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Bank of JapanPress conferenceDec 1, 2022Asahi Noguchi, Board Member

野口審議委員記者会見(2022年12月1日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

主にお聞きしてみたい点は二点ございます。一点目が、今回の懇談会を通じて、地元の副知事や経済界の方々とお話しや意見交換をなされて、感じたことや新たな気づきがあれば、そこを聞かせて頂ければというのが一点目です。もう一点は当地に対するものなんですが、私自身、秋田に来て一年半になるんですけれども、高齢化、それから少子化は確かに問題ではありまして、少子化に関してはどうしょうもない部分がもちろんあるんですけれども、高齢化に関しては、お元気なご年配の方々もたくさんいらっしゃって、決して高齢化が悪いわけではないというふうにも、この一年半感じています。もちろん若い人が多いのに越したことはないんですが。そこで、当地に対する現状をどうみていらっしゃるのか。それから、課題、そして、期待というか、今後こういうふうにしていったらいいんじゃないか、期待ができる分野があれば、お話し頂ければと思います。よろしくお願いします。

§2Asahi Noguchi

まず、最初の問題ですね。本日の金融懇談会で意見交換に関して、私が感じたというか気づいた点をお話しさせて頂きます。まず、本日の懇談会では、秋田県の行政や経済、金融界の各界を代表する方々から、地域経済の現状や課題に関する貴重なお話や日本銀行の金融政策運営に関するご意見などを数多く頂きました。大変有意義な意見交換ができたことについて、この場を借りて懇談会にご出席頂いた方々や、関係者の皆さまに深く御礼を申し上げます。本日の懇談会での話題の全てを網羅することはできませんが、席上で聞かれた話題等を整理して申し上げます。まず、秋田県の景気については、全国旅行支援やプレミアム付きの飲食券・商品券といった政策効果もあって、個人消費が上向くなど、コロナ禍の落ち込みから持ち直しているといった趣旨のお話が聞かれました。ただし、先行きについては、足元での感染再拡大の影響ですとか、原材料やエネルギー価格の上昇に伴う収益面への下押し、消費者物価上昇による消費者マインドの下押しについて懸念する声が聞かれました。また、カーボンニュートラルの実現に向けた世界的な潮流を捉えた動きとして、秋田港および能代港の港湾区域内において、大型洋上風力発電所としては国内初の商業運転が始まること、今後、一般海域でも複数の洋上風力発電事業が計画されていることを踏まえ、洋上風力発電関連の雇用創出や地域経済活性化を期待する声も聞かれました。

§3Asahi Noguchi

当地が直面する課題としては、人口減少に伴う人手不足を挙げる声が広く聞かれました。この点については、官民一体となって、若者の県内定着・回帰に向けた取り組みを進めているとか、新秋田元気創造プランの中で賃金水準の向上を選択・集中プロジェクトの一つとして掲げ、他地域との賃金水準格差の縮小を図り、県外流出の抑制に取り組んでいるといった声が聞かれました。金融機関の方々からは、実質無利子・無担保融資などの返済が本格化する中で、よりきめ細かく取引先の状況を把握し、サポートしていきたいとの声が聞かれました。また、取引先の本業や新規事業参入に向けた取り組みを支援していくといったお話や、地域の雇用創出・宿泊需要をはじめとした波及効果が見込める再生エネルギー事業について、積極的な融資を通じて推進していくといったお話を伺いました。それに関して大変心強く感じました。日本銀行としては、秋田支店を通じてきめ細かいモニタリングを続け、当地経済の持続的な成長に向けた取り組みや金融システムの安定性の確保を後押ししていきたいというふうに考えております。次に、二番目のお尋ねでありまして、当地の経済情勢についての私自身の認識ということでありますけれども、まず当地の経済情勢については、持ち直しているとみています。

