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Bank of JapanPress conferenceApr 18, 2024Asahi Noguchi, Board Member

野口審議委員記者会見(2024年4月18日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

二点お伺いします。まず、先ほど開かれた懇談会ではどのようなお話やご意見が挙がったのか、お聞かせ頂ければと思います。もう一点ですけれども、佐賀県の経済情勢について、今どのようにご覧になっているのか、先行きも含めてお考えを伺えればと思います。

§2Asahi Noguchi

本日の懇談会では、佐賀県の行政や経済界、金融界を代表する方々から、当地の金融経済情勢や地域経済が直面する課題などについて、貴重なお話を伺いました。また、日本銀行の金融政策運営に対するご意見も頂戴し、大変有意義な意見交換ができたと考えています。この場をお借りして、ご多忙な中で本日ご出席頂いた皆さまに改めて御礼を申し上げます。本日の金融経済懇談会では、多岐にわたるご意見を頂きましたので、その全てを網羅的にご紹介することは時間的に難しいですが、席上で聞かれたお話をいくつか整理して申し上げたいと思います。まず、佐賀県の景気については、個人消費は堅調ではあるものの、物価上昇を受けて伸びがやや弱めになっているとのご意見が聞かれました。他方、今年10月に開催予定の「国民スポーツ大会」、「全国障害者スポーツ大会」の経済波及効果に期待する声もありました。こうした中で、当地企業の大部分を占める中小企業において、人手不足が深刻な中で賃上げに取り組まざるを得ないが、原材料費や人件費といったコストの上昇分を十分に価格転嫁することが難しく、収益環境が厳しくなっているといったお話がありました。金融機関からは、日本銀行の政策変更が行われた中、経済の好循環の実現等に貢献するべく、財務・非財務面の両面で取引先企業が抱える各種の課題解決に向けたサポートに取り組んでいるといったお話がありました。

§3Asahi Noguchi

日本銀行の金融政策運営に関しては、今後、急激な金利上昇が発生した場合、多くの中小企業において収益の悪化につながり得るため、引き続き地域経済等への影響にも配慮しながら慎重に対応してもらいたいといったご要望がありました。また、為替円安を巡る様々なご意見も頂きました。日本銀行といたしましては、今後も佐賀事務所や福岡支店を通じて、当地の経済・金融情勢に関するきめ細かいモニタリングを続けるとともに、当地経済の持続的な成長に向けた取り組みや金融システムの安定性の確保を後押ししていきたいと考えています。二番目の佐賀県の経済情勢に関する認識に関するお答えです。佐賀県経済については、人流の回復やペントアップ需要などによる個人消費の回復のほか、企業業績の改善等を背景とした設備投資の増加や雇用・所得環境の改善により、緩やかではありますが回復基調にあります。ただし、足元、個人消費では、節約志向の広がり等により回復のテンポに若干の足踏み感がみられます。具体的には、行楽やイベント関係のほか旅行・観光は堅調な一方、近年の物価上昇の影響から、買い上げ点数や来店頻度の減少、セール日への需要集中といった慎重な消費行動が広がっています。福岡県と比べると節約志向がやや強く感じられますが、その一因として、当地における高齢世帯の割合の高さも影響しているものと考えられます。

§4Asahi Noguchi

先行きについては、足元若干の足踏み感がみられる個人消費についても、企業の値上げの動きがピークアウトしつつある中で、消費者マインドが持ち直し、雇用・所得環境の改善が継続していくもとで、回復テンポの足踏み感は解消していくものとみています。また、佐賀県では、先ほども申し上げましたが、本年10月に「国民スポーツ大会」と「全国障害者スポーツ大会」が開催される予定にあり、その波及効果も期待されます。海外の経済・物価動向やその波及、人手不足の影響等、様々なリスクがありますが、私どもとしては、そうした各種リスク要因が当地の金融経済情勢に及ぼす影響等にも留意しつつ、今後の佐賀県経済の動向を注意深くみていきたいと考えています。

§5Question

足元で円安が進んでいます。加えて中東情勢の混乱で原油価格の先高感みたいなものも広がっていて、コストプッシュ型のインフレが再燃するんじゃないかという懸念も出ていると思いますが、今の状況、まずどうご覧になっているのかっていう点と、あと実際にそのコストプッシュ型のインフレが再燃した場合に、取り得る選択肢として何があるのかお考えをお聞かせください。

