考えています。銀行員生活の中で経営企画的な部署に 20年間、それから個人ビジネスの現場に 9年間、それから先ほども言いました経済調査に6年間携わっていました。経済調査での6年間の中には、ロンドンに駐在していたこと、それから当時の経済企画庁に出向していた時期を含めています。
§4Question
この2000年前後の金融不安の時代を経営企画で過ごした経験は、金融システムの安定確保という意味で、日本銀行の責務に貢献できることもあろうかと考えていますし、個人ビジネスの現場の経験は、消費者の視点で政策委員会の議論にインプットしていけるのではないかと考えています。これまでの金融実務家としての経験・考えを活かしながら、ただ一方で、今後、日本銀行審議委員として得られる様々な知見というものを、先入観を持つことなく謙虚に吸収して、時々の状況を丁寧にとらえながら、自らの意見・考えを述べていきたいと考えているところです。
§5Question
一点目はお二人にそれぞれ伺いたいのですが、高田委員、田村委員ともに、市場あるいは銀行・金融部門と、金融政策の波及経路を確保するのに不可欠なセクターでのご見識がおありと思います。そういう見識を踏まえたうえで、今のYCCという政策の持続性またその副作用についての声が高まる中、その副作用をどう軽減していくのか、あるいは、やがてはこの政策の出口を模索しなければいけない局面が近々来るのか、その辺りについて伺いたいと思います。二点目は、高田委員に是非伺いたい点ですけれども、6月には長期金利が急騰しまして、日銀はYCCを維持するために、指値オペ等、様々な手段で国債を大量に購入しました。再び金利上昇圧力が高まった場合、日銀のこのYCCは市場の観点からみて持続可能なのでしょうか。例えば、10年金利は0.25 でピン止めできたとしても、イールドカーブの他の年限に歪みが出るといった現象が起こりました。こういったことがまた起こる可能性、およびそういった歪みについてどのように解消できるのか、その辺りをお願いします。(高田委員) YCCに関しては、ちょうど昨年の 3月に、点検で色々な確認をしていますけれども、その結果として、貸出金利や市場での調達コストの低下を通じて、緩和的な金融環境が実現できていると理解しています。
§6Question
同時に、緩和的な金融環境を通じて、企業の収益の動向や労働市場の引き締まりといったマクロ的な改善もあり、その結果として、ある程度賃金が上昇したといった改善があると思っています。ただ一方で、これはYCCに限らないことだと思いますが、長期の低金利環境が続く中で、金融機関の利鞘の縮小や国債市場の機能度への課題があるという点も挙げられているのでないかと思います。YCCについては、経済・物価へのプラス効果と、色々な面での金融市場への影響という、この両面を議論していく、その中で適切なイールドカーブ等がどのような状況になっているのかということを考えていくということだと思います。昨年3月の点検の作業の中でも、この色々な議論を行い、シミュレーションもしながら、概ねゼロ%から 0.25%前後という間であれば持続的なのではないかとの議論になっていると理解しています。ただ、今後、マーケットの動向というのは当然変化があるわけであり、私もちょうど本日就任したということでもありまして、先々の動向についてはあまり予断を持たず、今後の金融政策決定会合までに色々と考えたいと思っています。また、一般論としては、市場の動きに対しては様々なモニタリングを重ねていくことが基本中の基本であろうと思います。市場の動向に注目し、そこからのメッセージについて見極めていきたいと思っています。
§7Question
(田村委員)日本銀行の大規模な金融緩和の効果については、今、高田委員からお話があったように、そのプラス効果で経済が 10年前と比べれば大きく改善しているというのは、その通りだと考えています。一般論として、どのような政策にも効果と副作用というものがあり、効果が政策目的にかなうということであれば、──もちろんその副作用に関して別途の対策が必要な場合もあるとは思いますけれども──基本的にはその政策は正当化されると考えています。そして、効果はあったと思います。ただ、持続的に賃金の上昇を伴うかたちで、2%の「物価安定の目標」を達成するという好循環が実現しているかという点については、今まさにそれを目指しているところで、ひょっとするともうすぐのところに来ているのかもしれないと思います。従って、副作用にも注意しながら、その好循環が実現していくかをしっかりとみていく必要があると思っています。そして、そういう好循環が実現できれば、先ほどご質問にもあったような出口戦略が次にあるということで、政策金利の調整や拡大したバランスシートの縮小がポイントになると考えています。けれども、そのやり方は、その時点における経済・物価の状況や金融情勢によって大きく左右されることになるとも思っています。
