田村審議委員記者会見(2023年8月30日)
Full text
§1Question
私の方から二点質問させて頂きます。まず一点目、本日の金融経済懇談会では、どのような意見交換が行われましたでしょうか。二点目、道東地域の金融経済情勢について、どのように認識されておられますでしょうか。よろしくお願いします。
§2Naoki Tamura
まず一つ目のご質問、本日の金融経済懇談会でどのような意見交換が行われたのかという点でございますが、本日の懇談会では、道東地域の行政や経済界、金融界を代表する方々から、当地の情勢や地域経済が直面している課題について、大変貴重なお話を伺うことができました。また、日本銀行の金融政策運営に関していろいろなご意見を賜り、有意義な意見交換ができたというふうに考えております。この場をお借りしまして、御礼を申し上げたいと思います。本日の懇談会では、話題が多岐にわたるものでございましたので、全てをご紹介することはできませんが、私なりに整理して申し上げたいと思います。まず、道東地域の足元の景気情勢につきましては、複数の参加者の方々から、コロナの感染症法上の位置付け変更などを背景に、人流が回復するもとで、経済活動が正常に戻ってきているというご趣旨の発言を頂きました。一方で、課題としては、大きく二点挙げられました。一点目は、人手不足ということです。二点目は、飼料、肥料、燃料などのコスト高止まりの影響です。特に中小・零細企業では、転嫁が進めにくいという声も聞かれました。
§3Naoki Tamura
この地域は、日本を代表する食料供給基地でございますが、今申し上げた課題に加えて、例えば酪農や畜産につきましては、コロナ禍の需要減少を受けた生産抑制の影響の継続、水産業では国際漁業規制や温暖化の影響に加え、足元では中国の日本産水産物の輸入禁止の影響、こういった課題も聞かれた次第です。更に、時間外労働の上限規制、いわゆる 2024年問題などによる食料供給基地から実際の消費地への運送の問題。これらが重くのしかかっているということを実感しましたし、これは道東地域だけの問題ではなくて、日本全体としての問題、課題であるというふうに感じました。こうした中にはありますが、一方で、地元企業の方々は、例えば、つくり育てる漁業への転換、冷凍技術などによる付加価値の向上、自動運転トラクターやドローンの活用、水産加工業における省力化投資、更にはアドベンチャートラベル・ワールドサミットの機会を活用したインバウンド強化といった、前向きな対応に取り組んでおられ、また、地元金融機関もそれを後押しされている姿勢をお伺いし、心強く感じました。更に、今回、多角的レビューの観点でもいくつかのご意見を頂戴しました。こちらも全てをご紹介することはできませんが、1990年代以降の金融緩和は企業の設備投資や住宅投資などにプラスの影響を与え、経済を下支えしてきたというご意見がありました。
§4Naoki Tamura
また、特に北海道では、大手銀行の破綻という大きなショックを90年代末に経験したわけですが、危機時の流動性の供給は金融システムの安定をもたらした効果があった、こういうご意見もありました。一方で、賃金や物価は十分に上がらず、消費にはむしろ抑制的に働いた等の副作用のご指摘もありました。また、設備投資についても、水産加工業においては、今後の漁獲量が見通せない状況下、二の足を踏むことになり、金融緩和には効果があまりないというご指摘もありました。また、地域経済においては、人口減少などの構造的問題の影響を指摘するご意見もあった次第です。このようにたくさんのご意見を頂き、大変ありがたく思っております。私どものレビューにも、活かしてまいりたいと考えております。次に、二つ目のご質問、道東地域の金融経済情勢についての認識でございますが、道東地域は、雄大な自然のもとで、他地域と比べて農業・水産業のウエイトが大きく、食と観光いずれにおいても大きな存在感を発揮しており、また、更なる発展に向けたポテンシャルの大きさも感じています。足元の経済情勢については、コロナの感染症法上の位置付け変更などを背景に、道内外から道東に訪れる人も増えてきており、人やモノが動くもとで、当地企業の業況感は改善しているほか、観光や飲食など対面型サービスを中心に消費活動も持ち直しています。
§5Naoki Tamura