§4Asahi Noguchi

具体的に申し上げますと、個人消費は、感染症の影響が和らぎ、経済活動の再開が進むもとで、全国旅行支援やプレミアム付きの飲食券や商品券といった政策効果などもあって、持ち直しています。また、生産は、緩やかに増加しています。主力の電子部品・デバイスは、高付加価値化が進むもとで車載向けなどの需要が好調ですほか、食料品では、冷凍調理食品のほか、足元、大都市圏での外食需要が徐々に回復する中、酒類の生産量も増加しています。この間、設備投資は、中長期的な市場の拡大や人手不足等への対応から、製造業を中心に増加する計画となっています。先行きについては、世界的な物価上昇や感染症やあるいはウクライナ情勢の帰趨など、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向を巡る不確実性は、きわめて高い状況にあります。持ち直している当地経済が、これらの外的ショックを受けて腰折れしないかどうか、引き続き、今後の動向を注意深くみていきたいと考えています。私自身の期待ということですと、最初の問いにお答えさせて頂いた通り、当地、特にカーボンニュートラルの実現に向けた洋上風力[発電]、これは今後、もしかしたら、これが起点となって全国に広がっていくのではないかという期待を持っております。

§5Asahi Noguchi

それからやはり、人口減少という日本のどの地域においてもよく聞かれる課題ですが、その人手不足ということも、それに伴ってしばしば言及されるわけですけれども、これに関しても、当地が、行政レベル、官民一体となって取り組みをして賃上げを促進させていこうとされていることに、強く期待したいと思った次第です。

§6Question

午前の講演でも、賃金と物価の相乗的上昇が非常に重要だと述べられていて、以前の金融経済懇談会でも 3%程度の賃金上昇が必要だとおっしゃられたと思うんですけれども、次回の春闘が一つ節目、鍵になると思うんですけれども、ここで仮に3%程度の賃上げが確認されたとなると、人々の物価が上がらないというそのノルムというのが一つ転換したと言えるのか、すなわち今の金融緩和を見直す環境が整ったと言えるのかというのがまず一点目です。もう一点が、現在の金融緩和を見直すとなった場合に、色々手段が考えられると思うんですけれども、長期金利を引き上げるのか、短期のマイナス金利を撤廃するのか、どこからまず着手するべきかと野口さんはお考えでしょうか。その二点お願いします。

§7Asahi Noguchi

まず、賃金、賃上げと物価の好循環というのは、私だけではありませんが、とりあえず、この 2%の物価安定の目標を達成する一つの重要な前提条件であると考えているということは再三、強調させて頂いた通りです。逆に言いますと、なぜ好循環が実現できないか。本日のお話であったように、人手不足というのが非常に深刻であるというお話を多くの経営者、あるいは関係の方々から伺ったわけですが、これは当地だけではなくて全国的にも必ずそういう話を伺うわけですが、にもかかわらず賃上げというのはなかなか思うように実現されていない。少なくとも 3%といった、これはあくまでも一つのめどでありますけれども、2%の物価上昇を実現するためには、少なくとも 3%程度の賃金上昇(注)が必要だろうと。これは、これまでの経験からそういうふうに言っているわけですが、残念ながら 3%の賃金上昇(注)というものが実現できない。それは一つには、やはり物価のノルム、つまり企業がなかなか価格転嫁できない、つまり値上げができない、これだけ原材料価格が上がっても、少しずつ確かに足元では上がっているわけですが、なかなか完全に転嫁できているという話は残念ながら聞かれないわけです。