§8Question
出口戦略、あるいは金融の正常化と言われたりもしますが、それを達成できて初めて、大規模金融緩和という政策が成功・完結ということになると思いますので、今後、執行部からの説明も受けながら、その時々で適切と考える意見を述べていきたいと考えています。(高田委員)出口戦略については、私の先ほどの回答で言及がなかったため、付け加えたいと思います。今の時点でどうこういう状況ではないと思っていますが、一般論として、出口については常に考えておくべき論点だと思っています。私自身もかつて議論したことがありましたし、これからも様々な議論を進める局面が出てくるかと思います。二番目にご質問頂いた今後の金利の状況ですが、あまり仮定に基づいた議論を今の段階でするのは適切ではないと思っています。ただ、先ほどの議論と少し重なるところもありますけれども、昨年3月の点検の作業の中で、概ね±0.25%という変動幅の中であれば、市場機能をある程度保ちながら、一方でこれまでの政策的な効果を保てるということであったと思っています。そういう観点からは、持続性のある状況と考えてもいいのではないかと思っています。
§9Question
ただ、将来のことについては、繰り返しにはなりますけれども、これから時間をかけながら、全身全霊を込めて、これまでの知見、これから得られる情報を踏まえつつ、改めて議論し、またその結果を金融政策決定会合に反映させていこうと思う次第です。
§10Question
二点、お二方にお伺いします。まず物価目標についてです。高田さんは、過去に 2%目標の達成は難しくて、これにこだわれば金融緩和がいつまでも続くのではないかと指摘されていたと思います。現在、消費者物価の上昇率は 2%を上回っていますが、日銀が目指す意味での賃金上昇を伴った物価目標の達成は可能とみているのでしょうか。みていない場合、これを見直す必要はあるのでしょうか。もう一点ですけれども、マイナス金利についてです。田村さんは、日銀がマイナス金利を導入した 2016年に全銀協の企画委員長に就任されていると思います。高田さんも、マイナス金利を含めた緩和の長期化が、金融機関の収益を圧迫しているのではと副作用を指摘しています。マイナス金利政策の導入から6年半が経った現在のマイナス金利の効果と、金融機関や市場に与えた影響をどう考えているのか、なるべく早く見直した方がいいのかを含めて教えてください。(高田委員)まず、物価目標ということですが、確かに私もかつてエコノミストだった時に、なかなか 2%の「物価安定の目標」の達成は難しいのではないかというような議論をさせて頂いたことがありました。ただ、ちょうど本日から、日本銀行にこういうかたちで就任させて頂く状況の中で、色々な内外における知見、もしくは情報、色々な議論というものを踏まえながら、これから改めて実現性などを議論させて頂きたいと思っている次第です。
§11Question
そういう意味では、これからは、かつての議論とは一線を画させて頂きながらも、当然のことながら日本銀行の使命というものが、2%の「物価安定の目標」を含めて、物価の安定を通じて日本経済の健全な発展に資するということでもありますので、その辺を議論させて頂きたいと思います。ただ、先ほど最初に申し上げたところからの議論に立ち返りますと、やはり物価がなかなか上がりにくいというのは、これまでの長い間、物価や賃金が上がりにくいことを前提にした考え方というか、空気というものが、社会全体に非常に長く根付いてしまったのではないかと思う次第です。ですから、その転換に予想以上に時間がかかってしまったということもあるのではないかと思います。特に、日本の期待の形成は、多分に過去の履歴に支配される、いわゆる適合的期待形成というものです。私も長くエコノミストでいる中で、先ほど 40年と申し上げましたけれども、バブル崩壊以降と言ってもいいのかもしれませんけれども、そういうストレスというものが、過去のトラウマのような感じとして存在し、そうした状況からの脱却に予想以上に時間を要してしまったという部分は、やはり大きかったのではないかと思っています。
§12Question
