内田副総裁記者会見(2023年8月2日)
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§1Question
私からは地元ということでローカルな視点で二問ほどお伺いしたいと思います。まず一点目は今日の議論の内容についてです。金融経済懇談会、千葉県では 8年ぶりの開催ということですけども、今日の会ではどのようなお話、話題が議論されたのかということが一点です。二点目は、千葉県の景気情勢について伺いたいと思います。千葉県の景気情勢について、日銀としては一体どういう認識を持っておられるのか、また先行きについてはどう見通されているのか、その辺のお考えを聞かせて頂ければと思います。
§2Shinichi Uchida
本日の金融経済懇談会では、行政・経済・金融の各界を代表する皆さまから千葉県経済に関する貴重なお話、それから、日本銀行の政策運営に関するご意見・ご要望を数多く頂きました。大変有意義な意見交換ができたと思っております。ご参加された方々に改めて御礼申し上げたいと思います。話題はかなり多岐にわたりましたので全てをご紹介することはできませんが、いくつかの点に整理して申し上げたいと思います。まず千葉県の景気についてですが、複数の参加者の皆さまから、持ち直し、ないしは、緩やかに回復しているという趣旨のお話を頂きました。具体的には、新型コロナの感染症法上の位置付けの変更もあってサービス消費を中心にペントアップ需要が顕在化している、あるいはインバウンド需要の回復、こういったことを指摘する声が多かったと思います。企業の収益性に関しても、緩やかな改善傾向がみられるというお話を頂きました。一方で、先行きの不確実性に関するご指摘もいくつか頂いております。例えば、物価高が家計に与える影響、それが個人消費にどう影響するかということを含めてですが、更には原材料・光熱費のコストが企業業績に及ぼす影響、これも価格転嫁ができるところとそうでないところがやはりあるので、そういったところを含めてお話がございました。
§3Shinichi Uchida
また、これはほとんどの方が言及されたテーマですが、人手不足が大変厳しい状況にあるということで、そのもとでの賃金あるいは価格設定行動の特徴、変化の兆し、そういったお話もありました。この春の賃上げにつきましては、業種間でばらつきはかなりありますけれども、全体として高水準になったというふうに伺ったところでございます。それから、金融政策につきましては、需要の下支えのほか、企業の成長投資を後押しするという観点からも、緩和的な金融環境を維持してほしいというご意見を頂きました。併せて、副作用についての配慮をお願いするというご意見も同時にあったということでございます。このほか、金利それから為替の急激な変動というのは、企業の経営計画を混乱させるため、市場の安定化に注力してほしいというご意見も複数頂きました。更に、今回、多角的レビューの趣旨でもお願いしておりまして、いくつかのご意見を頂戴しました。1990年代以降の金融緩和は企業の設備投資などを通じて地域経済の下支えに前向きな効果を発揮したと評価頂いたご意見がありました。一方で、様々な副作用、例えば金融機関の貸出金収入の下押し、あるいは有価証券運用面での影響、こういったご指摘もあったところです。
§4Shinichi Uchida
最近の輸入コストの上昇が中小企業等の収益の下押し圧力となっているということもご指摘がありまして、そういったことも踏まえた適切な政策運営をお願いしたいというご意見も頂いたところです。多分全部を取り込めていないというふうに思いますけれども、このようにたくさんのご意見を頂いたということで大変ありがたく思っております。私どものレビューにも、活かしていきたいというふうに思います。景気ですけれども、千葉県の景気については、基本的にはわが国経済全体と同じく緩やかに回復しているというふうにみております。個人消費は、新型コロナの感染症法上の位置付け変更等を背景に、外食、それから当地の場合、観光などサービス消費が好調で、緩やかなペースで着実に増加しているというふうに伺いました。また、企業の支出の面でも、当地は物流センターそれからデータセンターなど大型投資のほか、人手不足の強まりに対応した省人化あるいは効率化投資、こういったものも幅広くみられております。京葉臨海工業地帯に集積する企業、鉄鋼とか化学、石油等ですけれども、[これら]を中心に、脱炭素化関連の設備投資、それから研究開発投資も継続的に行われています。労働需給が引き締まる中で賃金も改善しているという動きに広がりがみられていると思っています。こうした動きに支えられて、千葉県の経済は先行き緩やかな回復を続けるというふうにみております。
§5Shinichi Uchida
