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Bank of JapanPress conferenceFeb 22, 2023Naoki Tamura, Board Member

田村審議委員記者会見(2023年2月22日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

地元紙からということで、まず先に三点質問をさせて頂きます。本日、議論されました内容についてお伺いしたいのと、本日の内容を踏まえ、日銀のどんな政策にこの懇談会の意見を活かしていきたいと考えているのかというのがまず一点と。二点目に、群馬経済の優れている点、また課題となっている点、これは他県と比べましてどういうふうにとらえているのかということ。最後に三点目、日銀で今、大規模な金融緩和策が行われていると思うのですが、群馬県において、どんな効果があらわれていて、また、副作用といったような影響がどのようにあらわれているとみていらっしゃるのか、この三つ、よろしくお願い致します。

§2Naoki Tamura

一点目につきましては、本日の懇談会では、群馬県の行政あるいは金融・経済を代表する方々から、当地の情勢や地域経済が直面している課題について、大変貴重なお話を伺うことができました。また、日本銀行に対するご意見・ご要望も伺い、大変有意義な意見交換ができたというふうに考えております。ご多忙の中、本日ご出席を頂いた皆さまに、この場を借りまして御礼を申し上げたいというふうに思います。懇談会の話題は多岐にわたるものでしたので、全てを網羅することはできませんが、私なりに整理して申し上げたいと思います。まず、足元の群馬県の景気につきましては、供給制約や原材料・エネルギー価格の上昇などの影響を受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、全体としてみれば持ち直しているという見方がありました。一方で、特に中小企業についてみますと、幾つかの面で厳しい状況にあるという話が多く聞かれました。原材料・エネルギー価格の上昇を受けた価格転嫁の動きは、進んでいる部分はあるものの、収益を確保するのに十分な転嫁ができていない、そうしたもとで賃上げに必要な資金原資を確保できないですとか、その一方で人手不足が強まっている、こういった状況でした。こうした中、新しい設備を導入することによって、無人化率を高めるとともに、電力消費量を大幅に削減しておられるという事例を聞くことができました。

§3Naoki Tamura

電力消費量の削減はエネルギーコストの削減と同時に、脱炭素化を進めることができる、更に効率化によって人手不足対応となるということで、まさに一石三鳥の効果があり、今まさに必要な取り組みだと、こういった動きがどんどん広がっていくことが期待されるというふうに感じた次第です。また、当地では、行政・経済界・金融機関が中小企業などに対する、資金繰り支援を含む事業継続支援、生産性の向上やデジタル化・脱炭素化対応の支援に取り組んでいる、それも上から目線ではなくて「伴走型」で取り組んでいるとのお話を伺い、非常に心強く感じた次第です。日本銀行に対しましては、市場とのコミュニケーションへの配慮をお願いしたいとのご要望や、超金融緩和が長期間にわたり、それが前提として経済活動に組み込まれていることに留意することが必要であると、こういったご意見を伺いました。本日頂いたご意見を踏まえまして、中央銀行の立場から、物価安定のもとでの経済の持続的な成長を実現していくこと、そして金融システムの安定性を確保することを通じて、当地の関係者の方々のご努力がより大きな成果へと繋がっていくようサポートしていきたいと、改めて感じました。

§4Naoki Tamura

次に二つ目のご質問、群馬の優れている点、課題となっている点についてですが、当地経済は、一大消費地である首都圏への近接性、それから充実した高速交通網、三つ目に自然災害リスクの低さ、こういった点に強みを持つなど、恵まれた産業基盤を有しておられるというふうに思います。こうした強みを背景に、ここ数年の工場立地件数は全国上位となっています。また、当地では自動車関連や素材等の幅広い製造業が立地しており、開発力の高い製造業を中心にEV化や気候変動対応に取り組む事例がみられ、地方自治体や地元経済界、そして金融機関もそれらをしっかりサポートしておられるというふうに伺いました。更に、観光分野では、世界遺産である「富岡製糸場と絹産業遺産群」や湿原で有名な尾瀬国立公園などの自然、それから草津・伊香保・水上・四万といった温泉地などの貴重な観光資源があります。また、本日の懇談会で教えて頂いたのですが、昔から、例えば前橋城の再建など、民間主体で取り組んでいくという意識が強くて、それも当地の大きな強みであるというふうに感じました。このほか、最近では、県知事のリーダーシップのもと、日本最先端クラスのデジタル県になることを目指しているというふうに伺っています。

