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Bank of JapanPress conferenceFeb 8, 2024Shinichi Uchida, Deputy Governor

内田副総裁記者会見(2024年2月8日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

幹事社からは二点ほど質問がございまして、まず一点目は、本日の懇談会ではどのような議論が行われたのでしょうか、というのが一点目で、二点目が、奈良県の金融経済情勢についてどのように認識されているのでしょうか、というのが二点目です。よろしくお願いします。

§2Shinichi Uchida

本日の懇談会では、当地の行政、経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状とそれから直面する課題、更には日本銀行の金融政策運営に関するご意見などをお聞きすることができまして、大変有意義な意見交換ができたというふうに考えております。懇談会にご出席された方々には、この場をお借りしまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。席上様々なお話を頂きましたが、私なりにまとめるかたちで幾つかご紹介したいと思います。まず、当地の景気ですが、後ほど申し上げますけれども、緩やかに持ち直しているというお話を参加者からも頂きました。一方で、業種や事業規模によって業況が二極化している、あるいは原材料コストの上昇が企業業績を引き続き下押ししているといったお話も頂きました。また、多くの方からですね、やはり人手不足が大変厳しい状況にあるという声を頂きました。その中で、企業の賃金設定あるいは価格設定について幾つかのお話を伺ったということです。例えばですが、人材確保のためには賃上げは避けて通れないといった声や、賃上げを行うためには取引価格の適正化が重要であるといったご指摘も頂きました。

§3Shinichi Uchida

またこのほか、当地経済の持続的な成長に向けた話題として、当地の優位性を活かした企業誘致に取り組んでおられるといった話、あるいは、行政、経済団体それから金融機関などが一体となって、例えば事業承継など企業支援に取り組んでいるといった前向きなお話も伺ったところです。日本銀行の金融政策運営につきましては、企業の皆さまからですが、緩和的な金融政策は、企業の資金繰りを助け、経営の安定に結び付いたという声を頂きました。一方で、副作用として、金融機関の収益が下押しされているというご指摘も頂いたところです。また、本来淘汰されるべき企業が生き残った結果、価格競争等々の問題が強まったというご指摘も頂きました。日本銀行としましては、本日頂いた意見は、多角的レビューなどに活かすとともに、引き続き適切な金融政策運営に努めてまいりたいというふうに思っております。それから奈良県経済の現状についてですが、海外経済の回復ペースの鈍化の影響を受けて、輸出あるいは生産の一部に弱さがみられております。他方で、インバウンド消費のほか、個人消費や設備投資などの内需は堅調に推移しておりまして、景気全体としましては持ち直しの基調を維持しているというふうに判断しています。先行きにつきましても、持ち直しの動きを続けるとみています。

§4Shinichi Uchida

海外経済の回復ペースの鈍化の影響は引き続き受けるというふうに思いますが、全体として高水準にある企業収益、それから雇用・所得環境の緩やかな改善、これらを背景にしまして、内需が底堅く推移するというふうに考えているからでございます。やや長い目でみますと、他の地域と同様に人口減少、それから高齢化といった大きな課題に直面しています。ただ、奈良の場合には、大都市への良好なアクセス、それから豊富な観光資源など、地域の強みあるいは特色を活かして前向きな取り組みが着実に進んでいるというふうに思います。こうした取り組みを通じて奈良県経済が一段と発展することを期待したいというふうに思います。

§5Question

午前中の講演でですね、マイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくいというような趣旨のお話がありました。一応確認ですけれど、これはマイナス金利を解除した後、追加利上げというのは当分の間はやらずに、暫く政策変更しないというような趣旨なのか、あるいは 0.25[%]とか0.50[%]のような、きわめて小幅の利上げというのは、それほど時間を置かずにやるということは排除していないのか、その辺りをお願いします。

