総裁記者会見(2022年11月14日)
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§1Question
幹事社からは大きく二点質問をさせて頂きます。まず一点目なんですが、午前中の金融経済懇談会についてです。午前中の懇談会では、地元経済界から様々な声がありました。為替相場が金融政策の直接コントロールの対象でないとしたうえでの、安定した為替相場の早期実現などをお願いする声がありました。為替の過度な変動は企業の事業計画の策定にですね、やっぱり大きな不確実性をもたらして、足元の円安はレベル感にも厳しいものがあるという印象が拭えないといった声も結構目立ちました。こういった出席者との意見交換の内容を踏まえまして、懇談会の感想をお聞かせ頂ければと思います。二点目なんですが、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みについてです。総裁から先ほど、気候変動関連の投融資をする金融機関に対しまして、長期の資金を供給する気候変動対応オペに関する説明がありました。現時点で 63 の金融機関がこの仕組みに参加していまして、3.6 兆円の資金供給があるというお話がありました。当地の金融機関の脱炭素関連の投融資など、現状などもどうみていますでしょうか。以上、大きく二点、幹事社からよろしくお願い致します。
§2Haruhiko Kuroda
本日の懇談会では、当地の経済界、金融界を代表する方々から、金融経済の現状や直面する課題に関する貴重なお話をお伺いするとともに、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望を頂きました。大変有意義な意見交換ができたと思っております。この場をお借りして、改めて御礼を申し上げたいと思います。席上、様々なご意見を頂きましたので、私なりに整理して、三点ご紹介させて頂きます。第一に、当地の経済情勢について、持ち直しの動きが一服しているとの見方が聞かれました。自動車の供給制約の影響が大きいため、日本経済全体の評価と比べていくぶん慎重な見方になっていると感じました。また、エネルギー価格や原材料価格が高騰する中、中小企業を中心に十分な価格転嫁ができていないという声が聞かれました。こうしたもとで、経済の好循環を実現するためには適正な価格転嫁を実現する環境整備が重要であるとの見方も示されました。また、最近の急速な円安進行は企業の事業計画の策定に大きな不確実性をもたらすとの見方が示され、為替相場の安定を望む声が聞かれました。日本銀行としては、引き続き、政府とも緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向やそのわが国経済への影響を十分に注視してまいります。第二に、金融面については、感染症が拡大した当初に比べると資金需要は落ち着いているものの、業種毎のばらつきが大きいと伺いました。
§3Haruhiko Kuroda
製造業では、脱炭素化やデジタル化への対応といった前向きな資金需要がある一方、飲食・宿泊などの一部の企業では、引き続き金融機関からの金融支援を必要としている先もあるとの声が聞かれました。日本銀行の金融政策運営については、引き続き円滑な資金供給と金融市場の安定維持に努めてほしいとの意見を頂きました。最後に、カーボンニュートラルの実現とスタートアップの強化といった、わが国経済全体にとって大変重要な課題について、当地の経済団体がしっかりと支援されていくとの心強い声が聞かれました。カーボンニュートラルの実現などに向けた提言や産学官の連携を行ったり、イノベーターたちがコミュニティを形成するための場を提供したりといった具体的な取り組みを伺いました。当地の皆さまには、引き続きわが国経済の持続的な成長をリードして頂くことを期待しております。東海経済の現状については、先ほど申し上げた通り、持ち直しの動きが一服しているというふうに判断をしております。生産や輸出については、車載半導体などの不足により足踏み状態にあります。原材料価格やエネルギー価格の高騰もあって、企業収益は下押し圧力を受けています。他方、設備投資は、脱炭素化、電動化、デジタル化などへの対応から、積極的なスタンスが維持されているようにみえます。
§4Haruhiko Kuroda