§5Naoki Tamura

あえて課題として申し上げるのであれば、観光業や製造業といった従来の強みに加えて、脱炭素やEV化への対応、DXといった時代の要請に応える取り組みを各企業が着実に進めていく、既に取り組んでおられるわけですけれども、これを今後も着実に進めていくことが課題だというふうに考えられます。この点、本年4月に当地で「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」が開催される予定であり、デジタル化に向けたこれまでの取り組みや群馬県の魅力を内外に示す絶好の機会だというふうに感じます。こうした取り組みが実を結び、群馬県経済が一層の発展を遂げることをイチ群馬県ファンとして応援しています。三つ目に、日銀の金融緩和政策の群馬県における影響・効果ですけれども、大規模な金融緩和を始めてから 10年、わが国経済はデフレではないという状況を実現し、成長の観点、雇用の観点からも大きく改善したと考えておりますが、群馬県におかれましても、緩和的な金融環境が当地経済の下支えとなる中、生産の増加や失業率の低下など、成長や雇用の観点でプラスの影響を与えてきたというふうに考えられます。副作用については、当地の観点という意味では、金融機関収益を圧迫し、金融仲介機能に悪影響を与える可能性、これは可能性ですけれども、可能性があるというふうに思います。

§6Naoki Tamura

わが国全体でみた場合と同様、低金利環境、更に人口・企業数の減少といった構造的な問題を背景に金融機関の収益性は低下傾向にありました。しかし、近年は、各金融機関の自助努力もあって経営効率が改善してきています。この間、金融機関の資本基盤は十分な水準を保っており、金融仲介機能は円滑に発揮されている、そういう意味では副作用というのは顕在化していないというふうに考えています。

§7Question

簡潔に二点お伺いします。一点目が黒田東彦総裁の任期満了が 4月に迫っています。政府は植田和男さんを次の総裁に任命する方針ですが、次期体制にどのような政策運営を期待するか、あと、午前の講演で金融政策の枠組みと物価目標について検証すべきだということをおっしゃられたと思うんですけども、これもその新体制下で行うべきとお考えかと、これが一点目です。もう一点が、田村さん自身は、現在の 2%をできるだけ早期に達成するという物価目標について、2%という数値にこだわる必要はないというお考えなのでしょうか。こだわる必要がないとすれば、今ほどの金融緩和も必要なくなるという認識なのか、併せて、政府と今、2%をできるだけ早期にという共同声明を結んでいますが、これについても見直す必要があるのかどうか、ここを教えて頂けると助かります。

§8Naoki Tamura

まず、次期体制への期待ということですけれども、基本的には日銀法に定められている通り、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するための政策を行っていくということに尽きるというふうに考えています。同じような意味で、点検・検証のタイミング、新体制下で検証を行うのかという点についても、その時点その時点の物価・経済、それから現在ですと賃上げの状況などを踏まえて判断していくことになるというふうに考えております。それから、二つ目の質問、物価目標についてですけれども、まず、私の考えとしても、足元は賃金と物価の好循環が実現するかどうかを注視していくべき局面にあり、現時点においては当面は金融緩和を継続することが適当と考えております。将来いずれかのタイミングでは、金融政策の枠組みや物価目標のあり方を含めて点検・検証を行って、政策の効果と副作用のバランスを改めて検証することが必要と考えています。従って、現時点で先行きの金融政策の枠組みや物価目標のあり方等について具体的に論じるのは時期尚早であるというふうに考えておりますが、一般論として申し上げれば、消費者物価の表面的な数字のみではなく、経済全体の需給の状況あるいは賃金動向、こういったものを含めて消費者物価の動きの背後にあるメカニズムをしっかりとみていくことが重要だというふうに考えております。

§9Naoki Tamura

なお、今後の共同声明のあり方については私からコメントすることは差し控えたいというふうに考えております。

§10Question

二点お伺いさせてください。一点目が地域経済について、二点目が金融政策についてお伺いさせてください。それぞれ順番にお伺いします。まず一点目なんですけれども、物価と賃金の好循環、これを目指していくに当たって、今日、中小企業の方であったりとか地域のいろんな企業の方と話されたと思います。人手不足の現状であったりとか、あるいは賃上げの難しさ、この辺りについてどういう意見が聞かれたか、そして率直にご感想等があればお伺いさせてください。これが一点目です。二点目は、金融政策、市場機能についてお伺いさせてください。午前中の講演でも、まだ現段階でですね、前回の見直しの市場機能に及ぼす影響を評価するにはなお時間を要するということをご講演でもお話されてましたけれども、3月にMPMを控える中で、10年債の利回りが引き続き上限に達するというような状況が足元で起きています。この現状についてどのようにご覧になられてるか。そして、何らかの追加の政策対応は必要なのか。もし現段階でご所見があればお伺いさせてください。