§8Asahi Noguchi

そういう状況ですと、それは一方で言えば消費者にとってみれば、そんなに物価が上がっているのに、ますますこれが上がったら困るということかもしれませんが、ただ、他方で考えてみますと、これまでそういうかたちで物価が上げられなかったことが、賃上げができなかったことにつながっているということですので、この物価と賃金が共に上がらない状況というのを変えていく必要がある、つまり、物価のノルムというのを変えていく必要があると。今、ようやくその芽が出てき始めたのではないかというのが、私の今日の話の一つの眼目であったわけです。そういうふうに考えてみますと、仮に 3%、今回の春闘で定昇抜きで 3%のベアというのが実現されたということになりますと、これは大変喜ばしいことです。一つの前提条件はそこで満たされた、あるいは満たされつつあるかもしれないということは確かに言えるわけで、これは非常に喜ばしいことですが、ただ、これはあくまでも前提条件であり、この物価と賃金が共に同時に、緩やかに上昇していくという経路を十分に確認するという作業がその次に待っているわけです。一年程度で、それが一回程度限り実現されても、それで終わりではありません。

§9Asahi Noguchi

物価が安定的・持続的に 2%を超えて、あるいは 2%前後で安定して上がっていくという状態というのは、一年間続いてもしょうがないわけであり、それがある程度持続的に続くということが確証できて初めて、政策の転換ということが視野に入ってくると考えますと、一つのきっかけとして 3%が達成されるということが非常に喜ばしいということは言えるわけですが、そのことによって直ちに政策転換ということにはおそらくならないであろう、もう少し時間はかかるのではないか、というのが私の見通しです。それから、仮にですが、これはそれがいつになるか分からないにしても、私の見通しでは、ある程度時間はかかるだろうとは思いますが、仮に出口、あるいは今の金融政策の転換ということになると、当然それは色々なオプションというのを考えていかなければいけないということはおっしゃる通りです。一つは今言ったYCC、長短金利の操作目標の長期金利、今現在は 0.25[%]という水準に張り付いていますが、これをどうするのかという問題。それから政策金利であるマイナス金利、これをどうするのか、短期金利の方をどうするかという問題。それから、あともう一つは、各中央銀行ともコロナ禍の中でバランスシートを拡大するという政策を行ってきたわけです。

§10Asahi Noguchi

これは特に今は各中央銀行とも高インフレの抑制のために金融引締めに動いていますが、しかしそれ以前、少なくとも去年、あるいはそれ以前の時点で考えますと、コロナ禍によって経済が落ち込むことをとにかく防がなければいけないということで、財政のみならず金融緩和を多くの先進国の中央銀行が行ってきた、その過程でバランスシートが大きく拡大したわけです。これは日銀だけではなく、他の中央銀行も同じであり、当然、政策金利の引き上げだけではなく、バランスシートの縮小というのも、当然、金融引締めを行う過程の中で進めていくということになっているわけです。こういうことで、この三つぐらいの領域において、それをどうやって調整していくかということは当然考えていかなければいけないということになるわけです。これはしかし残念ながら、現時点で、何を先にして何を後にするかというのはきわめて難しい。現在、他の各国中央銀行でも、例えばバランスシートの調整をどういうスピードで行うかということはかなり試行錯誤で行っているというのが現状です。そういうことで、各国の状況も違いますし、マクロ経済状況が違う、それからそもそも制度、金融システムのあり方というのも大きく違う、それから労働市場のあり方も違う。

§11Asahi Noguchi

それで実際、日本のマクロ的な経済状況というのは、アメリカやヨーロッパ等とは大きく違うわけですので、当然違ってきているわけでありますし、それはおそらく仮に金融政策の調整、あるいは出口というようなことが現実の課題になった時にも、どういう順番で行うかというのはその時の経済状況に依存するということしか、今のところははっきりとしたことは言えないということだと考えています。

§12Question

今の質問の確認みたいで大変恐縮ですけれども、賃上げが 3%を達成されたら直ちに金融政策転換ということにはならないというふうにおっしゃられてまして、つまりこれは春闘、来年の春闘が終わっても一年以上は、少なくとも状況をみる必要があって、2023年中、年度中、これについては政策転換・修正がないというふうな意図でよろしいのかというのが一点目です。もう一点ですが、講演の中で、長期金利の上昇を厳守したい、上限を厳守している理由として 2%の達成が展望できる状況にないというふうにおっしゃられたのですが、野口委員は、2%の物価目標を達成できる状況にならない限りは、ゼロ%での長期金利目標とか上下 0.25%の許容変動幅、これを拡大する必要はないと、そういうふうにお考えなのか、この二点をお願いします。