§6Shinichi Uchida

今日のですね、いろいろなことを書かせて頂いたというか、読ませて頂いたわけですけれども、現時点でお話できることというのを、皆さんが関心を持っておられることを話せる範囲でお話しするということで書かせて頂いたので、全体としてですね、あまり追加できることは多くはないということなので、この通り読んで頂ければというふうに思いますが、今の点について一点だけ敷衍しますと、二度ほど強調していますが、マイナス金利を解除した後のパスというものは、今後のですね、経済・物価情勢次第であるということを繰り返し強調させて頂いています。これは当たり前のことですけれども、大きな考え方としてはですね、金利というものは、2%の前後でCPIが推移するように適切な水準に持っていく、そうなるために、経済と物価を見極めていくということになりますので、当然そこにインプットされる経済・物価情勢次第ということになります。そのうえでここに書いてあるように、今の見通しを前提とすれば、書いた通りですけれども、緩和的な金融環境が維持されることになるだろうというふうに書いたわけです。

§7Shinichi Uchida

同時に、このことはですね、この後、金融市場における、例えば予想物価上昇率がどれだけのペースで 2%に向かっていくのかとか、大きな流れで言えばですね、賃金を含めてですけれども、物価のダイナミズムがどう変わっていくのかとか、そういったことによって左右されるというふうに思いますので、現時点でそれ以上のことを申し上げるのはですね、良くないと思いますし、却って不正確だと思いますので、そのように理解して頂ければというふうに思います。

§8Question

今の質問にちょっと関連しまして、例えば、過去、2006年から[0]7年にかけての利上げ局面で、06年の 3月に量的緩和を解除しまして、7月に 0.25%利上げで、更に07年の 2月に 0.25%利上げしています。このペースは、「どんどん利上げ」に相当すると思いますか、というのが一点です。あともう一つは、8月の懇談会の時におっしゃっていたリスクマネジメント・アプローチについてなんですけれども、当時はビハインド・ザ・カーブに陥るリスクよりも拙速な緩和修正による下方リスクの方が大きいという話をされていたかと思います。今回、現時点でのリスクアプローチについての認識をお伺いできれば幸いです。

§9Shinichi Uchida

前者についてはですね、第一のご質問に答えたことにほぼ尽きているというふうに思います。当然、経済・物価情勢が 2006年とは違いますので、そういう中でですね、ペースというのは決まってくると思いますので、当時と比べるという発想はそもそもあまりしたことがないので何とも言えません。今後の経済・物価情勢次第であるというふうに申し上げたいと思います。後者ですけれども、展望レポートの記述の中で、今回、リスクバランスはですね、読み上げますが、「経済・物価のいずれの見通しについても、概ね上下にバランスしている」という評価をしている、ただし、「もっとも、物価については、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着していることを踏まえると、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要である」というふうに記述しています。ただ読み上げただけですけれども。そのように考えていまして、当然ですね、見通しと上下のバランスを踏まえて、適切な金融政策をやっているというふうに考えていますので、現時点においてですね、ビハインド・ザ・カーブに陥っているということはないというふうに思っています。

§10Question

二点お願いします。マイナス金利解除以外のいろいろな大規模緩和の手段についても、丁寧にいろいろ説明、講演の中でされていると思うんですが、これを読み解くと、マイナス金利の解除ができる、すなわち持続的・安定的な物価目標の達成の見通しが立てば、今あるその他のツール、例えばYCCですとか、リスク資産の買入れというものは、もう取り除かれてしまうのかなとも思うんですけれども、そういう理解でいいのかという点と、あとこういういろいろなツールを一緒に見直す過程で、それぞれの効果について、全体として分析してどれぐらいの緩和効果を縮小できるのかという判断をされるのか、それともそれぞれの手段のそれぞれの政策効果を見極め、これはもういらないだろう、これは残した方がいいという判断になるのか、その辺りを、特にYCCとQEが連続しているというところが私はちょっと面白いなと思ったので、そこを中心にそれぞれのツールをどう位置付けて考え、少しずつ縮小していくのか、ちょっと詳しく教えて頂ければと思います。