§6Asahi Noguchi

まず最初に、円安それから中東情勢を受けた原油等のエネルギー価格上昇、こういったコストプッシュの影響についてでありますが、コストプッシュそれ自身は、特に輸入価格上昇を起点としたコストプッシュによるインフレ、これはわれわれ、ご存知とは思いますが、「第一の力」というふうに呼んでいたものであります。コストプッシュによるインフレというのは、基本的にはその原因が剥落すれば消えていくものであるというふうに思いますので、そういう意味では一時的なものであります。ですから、これは二番目の問いに対するお答えにもつながると思いますけれども、基本的にはコストプッシュそれ自身はですね、金融政策によって何か対応するというよりは、その影響が減衰するというものを見極めるというのが基本的な対応になるかというふうに思いますが、ただし、今日の午前中の私自身の講演の中でもお話しさせて頂きましたように、今後、「第一の力」というものが、結果としてはですね、「第二の力」、つまり賃上げに結びつくと、更にその賃上げが特にサービス価格を中心とした物価の上昇というものに結びつくということになりますと、これは物価の基調的な動きということになりますので、そういったものに関してはですね、当然ながらこれは政策で対応していくということになろうかと思います。

§7Asahi Noguchi

前回 3月での決定会合で政策変更を行ったということの背後にも、この「第二の力」がまだ完全に 2%の基調には届いておりませんけれども、かなりそれに辿り着くという確度が高まったということで政策変更を行ったわけであります。それは結局、この「第一の力」が「第二の力」、具体的には賃上げそれからそれを背景とした物価の上昇、というものに結びついているということから政策変更を行いましたので、おそらく、今後そういった動きが一層強まれば、それはやはりわれわれ政策を考えるうえでも、それを十分に配慮していかなければいけない要因にはなるんではないかというふうに思っております。

§8Question

今日の挨拶の中でもありましたけど、賃金と物価の好循環について伺います。今年の春闘では、やっぱり高い水準の賃上げも確認されましたけれども、この好循環の実現には、野口さんご自身どれぐらいの距離感を持っていらっしゃるのか。中小の賃上げによる価格転嫁の定着とかも含めてですね、まだまだ距離があるとみてらっしゃるのか、そこのちょっとご感触、お考えを是非聞かせてください。

§9Asahi Noguchi

これについてはですね、おそらく、私、他の審議委員の方々でもですね、ある程度一定の認識の違い、ばらつきっていうのはあるのかなと思いますけれども、私自身はかなり慎重にその中ではみている方ではないかなというふうに考えております。それはいくつか理由があるわけでありますが、この価格転嫁がどの程度スムーズに進むのかというものに対しては、本日のですね、佐賀での皆さまの、経営者の方々のお話を聞いても、なかなか実情としては厳しいという声が非常に多く上がってまいりました。それはいろいろな財・サービス、それから中小企業・大企業、そういった業態毎にですね、その転嫁というものに対しては非常にタイムラグ [の差 ]が大きいという事実がございます。例えば、原油とかこういったエネルギーに関しては非常にスムーズに価格転嫁が進むということでありますけれども、そうでないものに対してはかなりタイムラグが非常に大きいと。これは米欧対比でも非常に大きい。これはやはり、一番大きな理由というのは、 20年あるいはそれ以上ですね、デフレ的な経済状況が続いてしまい、賃金と物価のゼロノルム、つまり賃金も物価もなかなか上がりにくいという状況が続いてきたわけであります。そうしますと、物価が上がらないということは、転嫁がなかなかしにくくなると。原材料もそうですし、賃金に関してはますます転嫁がしにくいと。こういう状況ですね。

§10Asahi Noguchi

もう確かにこれ少しずつ進展はしております。進展はしておりますけれども、そこがですね、完全に解消されるというのには、やはり相当な時間がかかるという認識を私自身は持っておりますので、そこに関しては距離は相応にあるというのが私の個人的な印象です。

§11Question

二つ伺いたいと思いまして、まずは物価見通しについて伺いたいと思います。 4月の決定会合後は基調に近いとされる 26年度の物価見通しが発表されると思いますが、野口さんが考える見通しは 2%台に達しますでしょうか。どうした要因が判断材料になっているのかも併せて伺いたいと思います。そして、午前中の講演ではバランスシートの縮小について述べられたかと思うんですけれども、今後は利上げとどのような順番で進めることになるんでしょうか。

