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Bank of JapanPress conferenceMar 2, 2023Hajime Takata, Board Member

高田審議委員記者会見(2023年3月2日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

地元クラブの幹事社として 2 問伺います。まず、本日の懇談内容ですけれども、参加者とどんな意見を交わされたのか。特に、日銀の金融政策ですとか、次期総裁人事に関する意見交換がありましたら、合わせて教えてください。もう 1 点ですけれども、高田さんは本県ご出身ということで、神奈川県経済について伺いたいんですが、冒頭のご挨拶にもありましたとおり、本県も人口減少に直面しまして、成長に陰りも見え始めています。県経済のご印象ですとか、先行きについてご意見がありましたらお聞かせください。

§2Hajime Takata

まず最初のご質問、今日の金融経済懇談会での意見交換がどんな内容だったかということですけれども、今日の懇談会では神奈川県の行政、それから産業、金融界を代表する方から、金融経済情勢や地域経済が直面する問題について、いろんな貴重な意見を頂きました。また、日本銀行の金融政策運営に関する率直な意見、ご要望もお伺いし、有益な意見交換だったと思っています。そういう意味では、ご出席頂いた方々に、本席をお借りして改めて御礼を申し上げたいと思います。本日の懇談会では、意見が多数にわたっているために、全て網羅的にご紹介はできないんですけれども、私なりに聞かれた話題を整理して申し上げたいと思います。まず、足元の神奈川県の景気については、新型コロナウイルス感染症の感染抑制、それから経済活動の両立が進展するもとで、感染症の経済への下押し圧力が和らぐもとで、持ち直しているという意見が多く聞かれたと思います。ただ、業種や業態によって需要や、それから収益の回復度合いには相当ばらつきがあるという声も聞かれています。また、足元では原材料・エネルギー価格の高騰、それから人手不足、この辺についてはやはり多くの声が聞かれました。先行きについては、海外経済の減速、それからそれに伴う需要減、そうした認識があったと思います。

§3Hajime Takata

この点、多くの皆様から、企業の適正な利益の確保を従業員への分配につなげる、いわゆるよく最近言われております、「パートナーシップ構築宣言」の実効性の向上が重要という声が聞かれたというのも、私は非常に印象的だったと思います。それから県経済の一段の活性化に向けた官民を挙げた脱炭素の動き、高齢化が進む中での事業承継、M&AとかDXの活用による生産性向上といった様々な問題意識を踏まえた取り組みがあるというお話も伺い、心強いと思いました。日本銀行には、金融政策の適切なかじ取りをお願いしたいという意見、それからちょうどこの時期がゼロゼロ融資の返済が本格化してくる時期でもあり、そういう中で引き続き中小企業への資金繰りへの支援に万全を期してほしいというご要望を頂きました。それから我々としては、中央銀行の立場として物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現すること、また金融システムの安定性を確保するなかで、特にこの神奈川県内の金融経済情勢について、横浜支店も今後もきめ細かい調査、広報活動を続けることを通じて、これからも皆様方の努力が大きな実りにつながっていくようサポートしていきたいと思います。それから、ご指摘のございました総裁人事については、特に話題にはならなかったというところでございました。

§4Hajime Takata

2 番目のご質問、神奈川県経済に対する印象、先行きをどう見ているかということなんですけれども、先ほどご指摘がありましたように私自身神奈川県の出身ということもありますので、県の経済情勢についてはそれなりに土地勘を持っているんじゃないかなというつもりで来ました。今回、県内を色々回らせて頂きいろんなお話もお伺いすると、こんな点があったのかとか、認識を新たにした点が正直言って多かったと感じました。先ほど申し上げたように、足元の神奈川県の経済情勢については、感染症や供給制約の影響がだんだん緩和してくるなかで、持ち直しているとの印象はありますし、また先行きも海外経済のいろんな部分、難しい部分があるんですけれども、回復を続けるということだと思います。ただ、やはり先ほどもご指摘があったんですけれども、長い目で見ますと人口動態の面で従来は非常に恵まれていた立ち位置であったと言われていたこの神奈川県でも、21年からは人口減少に転じているというのが現実なんです。そういう中で今後、少子高齢化に伴う成長率の鈍化という課題、これにどう対応するのかというのは、やっぱり大きな問題というか、色々ご意見が多かったなと感じます。