§11Shinichi Uchida

二問とおっしゃいましたが、基本的に同じ質問だと思いますが、われわれの発想はですね、例えばマイナス金利、YCC、ETF ですかね、J-REIT もですけれども、そういったものを何か変えるものを先に決めて、それにふさわしい状況になるかというふうに判断するわけではなくて、順番は逆で、まず情勢判断が先にあるわけです。これはいろいろな言葉を使っていますが、一番典型的には 2%の安定的・持続的な実現が見通せるようになるかどうかを判断し、見通せるようになると判断すれば、今言ったようなものをそれぞれについてですね、最も良い状況に見直す、なんといいますか、条件が整うということになると思います。そのうえでどう見直すのが、最もその経済の状況、先行きを見据えたうえで望ましいと思うかということはですね、それは当然全体をみて判断するということになるわけですから、何かこれをセットにするのか、一個一個なのかという議論はですね、あまりわれわれの発想の中にはないんですね。ですから、当然その条件を満たせない限り、見直しには入りませんけれども、見通せるのだということであれば、その中で今やっている様々なツールが、どこに持っていくのが一番最適だと思うか、先ほどの質問で言えばリスクバランスを含めて最も良いと思うかと、そういう順序で物事を考えるということです。

§12Shinichi Uchida

そのときに、例えばYCCについては、書いた通りと言えば書いた通りなんですが、当然のことなんですけど、 YCCというのはやめたら終わりというものではなくて、あくまで QEの一種ですから、当然他の中央銀行もそうであるように、いきなり買入れをやめるということはあり得ないわけです。当然買入れは続けるわけですから、その買入れの仕方をどういうふうにしていくのが、その時点で良いかというふうに考えればよいということなので、そういう意味ではですね、質問の趣旨はよく分かるつもりではいますが、われわれの発想はそういう順番ではなくて、逆の順番で考えて、そのときに最も良い、なんと言いますか、短期・長期の政策金利ないしは国債買入れのやり方ということを考えていくと、そういう順序になりますね。

§13Question

先ほどの質問のお答えで、リスクバランス的にはビハインド・ザ・カーブに陥るとは思っていないということで理解したんですけれども、先日公表されました 1月の決定会合の「主な意見」で、現状の政策を続けると今ある副作用が続くことになると。その副作用が与える影響に関して、どれくらい時間的猶予があるのかですとか、その辺のバランスはどのようにみられてますでしょうか。

§14Shinichi Uchida

当然なんですけれども、今、多角的レビューというところで全般的な見直しをしていますけれども、毎回のMPMでもそこは議論しながらやっているわけです。というか正確に申し上げると、この間のYCCの運営なり、それから短期金利のところを含めてですけれども、効果と副作用のバランスが最も良いところということで毎回毎回、決定しているということなので、1月の決定会合についてはですね、今のやり方が最も良いというふうに、副作用を含めて判断したということになります。そのことはこれからのですね、決定会合においても同じ状況になりますので、当然、副作用も含めて毎回判断していくということになると思います。

§15Question

二問お願いします。一つはYCC についてですけれども、講演の中で見直しの方向性として、市場の自由な金利形成を尊重していく方向という言及がありました。これはつまり、現状でいうと 0%程度と 1%めどというかたちですけども、少なくともこれよりは緩めていく方向性というイメージでよろしいのかどうか。その際に、要は 1%を大きく超えるとかですね、そういったことも想定されるのかどうかという点も併せてお願いします。もう一問がですね、企業についての新陳代謝の必要性について言及されました。確かに必要だとは思うのですけれども、先ほどの懇談会の中での言及の中で、「淘汰されるべき企業が生き残ってしまった」というご意見もあったということで、日銀の低金利政策によってですね、そうした新陳代謝、いわゆるゾンビ企業といわれるような企業が残ってしまったといった見方もあります。この点について、副総裁のお考えをお願いします。