個人消費については、最近の物価上昇は家計の消費マインドを慎重化させているものの、ペントアップ需要の顕在化や全国旅行支援など、感染抑制と経済活動の両立が進むことで持ち直しの動きがみられているように思いました。先行きにつきましては、景気は緩やかに回復するとみられますが、やはり海外経済や資源価格を巡る不確実性は大きいため、引き続き、当地経済に及ぼす影響を丹念に点検してまいりたいと思います。以上です。
§5Question
総裁に二点お伺いします。まず一点目、為替相場についてお伺いします。総裁、本日の挨拶の中で、現在の経済の下押し要因の一つに物価上昇を挙げられまして、その背景として、為替円安を一因とした輸入物価の上昇ということについても触れられました。一方で、先週後半にですね、アメリカの物価指標の公表をきっかけにして急激な円高が進みまして、この 2日間でおよそ 8 円も円高が進行しています。今回の足元のこの急激な円高の大きな要因ですとか、あるいはこれが日本の経済・物価に与える影響について、どう評価されていらっしゃいますでしょうか。もう一点、本日の懇談会で、地元の経済団体の方から 2013年1月の政府と日銀の共同声明についてですね、その実効性を点検して、政府と議論を深めてほしいという要望がありました。この共同声明の点検ということについて、何か対応を取るお考えはございますでしょうか。また、政府と日銀の共同声明発表からまもなく 10年となるわけですけれども、この間、これがもたらした効果ですとか、あるいは十分に効果が発揮できなかった課題などについて、総裁のお考えをお伺いしたいと思います。
§6Haruhiko Kuroda
まず、第一の点につきましては、為替レートにつきましては、何といっても、経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということが最も重要な点でありまして、最近進んでいた円安は一方的で急速で、企業の事業計画の確実性を損ない、経済にとってマイナスであるということを申し上げてまいりました。政府は、こういった状況も踏まえつつ、何度か為替市場に介入されたということもあって、異常な、一方的で急速な円安の傾向は、いったん止まっているように思います。それ自体は大変結構なことであるというふうに思っております。今後の為替相場の動向につきましては、何とも申し上げかねますけれども、最近まで円安ドル高が進んできた背景には、一つには、資源価格がロシアのウクライナ侵攻以降、急激に上昇して、わが国の場合は、石油や天然ガスを含めて、エネルギーの類はほとんど輸入に頼っておりまして、それらはしかもドル建てで取引されていますので、ドルの実需が増えて、ドル高円安になったということがあった後に、米国のFRBが、金利を急速かつ大幅に引き上げるということを始めたこともあって、これは、実は円だけでなくて、世界中の主要通貨が、ほとんどドルに対して弱くなって減価して、いわばドルの独歩高になっていたわけです。
§7Haruhiko Kuroda
そういう状況から、来年以降どういうふうになるかというのは、なかなか難しいところですけれども、米国が金利をそれだけ大幅に上げてきたということは、インフレの懸念があるということで上げてきているわけですから、そういう国の通貨が、日本のようにインフレ率の低い国の通貨に対してどんどん上昇していくということは、あまり想像しがたいわけですし、また、わが国の経済は、今年度、来年度、再来年度と、潜在成長率を上回る成長が見通されているわけですけれども、やはりアメリカの場合は、金融の急速な引き締めもありまして、来年は成長率がかなり大幅に減速するという見通しが、これはIMFも含めてされているわけでして、そういう中で、ドルの独歩高がいつまでも続くということは想像しがたいというふうに思っております。いずれに致しましても、為替相場は、経済・金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移するということが望ましいということに尽きると思います。
§8Haruhiko Kuroda
それから、2013年の政府と日本銀行の共同声明というものは、これは現在でも有効だと思いますし、実際、そのもとで政府・日本銀行のそれぞれの責任分野における政策の進展によりまして、日本経済はデフレでない状況になり、経済成長も回復し、先ほどの会議で申し上げたように、2010年代の 1 人当たりGDPの成長率は 1%強でして、これは米国の 1 人当たりGDPの成長率とほぼ匹敵するぐらいの成長率でありまして、成長は戻ったと。他方で、400 万人とも500 万人ともいわれる新規の雇用が生まれ、かつ、それが労働力として供給されたということもあって、成長も先ほど申し上げたように回復したし、デフレでもなくなったわけです。他方で、物価の上昇率は、2%の物価安定目標は達成されないという状況が続いておりまして、それがその後、コロナの中では、これは全世界、ほとんどの国がマイナス成長にいったん陥ったんですけれども、その後、コロナ禍からの回復過程に皆あるというところでありますけれども、欧米の場合は、8%~11%という非常に高いインフレ率になっているわけです。