もっとも、当地は製造業のウエイトが比較的高いということもありますので、海外経済の回復ペースの鈍化の影響が素材あるいは資本財の生産面で一部みられています。そのほか、これは全国的な話ですが、物価上昇による消費者の生活防衛意識を懸念する声も強いというふうに聞いております。こうしたリスク要因には引き続き注意が必要だというふうに思っていますが、基本的には緩やかな回復が続いていく可能性が高いというふうに評価しております。
§6Question
先日の決定会合でのイールドカーブ・コントロールの修正についてお伺いします。今回の修正がですね、実体経済に与える影響についてどのようにお考えかというところをお伺いできればと思います。一定程度の金利上昇を認めるということは貸出金利の上昇とかですね、金融引き締めに繋がるという面もあるかなと思います。このあたりの影響をどうみてらっしゃるかというところをお伺いしたい。関連して、植田総裁が先日の会見で、上限の 1.0%まで上昇するってことは想定されてないとおっしゃっていました。この点についてですね、非常に高い上限を設けることでその YCCのある意味の形骸化につながるのではないかという指摘があります。この修正後の YCCの意義について、どのようにお考えかという点も併せてお願いします。
§7Shinichi Uchida
今日の講演でも述べましたけれども、今回の柔軟化の趣旨というのは、経済・物価を巡る不確実性がきわめて高い中で上下双方向のリスクに機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を続けていくために行ったということです。現時点で 2%の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていないわけですから、当然この枠組みは維持しますし、それから今日、三つに分けて説明しましたが、マイナス金利の扱いというのはまだ先の話だというふうに思っています。そういう意味で出口を意識したものではないということでございます。今、物価で上振れの動きが出てきているわけですけれども、今後も上振れ方向の動きが続いた場合に、昨年暮れに起きたような債券市場の機能、あるいは為替市場を含めて金融市場のボラティリティに影響を与える、こういったことが起きる恐れがありますので、この段階で予めそれを和らげていこうという趣旨で行ったものでありまして、重ねて言いますが、出口を意識したというようなものではないということでございます。二つ目のご質問、1%ですが、これは念のための上限キャップということで考えてセットしたものです。総裁が申し上げた通り、そこに向かって上がっていくということを想定しているわけではないというもので、あくまで念のためということでございます。
§8Shinichi Uchida
そういう意味で、現状の経済・物価の情勢が大きく変わらないのであれば、金利が大きく上昇するということは想定していないということです。もちろん必要があれば、過度な上昇を抑えるということで今回の仕組みをとったわけですので、これが経済を抑えるようなものにつながるとは考えておりません。
§9Question
先ほどの挨拶の中で、副総裁は金利の上限を 0.5%に厳格に抑えようとすると、為替市場を含めてほかの市場の変動に影響を与えたりするといったお話があったんですけれども、今回の政策修正の中で、この為替市場についてどの程度意識されたのかをまず伺えますでしょうか。もう一点はですね、今回の政策修正に踏み切った後でも円相場が円安に振れていまして、一時 143 円台をつけております。円相場の動きをある程度予測されていたのか、受け止めをお聞かせ頂けますでしょうか。
§10Shinichi Uchida
まず大前提として、日々の市場の動きにコメントすることは差し控えたいと思います。これはいつもそうです。そのうえで、今回の措置というのは、基本的には今後も物価面での上振れ方向の動きが続いた場合に起こり得る副作用を防ぐという趣旨で事前に行ったということですので、[昨年]12月前後に起きたことを思い出して頂ければ、起きたことの一つは、債券市場を中心に機能に影響を及ぼした歪みその他、もう一つは、金利の市場で上限があることに伴って、為替市場を含めた金融市場のボラティリティに影響を与えてしまったということだろうと思います。ですから、そういったことが起こらないようにしたという意味で、今回の措置において為替市場を含めた金融市場のボラティリティというのは重要な要素であったということになります。そのうえで為替相場ですけれども、これもいつも申し上げていることですが重要なことなので繰り返しますが、為替相場については経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することがきわめて重要だというふうに思っております。為替相場というのは経済・物価に対して大きな影響を及ぼす重要なファクターだというふうに思っています。引き続き政府とも緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向と、それがわが国経済・物価に及ぼす影響について十分注視していきたいというふうに思います。