ただ、そうは言っても、足元の状況を考えてまいりますと、物価が持続的に下落するという状況では次第になくなってきたという点もありますし、今年も含めてベースアップも連続でそれなりに実現してきています。また、色々な企業もしくは経済主体のスタンスも変わってきている部分もあると思いますので、そういう意味からしますと、やはり気長にというか、丹念にというか、持続性を持った対応をしながら、なんとか実現していくというのが正解なのではないかと思っているところです。それから、二番目にご指摘頂きましたマイナス金利については、ちょうど 2016年からの導入ということで、先ほど申しましたように、金融機関の収益に対する、やはり利鞘の縮小を通じた影響があるというのも現実ではないかと思います。ただ、一方で、こうしたマイナス金利も含めた異次元の緩和、それから「量的・質的金融緩和」、そして様々な金利への対応というものが、かつての物価や経済環境にある程度の改善をなしてきたというのも、やはり事実なのではないかと思います。金融機関にとっては、信用コストが低下する部分も当然あったわけですし、ある程度前向きな動きが企業活動にも出てきたという部分もあるわけです。
§13Question
そういう面からしますと、もちろん一つの副作用というものはあるわけですけれども、先ほどの議論とも同様、バランスをもって両面を持ちながら議論していくこと、また、その両面をモニタリングしていくことが、やはり必要になってくるのではないかと思っています。そういう点も含めて、丹念に見極めていくことが必要ではないかと思う次第です。(田村委員)まず一つ目の 2%の「物価安定の目標」についてですが、もともと 2%が設定されたのは、皆さんご存知の通り、統計上のバイアスや政策対応力の確保、グローバルスタンダードということです。それはその通りでしょうけれども、一方で、高田委員からもお話がありましたように、わが国社会に根付く考え方や慣行が、2%の「物価安定の目標」と整合的なのかといったような議論もありますし、逆に、わが国が長く染み渡ったデフレから完全脱却するためには、もっと高い目標を、という議論もあると認識しています。更に物価というものは、金融政策だけではなく、様々な要因で変動するものだと考えています。従って、日本銀行審議委員という立場になりましたので、何がベストなのか、執行部からの説明も受けながら、丁寧に謙虚に考えていきたいと考えています。
§14Question
先ほど、私の職務上の経験から個人取引部門を担当していた視点で、ということを申し上げましたけれども、例えば、物価に関して申し上げますと、やはり日本の消費者もしくは個人は、──欧米のことをそんなに知っているわけでもないですけれども ──リスク回避的な行動というのが欧米より強いのではないか、それが物価があまり上がらないことにもつながっているのではないかと感じていました。例えば、感染症が拡大したときに、米国では外食や旅行ができない代わりに、百貨店で耐久消費財を買うという動きが割と広がりましたけれども、日本ではそうはあまりならず、その分貯蓄がどんどん増えていくといったようなことになりました。あるいは、物価が上昇してくるとなると、私が銀行で取引していたお客様は、老後の備えのために貯蓄していて、物価が上がるならもっと貯蓄しなければという動きも出てきました。それから、よく言われますけれども、賃上げよりも雇用の安定を求める、そういった日本の特性なども、個人取引を担当していた身からは実感していますので、繰り返しになりますけれども、今後、執行部からの説明も受けながら、謙虚に考えていきたいと考えています。
§15Question
二つ目のマイナス金利の効果については、全銀協の企画委員長をしていた頃から私の言っていることは変わっていないつもりですけれども、もちろん効果と副作用があって、そのバランスをしっかりとチェックして、政策を続けるのかを考えてほしいということを日本銀行に対して申し上げていました。それは、今でもその通りだと思っています。先ほど来、話が出ている通り、効果というのはやはり一定程度出ている一方で、マイナス金利がどこまで限界的に効果があるのか、そういったことも含めて、今後は日本銀行の立場として、しっかりみていきたいと考えています。
§16Question
お二方に伺いたいのですけれども、春頃から急速な円安を伴って、為替が急変動した局面もあるのですけれども、その為替動向についてどうみられているかというのをお伺いできればと思います。(高田委員)為替については、基本的に日本銀行ということよりは、政府の方で、一つの動きをみているのだと思いますけれども、一方で、日本銀行の政策や経済全体に関わるところは当然出てくるわけですので、そういう面から、やっぱりみていかなければいけないと思います。そして、為替の動きとなりますと、当然のことながら様々な要因があるわけですから、金融政策が絡むところはあろうかと思いますけれども、為替の動きは相対的なものですから、日本だけではなくて海外の動き、そうした相対的な環境ということでもあります。そういう面からしますと、もちろん日本の環境変化というところ以上に、最近の動きをみていますと、やはり海外、中でも米国であり欧州、もしくはグローバルで、大きな環境変化があったという中での状況ということではないかと思う次第です。為替について一義的に日本銀行がどうかという議論については、私はコメントを控えたいとは思っています。