§13Asahi Noguchi

まず、具体的に 23年か 24年かということは、これは、要するにデータ・ディペンデントということになって、その時の経済状況次第であるということだと思います。これは各国の中央銀行の対応をみても、なかなかここまでの高インフレが続いている中で、いかにインフレを抑制していくかということで、今、各国中央銀行が利上げを進めていますが、そのペースというのは、市場が非常にいろんな予測をするわけですが、政策当局者の側としては、今、決め打ちでこうだということは、時期としても幅としても言えないというのが、これは致し方ないと。これだけ不確実性の高い世界経済の状況が続いていますので、その時その時に入ってくるデータに応じて決めていくしか手段がないということだと思います。

§14Asahi Noguchi

ですから、それは日本経済についても、状況はかなり欧米とは違うのですが、しかし何か金融政策を変えるということになりますと、それはもちろん労働市場の状況とか賃上げの状況、これは非常に重要なデータですし、それから実際に物価の動き、今は 3%、3.5%[程度]あるいは今後もしかしたらもう少し上振れするかもしれませんが、それがやがて落ち着いてくるだろうというのがわれわれの見通しではありますけれども、その見通しが本当にそうなるかどうかというのは、やはりその後の経済状況、あるいはその状況を反映したデータというのを見て判断するしかないということですので、あるいは見通し以上に早まるという可能性ももちろんあるわけです。これは、各国中央銀行をみても、ターミナルレートが 3.5%[程度]、アメリカの場合ですね、それが、しかしその後 5%[程度]に跳ね上がるというのは、経済状況の中でそういうふうになっていったわけですので、私自身は、今現在のデータで見て、急に政策転換があるというふうには思ってはおりませんが、もし別のかなり異なったデータが今後現れた場合にはもちろん、そのテンポを前倒しするということは当然あり得るわけであり、それはあくまでもデータ次第だというふうに考えています。それから二番目の答えですが、これは長期金利の目標、現状で[変動幅±]0.25[%]というのを守っている。

§15Asahi Noguchi

これを、2%[の物価安定の目標]を達成しない限り変えないのかということですけれども、これもデータ次第ということなのですが、一つ言えることは、金融政策というのは、足元の数字だけではなくて、将来それをどういうふうな経路を辿っていくのかということの方がむしろ重要なわけです。それは現在をみても、実際、ヘッドラインも含めてあるいはコアCPIも 3%を超えているというような状況でありますが、だからといって、2%を超えているならじゃあ金融引締めは何でしないんだと、こういうような声も当然あるわけですけれども、これはわれわれとしては、物価の基調を考えると、まだ 2%を超えているような状況にはない、やがてこれは剥落していくだろうというふうにみておりますので、現状の金融緩和を続けるという判断になったわけです。もしこれが逆に基調が上がっていくということになりますと、これはある種プリエンプティブにやる可能性ももちろんあるわけです。ですから、当然、今は 2%いっていないけれども、将来的に 2%を超えていくということが確実になれば、それは政策転換がその時点で行われても全く不思議ではないというふうに思います。これも一律にこうだからこう、という機械的な対応ではないということは申し上げておきたいと思います。

§16Question

一点目は確認なんですが、この物価の基調とおっしゃる際は、これは消費者物価の例えばコアコアの話をされているのか、もうちょっと様々な指標を見ての概念ということなのかをちょっと確認させてください。二点目は、賃金と物価の二次的な波及というか好循環のようなものが、なかなか今はっきり見えてるわけではないということだと思うんですが、そういったものが生まれる可能性というのは、例えば今年初めに比べてだいぶ高まってきているのか、一方で、物価の上昇は消費者には直接は悪い話で、消費が冷えてしまったり、海外経済の不確実性から賃金動向に不透明感が漂うとなれば、来年を展望した場合、この二次的な波及という可能性はむしろ低くなっているのか、その可能性をどうみてらっしゃるのかをお願いします。

