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Bank of JapanPress conferenceFeb 2, 2023Masazumi Wakatabe, Deputy Governor

若田部副総裁記者会見(2023年2月2日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

幹事社からまず二つ質問させて頂きます。まず一点目です。午前中に地元の人と、静岡の人と懇談会があったと思うんですが、この中でどのような議論があったのか、どのような要望が出されたのか、この懇談会の内容について教えてください。二点目です。静岡県の経済についてなんですが、午前中の挨拶でですね、副総裁の方から「基調としては持ち直している」というお話もあったんですが、今の静岡県の経済について副総裁どのような見解をお持ちでしょうか。二点質問致します。よろしくお願いします。

§2Masazumi Wakatabe

本日の懇談会では、静岡県の行政や金融・経済界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や地域経済が直面する課題について、大変貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直なご意見、ご要望もお伺いし、大変有意義な意見交換ができたと考えています。ご多忙の中、本日ご出席頂いた皆さまに、本席をお借りして改めて御礼申し上げます。懇談会での話題は非常に多岐にわたるものでございましたので、全てを網羅することはできませんが、席上で伺った話を私なりに整理して申し上げたいと思います。先ほどお話があったように、まず足元の静岡県の景気ですけれども、これにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響が尾を引いているほか、半導体の供給制約や原材料・燃料価格の高騰の影響を受けているものの、雇用情勢が回復傾向にあるなど、全体としては持ち直し基調が続いているとの見方が聞かれました。ただし、特に中小零細企業では価格転嫁の遅れにより収益が大きく下押しされていること、また、対面型サービス業ではコロナ禍からの回復過程において人手不足が深刻化しており、需要を取り込みきれていないことなど、様々な経営課題に直面している状況を指摘する声も多く聞かれました。この間、当地では、行政、経済界、金融機関が相互に連携しながら、中小企業のコスト負担軽減策や、事業継続支援に努めているとのお話を伺いました。

§3Masazumi Wakatabe

また、やや長い目でみて、ポストコロナ禍での持続的な経済成長と地域活性化に向け、関係者が一丸となってデジタル化と脱炭素化の取り組みを加速させているとのお話を伺い、大変心強く感じた次第です。デジタル化におきましては、首都圏の情報技術関連企業との商談会やイノベーション拠点の設置などにより、企業誘致や地元企業とのマッチング、人材育成を積極化しているとの声が多くありました。また、脱炭素化では、中小企業への啓発活動や設備導入支援のほか、自動車産業の電動化に向け、企業間連携による製品開発の強化といった取り組みも進めていると伺ったところです。また、金融界の方からは、この先いわゆるゼロゼロ融資の返済が本格化する中、個々の取引先毎に、きめ細やかな資金繰り支援や経営改善支援がきわめて大切になるとのお話を伺いました。加えて、企業の持続可能なビジネスモデルの育成が地域の活性化につながるとの強い信念のもと、ポジティブ・インパクト・ファイナンスや近隣他県との広域連携にも注力していると伺いました。要望につきましてですけれども、日本銀行に対しましては、世界経済や国内の物価動向、市場環境など先行きの不確実性が高まっている中、中小零細企業の実態に十分配慮したうえで、企業のチャレンジ意欲を後押しできるよう、賃金上昇を伴う緩やかな物価上昇を目指した適切な政策運営をお願いしたいとご意見を伺いました。

§4Masazumi Wakatabe

私どもとしては、本日頂いたご意見も踏まえつつ、静岡県経済を支えておられる関係者のご努力が大きな成果につながっていくよう、中央銀行業務を通じて、しっかりとサポートしていきたいと考えます。続きまして、第二問の当地の金融経済情勢についての認識でございますが、本日講演で、挨拶で述べさせて頂いたことと重なる部分があるかとございますが、まず最初に、先ほど述べましたように、静岡県経済につきましては、感染症の影響を受けて、2020年上期に製造業・非製造業ともに大きく悪化したあと、一進一退の感染状況や半導体不足などの影響を受けてきましたが、足元はこれらの影響が和らぐ中で、基調としては持ち直しているというふうに認識しております。ただし、懇談会の席上でも聞かれましたように、各種コスト上昇や人材不足が県内企業の業況回復の足かせとなっており、先行きに対する慎重な見方も少なくないという印象を受けました。これらが静岡県経済全体に及ぼす影響については、今後も注意してみていく必要があります。中長期的な話に関しましては、静岡県も他の地方と同様に、人口減少への対応が大きな課題となっております。人口減少の負の影響は、やや過大評価されているという気もしますが、しかし、やはり人口減少が逆風というか向かい風であることは事実でございます。