§9Haruhiko Kuroda
わが国の場合は、輸入物価の上昇を反映して 3%程度の上昇になっておりまして、これもその影響が来年にかけてだんだん減衰していく中で、2%の物価目標を割れるような状況が当面続くということでありますので、まさに、2013年の政府・日銀の共同声明そのものに沿って、2%の物価安定目標を安定的・持続的に達成するために金融緩和を続けます。他方で、政府は機動的な財政運営を行うとともに、中長期的な財政の健全化、持続可能性を高めるという努力をされておられるということだと思いますので、私自身は、政府と日本銀行の共同声明は現在でも有効だと思っておりますし、政府もそのような考えであるというふうに理解をしております。
§10Question
総裁、午前中の講演の中で、今後の政策運営について、上下双方のリスクを丹念に点検し、適切にそれに応じて政策を運営されていくというご発言をされていましたが、これは、上振れリスクはどんなかたちで顕現化するかにもよるとは思うんですけれど、上振れリスクが顕現化した場合には正常化の方向の動きもする用意があるという理解でよろしいんでしょうか。それと関連して、この文言だけをみるとですね、緩和バイアスを今、日銀は今金利に対して維持してきていると思うんですけれども、そことの整合性について、要するに、金利については現在の水準か、それより低い水準で動くことを想定しているという緩和バイアスとですね、上下双方向というと、何かそこに齟齬はないのかというところについてお願いします。
§11Haruhiko Kuroda
そこは、従来から申し上げていることを今回の展望レポートでも繰り返しているわけでして、経済・物価見通し自体は少し変わっていまして、足元の成長率は少し下方修正して、他方で、足元の物価上昇率は上方修正しているわけですけれども、来年度、再来年度の成長見通し、あるいは物価見通しについても若干の修正はしています。基本的なリスクに対する見方としては、成長率についてはやはり下方リスクが大きいかなと。それから、物価上昇率については、上方リスクの方が大きいかなと。これは、政策委員(注)の経済成長、物価見通しのそれぞれのリスク分布について、お示しになっていることを総括したところであります。そういったもとで、メインシナリオとしてはやはり、今年度の物価上昇率というのは上方修正して、年度全体で 2.9%くらいになると見通しているわけですけれども、来年度は輸入物価の影響がだんだん減衰していって、1.6%上昇ぐらいになると。再来年度もそのくらいだという見通しですので、当然そういうことを踏まえて金融緩和を続けるということにしたわけです。
§12Haruhiko Kuroda
もちろん、常に、年に 8 回、金融政策決定会合がありますので、その都度、前回の会合からの新たな情報や統計、それを踏まえて、次の会合までの金融政策について決定するという仕組みになっていますので、色々な状況に応じて機動的に政策運営ができるようにはなっていますが、今のところ、先ほど来申し上げている展望レポートという、足元だけでなくて来年度、再来年度を見通すと、物価上昇率は 2%以下にとどまるということであり、そういうことを踏まえた金融政策をしていると。もちろん、様々な状況は、毎回、毎回の金融政策決定会合で十分議論して対応していくということに尽きると思います。
§13Question
賃上げについて伺います。午前中の会合で、黒田総裁、賃上げに来年春の賃金交渉では期待しているというふうにおっしゃっていました。今、日銀としては、大規模緩和を、賃上げを伴うかたちでの物価上昇を実現するまで続けるんだというふうにおっしゃっているわけですけれど、ということであれば、金融政策運営のステートメントにもですね、単に 2%物価安定目標の実現を目指すと書くのではなく、賃上げを伴うかたちでの物価上昇を実現するまで続けるというふうに書いた方がより分かりやすいのではないかというふうに思うんですが、その辺りいかがでしょうか。
§14Haruhiko Kuroda