§17Asahi Noguchi

まず、最初の物価の基調というのは、これはなかなか実際には難しいわけでありまして、それを色々な指標をわれわれも考えて、コア、コアコア、それから刈込平均値ですね。いくつか基調を、かなり近似するのではないかというふうに思われるような色々な指標を念頭に置いてはいるわけですが、これは、どれも完全ではありません。完全ではないのですが、私の個人的な見方を言わせて頂きますと、やはり一番コアにあるもの、物価のうちコアコア、コアか分からないのですが、基本的に最もコアになるのは何かというと、やはり賃金ではないかと。つまり賃金、要するに賃金あるいはサービスを一番反映するサービス価格。これは、私は何回もお話ししている通り、アメリカと日本と比較して一番大きな違いというのは、アメリカの場合、賃金は上がり、サービス[価格]も上がるわけです。しかし、日本はサービス[価格]が殆ど上がらない。だから賃金も上がらない。賃金が上がらないから、サービス[価格]も上がらない。そういう状態であり、ここの部分がきちんと上がってこないと、おそらく持続的・安定的に[物価が]2%、毎年毎年2%近傍で上がり続けるという世界には入っていかないということだと思います。

§18Asahi Noguchi

では、そういう指標というのはあるのかというと、なかなか難しいのですが、例えば一つ、前回、安達[審議]委員が金[融経済]懇[談会]で言及されたと伺っておりますが、アメリカのFedの方でよく出ている粘着的CPI、スティッキーCPI、それからフレキシブルCPIという指標、これはアトランタ連銀のホームページに出ているようですが、これは、粘着的というのは当然、賃金が最も粘着的ですので、それを反映してサービス[価格]あるいは家賃、そういうものが一番粘着的な傾向を示すわけです。それに対して、石油やエネルギーというのが非常にフレキシブルに動くと。やはり、物価の基調に一番近いというのは、物価の中でも粘着的な部分であるということで、Fedではそういうものを公表しているわけです。そういう意味で言えば、こういった指標も、一つ参考になるのではないかというのが私の個人的な印象です。それから、もう一つですけれども、好循環が高まっているか否かということに関して言えば、私は、明らかに、以前の状況よりも、例えばコロナ前の状況と比較しても、かなり高まってきているのではないかと考えております。

§19Asahi Noguchi

それは一つはコロナ前の状況で、例えばエネルギー価格とかそういったものが上がっていた時期もあったわけですが、あるいは、一定程度円安が進んでいった時期もあったわけですが、そういう時期でも実際に川下の段階、消費者物価の段階に転嫁されたかというと、殆どできなかった。つまり、それは企業が価格転嫁をしようとしても、なかなか、そうすると売れなくなってしまう。だから結局元に戻すしかない、ということが続いてきたということの表れであったと思います。しかし、今回に関しては、確かに完全に価格転嫁は難しいということは経営者の方々はおっしゃるわけですが、しかし、色々なデータを見ていますと、実際に行われてきているわけです。だからこそ、食品を含めてこれだけ 3%を超えるぐらいのインフレが起きているわけであり、これは 3%ですから、企業物価の上昇に比べれば、まだまだ低いわけですけれども、今までの日本の状況から考えれば、相当程度の転嫁が行われてきている。企業の販売価格の見込みというのを見ても、上げていく方向にあるというのは明らかですので、今後、価格転嫁が相応に進んでいくということは、かなり言えるのではないかというのが私の印象です。問題は、それに賃金、賃上げがついてこないと、これまた、同じことになってしまうわけです。