§5Hajime Takata

そうした状況の中で、今日の懇談会ですとか、いろんなところを訪問させて頂いたんですけれども、地域の特性を活かして地元の経済の活力を高める取り組みについて伺って、非常に我々としては心強く思った次第です。今日の挨拶の中でも申し上げたんですが、例えば内陸部の旧上瀬谷通信施設の跡地で 2027年の国際園芸博覧会の開催に向けた準備があるわけです。しかも博覧会後の跡地の利活用の検討もあるということですから、従来臨海部のところが注目されてきたんですけれども、それだけではなくて内陸部における開発プロジェクトと有機的につなげる、そしてそれを地域の活性化につなげていくことが期待されると思います。そういう意味では、今日の席でも何人かの方から、この博覧会の開催、その後の跡地利用のための課題というところについて色々ご意見があったところであります。それから、横浜ではちょうどこの場所がまさにそうなんですけれども、観光スポットとしての魅力を高める開発も色々進んでいるわけです。こちらのみなとみらい 21 地区、ちょうど開発が大体 30年くらいに及んできているわけで、開発業務もいよいよ大詰めを迎え、コンベンション施設、それから大規模な音楽アリーナ、高級ホテルも多数集積するなかでの新しい姿へと変貌しているということだと思います。

§6Hajime Takata

それから横浜、川崎、東京にも近いわけですし、また、空それから海の玄関口にも隣接している、羽田空港にも近いということもあるわけで、その地理的な優位性も活かしながら、脱炭素社会の実現、それから健康寿命の延伸なども含めて日本全体としての課題を解決する、DXというんでしょうか、先端産業を育成する取り組みが進められているというところは、非常に心強く感じたところであります。こうした動きが県全体に波及する、また、神奈川県全体がさらなる成長に向けていく、またそれが日本全体の一つの起爆剤になっていくということを、今回改めて期待したいなと思ったところです。

§7Question

債券市場の動向についてお伺いします。高田さん、午前の講演で市場機能に十分配慮して金融政策運営を行うとおっしゃいました。ただ、昨日発表された 2月の債券市場サーベイでは、市場参加者が判断する機能度 DIが過去最低を更新しました。日銀が昨年12月に長期金利の上限を引き上げてから 2 か月以上経っていますが、現時点で市場機能が改善しているかどうかについての認識をお聞かせください。合わせて追加の政策対応が何か必要になっているのかどうか、ここについても教えてください。

§8Hajime Takata

ちょうど昨日、債券[市場]サーベイが発表され、こちらを見ると、債券市場の機能度判断DI、前回 11月との比較でマイナス幅が拡大しているというのも事実です。日本銀行はこの間、国債市場の機能度に配慮した観点から、従来から国債補完供給の要件緩和という措置を講じてきたわけです。また、こうした問題意識の中で昨年12月にはイールドカーブ・コントロールの運用の一部見直しを行ったということです。ただ、この見直しが市場機能に及ぼす影響を評価するには、 2 か月経ったというのは事実なんですけれども、やっぱり一定の時間を要するのかなと思っています。それから 1月の決定会合の中で、拡充を決定した共通担保資金供給オペもありますので、こうしたものも活用しながら機動的な市場調節運営を営んでいき、そういう中で市場機能の改善を期待していきたいなと思っています。そういう意味では、この債券市場の動向について、今回の [債券市場]サーベイもありますし、また通常のモニタリングも含めて、引き続き注意深く見ていきたいと思います。それから、追加での対応をどうするんだという発言がございましたけれども、今の時点で私は、これは見極める段階ということでもありますので、今の段階ですぐに追加的なものをどう考えるかということを念頭に置くということはあまり置いてないということであります。

§9Hajime Takata

もちろん将来的には、こうした対応については常に決定会合の段階でそれなりに一番あるべき姿というところの中で考えていきたいと思っています。

§10Question

挨拶要旨の中で物価目標の安定的な達成には、今春の賃上げの状況が大事な試金石だ、というふうなご表現がありましたけれども、現在大企業なんかでは連日のように 5%以上の賃上げだというようなニュースも飛び交っておりますけれども、現在の今春の春闘の状況、賃上げの状況について、どう感じていらっしゃいますか。

§11Hajime Takata

今日と言いますか、私も常々ということでもあるんですけれども、この物価の安定的な目標の達成ということにおいては、やっぱりこの賃金 [上昇]が伴う好循環が非常に重要だという意識を持っておりますし、また今日もそういう形で申し上げたということであります。そうした状況からしますと、確かに皆様方のご報道も含めて、最近、賃上げの動きがいろいろヘッドラインを賑わすということもございますし、また、連合は定昇も含めて 5%という動きということでもあります。また、経団連の方からの発言も、やはり従来にないというようなところもありますので、そういう中では、こうした動きを私も非常に期待をして見守っているということです。ただ、今日の午前中も申し上げたんですけれども、我々も期待はしているんですけど、本当にそこがどこまでできるのかなというところについては、やはりまだまだ不確実性が強いのかなという意識を持っています。期待はしながらもということではあるんですが。それは午前中申し上げたように、一つは海外経済のところの不透明性、海外はある程度その物価を冷やすというような形の中で抑制的な対応を採っているわけですから、当然、そういう中で経済、マクロ的な状況がどうしても下方バイアスがかかりやすい、当然それは日本にも影響が出てくるということがあります。日本の一部生産活動にも影響が出ている部分があるわけです。