企業においては、ポストコロナの需要取り込みを企図した設備投資の動きも幅広い業種でみられています。当地金融機関もこうした取り組みを金融面からしっかり後押ししています。このように、当地経済は持ち直しており、コロナの影響を受けて以降、足元にかけて景気は徐々に良くなってきています。ただ、一次産業のウエイトが大きい経済構造のため、飼料、肥料などを含めた原材料価格の高止まりの影響については、よくフォローしていく必要があります。また、他地域と同様、人手不足が経営上の大きな課題として聞かれているところです。こうした課題について、当地企業は、先ほども少し申し上げましたが、水産業や農業におけるITの活用などを通し、生産性の向上に努めているほか、他地域と同様に賃上げの動きもみられています。また、雄大な自然を活かして、体験型観光の拠点を増やす取り組みが官民連携して進められるなど、自然環境と経済活動のバランスに配慮した、地域経済活性化につなげる動きもみられています。道東の食・観光面でのポテンシャルを活かす取り組みを、今後とも期待をもってフォローしていきたいというふうに考えております。
§6Question
二点お願いします。一点目は、講演の中で、来年の 1~3月頃には2%の持続的・安定的物価目標の達成についての情報の解析度が上がるのではというご発言でしたが、そうなるとすなわちその頃には現在の大規模な緩和の縮小をすることが可能になるのか。そしてその場合がどういう手段になるのかというのが今二点目なんですけれども、市場では 10年金利の上限といったYCCを残したままマイナス金利を撤廃するというのは難しいのではという声がある反面、10年金利の上限とかYCCといった枠組みがある程度あった方が仮にマイナス金利を撤廃した場合、長期金利の急騰を避けられる、防ぐツールがあるので有効であると、いろんな議論があると思うんですけれども、田村委員の中ではどういうシークエンスが最もふさわしいと考えられるのか、緩和の縮小について、具体的な手段のイメージがあればお願いします。
§7Naoki Tamura
まず、一つ目のご質問、来年1~3月頃には金融緩和の縮小、あるいは金融の正常化が可能なのかというご質問でございます。私自身は2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が、もう既にはっきりと視界にとらえられる状況になったと考えておりますが、物価見通しは上方向にも下方向にも不確実性があって、状況の見極めにはもう少し時間が必要であると考えています。こうした中で来年の 1~3月頃になれば春闘に向けた労使のスタンスが明確になってくると考えられること、また、当面CPIはプラス幅を縮小していくとみられますが、そのCPIが実際にどのようなパスを辿っているかも確認することができると。従いまして、こういう意味で、解像度が一段と上がることが期待できると述べた次第です。大事なことは正確な状況判断を行って、それに応じてタイムリーに遅からず早からず的確な政策を行っていくことでありまして、それは出口についても同様だと考えております。その時点で金融正常化を進めるべき状況になっているのか、あるいは、粘り強く金融緩和を継続すべき状況が続いているのか、その時点その時点で得られるデータ、情報を踏まえながら判断していきたいというふうに考えております。なので縮小が可能なのかどうなのかというご質問ですけれども、それはもうその時点のデータ次第というふうに考えております。
§8Naoki Tamura
二つ目に、仮に出口に向かうとなった時の手段については、一般論として申し上げると将来の出口局面で、政策金利の調整と、拡大したバランスシートの縮小というのが重要なポイントとなっており、その点については様々な対応が考えられます。もっとも、それらの適切な順序やペース、組み合わせなどは、その時々の経済・物価・金融情勢に応じて異なり得るものだと考えています。いずれにしても、現在の状況を踏まえますと、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた状況の見極めには、もう少しだけ時間を要する状況でありますので、そういった実現が見通せるようになれば、その時点の情勢を踏まえて、金融政策決定会合で議論して適切な出口戦略を実行していくことになると考えています。その場合の手段について、田村は現時点でどういうふうに考えているのかというご質問でしたけれども、それについても、その時点で考えるということでございますが、マイナス金利の解除ということも当然選択肢の一つですし、この間言われておりますYCCを残したままなのか、YCCも撤廃してしまうのかということについても、それぞれが選択肢で、その時点の状況を踏まえて考えていきたいというふうに考えております。
§9Naoki Tamura