§20Asahi Noguchi

賃金が上がらないということになりますと、これは当然、消費者がそんな値上げを受け入れられないということになって、また元の木阿弥になってしまうわけです。そこで、賃金、賃上げがきちんとついてくるのかどうか、これが一番大きな今の焦点であると、そういう意味で言えば、春闘に非常に注目しているわけであり、そこで 3%程度のベアが実現すれば、非常にこれは、われわれがかなり望んでいた展開に近づいて、少しずつ近づいていくという確証が得られるのではないかというふうに思います。

§21Question

世界経済の見通しについて二点伺いたいと思います。アメリカのパウエル議長が、12月にも利上げの減速について言及されたようですけれども、これの受け止めについてお願いします。もう一点は、中国でコロナに反対する抗議運動が起きているようですけれども、こうした動きが世界経済に与える影響についてどのようにみているか、お願いします。

§22Asahi Noguchi

まず、最初のアメリカですが、これはもう当然その利上げを永遠に続けるというわけにはいかないわけであり、要するに、なぜ利上げをしているのかというと、あるいは、なぜ、この 0.75[%]という 3 倍速の利上げをずっと続けてきたのかというと、これは予想以上にインフレの圧力が強いと、また、それは継続するような情勢にあると、決して一過性ではないということが明らかになって、この利上げを続けてきたわけであります。当然、これが効いてくる段階になってきますと、当然、今度は、インフレ率は落ちていきますけれども、経済自身が減速していくということに当然なっていきます。これは、具体的には、例えば、失業率がこれから上がっていくということがあり得るわけです。やはり、失業率は今アメリカは歴史的にみても、きわめて低いので、これはいわば、かなり低過ぎる状態であって、インフレが加速するような領域に入ってきている失業率でありますから、これを多少上げざるを得ないという状況です。

§23Asahi Noguchi

これが上がり過ぎてしまう、例えば、今 4%台ならまだしも、これが 5%を超える、6%を超えるということになりますと、アメリカの場合、これはデュアル・マンデートであって、雇用と物価というのは両方目標にしてやらなければいけないという枠組みでありますので、当然、あまりにも今度、失業率が高くなってしまうと、これは逆に利下げをしないといけないという状況にもなるわけです。利上げがある程度ペースダウンしてくるというのは、ここまでくるというのも一つ予想外ではあったのですけれども、いつかはそうなるだろうと。今もしかしたらそこに近づきつつあるのかもしれないということであります。しかしこの先というのが、インフレが今度は持続するようであれば、今の、かなり 5%程度のターミナルレートをもっと長く続けるということにもなるわけでありますけれども、今お話ししたように、失業率が今度どんどん高くなると今度は下げなければいけないと、この辺は非常に難しい。これはやはりデータを見て、なるべくソフトランディングになるようにFedはおそらく金利を動かしていくということになるであろうということですので、どっちに行くかというのを予想するというのはなかなか難しいと思います。それから、中国に関して言えば、元々非常に厳しいゼロコロナ政策を続けていましたが、今非常に感染が拡大しているということで、更に厳しくなっているということです。

§24Asahi Noguchi

これは、世界経済全体として、中国の占める役割というのは非常に大きいというのは事実です。色々な、中国となるべくデカップリングをしていこうというような動きも勿論あるわけですが、一方で、それはなかなか完全に切り離すというのは難しい。少なくとも短期的にそれをやるというのは難しいわけです。ということは、やはり中国経済の影響を世界経済、日本経済もアメリカ経済も受けるというのは、これは事実であると思います。そういう意味で言えば、この現状、中国経済の減速というのが、あるいは、今後、利上げに伴って世界経済が減速していくタイミングと重なると、非常に警戒を要するのではないかというふうに個人的には注視していきたいというふうに考えております。(注)会見では「物価上昇」と発言しましたが、正しくは「賃金上昇」です。以上