§11Question
金融政策決定会合の影響に関してはノーコメントということでよろしいですか。為替相場に関して。
§12Shinichi Uchida
日々の[市場の]動きについてはコメントしません。それはいつもそうです。
§13Question
物価についてお伺いさせてください。街中をみてもかなり飲食店も賑わっておりまして、レジャー施設もかなり賑わっておりまして、物価上昇に対する感覚的には個人の需要の強さっていうのを印象として感じているところですけれども、それゆえに企業も値上げに対して積極的に動かれているような印象を受けています。この間、議事要旨も6月分ですが、公開された中で政策委員の間でも2%下回らないという意見も出てきています。そのうえでなんですけれども、物価上昇について消費者の需要要因が強まってきたというふうに考えていらっしゃるかどうかというところが一点目。それに関連してですね、物価が想定以上に上振れしている中で、金融政策の修正が遅れ、そしてインフレを抑えられなくなるリスクはないと考えていらっしゃるかどうか、この点について改めてお伺いさせてください。
§14Shinichi Uchida
現在、物価は 3%を超えているわけで、3.3%というのが直近ですが、家計に大きな負担になっていることは十分に認識しています。特に上がっているものというのが食料品それから日用品、こういったものの価格上昇が大きいので、消費者の皆さんにとっては日々実感されているということかと思います。特に、これらの消費ウエイトが大きい相対的に所得の低い家計ほど影響が大きいという性質のものかと思います。実際、今日も挨拶で述べましたが、スーパー等では買い上げ点数を減らすとか低価格商品にシフトするといった生活防衛意識の強まりを示すような事案も出てきているということかと思います。一方で、個人消費が比較的堅調である、着実に増加していることの背景には、この春の賃上げあるいはこの後の期待を含めてということになると思いますが、家計の所得が比較的安定している、あるいはこの後、強まっていくのではないかという期待があるわけです。この期待を崩さないようにしないといけませんから、私どもは来年も賃上げできるような環境を整えていきたいというふうに思います。そういう意味で需要要因という意味で言えば、この辺が本当に強まってくるのか、つまり賃金と物価、その相対関係において個人消費が十分に持続的に増加していけるのかというところを注目してみていきたいというふうに思いますし、何よりも賃金が大事だなというふうに思っております。
§15Shinichi Uchida
それからリスクですけれども、今日も述べましたがリスクは常に上も下もある、それは当然なのですけれども、現時点においては下方向のリスクの方が大きいというふうに判断しているわけで、まだ、2%を実現できなくなってしまう、慌てて引き締めをすることによってですね、そのリスクの方が大きい。引き締めが遅れて 2%を超える状況が長く続いてしまうという上方向のリスクは、それに比べればまだそこまで大きくはないというふうに判断していますので、従って、そのリスクマネジメント・アプローチの考え方から言って、粘り強く金融緩和を続けていくべき局面に引き続きある、その中で企業が賃金を来年も上げられる環境を整えていきたいというふうに思います。
§16Question
二点あるんですけれども、コストとベネフィットの比較衡量で政策、YCCの枠組みは変えなくても、修正が可能であるということで、先週、そのような措置をとられたと思うんですが、今後もそのバランス次第ではまた同じような修正を施していくっていう可能性があるのかどうか、その場合重要なポイントというのはどの辺になってくるのかっていうのが一点目です。二点目は、新しく設けた 1%という上限と 10年金利ターゲットの関係なんですけれども、マイナス金利の撤廃というのは、まだちょっと先だということはおっしゃっているんですが、この 10年金利ターゲットそのものをゼロ%程度、これを引き上げていくというのは可能性があるのか、それとも 1%という上限を設けたので、こちらを動かしていくっていうのが今後より可能性としてあるのか、ゼロ%のターゲットと新しく作った1%の上限の関係性について教えてください。
§17Shinichi Uchida