仮にマイナス金利、解除したとしても、その後、金利を低位に抑え込む、抑えていくということであれば、それは金融引き締めとか、金融緩和の縮小というよりは、金融緩和を継続しているということだというふうに理解をしております。
§10Question
今のお話にもありました、マイナス金利について伺いたいんですけども、今日の講演では修正前のYCCのですね、副作用について言及されていました。その副作用と効果を比較衡量して決めたというお話でしたが、現状マイナス金利についてですね、これまでもお話はされてるかと思うんですけども、副作用についてどのようにお考えなのか、伺いたいです。もう一点はマイナス金利の見直しの判断について、内田副総裁はですね、距離があるといった表現をされているわけなんですけども、今も少しお話しがありましたが、時期的なもの、距離があるとお考えなのか、それとも今すぐにでも見直す必要があるとお考えなのか、その点はいかがでしょうか。
§11Naoki Tamura
一つ目のご質問がマイナス金利に関する副作用ということだったと思います。マイナス金利というか、今続けてきた大規模な金融緩和についての効果と副作用というご質問ということで答えさせて頂きますと、大規模金融緩和を始めて 10年、わが国経済はデフレではないという状況を実現し、成長の観点、雇用の観点からも大きく改善した、これが事実だと思います。こういうふうな改善には、民間経済主体の行動、それから政府の経済政策、あるいは世界経済の動向など様々な要因が影響しているというふうに考えますけれども、大規模金融緩和もそれを後押しする要因の一つであったと考えております。物価については、まだ2%目標の持続的・安定的な実現がはっきりと視界にとらえられる状況になったとはいえ、その状況の見極めにはもう少し時間が必要であると考えているところです。副作用については、これまでも申し上げておりますけれども、主なものとしては、市場機能の低下、それから金融仲介機能に悪影響を与える可能性、これは可能性ですけれども、こういうものがあります。この点、市場機能については、日本銀行が講じてきた様々な措置の影響もあって国債市場の機能度に、足元半年みたら改善がみられますけれども、その水準は低いままだと考えております。また、現状、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると考えております。
§12Naoki Tamura
この他にも、よく指摘される副作用として、長期にわたる大規模な金融緩和が、本来市場から退出を余儀なくされるような企業を存続させるなど、経済の構造改革を遅らせたり、生産性に悪影響を及ぼしたりしているのではないか、という指摘もありますが、この点については、一義的には市場原理のもとで企業や金融機関などの経済主体に委ねられるべきものだと考えています。あくまで金融は経済の黒子であって、大規模な金融緩和がこうした事象の張本人というわけではないと考えています。ただ、長期にわたる大規模な金融緩和が、発揮されるべき市場原理の効果を抑えてしまっている面もある、そういうことは否めないと考えております。それから二つ目のご質問で、マイナス金利の解除まで距離があるか、内田副総裁は、「距離がある」とおっしゃっていたということで、まず最初に申し上げておくのは、他の政策委員の個別の発言についてコメントをすることは差し控えさせて頂きます。そのうえで、私自身の考え方を申し上げますと、2%の物価安定目標の達成で、そこで出口に向かうかどうかを見極めるには、もう少し状況を見極めたいということですので、そういう意味では距離があるといえばあるし、ただそれが来年の 1~3月ぐらいには解像度が上がってくるというふうに考えております。
§13Naoki Tamura
先ほど申し上げましたけれども、もしも仮に来年1~3月あるいはそれより前かも、それより後かもしれませんけれども、そういったときに持続的・安定的な物価上昇の実現が見通せた場合には、当然、マイナス金利の解除も選択肢の一つとして入ってくるというふうに考えておりますし、そのマイナス金利の解除というのが即金融引き締めかというと、非常に低位に維持するのであれば、それは金融緩和の継続だというふうにとらえております。
§14Question
二点お願いします。先ほど委員がご指摘された来年の1月から3月ぐらいにその2%達成、それが解像度が上がるというお話しありましたけれども、逆に言うと年内という観点からすると、そこまでその解像度が上がるということはなかなか難しいとお考えでしょうか。あともう一つなんですが、為替についてお伺いさせてください。7月の決定会合の政策修正は為替の変動というところも、観点も考慮して修正が行われたという説明がありました。現状、為替の方ですね、円安進行が進んでいて、なかなか変動が、まあ幅が大きいと思うんですが、この状況についてどのようにお考えでしょうか。