この点は、賃金は、足元で経済活動全体の持ち直しを反映して緩やかに増加をしておりますし、先行きも、経済活動や労働需給が改善していくもとで、労使間の賃金交渉において、物価上昇率の高まりも勘案されることを映じて、賃上げ率も高まっていくというふうに予想をしております。そのうえで、賃金の動向については、表面的な数字だけでなく、その背後にあるメカニズムも含めて、物価安定の目標の持続的・安定的な達成につながっていくものかどうかということを評価していくということになると思います。そういう意味で、賃金の動向、構造的な要因といったことには最も注意を払っているわけですが、他方で、賃金の動向につきましては、様々なファクターによって影響されますので、今申し上げたような足元の経済活動、労働需給ということも影響しますし、それから、労働生産性の上昇率といった、これはなかなか金融政策によって左右しがたい色々な要件によって変わってくる労働生産性の上昇率ということも賃金上昇率に影響しますので、先ほど来申し上げているように、賃金の上昇を伴うかたちで物価が上昇するという、安定的・持続的な物価の上昇を目指すということは繰り返し申し上げている通りでありますけれども、具体的に賃金の上昇率とか、そういうことを何か金融政策の一環としてというか、目標として掲げるというのは、あまり適切なものではないんじゃないかと。
§15Haruhiko Kuroda
諸外国でも、物価安定目標というのは様々なかたちで提示して、金融政策運営の最も重要なメルクマールになっていますけれども、賃金上昇率をメルクマールにしている中央銀行というのはありません。それはさっき言ったように、様々な要因で決まるし、そして労働生産性の上昇率のような金融政策から直接影響を受けにくいファクターも影響しますので、何回も申し上げるように、賃上げ、賃金の上昇を伴ったかたちで物価が上がっていかないと持続的・安定的にはならないということは繰り返し申し上げている通りで、その点を強調しているわけですけれども、だからといって、賃金上昇率の目標とか数値とか、そういうものを提示するということは必ずしも適当でないというふうに思っております。
§16Question
午前の懇談ですけれども、経済団体の方から、中央銀行のマンデートではないというのを重々承知のうえでといって、為替の変動について即応が難しいというご指摘がありました。また、価格の転嫁も中小などはなかなか難しくて、打診もなかなかできていないという、そういう現場からの声がありました。更には、アコードも実効性について政府と議論を深めた方がよろしいんじゃないでしょうかという、ちょっと踏み込んだような指摘もあったと思うんですけれども、こういうのをかんがみると、モノづくりの集積地である東海でですね、日銀の今の金融緩和のメカニズムが期待したような賃金と物価が好循環を起こすような方に向かっているという、ちょっと前向きな発言が少なかったかなと私は感じたんですけれども、総裁は今日の懇談をいかが受け止めたでしょうか。
§17Haruhiko Kuroda
展望レポートの物価の見通しを前回の物価の見通しと比較して頂きますと、足元の物価上昇率を上方修正しただけではなくて、2023年度、2024年度の物価上昇率見通しも若干上方修正になっています。まだ 2%には達していませんが、上方修正になっていまして、その背景としては、やはり比較的順調な経済成長が2023年度、24年度と続き、需給ギャップもマイナスがなくなってプラスの方に転化して、それが拡大していく、労働需給も更に引き締まっていくという中で、賃金が上昇していくということも反映して、物価が少し前回の見通しよりも、特に 2024年度はかなりの程度引き上げられているわけですね。そういう意味では、何度も申し上げるように、賃金が緩やかに現在上昇していますし、更に需給ギャップがマイナスからプラスに転化し、労働需給が更に引き締まり、そうした中で、今後、賃金の上昇率が更に高まっていくという可能性は高いというふうにみております。ただ、それでも今の見通しでは、2023年度も 2024年度も、2%の物価安定目標には達していないという状況ですので、引き続き、経済の成長をしっかり支えて、労働需給が更に引き締まって、賃金の上昇がしっかり達成されて、物価の持続的・安定的な上昇につながるように、経済をしっかり支えていくということが重要だというふうに考えています。
§18Question
