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Bank of JapanPress conferenceNov 6, 2023Kazuo Ueda, Governor

総裁記者会見(2023年11月6日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

大きく二点まとめて伺います。まず一点目ですが、午前中の金融経済懇談会の総裁のご挨拶の中で、特に力点を置かれた部分について、また出席者から出された意見に対する感想について、それぞれお聞かせください。次に二点目として、東海地方の経済の現状認識を伺います。特に、為替が1 ドル150円前後という円安水準で推移し、また燃料価格も高い中にあって、自動車産業を中心とする当地の強みと弱みは今、どのようなかたちで表れているとお考えでしょうか。以上、お願い致します。

§2Kazuo Ueda

最初に午前中の懇談会ですけれども、私の挨拶では、最新の展望レポートの内容をご紹介しつつ、一つは最近の物価上昇の背景と、先行き賃金と物価の好循環が強まっていくかどうか見極める上でのポイント、そしてもう一つ、先週決定した措置の内容、あるいはその背後にある政策運営の考え方について、分かりやすく説明することを心掛けました。懇談会では、当地の経済界や金融界を代表する方々から、地域経済の動向、日本銀行の金融政策運営に対する貴重なご意見を承りました。大変に有益かつ示唆に富むご意見を伺えたことにつき、感謝申し上げたいと思います。いろいろな意見を頂きましたが、三点ご紹介させて頂きますと、まず当地の景気ですが、総じてみれば「持ち直している」というご意見でした。製造業においては、主力の自動車産業が半導体の供給制約緩和のもとで高水準の生産を続け、業況の改善につながっているという声が聞かれました。非製造業についても、人流の回復によって、サービス業の回復がみられるという話が聞かれました。一方で、物価の上昇が消費の抑制につながっているというご指摘や、原材料価格の上昇を転嫁することが難しいという話も伺いました。また、人手不足が事業のボトルネックになっているという話や、海外情勢の不透明感が懸念材料といった声も多かったかと思います。加えて、今日は、私どもの金融政策の「多角的レビュー」に関しても、ご意見を頂きました。

§3Kazuo Ueda

過去 25年間の金融緩和について、経済の下支えなどの面で一定の効果を発揮したというプラス面を評価頂いた一方、低金利環境下での経済の新陳代謝の停滞や金融仲介機能への影響といったマイナス面もご指摘頂きました。そのうえで、今後も企業・家計が安定して活動できるような金融環境を維持することをご要望頂きました。私どもとしても、中央銀行の立場から、物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや、金融システムの安定性を確保することを通じて、当地経済に貢献してまいりたいと思っております。それから、二番目のご質問です。先ほど申し上げましたように、東海地方経済については、「持ち直している」というふうに、私どもも判断しております。生産の持ち直しが続いているほか、個人消費も引き続き緩やかに持ち直しているとみています。当地経済の強みは、やはり分厚い製造業の集積があることだと思います。その中心であります自動車産業については、足元、様々なコスト高の影響を受けているものの、内外の底堅い需要と、高水準の受注残に支えられて、完成車の生産は高い水準を維持しています。このことは、当地に多数存在する部品メーカーや素材メーカーの生産増加、人材派遣や運輸に対するニーズの高まりにつながっており、当地企業の景況感を引き上げています。他方、個人消費については、持ち直しの動きが緩やかなものにとどまっています。

§4Kazuo Ueda

この点については、輸入物価の上昇などを通じた消費の押し下げ効果を受けていることや、インバウンドの回復による押し上げ効果が他地域に比べて弱めなことが影響しているとみています。いずれにしても、当地の景気動向は、わが国全体に与える影響も大きいため、引き続き注意して、モニターしてまいりたいと思っております。

§5Question

物価目標達成の見通しについて、お伺い致します。今日の総裁のご講演の中でも、物価目標達成に向けた見通し実現の確度は、少しずつ高まっているという言及もありました。また、9月会合、今日議事要旨公表されましたが、その中でも出口についての議論というのがされていることが明らかになりました。そうした状況を踏まえてですね、改めてになりますが、物価目標達成、そしてマイナス金利の解除も含めた政策の転換の時期について、改めて見通しについてお伺いさせてください。