まず今回三つに分けてご説明した通り、YCC、イールドカーブ・コントロールの枠の中での調整というのは、これはイールドカーブ・コントロールという仕組みをうまく続けていくためには必要なものです。ただ、それが、次回もあるのかということについては、今は想定してないのは明白ですし。終わったばかりですから。1%という基準というのは、少なくとも今の状況においてはかなり高いところに設定していますので、今の段階でそういうことは念頭には置いてはいません。そのうえで、枠組みとしてマイナス金利と 10年のところをどう考えるかということについては、YCCの枠組み自体はコミットメントに沿って、少なくとも、という意味ですが、そこまでは継続していくということは約束しているわけですから、当然そのようにしていきます。物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するという約束をしているわけですから、それまでの間、粘り強く継続していきたいというふうに思いますし、その中身としては、当然、短期金利と長期金利どちらも、コントロールの仕方は今回のように変わることはあるにしても、コントロールは続けるということだと思っています。従って、枠組みとしては維持します。
§18Question
二点お願い致します。午前の講演でYCCのメカニズムにつきまして、インフレの期待が高まる場合、金利上昇の抑制によって緩和効果が強まる一方、市場機能度への副作用も大きくなるというご説明されました。今回YCCを柔軟化して長期金利の上昇を一定程度容認されたわけですけれども、これは金利抑制による緩和効果の強まりよりも副作用への配慮を優先した、言い方を変えれば、ここからの金利上昇を抑えることは効果よりも副作用の方が大きいというふうに判断しておられるのか、ということが一点目です。二点目なんですが、先ほどの為替の質問とちょっとかぶってしまうんですけども、今回の修正によって為替市場を含めてボラティリティを抑えていくということなんですが、これYCCによって為替の変動が大きくなってると判断された場合は更なるYCCの修正、柔軟化を検討するということもあり得るんでしょうか。
§19Shinichi Uchida
前者につきましては、これまで申し上げている通りですが、予想物価上昇率が上昇することに伴って緩和効果は強まる、一方で、副作用の可能性も強まるということを意味するわけです。そのバランスをとっていくということですので、タイミングという意味ではギリギリまで粘るほど、今日も言った通りですが、緩和の効果を引き出しやすい一方で問題が起こってから対応する方が難しいのでそのタイミングを選んでいるということです。当然のことながら名目金利が上がろうとする力を一定程度抑えながら、だけど完全に抑えるわけではないことに、この効果自体の本領があるわけですから、そこはバランスを取りながら金融緩和を維持していくし、これからもそうしていくということです。その副作用の一つとして今おっしゃった点はあるわけであって、為替市場を含めて、これは含めてと言うべきですが、他の市場のボラティリティに与える影響、それからその前に挙げていますが債券市場の機能そのもの、そういったものを一方に置き、もう一方に金融緩和の効果というものを置きながら適切なバランスをとっていくという態度はこれからも変わりません。
§20Question
コミュニケーションの関係で、今日の副総裁の講演でも緩和を長続きさせるもので出口を意識したものではないということですけれども、例えば昨日、自民党の世耕参院幹事長が緩和を続けるというふうに約束していたのに今回の政策決定については疑問に感じるといったような発言があったんですけれども、そういうふうな政策のちょっと複雑さっていうところもあるかと思うんですけれども、どのようにコミュニケーションされていくのかその考えを教えてください。
§21Shinichi Uchida
ご発言について、コメントするのは差し控えさせて頂きたいと思います。詳細を存じ上げているわけでもありませんので、一般論としてお答えさせて頂きますが、今回の柔軟化の趣旨は、今日もご説明した通り、緩和の持続性を高める、つまり粘り強く緩和を続けていくため、それをうまく続けていくための備えだということでございます。ただ、おっしゃるようにこの仕組みというのは、複雑な面がありますし、その一つ一つの評価というのは、伝えていくことが大変難しいものの一つだと。皆さまにもそういう意味では、ご協力頂きながら、われわれが粘り強く緩和を続けていくという趣旨が広く国民の皆さまに伝わるようにしたいと思いますし、私どものコミュニケーションにおいても、努力は続けていきたいというふうに思います。重ねて言いますが、この柔軟化の趣旨はあくまで緩和をうまく続けていく、粘り強く続けていくために行ったということでございます。