§5Masazumi Wakatabe

そのもとで更なる飛躍を遂げるためには、経済成長の源泉である資本、労働そして知識、技術力などを含む広い意味での知識といったものに磨きをかけていくことが重要だと考えています。本日の懇談会でも、そうした観点から注目される取り組みを三点お話させて頂いたところです。まず資本については、インフラの整備やそれを活用した産業振興の取り組みとして、例えば、清水港では、効率的で競争力の高い物流環境の整備を進めながら、食料品等の輸出振興に取り組んでいます。また、伊豆半島でも道路網の整備が進むもとで、観光振興、温泉を核としたヘルスケア産業の創出等に注力しています。また、知識の活用に向けた新産業の創出という意味では、自動車産業の集積する県西部を中心に産学官が連携し、次世代自動車の技術ニーズをフォローしながら中小企業の新たなビジネス展開を包括的に支援しています。起業家やベンチャー・スタートアップ企業の育成支援に取り組む地域金融機関が増えている点も印象的です。最後の点は、働きやすさ・暮らしやすさを意識した魅力的な地域づくりです。過去 5年間の人口変化率がプラスであった長泉町や袋井市では、積極的な企業誘致により多様な働く場を創出したり、子育てや教育環境の整備へ手厚い財政支援を行っています。魅力ある生活空間の創出が地域の更なる活性化につながることを期待しています。私からは以上です。

§6Question

昨年12月に政策修正に踏み切ってから、市場では追加の政策修正観測がくすぶっています。現時点で若田部副総裁は、例えば緩和の持続性を強化させるような追加の政策修正の必要性についてどのようにお考えでしょうか。併せて、例えば長期金利の変動幅を 0.75%程度に、例えば拡大した場合、それは事実上の利上げに当たるのかどうかについてのお考えもお願いします。

§7Masazumi Wakatabe

現時点で 12月に修正して以来、市場環境を丁寧にみてまいっておりますけれども、市場機能の改善ということについては、やや時間がかかっているなという印象ではあります。これはやはり緩和の持続性を強化するという意味では必要な措置であったとは思いますけれども、一方でその部分だけを取り上げてみると、やはり緩和についてはそれを弱める効果もあったということだと思います。一方で、全体として物価が上昇し、インフレ予想も上昇しつつあるという中では、実質金利を通じた緩和の効果は十分に維持されているんじゃないかと思います。そのうえで、更に持続性を強化するために行うかというのが、その時々の判断にはなりますけれども、私自身の考えとしては、やはり修正ということで緩和効果が損なわれてはいけないわけですので、そのバランスをとりながら進めるしかないだろうというふうに思っております。それが二番目の質問に関わってくるわけですけれども、事実上の利上げかどうかはともかくとして、やはり変動幅を広げていくというようなことになると、いずれにしても、その部分だけを取り上げてみると、やはり緩和効果との兼ね合いというのが問題になるかと思いますので、そういうことについては慎重な上にも慎重に判断しなければいけないのではないかというふうに考えております。

§8Question

10年間の大規模な金融緩和政策の総括についてお聞きします。先ほどの挨拶要旨の方にもですね、経済成長の復活や雇用の増加など様々な面で成果があったとありました。一方で、日銀が多額の国債を保有することによる市場機能の歪みですとか、中央銀行による財政ファイナンスなのではないかという指摘もあります。この点についての副総裁のお考えをお願い致します。