§16Shinichi Uchida

まず前者はですね、文章に書いてありますが、当然のことながら見直すのであればその方向性はということで、今ご指摘にあった文章が続いてくるということです。それはそうなんだろうということですね。当然、先ほどの質問にも絡みますが、見直すか見直さないかは、どちらが良いかで決めていけばよい話であって、見直す時の方向性が今よりも更にタイトなコントロールをするという方向になる可能性はあまり高くないのは、常識的にそうだろうというふうに思います。ただ同時に、非連続的に変わるということは、これは市場にとってはよろしくないので、そういうことがないようにしますということを考え方として述べたということですので、そういうことになりますね。今の一つ目は。二点目についてはですね、これはこのこと自体が多角的レビューの中で様々な方も指摘されている論点ですので、あまり私の方からですね、今こう思うということを申し上げることは適切ではないというふうに思います。

§17Shinichi Uchida

ただ、新陳代謝という言葉は、その言葉自体としてはどちらかというと良い言葉として皆さん書かれることが多いと思いますが、当然そこには企業数の減少というのを含むという生の現実があるわけですから、そのことを含めて新陳代謝というのを適切なペース、適切な方法で進めていくことが必要であり、その中にあっては、人手不足を契機とするものは比較的、比較的ですよあくまで、比較的コストは小さいであろうし、それからもしできることであれば、これは金融機関とか、 ――すみません、ここは地域金融機関だけ書いたんですが、例えば商工会議所さんとかいろんなところを含めて ――、ネットワークをお持ちのところはあるので、できればその企業がですね、従業員がいることを魅力的だということで、そのままどこかのより効率的なオペレーションができるところが運用していくというのが一番良いかなというふうには思っています。なぜそういうふうに言うかというとですね、新陳代謝の進め方にはいろいろな方法がある。それは例えば、セーフティネットを外していくということもそうかもしれないし、あるいは金利を上げるということもそうかもしれないし、人手不足というのも契機になり得る。

§18Shinichi Uchida

ただ、例えば金利を上げていくことによって、経済全体にとってマイナスになるような水準に、少し前の話かもしれませんけれども、上げていくということがですね、本当に日本経済全体にとって良かったのかどうかというのは、その議論をするときにはいつも問われて然るべきだというふうに私は思います。これ以上言うのは、あまり先取り的で好ましくないと思いますので、皆さんのいろいろな意見を聞きながら、ここについては多角的レビューの中でも考えていきたいというふうに思います。

§19Question

先ほどもマイナス金利の解除後もですね、緩和的な環境を維持され、国債買入れにも大きな変化はない、そういうお話をされました。これは大規模緩和がですね、修正される段階に入っても日銀のバランスシートは暫く増加傾向が続くのか、それとも少なくともですね、縮小というのはかなり先になると、そういう方向でみてよろしいのか、バランスシートのあり方を含めてお願いします。

§20Shinichi Uchida

そこを含めてですね、その時に適切な判断をしていくということになります。この時点で、その先の話をですね、できるのであれば最初から書いていますから。この時点でそれは決まっていないということです。

§21Question

副総裁に伺いたいのですが、今日挨拶の中で、「日本経済が変わる素地が整ってきた」というふうに表現されていまして、今焦点になっている春闘の賃上げの状況も含めてですね、この意味合い、今日の「素地が整ってきた」という意味合いをもう少しご説明ください。そのうえで、副総裁自身、賃金・物価の好循環の達成とですね、政策転換のタイミングが近づいてきているというふうに捉えていらっしゃるのか。もし足りない部分があるとすれば、どの部分なのかを教えてください。

§22Shinichi Uchida

今日、主にそこを論じたつもりでいますので、付け加えることがどれだけ多いかはよくわかりませんけれども、結局ですね、去年確かに春、賃上げが大方の予想よりは強い賃上げが行われたということかと思います。これのきっかけになったのはグローバルなインフレ、そのことが日本の物価を押し上げた、これは好ましくないことですけれども、それがきっかけになったのも事実ですが、何回かこの中に書いてある通り、もしそれが人手不足の経済、あるいは労働市場ないし他のものも含めて、ある種需要超過の状況がですね、いろんな意味でつくられてきている経済っていうことをですね、方向としてですけれどもあくまで、前提としていなければ、おそらく単にインフレで終わった可能性が高いというふうに思います。これが、労働需給がタイトな中において行われた結果として、賃上げに向かったということですので、確かにきっかけはグローバルなインフレだったかもしれないけれども、今起きていることというのはもう少し構造的なものだというふうに判断しているということです。