§12Hajime Takata

それから、もう一つ重要な点は、確かに我々が目にする動きというのは大企業を中心とした動きという形の中で、賃上げもという動きが顕在化しているのも確かではありますけれども、日本全体を考えますと、大宗の部分は中小もしくは地域ということであります。こうした点は、我々も全体を把握するのもなかなか難しく、我々の支店長会議であったりとか、様々なレポーティングを通じても、なかなか難しい部分というのがやっぱり多いという声も実際には聞かれます。そういう点も含めた中で、本当にこの春、我々も非常に注目していますし、試金石だと思っているんですが、どこまで本当に高い水準が維持といいましょうか、上がることができるのか。もちろん昨年よりはやや高い水準をということではあるんですけれども、これが物価の目安のところにつながるような動きまでいくのかというところ、もしくは連合で指摘する 5%というようなところになるのかについては、まだなかなかハードルは高いのかなとそんな意識でみているというところです。

§13Question

日銀の次期総裁候補の植田和男さんが先日国会での所信聴取の場で、これまでの政策の検証についてですね、政策委員の皆さんと議論したうえで必要に応じて検証を行うというふうな考えを示されました。これについて高田委員、こうした検証を行う必要があるのかどうか、行う場合はどういったタイミングでどういった内容のものが適切と考えていらっしゃるかをお伺いします。

§14Hajime Takata

私も報道を通じて、次期候補の植田氏が、今おっしゃったような検証と言うんですか、そういうお話は聞いておりますけれども、現段階で言いますとまだ候補と言いましょうか、同意人事の前ということでもございますので、一義的に申し上げると、コメントをなかなかさせて頂けるような状況でもないのかなと思っています。ただ一般論で申し上げますと、そういう意味での検証ということは、私自身は常に各会合ごとに思っておりますので、そういう意味では常にそういう検証の作業は必要なのかなと思っております。ただそれを個別具体的にいつの段階でということについては、今の段階では今おっしゃられた同意人事ということもまだということでもございますし、まだ正直申し上げてそういうお話を私も直接受けている訳でもございませんので、そういう意味ではその辺のところについては、いずれ、もし、そういうお話が決定会合等を含めた場であるのであれば、私自身も色々考えさせて頂きたいなと思っているところです。

§15Question

2 点お伺いしたいんですけれども、先ほど市場機能の低下について、政策対応の必要性について、現時点ではもう少し様子見ということでしたけれども、先行きの対応までは否定されなかったんですけれども、市場機能の低下が続いているというところで、高田委員としてはどの時点になればさらに政策対応が必要になるというふうにお考えなんでしょうか。もう一つは、物価の基調についてなんですけれども、先ほども言及がありました植田総裁候補は、基調的な物価上昇率を見極めて、YCCの修正等を検討していくというのを強調されていましたけれども、高田委員からご覧になって基調的な物価上昇率というのはどういうもので、何に注目していくと基調が一番見極めやすいのかと、この点お考えをお聞かせください。

§16Hajime Takata

市場機能をどの時点でというようなことなんですけれども、これもちょっと繰り返しになっちゃうんですけれども、昨年の 12月から新たな市場調節運営の下で対応しているわけですけれども、そういう中での市場の金利形成の状況の定着というんでしょうか、やっぱり相応の時間がかかるんじゃないかと思っているんです。しかも内外も含めて市場の動きが相当変動しているということがあるんで、正直申し上げるとなかなか具体的な期間でいつだということを申し上げられるというような状況じゃないというのが私が今思っている点、またこれまでも思ってきた点でもあります。ただ、ここ数か月、機動的な市場調節運営をしておりますので、そういう中でこれからの改善といいましょうか、そういうものは期待していきたいなと思っています。また、その過程においては、先ほども申し上げましたけれども、いろんな意味でのモニタリングというんでしょうか、もちろん今回の [債券市場]サーベイもございましたけれども、いろんなモニタリングを含めて、そういうことを常に予断なく見ていきたいなというふうに思っているところであります。それから、2 番目にご指摘頂いた物価のところですけれども、なかなか我々もご説明を本当はもうちょっと丁寧にしなきゃいけない部分もあるのかなと思うし、それからなかなか難しいのは、どの物価指標を採ったらいいのかとよく聞かれるところであります。