§17Question
ただ、一般論として言いますと、この為替の大きな変動というのは、当然、先行きに対する不確実性を高めるという状況でもありますので、そういう面から、変動というものは、どうしてもやはりある程度安定させていくことが必要だということです。また、そういうことに対応しながら、政策全般的な対応を取っていくことが必要になってくるのではないかと思います。ですから、特にまた今後の動きについては、私自身、就任してから様々な情報を得たうえで、色々判断させて頂きたいと思う次第です。(田村委員)今の高田委員のご発言にあまり付け加えることもないのですけれども、民間で経営企画をやっていた立場としても、短期間での為替の大幅な変動は全くもって望ましくなく、為替がファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが望ましいというのは、まさに実感としてそうだと思います。この為替相場は、内外金利差だけではなく、経済・物価情勢の相手国との違いや国際金融資本市場の動向、輸出入からの需給など、色々な要因によって変動します。先ほど、昔、経済調査を担当していたと言いましたけれども、30年以上前に担当していた頃、為替相場の担当もしていたのですが、その頃はとにかく毎月、米国と日本の貿易収支が発表されると為替相場が大きく動くというような時代でした。
§18Question
申し上げたいことは、現在は、市場が金利差、それも実質金利差ではなくて名目の金利差に注目してこういう動きになっていますけれども、為替相場の動き、それから何よりも重要なこととして、それが経済や物価にどのように影響を与えていくのかについては、しっかりと注視していく必要があると考えています。
§19Question
足元で新型コロナウイルスがまた急拡大しておりまして、感染者が増える状況にあります。また、海外経済、欧米を中心に物価高や引締めなどで減速懸念も強まっていますが、先行きの日本経済について、この辺のリスク要因が顕在化して日本に与える影響に対して、どのように今、懸念を持たれているのか、リスクに感じておられるのか、ご見解をお願いします。(高田委員)やはり色々な意味での不確実性が今は非常に大きいと思っています。一つは、今ご指摘がありましたコロナの状況です。もう3年目に入ったわけですが、依然としてこれだけ足元も大きな感染があるという状況です。それなりにこの 2年半の中での知見とか、色々な意味での医療的な対応というものが出てきたとはいいながらも、やはりこれも依然として不確実な面はまだ拭い去ることができません。そういう意味では、経済へのサポートがやはり必要ではないかと思います。それから、二番目にご指摘があった欧米を中心とした動きというか物価高の状況には、ウクライナ紛争等の地政学的な問題、それからコロナ後というような状況の中で欧米を中心に物価が非常に上がり、労働市場も非常に逼迫しているというような、供給面・需要面の両面で大きな不確実性を抱えているという部分があるのではないかと思います。
§20Question
それを受けて日本経済の動向ですが、このコロナの動向というものも、確かに足元、非常に感染の面で不確実性はありますが、経済全体からいえばウィズコロナという方向に向かってきたという部分もあるわけですから、正常化の方向に向けた一歩を踏み出しているという部分もやはりあるのではないかと思います。また、日本経済も非常に長いトンネルという状況の中で、ようやく企業セクターのマインドというか、物価の動きもそうですが、こうしたところも基調としてみれば改善してきている流れもあることを踏まえると、そういう面での改善の動向というか、そういう基調やトレンドは出てきているのではないかと思う次第です。しかしながら、今申し上げたようなコロナにおける不確実性、それから内外経済、中でも海外においては急速な金融の引締めの流れに入っている国もいくつか出てきているという状況ですから、そうした状況の中で、当然のことながら一部先行きの海外経済に減速といった思惑も出てきているということもあるわけです。そうした展望を背景にしながら日本経済の動きについてみれば、基調としては改善の流れにあるということかと思いますが、やはりまだ予断を許さない不確実性を抱えている、そういう脆弱性という部分があるということではないかと思っていますので、そうしたことを背景にしながらの対応がやはり必要ではないかということです。
§21Question