§6Kazuo Ueda

物価目標の達成が見通せる時期がいつ頃になりそうかというご質問だと思いますけれども、見通しがそういうふうにできるためには、これも何度も申し上げていますように、賃金が継続的に上昇していくということについて自信が持てる、それから上がっていく賃金が、物価に、特にサービス価格にですね、波及していくということについても、うまく起こっていくということについて自信が持てる、更にその前提として、それを支える経済の総需要面が力強く推移するというようなことの確認が必要ですので、これがいつになったら、十分自信が持てた、持てるような状態になったといえるかっていうのは、残念ながら現時点では私どもも分かっていないといわざるを得ないです。

§7Question

賃金についてはいかがでしょうか。春闘の時期であったりとか、そういったところが一つ、時期を判断する上でのポイント、焦点になってくるということでしょうか。

§8Kazuo Ueda

賃金については、特に来年度の賃金ということでいえば、もう定義上 1年以内に迫っているわけですけれども、これがどの時点で、物価目標と整合的な、あるいはそれに近い姿として確認できるかということは、その 1年の中でも、様々な経済情勢の推移次第でいろんな可能性があり得ると思いますので、今の時点でいつかということはなかなか申し上げにくいと思います。

§9Question

少ししつこいようで恐縮なんですけれども、いつになったら見極めるかっていうのは到底分からないということなんですけれども、今年もですね、11月に入って残り少なくなってきたわけなんですけれども、年内中にそういった賃金・物価の好循環、その安定的・持続的な物価見通しが見通せる可能性、蓋然性について、総裁ご自身は今、どのようにお考えになっているんでしょうか。

§10Kazuo Ueda

常に新しいデータや情報が入ってきますので、どの会合でも、何らかの判断を前の会合に比べて進めるという可能性はあると思うんですけれども、今年ももう 2 か月弱になってしまったということは申し上げられるかと思います。

§11Question

先ほどの賃金の部分に関連するんですけれども、実質賃金についてお伺いします。前年比が 17 か月連続でマイナスとなっていますが、目標の達成においてですね、実質賃金というのはどの程度考慮されるのでしょうか。それがマイナスであったとしても、目標の達成というものを判断することがあり得るのかということが、お伺いできればと思います。これが一問目です。もう一問がですね、25年に及ぶ金融緩和の副作用について、先ほどの懇談でもですね、低金利環境を続けたことで、経済の新陳代謝が阻害されたとか、財政規律の低下を招いたといった指摘がありました。この点について、総裁、今、現状でどのようにお考えかという点も併せてお伺いできればと思います。

§12Kazuo Ueda

前段の実質賃金ですけれども、私ども、実質賃金について目標を置いて、政策運営をしているわけではございません。ただし、何らかの席で申し上げたかどうか正確な記憶はありませんが、私どもの見通し期間中の後半、最後の方になりますと、その見通し通りに実現し、経済がその見通しを辿って、うまく動いていけば、そこでは実質賃金はプラスになっているような状態に辿り着くというふうには考えてございます。それから、25年間の強い金融緩和が様々なところで金融の規律みたいなものを損ねた可能性についてどうかということだと思いますが、これは常々申し上げてますように、財政ということで申し上げれば、財政規律を中長期的にマーケットの信頼を確保するようなかたちで確保していくのは、政府・国会の責任である、一方で、私どもは、物価目標を達成するために大規模な金融緩和を継続してきたということでございます。それから、一般的に金融の貸し借りの面についてもですね、様々な批判は聞かれますけれども、例えば、安全資産の金利が非常に低いところにあっても、リスク・プレミアムの分だけ金利を乗せて、リスクのある投資家に貸し出していくということは、ずっとできたわけで、そういう意味で非常に深刻な規模で規律が失われたというふうには考えておりません。

§13Question

講演でですね、先行きも実質金利はマイナス圏で推移し、十分に緩和的な金融環境は維持される、というふうに発言されました。先般の会見で総裁は、長期金利につきまして、1.5%や 2%になるということはあまり考えていないと、そういう答弁をされましたけれども、総裁は長期金利が 1.5%とか 2%に上昇すれば、実質金利はプラスになってしまう、そのようにお考えなのか、今の実質金利をどの程度とみておられるのか、ということを併せてお願い致します。

§14Kazuo Ueda

現状のところですね、私どもの前回のオペの柔軟化の影響も含めまして、長期金利、10年物国債金利が 1%を大きく超えて推移するということは可能性が低いというふうにみてございます。すごい中長期的に 1.5[%]や 2[%]がないというふうに申し上げたつもりはございません。