§17Hajime Takata

もちろん我々は消費者物価・除く生鮮を、例えば展望レポート等でも示しているわけなんですけれども、また一方でこれだけエネルギー価格が上がってくるというようなことがあると、場合によってはエネルギーも除いたものも同時に展望レポートの中では示させて頂きながら、どういうものがこの基調的に安定するという定義に沿うのかということを考えながら、お示しさせて頂いています。ですから、これがというようなものよりも、いくつかのものを総合的に見ながら、そういう基調というものを判断していきたい。それからもうちょっと重要なのは、物価のこの単なる数字が独り歩きということだけではなくて、やはり持続的な安定というものを判断するうえでは、この前向きな循環というんでしょうか、そういう観点でも先ほどご指摘がございましたけれども、例えば賃金の上昇であったりとか、またそういうものを含めた物価の安定的な対応、そういう好循環みたいなものが持続できるようなものも合わせながら基調的なものを見ていきたい。それから、物価はこれまでもそうでありましたけれども、様々なものも我々も見ながらというんでしょうか、またいろいろアカデミックな世界なんかでもいろんな試みなんかも出てきておりますから、そういうものも横目で見ながら、参照しながら我々も今後も見ていきたいと思っております。

§18Hajime Takata

またそうしたことを分かりやすい形で、市場の方々にもお伝えすることが必要なんだと思っていますから、そういう努力を怠りなく対応していきたいと思ってます。

§19Question

先ほどから、市場機能についての質問が出ていると思うんですけれども、高田さん、その市場の専門家ということでもありますので、もう少し詳しくその 12月以降、いろんな様々な政策を打ってきていますが、どこにその改善がみられたのか、どこに改善がみられていないのか、あとその社債市場について、どういった改善がみられているのかどうかについて、お願いします。

§20Hajime Takata

市場機能というところで言いますと、やはり、イールドカーブの歪みのところであったりとか、それから、やはり先物と現物の乖離というか、歪みというかですね、そうしたところに対応してということでもありましたし、またご指摘にもございましたような社債市場、こうしたところがやっぱり問題意識の中であったということではあろうかと思います。12月にこういう形で[変動]幅の見直しをさせて頂いたということでもあるんですけれども、今回の 3月[公表]の[債券市場]サーベイを見ても、まだ浸透がいってない部分はあるのかなと思います。ただ、この辺を考えると、特に 1月の金融政策決定会合の前後の期間に国債の流動性が結構低下したという部分があったのかなと。ですからその点が、今回のアンケートなんかのところで言うと、影響してしまった部分があるのかなというふうには思っています。ですから、そういう中で言いますと、このYCCの見直しはしたわけではありますけれども、市場機能に及ぼす影響にはまだ時間かかるというところからしますと、やはり今しばらくこの動向を注目していかなければいけないとそんな意識でおります。また、その後、共通担保オペのところでの対応とか、最近もいくつかのチーペスト銘柄、カレント 3 銘柄についての対応もしておりますので、そうしたものも含めながらの対応というか、影響も見守っていきたいと思っています。

§21Hajime Takata

それから社債のところは、確かにこの期間、季節柄発行が少ないと思います。そういう意味での発行がどうしても少ないという部分もあるんですけれども、ただこの点についてはもともとの問題意識でもありましたので、社債市場の動向についてはこれからもよく注目して見ていきたいと思っています。

§22Question

午前中の挨拶で現行の金融緩和に関しては粘り強く続ける必要があるというご趣旨の挨拶をしていると思うんですけれども、一方で、植田次期総裁候補も副作用の存在も言及されているかと思うんですけれども、現行のですね金融政策の副作用についてのご認識を改めて教えて頂けると助かります。

§23Hajime Takata

基本的にはその金融緩和と言うんですか、粘り強く行うというのが重要な局面だということを申し上げたわけなんですけれども、当然のことながら副作用には目配りをしながらということかと思います。またそれが全くないというわけではないかと思っています。ただやはり、ちょうど 2021年の点検でも申し上げているんですけれども、これまで緩和をしてきたことに対する効果は結構あったと。GDP の試算の中でも例えば 1%前後、それからCPIでも 0.6、0.7%ぐらい[の押し上げ]という見方もしていますし、雇用も増えたと。ただ一方で、今ご指摘がございました副作用ということで言えば、一つはやはり金利が低下した中での金融機関の収益性といったところ、それからこれまでもご指摘が色々ございましたけれども、例えば債券市場の市場機能といったようなところへのある程度の副作用があったということ、この辺についても同様に考えて、その辺のところを均してみると、私はその効果の方が大きかったと思っております。当然のことながらやはり今後についてもそうした副作用、場合によってはそれ以外の副作用をご指摘される方がおられますけれども、そういうものも我々も謙虚に色々みていきながら、もしあるとすればそれに対する対応とか、もしくは全般的なバランスの中でどう判断するかということを常に考えていかなきゃいけないと思っているところです。以上