§9Masazumi Wakatabe

先ほどの質問とも関わりますけれども、緩和を行っていると、それで成果も得ていると。ただ緩和に伴う様々な、いわゆる副作用なるものがやっぱりあるのではないかという声があることは十分承知しておりますし、市場機能という観点でいうと 12月に微修正を加えたように、時としてそれまでもそういう変動幅を拡大するということもやっていますし、その時々に応じていわゆる副作用みたいなものについての手当てというのもやりながら、緩和を続けてきたということだと思います。その意味では、色々なご意見があって、市場機能の歪みであるとかいうことは承知しておりますけれども、緩和ということについていうと、全体としては効果が副作用を上回っていて、だからこそ長期の大規模金融緩和を続けているんだということだと思います。財政ファイナンスであるかどうかというのは、これはやはりどういう目的でもって政策を運営しているかということに関わるわけで、挨拶でも述べましたように、やはり中央銀行の責務で一番重要なのは物価の安定であって、もちろん金融システムの安定も大事ではありますけれども、物価の安定ということを考えるときには 2%の物価安定の目標を掲げるということが大事で、そのもとで政策を運営していくのだということが、誤解のない金融政策運営に必要ではないかと思います。

§10Masazumi Wakatabe

その限りにおいては、財政ファイナンスという色々なご批判があることは、ご指摘があることは承知しておりますけれども、われわれはあくまで中央銀行の責務である物価安定の目標、現状では 2%というこの物価安定の目標を追求している、そのうえで政策を行っていると、そういうことでございます。

§11Question

インフレ目標について伺います。講演ではやっぱり曖昧な目標にするのは望ましくないということだと思うんですが、インフレ目標のすごく大きな効果の柱である、予想インフレへの働きかけ、人々のインフレ期待に働きかける効果、これについてQQEをずっと 2013年以降やっていて、どのように考察されていらっしゃるのか、やはりこれが有効に働かなかった部分がなかなか緩和で 2%を達成できなかった一つの要因だと思いますので、そのQQE、異次元緩和以降の日銀の緩和政策が予想インフレに働きかけることができたのかどうか、この点について伺いたいのと、今後の金融政策を考えるうえでも非常に重要な論点となると思うんですが、実際今どういう要因でっていうのとは別として、物価が上がっていて、予想インフレも上がっていて、そういう中においては、今後むしろインフレ目標の期待への影響というのがより強力に出てくると望むことができるのか、日本でついにノルムを変えることができるのか、その先行きについても是非お願いします。

§12Masazumi Wakatabe

まず予想インフレが金融政策にとってきわめて重要であるというのは、現代の金融政策において本当に基本的なことだと思います。ただそれで、2013年以降の様々な経験から分かったことは、確かに物価安定の目標 2%を掲げるということは、予想インフレを引き上げるという効果はあったわけですけれども、やはり長きにわたってデフレマインドみたいのが蔓延している中においては、それから後の様々な外的ショック、挨拶で挙げたような色々な外的ショックがあった中で、適合的期待というような、その時々の物価の情勢に応じて予想インフレ率が変わってしまうということが起きてしまって、その限りにおいて 2%の物価安定の目標を安定的・持続的に達成できなかったということは事実であろうかと思います。もっとも、それが全く、何というか物価安定の目標がなければどうだったかということに関していうと、色々な外部的なショックを考えてみても、シミュレーションなどをみたときに、おそらく大規模な金融緩和がなければデフレが続いていただろうというふうには思いますので、その限りでは予想インフレ率もその分だけは上昇させるのに効果があったかなというふうには考えています。

§13Masazumi Wakatabe

先行きの話というのは、まさにそこが重要なところで、デフレマインドといわれていたような、ここまで 90年代半ばから続いていたようなところで形成された期待のあり方、それに伴って賃上げであるとか価格の形成であるとかについて、今まで起きていた慣行・ノルムが変わるのかどうかというところがまさに焦点だと思います。今回は挨拶で「今回は違うのか」ということを何回か述べさせて頂きましたけれども、変わり得るポジティブな、ポジティブなというか、少なくとも 2%に向かっていくという意味での動きは出てきてはいるのですけれども、しかしそれが確かにそのようになるというところまでの確信が持てる状態かというと、現時点ではまだないなというかたちです。その確信を持つためには、先ほど来、話が出ている予想インフレ率の動向、これも単純に短期だけでなくて中長期の予想インフレ率の動向であったり、あるいはそういった経済の拡大というのを国民各層が果実として享受できるためには賃金が上がっていくと、そして賃上げと価格の引き上げという循環が安定的・持続的に行われていくというようなかたちになっていくのかというのが、まさに問われている段階で、その限りにおいて今は非常に重要な時期であると。だけれども、上下双方向に、どちらかというと、まだ下方向に戻るような力もまだ強いので、ここは安心できないなというふうに思います。