§15Question

総裁、先ほどの懇談会の最後の方の質問で、物価上昇目標の実現が見通せたときまで、特に、マイナス金利については解除というのは考えられないということでおっしゃっていましたが、これは YCCについては、その前に先行するということなのか、お聞かせください。あと、YCC導入当初、2016年からだいぶ姿を変えていますが、どのようなかたちになればYCCが撤廃されるか教えて頂きたいと思います。あと二点目、物価上昇の持続的・安定的な実現が見通せるには、総裁ご自身としては、2026年度の物価見通し、この数字をみてから判断したいというお考えでしょうか。

§16Kazuo Ueda

前半ですけれども、私ども現在考えておりますのは、物価目標が見通せるまでは、YCCの枠組みとマイナス金利を維持するということを考えております。見通しを持つことができた場合に、それぞれをどういうふうにしていくのかということは、その時点で決めたいというふうに思っております。それから目標が見通せる、おそらくご質問の意図は必要条件として、2026年度の物価見通しもみてみることが必要か、というご質問だったと思うんですけれども、現時点でそこまで強い必要条件かどうかということについて、判断をしているわけではありません。24年[度]、25年[度]の姿が、現在置いているような姿が非常に強い可能性、確度を持って確認できるということであれば、おのずと 26年[度]の見通しを発表していなくても、見通しが達成されたというふうに判断するケースもあり得るかと思います。

§17Question

一点お伺いしたいんですけど、先週の決定会合後の総裁の会見で、物価見通し達成までの、物価目標までの距離感ですとか、「第二の力」までの距離感について、植田総裁は X+何%というよりも、閾値を超えていってほしいっていう趣旨のご発言されまして、改めてですけど距離感を測るときの、距離が縮まっているというよりも、閾値っていうお話なんですけれども、この点は具体的にどういうものを総裁としては閾値と、物価目標あるいは「第二の力」、どういうものを閾値というふうにお考えなんでしょうか。

§18Kazuo Ueda

それはもう本当に見通しの確度が十分高まったというふうに言い換えるしかないような話で、数値的に何%、そもそも、私どもの見通しに対して持っている、自分たちなりの確度を数値化しているわけではございませんので、X%だとか、それがある閾値を超えたら、というような話はちょっと比喩で申し上げたわけですが、経済の物価と賃金の好循環がぐるぐると自分の力で回り始めたなというふうに確認できるかどうかということだとは思いますけれども、それを他の指標ないし、われわれが作り上げた確率みたいなものに、うまく置き換えられるかというと、なかなかそこまでのものではないという、残念ながら申し訳ないんですが。

§19Question

今日の懇談会で、賃上げあるいは価格設定について、大企業と中小企業の違いっていうお話が出席の方から出ていましたけれども、特に中小企業の賃上げなり価格設定のあり方、これが本当に変わってきている、定着しているということについて、植田総裁はその確認をどのようにしたら自信が持てるのかというところをお聞かせください。

§20Kazuo Ueda

これは月並で申し訳ないですけれども、様々なデータおよび今朝から今日も話を伺っているような様々な懇談とかヒアリング、これらを総合して判断していくということでしかないかな、というふうには思っております。

§21Question

2%の目標に向けた見通しの確度について私もお尋ね致します。まだ春闘などの結果は出てきていないわけなんですけれども、なぜ現時点でも確度が高まってきたと言えるのか、講演でもお話がありましたが、もう少し具体的に伺ってもよろしいでしょうか。もう一点伺いたいんですけれども、少しずつ高まっているというお話でしたが、高まっているペースについて、総裁にご就任された当初の想定よりも早く高まってきているのか、それともですね、少し遅れて高まっているのか、ご見解を伺えますでしょうか。

§22Kazuo Ueda

まず賃金だけを取りますと、特に来年の春闘周りの賃金の辺りをみますと、まず、足元の企業業績が全体としては良いこと、それから、労働市場の需要と供給が、これは中長期的な要因の方が大きいと思いますが、逼迫していること、それから、今朝の講演でもちょっと触れましたけれども、転職という労働市場の構造変化も進みつつあること、更に今年のインフレ率がそこそこ高いこと等を総合しますと、来年の賃上げがそこそこのものになるという可能性は少し前に比べると高まっているということはいえるかなと。ただし、完全に自信を持てる状況ではまだないということだと思います。そのうえで全体として、物価見通し、特に「第二の力」がだんだん上がっていくという部分について、少し確度が高まっているというふうにいうとしたら、その根拠は何かというご質問だと思いますけれども、一つは今の賃金のところだと思いますが、もう一つは、私ども、厳密に「第一の力」と「第二の力」って分解して見通しを示しているわけではないので、大まかな話になってしまいますけれども、「第二の力」として、少し前から置いていた経路、パスですね、これについて、少なくともその経路に沿って事態が進展してきている、あるいは逆に言えば、そこから下振れしているわけではないというようなことが、非常にインフォーマルですが、私どもなりのエビデンスかなと思います。