§15Naoki Tamura
一つ目は来年1~3月に解像度が上がるという意見だけれども、年内難しいのかということでございますが、年内は難しいというわけではないと考えております。なぜ来年の 1~3月かということの説明として、企業の賃上げに関するモメンタムなんかが見えてくるんじゃないか。仮に今年の11月、12月辺りにいろんな企業経営者のご発言等から賃上げのモメンタムというのを感じ取れる可能性は、それはもちろんあると思っています。あと、来年1~3月になれば、今年後半のCPIの動きというのを確認できると申し上げましたけれども、来年の 1月頭(注)に東京の 12月のCPIが発表されるわけですので、そこで確認できる可能性というのはもちろん否定はできません。従って、こういう意味で来年1~3月になれば解像度が高まるというのが私のベースの考えですけれども、それよりも前倒しになることもあるだろうし、あるいは逆に後ろ倒しになることも有り得るというふうに考えているところです。二つ目の円相場、円安に関してのご質問でございます。まず、為替相場の水準やその評価について、具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きます。7月のYCCの修正に関しまして、金融政策は為替の影響を含めた全体としての経済・物価情勢の評価に基づいて行うものですので、為替相場を直接のターゲットとするものではありません。
§16Naoki Tamura
そのうえで、7月のイールドカーブ・コントロールの運用の柔軟化というのは、今後、物価や予想物価上昇率の上振れ方向の動きが続いた場合などに、債券市場の機能や、あるいは為替市場を含めた金融市場におけるボラティリティに影響が生じるなどの副作用を和らげることに資するという趣旨で行ったものです。為替相場については、経済・金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することがきわめて重要であるというふうに考えておりますので、日本銀行としては、引き続き政府とも緊密に連携しつつ、金融・為替市場の動向、そしてその為替市場の動向が、わが国の経済・物価にどういう影響を与えるのかというのを十分に注視して、それに基づいて金融政策を行っていくということに尽きると考えております。
§17Question
道東の経済概況についてというお話あったんですけれども、持ち直してきているというお話はありましたが、先だって東京電力福島第一原発の方で処理水を放出して、その影響で中国が日本の水産物の輸入の停止をしておりまして、北海道ではホタテなど海産物、中国を輸出先としていました海産物が行く先がなくなって、今後の影響の長期化というのが懸念されています。また中国政府が日本への団体旅行を解禁したことで、好転するような期待感もあったんですけれども、これもやはりこの処理水の放出で、団体がキャンセルになっているというような話も出ております。北海道の経済に対してですね、この処理水放出に対する中国の反応への経済の影響というのは、どのように今認識、予測というかされていらっしゃるでしょうか。
§18Naoki Tamura
まず一つ目の中国の日本産の水産物の輸入禁止措置の影響ということでございますが、今ご質問の中にもあった通り、当地ではホタテなどの水産物の輸出に占める中国向けのウエイトが大きい先もみられており、そうした企業を中心に、輸出量の減少や在庫の積み上がり、あるいは価格の下落などを懸念する声が聞かれています。この中国の輸入禁止措置が長期化した場合には、そうした影響の広がりも懸念されることから、代替輸出先の確保など今後の企業の対応や影響については、注意深くみていく必要があるというふうに考えております。二つ目の中国からの団体旅行が止まってしまうことの影響でございますが、これについても同様、こういった措置が長引く場合には、これまで中国はゼロコロナ政策を採っている間は、中国からのインバウンドの旅行者というのが、ほとんどいなくなり、まだ回復も十分じゃないという状況から、ようやく従来と同じぐらい来てくださるんじゃないかというところが、またストップしたというところについては、非常に憂慮しているというところでございます。これについても、その影響等は注意深く見ていくことが必要だというふうに考えているところです。