二点お願い致します。総裁は挨拶の中で、現在は金融緩和を継続することによって経済活動をしっかり支えていくべき局面だとお考えというふうにお話になりまして、「現在は」という言葉が入ったんですけれども、以前に比べると緩和の継続期間、今後の継続期間が、以前に比べると短くなっているというご認識なんでしょうか、というのが一つです。あと、二つ目は、先ほど賃金上昇率をみていくときに、数値を目標として示すのは適切ではないというお考えでしたけれども、賃金上昇の背後にあるメカニズムをみていくというときに、労働生産性のほかに、やはり賃金と物価とのセカンド・ラウンド・エフェクトというか、そこまで見極めて政策を修正するかどうか考えていくということでしょうか。以上、二点お願い致します。
§19Haruhiko Kuroda
まず、賃金上昇率につきましては、従来から申し上げているように様々なファクターによって決まってくるわけですけれども、やはり基本的には、労働需給の引き締まり、経済の成長による GDPギャップのプラス幅が拡大し、労働需給が更に引き締まって賃金が上昇していくというメカニズムが最も重要だと思います。そういう意味では、賃金の上昇率を注視することとともに、その背後にあるメカニズムとしては、労働需給がどのぐらい引き締まっていくかということが非常に重要だと思いますので、その点も含めて、十分、賃金上昇率については注視し、注目していくということは必要であるというふうに思っております。各国とも、実は賃金上昇率については、中央銀行はかなり注目しているわけですが、欧米の場合は、むしろ非常に高いインフレ率のもとで、賃金・物価のスパイラル的なインフレに陥らないかということをものすごく気にして、急速な金利引き上げを行っているわけです。
§20Haruhiko Kuroda
わが国の場合は、そういう状況とはかなり違っていまして、足元の物価上昇率は上がってきているけれども、その大半が輸入物価の上昇による消費者物価への価格転嫁によって起こっているということで、既に資源価格は低下し始めていますし、為替もずっとドル高が続くというわけでもないでしょうし、そうなると、輸入物価からの影響はだんだん減衰していくということは確かなわけですので、そうした中でやはり、あくまでも経済が成長して、労働市場がタイト化して、そして賃金が上昇していくと。そのもとで物価も上昇していくというかたちが実現することを非常に強く期待しているわけです。いわゆるアベノミクスといわれる中で、先ほど申し上げたように、[2010年代の 1 人当たりGDPの]成長も 1%強で成長し、デフレもなくなり、企業収益も大幅に増加し、400 万とも500 万ともいわれる新規雇用が生まれたわけですけれども、逆にいうと、それだけ特に女性とか高齢者の労働参加が非常に高まったということがあって、成長はすごく支えられたんですが、他方で、賃金・物価が、それほど経済・景気の改善状況の割には、上昇しなかったということがあったわけです。ここに来て、一方で、輸入物価の上昇による物価上昇、そして GDPギャップがマイナスからプラスにもうすぐ転じるということで、更に労働需給が引き締まると。
§21Haruhiko Kuroda
現在の女性就業率は米国を上回っていますし、高齢者という方々も、いわゆるベビーブーマーが 75 歳の後期高齢者に入っていくわけですので、かつてのように、400 万も500 万も新規の労働力が出てくるということは期待しがたいわけですね。そういう中で労働需給が引き締まっていけば、当然賃金は上がっていくというようになるのではないかと思っていますが、やはり賃金上昇率自体もそうなんですが、労働需給がどのように引き締まっていくのかということも、経済との関係も踏まえて、よくみていきたいというふうに思っております。
§22Question
暗号資産を巡る動きについての質問です。暗号資産交換業者のFTXトレーディングが経営破綻したと報じられています。過去最大級の破綻となる見通しですが、こうした暗号資産市場を巡る動きが、日本の金融システムに与える影響をどのようにお考えでしょうか。
§23Haruhiko Kuroda
ご指摘のような報道があることはよく知っておりますし、また同社の日本法人については、関東財務局から行政処分が発せられているという状況にあります。わが国の監督官庁が適切な対応を進めているというふうに理解しております。いずれにせよ、暗号資産にかかるリスクにつきましては、G7などでも指摘されております通り、規制面での対応について、早急に作業を進めていく必要があるというふうに思っております。(注)会見では「審議委員」と発言しましたが、正しくは「政策委員」です。以上