§23Kazuo Ueda

それから最後に、4月頃と比べて、確度がどうかということだと思いますが、4月ですともう 7 か月くらい前になりますので、それは確度が、それこそ先ほどのご質問にあった閾値にまでまだ達してないという範囲の中では、多少上がってきているということはいえるかなと思います。前回に比べても上がりましたし、4月に比べればもう少し大きく上がってきているということだと思います。

§24Question

東海地方の地方銀行や信金への影響についてお伺いしたいんですけども、今回、YCCの柔軟化で長期金利が上がりやすくなってですね、東海地方の地方銀行とか信用金庫でもですね、保有する国債の含み損の拡大が懸念されていると思います。総裁として、今後の金利上昇が地域の金融機関に与える影響をどうみていらっしゃるのか教えてください。

§25Kazuo Ueda

有価証券の含み損の可能性については、前々から私ども注意して、モニターしてございます。ここまでの上昇、あるいはここから先、もう少し上昇しても、どれくらいになるか、した場合にどれくらいになるかっていう、シミュレーションみたいなものを何度もやっておりますが、全体として十分耐え得る資本力を維持しているというふうには判断しております。ただ、個別性がいろいろありますので、注意してモニターしていきたいというふうには考えております。

§26Question

日本の今の中立金利がどれぐらいの水準なのかっていうのは、どれぐらいの金融緩和度合いが維持されているのかを測る上で非常に重要と思います。総裁ご自身は、中立金利どれぐらいの水準と思われているのか、また、日銀として正式に中立金利の水準についての推計等を公表する計画はないのか、お願いします。

§27Kazuo Ueda

おっしゃるように、中立金利の水準が、それこそある種の確度を持って分かれば、それと比べて緩和度合いがどれくらいかということの重要な判断材料になりますので、公表されることが望ましいわけですが、私どもはいろんな計算をしておりますが、計算の前提によってすごいばらつきが大きな結果になります。他の皆さんがやられても似たようなことだと思います。ですので、ちょっとこれはという自信を持って出せるものがない状態ですので、今のところは公表するに至ってないということでございます。

§28Question

先ほどの講演後の質疑応答の中で、マイナス金利の解除に関連した 2%の物価安定目標の見通し実現についてですね、総裁、現実に来年のどの辺で、どのくらいの確率で起こるか分からないと発言されました。先ほど、毎会合で判断するとした一方で、もう 2 か月弱になってしまったという発言もありましたが、総裁として、現時点では年内にマイナス金利の解除に至る可能性は低いとみてらっしゃるのかどうか、来年のどの辺でと発言した趣旨について改めてご説明をお願いします。

§29Kazuo Ueda

これは先ほどのご質問とも重なりますけれども、物価目標の実現の見通しが達成できる時期ですが、入ってくるデータや情報次第で、理論的にはどの会合でもあり得る、来年になるかもしれないし、来年いっぱい待っても駄目かもしれない、再来年以降になってしまうという可能性もあるんだと思いますが、その中で年内はどうかって聞かれますと、可能性ゼロって、現時点で言ってしまうことは無理だと思いますが、先ほどもお答えしました通り、もう 2 か月弱になりましたし、ここまでの情報については、先週の決定会合で分かる限りでチェックした上での先週のあの判断でございます。

§30Question

改めての質問となり恐縮なんですが、円安が続くことに追い風の企業というものも、冒頭のご説明でもありましたが、地場はトヨタ自動車さんは今月の決算で為替レートも変更しました。自動車業界を始め、経済が持ち直しているって話がありましたが、この東海地方にとって、この円安による恩恵みたいなものをどのように感じられているかということをご質問させてください。

§31Kazuo Ueda

これは冒頭の発言ともちょっと重なりますけれども、当地は自動車を始めとして製造業の割合が全国平均よりも高い地域ですので、企業部門にとっては、円安の恩恵が及びやすい、そういう地域であるかと思います。ただ、ここは他の地域と同じですけれども、円安が特に「第一の力」の物価上昇を、更に大きくすることによって、消費に若干のブレーキをかけるという効果は、無視できない程度で、ある程度はあるということは付け加えておかなくてはいけないかと思います。以上