§19Question
先ほどから議論になっている 1~3月期にその解像度が上がってくるというところですけれど、まあデータ次第によっては出口の検討も可能になってくるということだと理解しました。具体的に、要はデータとしてですね、賃上げの水準であるとか、まあ今春闘並みとかですね、どのようなデータを想定されてるのか、どういったところがどういった度合いで、そこが判断できれば確信に変わってくるのかというところをお伺いできればと思います。もう一つがYCCの長期金利の方の柔軟化の部分で、従来のYCCについての副作用について改めて田村審議委員がどのように評価されてきていて、それが今回の修正によって、一か月経ちましたけども、どのように改善したのか、または改善していないのか、その辺りの一か月経っての評価も含めてお伺いできればと思います。
§20Naoki Tamura
まず来年の 1~3月辺りに物価の持続的・安定的な2%の物価目標の達成、判断する際のデータというご質問ですけれども、もう回答としてはこれを見るというような一つのデータがあるわけではなくて、様々なデータを見ていくということになります。加えて、今ある意味、25年続いてきたわが国経済のデフレ的な、あるいはデフレではなくなったけれどもまだ低いディスインフレの時代からの変化が起こるかどうか、というところで、そういう意味だと経済データだけではなく、こういう構造変革期にはいろいろな企業の個別個別の動きの確認を積み重ねていくことが重要だというふうに考えております。従いまして、例えばこういう金融経済懇談会の場もそうですし、あるいは日銀の各支店の支店長が地域の企業に対して行うヒアリング、そういったアネクドータルな話を積み重ねていって、最終状況を判断するということになると考えております。
§21Naoki Tamura
それから二つ目のYCC、修正して 1 か月経ってどうですかということでございますが、先ほど申し上げた通り 7月のYCCの修正は今後物価の上昇、あるいは物価の予測なんかが上振れたときに出る副作用を予め防止するために修正したということで、7月終わりの時点と8月の現在の時点の間で、そういう物価の予想の上振れが起こったかというとあんまり変わってないと思いますので、そういう意味だとYCCを修正したからこうですというようなことはまだ出ていないかなと思っております。ただ相場をみますと、相場について具体的な水準についてはコメントしませんけれども、比較的金融市場、長期国債市場、落ち着いた動きになっているのかなというふうに考えております。
§22Question
マイナス金利についてお伺いします。内田副総裁は今月の講演で、マイナス金利解除は2%を超えるインフレ率が長引いてしまう不安が出てきたときに、需要を抑えるために検討するというふうに話されていたかと思います。一方で、田村委員、先ほどのお話の中でマイナス金利解除したとしても、金利を低く抑えているのであれば、それは引き締めではなくて、緩和継続になるというふうにおっしゃっていたかと思います。少しちょっとお考えに違いがあるような印象を受けましたので、マイナス金利解除の条件みたいなものについてもう少し詳しく教えて頂ければと思います。
§23Naoki Tamura
まず最初に申し上げるのは、他の政策委員の発言について、直接コメントするのは差し控えたいというふうに考えております。マイナス金利をどうするかということにつきましては、もうその2%の物価上昇の持続的・安定的な実現が見通せた時点の経済・物価・金融情勢や更にその先の見通しなどを踏まえて、判断するということだと思います。ただ、マイナス金利の解除というのは選択肢の一つとして当然あるというふうに考えております。どうなったらマイナス金利を解除するのかという条件というのは、先ほど別の記者の方のご質問にも答えましたけれども、このデータがこうなったらというものがあるわけではなくて、その時その時の情勢を踏まえて、考えていくことだというふうに考えております。
§24Question
先ほどの方の質問にもありましたけれど、先月のYCCの柔軟化、それ以降、先ほどのお答えで、比較的金融市場は落ち着いているということですが、一方で、実体経済への影響は今のところどうなのかというのと、今後、例えばですけれど、金利が上がると住宅ローンですとか、そういったことも指摘されますが、実体経済への影響をどのように考えられているか、お願い致します。
§25Naoki Tamura