§14Question

続けてインフレ目標のところをお伺い致します。午前の挨拶の中で、物価安定の目標を曖昧にするというのは、政策が追求すべき目標を曖昧にしてしまうなどとおっしゃっていたと思いますが、これ具体的にどこをどうすれば曖昧で、あるいは一方でクリアなのかというところについて、若田部副総裁のご見解を教えてください。あと、もう一点お願いします。日本の 2%の目標というのは、除く生鮮のコア CPIでやってると思うんですけども、この除く生鮮というのは日本でかなり独特であって、諸外国とは違うと思うんですけども、今後これについて見直したりだったりとか、今後これをどう改良していくといいますか、今後そのようにする余地などというのは、若田部副総裁はどのようにお考えでしょうか。

§15Masazumi Wakatabe

一番目の話は、ここでは注でも触れたんですけれども、注だと 11 になりますかね。日本銀行の金融研究所の海外顧問であられるオルファニデス教授という方がおられます。その教授が日銀の国際カンファレンスで出した論文というのが、2013年以前と比較した場合、[2013年以前は]物価安定の定義が曖昧であったと。例えば、 2%の物価安定の目標ということ自体が曖昧だったということとの対比で、まずは考えております。なので、私自身は、2013年以降の物価安定の目標というのは十分に明確であるというふうに考えております。その次の問題として、 CPIでどれをみるかというのはなかなか難しい問題で、講演でも強調しましたけど、まさに各種の施策であったり、あとは今回だけでなくても各種の特殊要因などが色々と働く世界においては、どの CPIをみていくかということについてあまり決め打ちをすることは難しいなと思っています。

§16Masazumi Wakatabe

歴史的にみて、コアCPIというのが重視されてきたという背景は、エネルギーの方の価格というのは、以前においてはそれほど変動していなかったということだと思うんですけれども、今やエネルギーのところも変動があるということを考えると、やはりいわゆるコアコアといわれるようなエネルギーと生鮮を除くものというのが必要であるかもしれないし、実際にそういうのもみつつ、展望レポートなどでも参考値ではありますけれども、委員がそういう見通しを出すということをしておりますし、それと、もしも米国版のコアということでいうならば、米国版のコアというのは生鮮食品だけでなくて食料品も全部除外するということをやると。その場合、デメリットは当然かなりの部分が今度は外れてしまうので、人々の生活実感と合ったような物価なのかという問題がありますけれども、ある種の今の段階において、例えば米国版のコアが持つ一つの利点みたいなものが、現状で起きている物価高というのが大半がエネルギーと食料品の資源価格の上昇で起きているので、そういった影響を除くことができるんじゃないかと。それから、その刈込平均値とか、最頻値であるとか、様々な更に加工したようなものとかなどはあるんですけれども、コア CPIそのものが指標として有用ではないということではなくて、こういう状況においては、おそらく色々なものをみていくしかないなと。

§17Masazumi Wakatabe

その限りでは、やはりコアCPIの情報量というのは依然として有用であるというふうに考えております。

§18Question

インフレ目標に関して、関連で質問なんですけれども、先日の有識者でつくる令和臨調の方が、政府日銀の共同声明における 2%目標を長期的な目標に位置づけ直すべきだという提言をされたんですが、これについて若田部副総裁の声明を見直す必要があるのかどうか受け止めをお願いします。また、共同声明を含めてですね、23年度で持続的な物価上昇に届かなかった場合、この 10年続いた大規模緩和の検証が必要かどうかについても併せてお願いします。