§11Naoki Tamura

まず一点目の地域経済に関連して、足元の人手不足あるいは賃上げの難しさについて、まずどういうお話が今日あったのかといったことについてのご質問でございますが、基本的には先ほど申し上げたような話ではありますけれども、この人手不足への対応として今日私が強く感じたのは、新しい機械を導入して、今までの半分ぐらいの人で済むような機械、そういった人手不足への対応をDXなどで対応していくというような意見が聞かれて心強く感じました。その後、自由意見交換の時間でも、そういう人手不足への対応というのがどうしても必要になるというような話が多かったです。それから賃上げの難しさについては、やっぱり、ある程度は転嫁できても、中小企業の意見を丸々のんでもらうわけではないので、粘り強く価格交渉していく必要があるといったようなお話がありました。それから、もう一つの市場機能につきましては、現時点ではおっしゃられる通り、国債のイールドカーブの歪みなど、市場機能の低下を示唆するデータについて、その機能低下が解消したと言える状況になっていないのは事実だと思っています。先月拡充を決定した共通担保資金供給オペや、先週の 10年物国債カレント 3 銘柄にかかる国債補完供給や指値オペの扱いの見直し、こういったものを含めて、機動的な市場調節運営を行っているところであります。

§12Naoki Tamura

現段階では、まだ市場がどのように落ち着いて、市場機能がどれだけ改善するのか、謙虚かつ丁寧にフォローしていく、金融政策決定会合では、そうした状況も踏まえて効果と副作用のバランスを判断していくということだと考えております。

§13Question

日銀の新体制について、植田さんを政府は国会に提示したわけなんですけども、植田さんに対するご評価とか印象を率直に伺えれば。あと、氷見野さんと内田さん、正副総裁、3人として提案されたわけですけども、その3人の体制についてもどういうふうに評価されてですね、受け止めてらっしゃるかお聞かせください。あと二点目の、午前中の講演の中でご指摘されていた副作用について、生産性の低い企業が存続することで市場原理を阻害しているのではないかというようなご指摘をされているんですけども、この点についてもう少し詳しくお話を教えてください。

§14Naoki Tamura

まずご質問の一点目、正副総裁の人事案、その対象となる人についての評価ということですけれども、申し訳ないですけれども、総裁および副総裁の人事案に関連しては、私の立場としては、コメントは差し控えたいというふうに考えております。それから、もう一つの生産性の話ですが、今日の懇談会の中でも申し上げたことではありますけれども、生産性を向上させるためには、ミクロレベルの話とマクロレベルの話というのがあって、ミクロレベルで考えると、個々の企業が設備投資ですとか研究開発投資ですとか人的資本への投資、あるいはビジネスモデルの変革などによって生産性を高めていくということがミクロレベルではまず重要であると。もう一つ、マクロレベルの話として、すなわち日本経済全体の観点からすると、開廃業率、すなわち新陳代謝というものが高まって生産性の高い企業のウエイトが日本の中で増えていく、あるいは労働移動の活性化によって生産性の高い企業・産業で働く人のウエイトが高まっていくことによって、マクロとしての生産性が高まっていく、そういう二つの流れが必要だというふうに考えております。

§15Question

午前の講演ではですね、大規模緩和の副作用について色々ご説明されたわけですが、ちょっとお聞きしたいのは、逆にですね、金利が上がった場合の金融機関経営への影響なんですが、金利上昇によって貸出金利が上がって収益の改善が見込める、というのがまず一点プラス面としてあると思うんですが、逆に、保有有価証券、債券とかの評価損の拡大とか、信用コストの上昇とか、そういったマイナス面もあると思います。田村委員は現時点で、金利上昇の金融機関経営への影響ですね、これについてどのように整理されて、また今後、政策修正を行うといった、そういう局面がでた場合、そういう金利上昇に伴う金融機関経営への影響というのは、政策対応として配慮すべき大きなポイントになってくるのかどうか、この点についてお伺いします。