YCCの運用柔軟化が実体経済に与える影響というご質問でございますが、まず、現在の経済・物価などの情勢を踏まえますと、加えて、過度な金利上昇圧力は今後抑制していくという対応を行うもとでは、長期金利が大きく上昇するとはみておらず、影響は限定的だというふうに考えております。加えて、例えば家計、住宅ローンに与える影響については、住宅ローンの大半を占める変動金利については、短期政策金利は現状維持ですので、影響はないと考えられますし、既に民間金融機関が貸している固定の住宅ローンについては金利は変更なしと、唯一、新規の固定金利型の住宅ローン金利については、長期金利と一定連動する面がありますが、先ほど申し上げたように、大きく長期金利が上昇するとは考えておりません。いずれにしましても、今後住宅ローン金利の動向については、丹念に点検してまいりたいと考えております。一方、企業あての貸金、民間企業からの貸金につきましても、貸出の約半分は変動金利、この変動金利には住宅ローンと同じ理由であまり影響はない。新規の固定金利型の貸出金利については上昇、当然していく可能性はありますけども、これについても長期金利が大きくは上昇しないなか、影響は限定的だというふうに考えております。
§26Naoki Tamura
加えまして、最近、民間企業、あるいは民間の金融機関の方と状況を確認しているなかで、出てくる意見というのは、多くの企業は設備投資を自己資金の範囲内で行っているので、大きな影響は与えないんじゃないかと、そういうふうな見方も聞いております。
§27Question
先ほどのマイナス金利についてなんですけれども、その目標の達成時点、その後の見通し、様々なことを考慮してその扱いを決めるということですが、少なくとも現時点ではボードの中に、こういった状態ならこうするというコンセンサスはないという理解でいいのかどうか、田村さんの見方を教えてください。もう一つは、長期金利について、先ほど、YCC柔軟化後も安定しているということですけれども、どのレベルで落ち着くんだ、どういった水準だとか、まだ市場の中では、ヒントがほしいというんですかね、何らかまだ落ち着かないところもある部分があるようなので、その点について、何か田村さんの方からご見解お願い致します。
§28Naoki Tamura
一つ目、マイナス金利の解除等について、ボードの中で、コンセンサスはあるのかというご質問でございますが、ボードの中のことについては基本的に 10年後の議事録を見て頂くことになっていて、それまでは審議委員は一切喋ってはいけないということになっておりますので、この場では控えさせて頂きたいというふうに思います。二つ目、YCC修正後、市場がどのぐらいに落ち着くのかヒントをほしがっているという、もちろんそういう意味だと、金利が動くなかで、皆さん、日銀がどこでオペ入ってくるのかということを気にしておられるんだろうと、そういう面があることは事実だと考えております。一方で、先般のYCC修正後のオペレーションにつきまして、私が思っておりますのは、三つ思っておりまして、一つは今後、基本的には市場に金利形成を委ねることが重要、二つ目には市場の流動性の確保、回復を図っていく、ニアリーイコール市場機能を回復していくことが重要、三つ目として、ただし金利の急激な変動を避けること、この三点が重要であるというふうに考えております。
§29Naoki Tamura
マーケットにおいても、この市場に金利形成を委ねられた時に、どのぐらいが適正な水準なのかということについては、物価・経済の状況をみながら、様々な市場参加者が自然と、どこかの水準というところに落ち着いていく、まさにそれが市場機能だろうというふうに考えておりますし、そういう機能が早く回復していくことを期待しているところです。
§30Question
先ほどの懇談会で出た話について伺えたらと思うんですけれども、道東の建設業や公共事業などの特徴ですとか、今後どうなっていくのかというのが、もしお話が挙がっていたら教えて頂きたいです。
§31Naoki Tamura
今日の金融経済懇談会の場では、道東の建設業に関する話というのはあまり多くは出なかったですけれども、一つ話が出ていたのは、今度北海道に新しく半導体の会社が出てきて、そこの工場建設にかなり建設業者のパワーが使われることになるだろうと。そのこと自体は需要が増えて良いということですけれども、反面、そのほかの建設需要に対しての対応というのが、これから課題になってくる。特に人手不足の現在の状況が、どうやって対応していくのかというのは、今後課題になってくるだろうというお話がございました。(注)会見では「今年の 12月」と発言しましたが、正しくは「来年の 1月頭」です。以上