§19Masazumi Wakatabe

まず令和臨調がどういう提言をしているかということについては、私も承知はしておりますけれども、個別の提言に対してコメントすることは差し控えたいと思います。そのうえで、この講演でも強調したのは、2013年以降の物価安定の目標 2%を掲げるというところ。それで先ほどのオルファニデスさんの話でいうと、曖昧さをなくすかたちで目標を定義するというところから始まったと。そして、それには成果があったということは踏まえなければいけないというふうに考えます。だからどのような議論をされるかというのは、人によってそれぞれだと思いますけれども、事実の問題として 2013年以降の金融緩和政策に効果はあったと、少なくともここで示しているようなかたちでの効果はあったという事実を踏まえたうえでの議論がなされるべきだというふうに考えます。それと二番目のところで、10年経っていても 2%の物価安定の目標が持続的・安定的に達成されていないんじゃないかと。

§20Masazumi Wakatabe

それについて検証が必要なのかということについては、これはその時々の判断にはなると思いますけれども、私自身は現状において、やはり先ほど来、話しているように、まずそのエネルギー、資源価格、食料価格が上がって、それを起点として、それでもって物価が上がっているというところの帰趨というのがまだ色々な方向に行き得るなということを考えていますので、私自身としてはそういったことの検証云々よりも、まずはやはり足元の政策をきちんと遂行するということをしなければいけないというふうに考えております。

§21Question

二つお伺い致します。一点目は賃上げについてです。春闘が始まりました。この春闘の結果に大きな着目が集まっているというのはもう自明なことではありますけれども、では実際、現状のその春闘をどのような結果が出るというふうに分析していらっしゃるのか、あるいは所感をお聞かせ頂きたいです。利上げするだけの賃上げができるのか、もしあるいは利上げするためには、どれぐらいの賃上げが必要なのか、その辺のところ細かく、分析・ご意見をお聞かせ頂ければというふうに思います。二点目につきましては、日本銀行正副総裁人事について、世間の注目が集まっております。若田部副総裁も 3月に任期を終えられるわけなんですけれども、今後ですね、総裁がどのような方がなるべきなのか、あるいはそれが難しければ、どういう金融政策を行っていく新たな正副総裁にするべきなのか、ご所感をお聞かせ頂ければと思います。

§22Masazumi Wakatabe

まず賃上げの動向ですけれども、確かにおっしゃるように、今回の春闘には注目が集まっております。そう申し上げたうえで、それがどれぐらいのレベルに達するのかとかいうこと、あるいはどれぐらいならば更に先に政策の変更になるものがあるのかということについては、コメントを差し控えたいと思います。私の考えでは、持続的・安定的に 2%を達成するためには、1 回のところの春闘というだけでは、やはり情報量が足りないのではないかというふうに思います。これはそれなりに賃上げの機運が今高まっているのは事実ですけれども、本日、例えば懇談会の席上でも聞かれたように、これは本当に業種や企業によって様々で、ベースアップで対応できるというところもあれば、あるいは一時金みたいなもので対応したいというところもあれば、そうではなくて賃上げということ自体がなかなか難しいんじゃないかというようなところも区々あるという事実を踏まえると、今回の春闘だけでもって何か決め打ちできるというわけではないんじゃないかというふうに思います。

§23Masazumi Wakatabe

大事なことは、今回の春闘だけじゃなくて、やはりそこから先がまた次の問題があって、それからその賃上げ、そして価格の引き上げみたいなところからの 2%の経路への安定的な着地というようなことを考えたときには、今回の春闘には注目が集まりますけれども、しかしそれだけでちょっと決め打ちするのは難しいんじゃないかというふうに思っています。二番目の話は、正副総裁の人事についてはコメントできないので、コメントを差し控えさせて頂きます。どういう金融政策が望ましいのかということについてもコメントは差し控えるべきだと思いますけれども、ただ一般論として日本銀行がやっているのは中央銀行として、物価の安定と、そして金融システムの安定ということですので、やっぱりこのマンデートをしっかりと実現するということに尽きるんだというふうに思います。それから先、それを実現するためにはどういう要件が必要なのかというのは、人それぞれ色々と議論があると思いますけれども、マクロ経済政策の安定化の要である日本銀行というのがマクロ経済政策をきちんと実施するのだと、そして金融システムの安定にも目を配るのだということ、ここに基本的には日本銀行の役職員の基本的な使命があるというふうに考えております。