§22Question
7月の会合での修正なんですけれども、ボラティリティという意味では今後8月ですとか結構市場は海外とかのバケーション期間に入られてボラティリティは高まると思うんですけども、その辺のところをどのようにみてるかというのを一つお伺いしたいです。もう一つは、出口ではないということはもちろん今回お話されてると思いますけれども、やっぱり世の中の注目としては次、そのマイナス金利をどう扱うかというところが注目されるところだと思います。まだもちろん距離があるというふうには認識してるんですけれども、その際どういったところを今後見ていくかというのを教えて頂けますでしょうか。お願いします。
§23Shinichi Uchida
まず前者は、市場の状況にコメントするような話になりますので、具体的にコメントすることは適切ではないというふうに思っています。市場は、もちろん流動性の多いとき、そうでないときっていうのはあるわけですけれども、その中でいろんなことをこなしながら動いているわけですので、これだけ大きなマーケットの中においては、時期であるとか、そういったことが大きな要素になるということは、日々の動きということではなく考えるのであれば、あまりないであろうというふうに思います。それからマイナス金利については今日も割と詳しくお話したわけですが、マイナス金利を解除して例えばゼロにする場合にはというふうに書きましたが、0.1[%]の分だけ引き上げるということを意味します。ここは長期金利のところとは違って私どもは完全にコントロールができるわけですので、意図的に引き上げるということを意味するわけです。従って、言ってみれば実体経済面で需要を抑えることで物価が上がらないようにするということですので、そういった判断になるときにやるということです。
§24Shinichi Uchida
これも言いましたが、先ほどのリスクマネジメント・アプローチで上方向と下方向が、マイナス 0.1[%]で維持することによって、むしろ引き締めが遅れて 2%を超える状況が続いてしまう、そちらの方がより心配だという状況になって初めて議論になり得るということだと思いますので、現在の状況からみるとまだ大きな距離があるというふうに思っています。
§25Question
先ほど、長期金利は 1%に到達しないというふうなお話があったかと思うのですが、実際 1%に近づく前にオペとかで止めに行くのかどうかについて教えてください。今の想定しているレンジみたいのがあればそれもお願いします。
§26Shinichi Uchida
先ほど申し上げたのは、今回の対応というのはこの後、物価あるいは予想物価上昇率に上振れ方向の動きが更に続いた場合には、何度も申し上げたような様々な副作用が生じる恐れがあるので、この段階で対応したということを申し上げたわけです。従って、今の状況において長期金利が大きく上昇するとは考えていないというふうに申し上げたわけです。そのうえで、状況によって 0.5[%]を超えて動くということはあるわけですけれども、その場合には長期金利の水準とか変化のスピードに応じて、各種オペを駆使して機動的に対応していくということです。当然のことながらこの段階で、0.何%をみてますということが何か念頭にあるということでは今の段階ではないです。あっても言わないですけど。
§27Question
1%をつける前にオペで止めにいくかどうかについてはどうですか。
§28Shinichi Uchida
それは当然止めにいくでしょうね、スピードによっては。今、要するに 1[%]は必ず止めると言ってるわけですから。それ以外の手段は 1[%]に向けたときには使っていくのは当然でしょうけれども。将来の話としておっしゃるのであればそうです。
§29Question
住宅金利ローンについてちょっとお伺いしたくてですね。先週の政策の修正で早速長期金利が0.6[%]ぐらいまで上がりましたけれども、足元8月の住宅ローン固定金利も上がっていて 9月も上がることが見込まれるなど、ちょっと影響は出ているかなと思うんですけれども、回り始めたその景気の好循環に水を差すようなことにはならないのかなど、政策修正の影響に関しての所感を教えてください。
§30Shinichi Uchida
ファクトとして申し上げますが、住宅ローンの大半を占める変動型については今回短期金利を維持していますので、これは影響はないということになります。それから既に組んでいる固定金利は当然 [影響は]ありませんが、新規の固定金利型につきましては、これは長期金利と一定程度連動する面があるということです。もっとも、先ほど申し上げた通り、過度な長期金利の上昇は抑制するということで対応を行いますので、長期金利が大きく上昇することは考えていないということでございます。いずれにしても、住宅ローンを含めた家計や企業の状況については注意深くみていきたいというふうに思います。現時点では、今のようなふうに考えているということです。