§23Shinichi Uchida

このことをですね、一つのドライバーとして、これは言い方は難しいんですけれども、人手不足というのはもちろん個々には困ったことなので、これがいいんだという言い方は難しいのですけれども、違う言い方をすれば、労働需給がタイトで失業の心配が比較的少ないという状況のもとでですね、賃金は上がりやすい状態になっているわけであって、このことをきっかけに、働く人から選ばれる企業が残っていくというかたちがみえてきているわけです。そのことをできるだけ摩擦の少ないかたちで実現していくことができるのであれば、日本経済にとっては賃金と物価がともに上がるという、これは 80年代の日本では当たり前だったので、ものすごく違うことが起こるというより、デフレ期に起こったことを戻すということではあるのですけれども、そこに戻っていく素地がようやく整ってきたというふうに思っています。マクロ的にみる限りは、今年の賃上げは、去年よりも良い状況がいくつか揃っている。具体的には、良いって言ってはいけないかもしれませんが、高い、強い可能性がある情報が揃っている。

§24Shinichi Uchida

一つは、人手不足は今年の方が厳しい、企業収益は過去最高である、労使双方から比較的強い声が聞こえている、こういったことを踏まえるとですね、物価も暦年ベースでは去年の方が高いわけですが、そういった様々なことを踏まえると、好循環、あるいは、少なくとも物価から賃金という方向については、ある程度、なんと言いますか、期待が持てるし、本当に期待したいというふうに思います。その状況は整ってきているというふうに思っています。ただ、そのことを確認して、逆方向も含めて確認したうえで、いわゆる好循環を確認したうえで、2%を見通せるようになったというふうに判断するかどうか、というふうに向かっていくということですので、当然ですけれども、春季労使交渉の状況というのは、重要なファクターの一つになるというふうに思っています。それでお答えしたことになりましたか。

§25Question

その好循環とですね、その先というかそれと同時の政策転換というのが、徐々にですね、近づいてきているというご認識であるか。ちょっと足りない部分が今あるとすればどういうところか。

§26Shinichi Uchida

それはまさに時間の経過とともにですね、総裁が何度も申し上げているように、2%の実現を見通せる確度は少しずつ高まってきているというふうに判断しています。そのうえで、賃金と物価を確認していくということですし、何を具体的に確認していくのかは今日書いたつもりですから。もちろん、経済全体を判断するということなので、ここに書いたことだけをみていくわけではありませんけれども、賃金と物価というのが、きわめて重要なファクターであり、その中にあって春闘というタイミングで賃金の部分が確認できるということはですね、これは重要なイベントであろうというふうに思っています。

§27Question

先ほどの挨拶の中で、賃金と物価の好循環の確認に様々なデータや情報を丹念に点検していく、というふうにおっしゃっていましたが、マイナス金利の解除を含むですね、金融政策の正常化開始のタイミングについて、どういうタイミングが適切なのか、また判断できるタイミングについて、どう考えていらっしゃるのか、よろしくお願いします。

§28Shinichi Uchida

まさにですね、ここに書いてある通りなんですけれども、様々なデータを確認し、これは物価から賃金、賃金から物価についてそれぞれ何をみるかは書いてありますけれども、確認し、それをベースに 2%が見通せるというふうに判断するのであればですね、これは幾つかの要素がありますけれども、大規模な金融緩和というものを見直すことになるだろうと、正確に言うと見直すことを検討するということになりますけどね、検討することになるだろうということです。そういう意味では、まさに書いてある通りなんですけれども、今言ったようなことを確認して、確認できるようになれば、その段階でどういうかたちが最も良いのかを、それぞれの政策についてですね、判断していくということになります。