§24Question

静岡県の経済成長に関してのアドバイスを一つお願いしたいんですが、三つ頂きましてですね、インフラとか、知識、あと魅力的な地域づくりというのがあったんですけれども、二つ目の新産業創出や知識の活用についてなんですが、自動車産業の強い県でもありますので、製造業がベースになっている県だとは思うんですが、この知識の活用のところでですね、静岡県が成長に向けてどういったことが必要か、産業振興の観点から教えてください。

§25Masazumi Wakatabe

事実の問題として、確かに自動車産業を中心として、製造業がかなり強い県であるという印象を持っております。ただ、知識というときには、当然まさにそこの部分も重要ですけど、それに限らず、様々なかたちでの知識の活用が必要だろうというふうに思っています。産業の振興という意味では、なかなかこれというのを申し上げるのは難しいところではあるのですけれども、一つ申し上げると、これは懇談会の席や企業視察などでも伺った点ですけど、やはり今、昨年AI活用元年と言われて、飛躍的に例えばAIの能力が向上していると。そういうことも踏まえて、データをいかに活用するかというのは、これは業種を問わず、非常に幅広いところに影響することだというふうに思います。なので、別に製造業に限らず、農業においてもデータを活用するというようなことは可能であるわけだし、これまで、言ってみれば、サービス業においても、あまり革新が行われてこなかったようなところでも、データをてこにして何らかの革新をすることはできるということですので、必ずしもこれまでの強みであった製造業だけに限らず、そういった意味での成長可能性というのは、かなり広範に、広い範囲で開かれてるんじゃないかというふうに感じます。

§26Question

静岡の経済のことなんですが、今回の懇談会の中で出席された方々、中小企業の経済団体とか、そこに資金繰りをしている金融機関の方が多かったと思うんですが、具体的な発言として、おそらく日米の金利差拡大で、いわゆるコスト高とか、かなり厳しいものがあると思うんですけれども、具体的に、日銀の政策に関する、足元の中小零細企業の声を踏まえた、具体的な求めと要望というのをもう少し具体的に教えて頂けますでしょうか。

§27Masazumi Wakatabe

おそらく二つあると思います。やはり資源高、エネルギー価格の上昇ということが、中小零細企業の方々に対して、大変なやはりご苦労をかけていると。ご苦労が寄せられているということで、そういったことに日本銀行としても、できるだけ配慮してほしいという話がございました。それと、もう一つは企業の資金繰り、これはやはりゼロゼロ融資の返済という段階に入ってまいりますので、そこから先、きちんとそういった企業の資金繰りが滞りないように進めていくということについても、私どもとしては注意深く見守るつもりですけれども、そういうことについても、ご要望があったという次第でございます。

§28Question

先ほど、金融政策はですね、効果と副作用のバランスをみながらと、そういうご指摘をされたわけですけども、就任以来、副総裁は必要なら追加緩和も辞さないと、そういう姿勢を貫いてこられたと思います。これまで物価目標が実現できてない中でも、利下げといったですね、利下げなど明確な追加緩和という手段がこれまでとられてこなかったんですけれども、やはり大規模緩和が長期化する中で、金融緩和、手段も含めた限界、こういったものを副総裁は感じながらやられてきた面はあるのでしょうか。また、追加緩和が必要だなというふうに感じた局面というのはこれまであったかどうか、その辺をお願いします。

§29Masazumi Wakatabe

手段の限界ということは、さっきのコスト・ベネフィットでいつも考えなければいけないので、だから限界というよりも、むしろ手段の効果とそのコストみたいなものですよね。これは、その時々だけというか常に考えなければいけないところで、追加緩和がオプションではないかということも当然あり得たというふうには思います。二番目の質問に関わりますけれども、では具体的にそういうことを考えたのかと言われましたら、これはちょっとこの場では申し上げないということですので、コメントは差し控えさせて頂きます。ただ私自身は、やはり全体として 2%の物価安定の目標が、私の在任中の 5年間で持続的・安定的には達成されてこなかったということは反省材料というより反省しておりますし、そのために何ができたのかというのは、日々反省している次第ではあります。以上