§31Question
YCCの運用柔軟化の措置は現時点ではどの程度持続的なものと考えていらっしゃるのか、来年春闘とか物価・経済の情勢によってかなり変化し得るものだとは思うんですけれども、半年や 1年など期間やその変化の兆しが変化と判断できる局面など何か具体的なイメージがあれば教えてください。
§32Shinichi Uchida
私どもの政策は、そのときの経済・物価・金融の情勢を、MPMのサイクルで言えば年に 8 回みていきながらやっていくので、半年後 1年後どうだろうっていうのを考えながら、もちろん考えながらやるんですけれども、何かスケジュールを持ちながらやるっていう性質のものではないんですね。それが一つ金融政策というものが持つ機動性であり、特色なんだろうというふうに思います。そういう意味で何かある種のカレンダーを僕らが持ってやっているということはありません。ただ、今回この対応をしたことに伴って、この後もちろん経済・物価の情勢が変わっていくことで対応が変わってくることはありますけれども、今の状況が大きく変わらないのであれば、金利が大きく上昇するということではないということですので、これは今の変更後の枠組みというのは、それなりにロバスト、堅牢であろうというふうには思っています。
§33Question
10年前の異次元緩和が始まったときの議事録が先日公開されましたが、その当時の会合にも、内田副総裁は当時のお立場で参加されたと思うんですけども、その当時の議論をご覧になって今振り返ると、どのような所感を持たれるかなというのが一点。あと、2年で 2%という目標をそのとき掲げたわけですけれども、具体的なその精緻な根拠がないっていうことが改めて示されたという指摘があります。このときにその議論は正しかった正しくなかったと言えるものなのかどうかわからないですけども、適切だったのかどうかっていうのをちょっと振り返っていただきたい。あと、エコノミストの中には、結局2%の物価目標を2年で達成できなければ追加的なことを次々と要求されていって緩和の期間がズルズルと長引いてしまう。結果 10年緩和を続けているわけですけれども、またそれで日銀が物価目標を達成できないっていうことを来年にでも認めるっていうのではないかという見立てを出されてるエコノミストの方もいらっしゃいます。こういった指摘についての反論というのはどんなものがございますでしょうか。三点お願い致します。
§34Shinichi Uchida
10年前の金融政策決定会合の議論、これは議事録というかたちでフルのバージョンで公表されたということですので、私から追加的にコメントすることは適切ではないというふうに思いますので差し控えたいと思います。あの通りの議論がされたわけですから、それを評価されるのは外の方であるべきだというふうに私は思います。そのうえで、2年程度の期間を念頭においてというふうにしたことについてですけれども、これは当時ですね、質・量ともに思い切った緩和を行う、その中で明確なメッセージを出すということでとられた措置というふうに私は理解をしています。達成できなかったではないかというのはおっしゃる通りですけれども、その原因の一つは、もちろん、いわゆるデフレ期に定着したノルムというものが、あるいはデフレマインドと言ってもいいかもしれませんが、非常に強固であったということ。もう一つは、2年の根拠と重なるんですけれども、普通の金融政策は2年程度のラグで効いてくるものなのですが、金利がゼロに突き当たった中で非伝統的政策をやっていたということですので、効果の出方あるいは金融政策のラグというものについて不確実性があったということかというふうに思います。その二点によって達成できなかったっていうのが、起きたことだというふうに思います。
§35Shinichi Uchida
三点目については、2%を目指してこれまで様々な政策をやってきて、ようやく企業の、今申し上げた企業のデフレマインドが、あるいは人々のデフレマインドが変わりつつあるように感じます。まだ、兆しであり芽であるわけですけれども、これを育てていくことで 2%は実現できるというふうに思っていますし、実現したうえで、政策というのはその先を考えていくということだと思っていますので、それがまだ見通せていないこの段階においては、粘り強く緩和を続けて、この芽を、せっかく出てきたこの芽を育てていきたい。講演でも言いましたけれども、日本経済がようやく変わりつつあるように思えますのでこの芽をつぶしてはいけない、これを育てていきたい、そのための粘り強い緩和であるというふうに申し上げたいと思います。以上