§29Question

ビハインド・ザ・カーブのリスク、先行きのリスクについてお伺いしたいんですけれども、現時点ではまだそこに陥っていないということですが、しっかり賃金の動向を確認していきたいということも講演でおっしゃっていますけれども、日銀は今、しっかりとじっくりと賃金と物価の好循環を確認できる時間的余裕はあるのでしょうか。それがまず一つです。もう一つ、ちょっと細かいんですが、講演で使われた図表 9 のところに、政策金利の市場予想をお使いになっています。この中でざっくり言うとですね、大体 1年で25bps くらいだと思うのですけれども、もちろんその経済と物価によってその金利のパスは決まっていくということなんですけれども、今の現時点ではこの市場の見方について、内田副総裁ご自身は特に違和感をお持ちでないという理解でよいのでしょうか、どうでしょうか。

§30Shinichi Uchida

二点目については先ほどの一番最初の質問に戻りたいと思いますが、それは経済・物価情勢次第ですので、それについて評価することは差し控えたいというふうに思います。今は市場はこうだということを出しただけであって、これを endorse するつもりもないですし、違うというつもりもないです。一点目は何でしたか。

§31Question

ビハインド・ザ・カーブに先行き陥るリスクですね。じっくり、しっかりと好循環を見極められる時間的余裕があるのか。

§32Shinichi Uchida

これもですね、皆さんもそうであるように私も一応言葉は気を付けながら表現は選んでいるつもりなので、しっかりと確認していくというつもりでいます。そこにですね、違う意味をいろいろ言っていくとですね、言い換えていくと、そのことにまた意味を見出してしまう人も出てくると思いますので避けたいというふうに思います。この通り読んで頂ければと思います。

§33Question

二点お伺いしたいんですけど、先ほど日銀のバランスシートの扱いについてまだ決まっていないということでしたが、確認ですけれども、声明文に今記されているオーバーシュート型コミットメント、この扱いについては現時点で扱い決まってないというか、基本的なお考え方を示されるおつもりはないのかというのが一点目です。二点目は、岸田総理が国会答弁で、現在政府としては構造的な賃上げと労務費の適正な価格転嫁、こういったものが進むように、経済が活力を取り戻す、そういうための政策を行っているんだと。日銀に対しては、こういう政府の政策をよく理解したうえで、独自の判断をしていってもらいたいというお話をされてるんですけれども、この岸田総理のお考えと、今後の日銀の金融政策の運営への影響というんでしょうか、これはどういうふうに考えればいいでしょうか。

§34Shinichi Uchida

後者からお答えしますと、私どもも賃金の上昇を伴うかたちで 2%の安定的・持続的な実現を目指しているということですので、まさにそこは揃っていて、同じ考え方の中でですね、政策を行っているというふうに思っています。私も賃上げを伴うかたちでないと、2%というものは安定しないというふうに思っていますので、当然それをサポートしながら政策をやっていくというのがですね、今私どもが金融政策を考えるうえで、重要なポイントになっているというふうに思っています。それからオーバーシューティング・コミットメントですが、当然ですが、幾つかコミットメントというのはあるわけですが、第一のコミットメントを満たすか満たさないかという判断をまだしていないわけですね。正確に言うと、前回の 1月会合までは満たしていないという判断をしているということになります。つまり、2%を見通せる状況には至っていないという判断をしているわけですから、その段階でオーバーシューティング・コミットメントが達成できているということはそれはないですから、そこは見通せるようになったところの判断ということに当然なるというふうに思います。

§35Shinichi Uchida

ひと言だけ付け加えれば、2年近くになりますが、2%を超えて推移しているということは事実ですから、そのことはですね、もともとオーバーシューティング・コミットメントで想定していたというのも変ですけれども、下から上がってくるのとは違う角度で上がってきているので、そのことがですね、この議論に影響するということは、それは当たり前の事実としてはあるんだろうと思いますが、当然のことながら、見通せるようになるというのが第一であって、見通せるようになるということを判断したときに、そこも一緒に判断していくということになります。従って現時点においては、そこは決まっていないというよりも、そういう判断をしているわけではないというのが答えになると思います。以上