§16Naoki Tamura

まず、大前提として、例えば将来どこかの時点で超金融緩和から、金融の正常化に移るというときに、その規模、マグニチュードと、その速さというのがどうなるのか次第で金融機関への影響というのは変わってくるというふうに考えております。足元でも昨年春以降、海外金利が大幅に上昇して、わが国金融機関の有価証券のポートフォリオは、外債あるいは海外金利系の投信、これを中心に評価損が拡大しているところです。また、昨年12月の金融政策決定会合以降、日本の国債金利が 10年ゾーンを中心に上昇しておりまして、金融機関が保有する国内債の評価損益の悪化にもつながっていると考えられます。もっとも、現時点においては、金融機関は全体として、十分な自己資本を有しており、有価証券関連収益の悪化が金融仲介機能や金融システムの安定に与える影響は限定的というふうにみております。日本銀行としては、こういう金利動向やそのもとでの金融機関の有価証券投資およびリスクの状況について、丁寧にモニタリングしてまいりますし、そういったことも踏まえつつも、先ほど申し上げた日銀法の目的である物価の安定を通じて国民経済の発展に資するというための金融政策をしっかりと行っていくということだと考えております。

§17Naoki Tamura

金融機関経営への影響という意味ですと、先ほどご質問の中にもあった通り、短期的には保有している有価証券の含み益が減るあるいは含み損が膨らむ、という影響が出てきますけれども、長い目でみると、利鞘の改善ということは期待できるというふうに考えております。

§18Question

午前のご挨拶伺っていますと、田村委員は物価については上振れリスクがあるというふうにご指摘する一方で、賃金についても楽観的な見通しというんでしょうか、春闘の結果、楽観的な見通しを今持っていらっしゃると思うのですが、今後、春闘の一斉回答を踏まえて、賃金の持続的な上昇というのが確認、そういう状況が確認できれば、どうでしょう、4-6月期には、金融緩和の縮小ですとか、あるいはYCCの撤廃の可能性というのがみえてくるというふうに田村さんはお考えでしょうか。

§19Naoki Tamura

今、ご質問の中にあった賃上げに関して楽観的というか、相応の可能性があるという言い方ですので、まだそれがベースシナリオとまでは考えていません。従って、これから物価、経済、それから賃金の動向をしっかりと踏まえて金融政策運営を考えていくということに尽きると思いますし、その賃金の上昇が持続的かどうかというのも、これからの各企業の動きなどをみながら、これから判断していく、考えていくということだと思っています。

§20Question

先ほどのお話でもありましたけど、いずれかのタイミングで金融政策の点検・検証を行うというお話でしたけれど、いずれかのタイミングというのは、例えばどういう状況になったらとか、どういった条件があったらとか、その辺りをちょっと教えて頂けたらと思います。

§21Naoki Tamura

いずれかのタイミングということについては、今後の物価や賃金、経済の動向次第だと考えています。機械的に、こうなったら金融政策の正常化に向かうべきとか、点検・検証を行うべきというような基準を私が考えているわけではありません。そのときそのときの状況を踏まえて判断していくということだと考えています。

§22Question

午前中の挨拶文の方でですね、足元で、企業の方では現在進行形の価格転嫁が進んでいる、かつサービス価格が上昇していて物価の上振れリスクが大きいというふうにご指摘されていました。この点についてですね、改めてになるのですが、今年の労使交渉への期待感を含めて、賃金・物価の好循環の実現というのが、当初の想定よりもかなり近づいてきているのか、この辺りのご見解をお伺いできればと思います。そのうえでですね、この現在の大規模緩和の正常化が可能となる時期が田村委員の従来の想定と比べて近づいているのか遠ざかっているのか、現状の評価についても聞かせて頂ければと思います。

§23Naoki Tamura

賃金・物価の好循環が当初想定よりも近づいているのかという一つ目のご質問、その当初想定というのがいつの想定かにもよると思うのですけれども、例えば 2年前、1年前と比べると、その時点で想定していたよりも物価の上昇というのは起こっていますし、賃上げに向けた政労使の前向きなスタンスというのも 1年前に比べると強まっているというふうに考えております。それを踏まえて正常化の時期がどうかということですけども、これについては先ほどご回答したように、その時点その時点の経済、物価、賃金、そういった諸々を踏まえたうえで判断していくということに尽きると考えております。以上