それから、最初のところで申し上げましたように、この40年間を考えますと、この 40年という流れは、先ほど申しましたグローバル化もしくは市場化というものが、やや転換というような動きを迎えている部分もあるわけですから、そういうことも踏まえた歴史観というか、特にそういう中での日本の立場というか、かなりストレスを抱えていたというような中からの改善であるということも踏まえながらの見方というものも、同時に必要なのではないかとみている次第です。(田村委員)私も日本経済は、基本的には改善していく方向にあると考えていますが、今、記者の方がおっしゃられたような例えば感染症の再拡大、あるいは海外経済の下振れ、それからウクライナがどうなっていくのかという下振れリスクはやはり抱えていると思います。そのリスクが万が一顕在化してしまった場合に、どのくらいのインパクトで顕在化するのか次第で日本経済に与える影響は当然変わってくるわけですが、今の時点でその下振れリスクのインパクトがどれくらいかは、ちょっと予見しがたいので、しっかりみていく、しっかりみていって果断に対応するということしかないのではないかと考えています。
§22Question
為替について追加で聞かせてください。先ほど、短期間での急激な変動は経済にとってマイナスであるという点では、お二人ご意見が一致していたかと思うのですけれども、為替の急激な変動を予防したりですとか、あるいは急激な変動が起こったときにそれを緩和させたりですとか、そういった政策の中で、中央銀行が一定の役割を果たし得るとお考えになるか、この点ご意見をお伺いできればと思います。(高田委員)為替については、先ほど申し上げましたように、当然そうした動きに対応するというのは、日本銀行の立場で行うということではないと私は思っていますし、政府の対応ということになるのだろうと思います。ただ、当然のことながら、為替の変動が経済全般また金融市場にも影響を及ぼすということはあるわけですから、それに対して包括的な意味から、日本銀行で対応していくということは、もちろんあろうかと思います。そういう面から言いますと、経済全体の体温に持続性があるよう緩和姿勢を示しておくということになるわけなので、そういう意味では、短期的な動きに対応して、それぞれの動きをみて日本銀行が対応していくということより、これまでの「量的・質的金融緩和」の効果によって経済全体の動きを高めていく、もしくは持続性のあるものに育てていくというかたちでの対応が中心になっていくのではないかと私は思っています。
§23Question
ただ、いずれにしましても、今後も当然市場の動きは目を離すことができない状況かと思いますので、そうした経済に対する支え方自体も、今後の動きを見ながらというかたちになるのではないかと思います。また、今後ということになりますと、先ほど申し上げましたように、予断を持って申し上げるようなことは、今の立場としてはできないわけですので、今後の金融政策決定会合の場で、改めて私の方でも姿勢を示しながら、またそれまで色々な知見を情報収集しながら対応させて頂きたいと思う次第であります。(田村委員)これについても高田委員と基本的な考え方は同じですが、中央銀行たる日本銀行としては、為替相場の動きを注視して、為替相場の動きが経済や物価に与える影響に応じて、金融政策をとっていくということに尽きるのだろうと考えています。
§24Question
一般にインフレに許容的だったり、金融緩和スタンスに考え方が近い場合をハト派、逆にインフレに警戒的であったり金融引締めの考え方に近い場合はタカ派と呼ばれたりします。お二人は自分でハト派なのかタカ派なのか、それとも中立派なのか、考えをお聞かせください。(高田委員)ハト派かタカ派かどちらなのかということですが、私自身考えますと、先ほど申しましたように 40年間対応してきたということから申しますと、局面に応じてタカだった時期も当然ありますし、また一方でハトだった時期もあると色々考えているところです。今ハトかタカかどちらかということを決めるというより、日本銀行が 2%の「物価安定の目標」を定めながら、その局面によって今はこうしたものがいいのではないか、場合によってはタカがいいのではないか、また状況としてはハトの局面がいいのではないかというようなことを考えながらというのが、今後の私自身のスタンスということではないかと心得ています。そういう意味では、どちらかと言われますと、私も困ってしまう部分もありますが、あくまでも、これから5年間という期間のミッションを与えられていますので、今申し上げたような中で判断をさせて頂きたいと思っている次第です。
§25Question
(田村委員)ハト派、タカ派、その定義が何なのかということもありますが、民間でずっとビジネスをしてきましたので、自分の主義主張を一つに決めて、いつでもこういう意見であるといったタイプではありません。プロ野球のファン・チームは、物心ついた頃から鷹派ですが、日本銀行審議委員としてはこれからの状況を本当に謙虚にとらえて、都度考えていきたいと考えています。以上