§12Asahi Noguchi

最初の、物価見通しの数字を具体的にお話しすることは、残念ながらお話はできないということになると思いますけれども、方向感としてはですね、私自身も先ほど、かなり価格転嫁には時間がかかっていると。ですから、賃金と物価の好循環といってもまだかなり、実現はしつつあるんだけれども、そこに完全に、 2%の基調に達するにはそれなりの時間がかかるというふうな見通しは持っております。けれども、おそらく 25年、 26年というところになればその確度というのは相当高まっている可能性は十分ある。具体的にその数字を挙げるというわけにはまいりませんが、かなりですね、そこに近づいていると。2年くらいの時間があればですね、さすがに状況もかなり改善しているんではないかというふうに、個人的には思っております。それと、次のバランスシートの問題でありますけれども、バランスシートに関しては、これはなかなかですね、各国の中央銀行の状況をみましても、それぞれ中央銀行毎に対応が違っているということでありまして。今まさにそれが専門家の間でもですね、大きな論議の的になっている点は、バランスシートを縮小するにしても、じゃあどのくらいのペースでどの点までそれを縮小すればいいのか。

§13Asahi Noguchi

最終的には、一つだけ明らかになっていることは、昔のようにほとんど超過準備を最小にする、超過準備というのをほとんど無いぐらいまで縮小させるということはおそらくできないだろうと、そこまで逆に言えばする必要はないということについては、大まかなコンセンサスっていうのは、いろんな中央銀行の間で確立はしていると思うんですが、じゃあどのくらい縮小すればいいのか、そのペースはどうするのか、その順番をどうするのかということについては非常に曖昧、それぞれ、なんていうんですかね、試行錯誤でやっていくという状況ですので、現時点で日銀がどうするかというのは、先月政策変更したばかりですから、これから議論していくのかなというふうには思っております。ただ一つ言えるのは、これは強調しておきたい点でありますが、今、日本銀行は基本的には今後の政策変更というのは短期市場金利の引き上げという、こういう基本的には伝統的な手段を使ってやっていくので、バランスシートを縮小させるにしてもですね、それ自体には政策的な意味はほとんど無いということだけは、はっきりしているのかなというふうに思っております。

§14Question

先ほどサービス価格の上昇とか賃金と物価の好循環のお答えがありましたけれども、佐賀のような地方でこれが実現するためには何が必要とお考えでしょうか。

§15Asahi Noguchi

まさにその問題はですね、今日午前中からお昼にかけて、佐賀の経済界を代表される方々と議論したところでありますけれども、これはなかなか難しいなと思いましたのは、これは特に今、具体的には円安などが長引いていることで、資材が非常に高くなっていると。円安で恩恵を被る大企業などがかなり恩恵を被って収益も実際上がっているということはあっても、なかなか佐賀でそういったはっきり恩恵が出るようなセクターというのがあるのかというと、なかなか難しいということがですね、皆さんのいろいろなご意見、お話の中から伺い知ることができた点でありますけれども、私自身はですね、その問題が非常に深刻なのは、要するに、価格転嫁がなかなかまだ進みにくいところがかなり、こういった地方の中の一部には集中しているということかなというふうに思います。例えば、輸入品の価格が上昇したとしても、原材料価格が上昇したとしても、それがスムーズに転嫁できればそんなに苦しいことはないはずだということになるわけですが、しかし、現実にはそれがなかなか難しいということであります。ですから、そこはやはり大きなタイムラグがどうしても生じてしまうので、そこをいかに耐え忍ぶかということになるわけです。

§16Asahi Noguchi

そのタイムラグというのは、先ほどもお話ししましたけれど、要するにわれわれがですね、ゼロノルムの世界、デフレあるいはディスインフレ、非常に低いインフレの世界に馴染んでしまって、 20年、 30年ですね、そこから抜け出す、今非常に過渡期にある中で、なかなか完全に転嫁をスムーズに行うような意識自身がまだ確立されていない。新しいノルムとしては、まだそういった意識が確立されてないということですが、これはおそらく私は、現実に今いろんなものが動き始めていますので、賃金も上がり始めているということを背後に、そのノルムというものもだんだん変わっていくだろうということからすれば、まずは時間を待って耐えるというのが一つの答えになるかと思うんですが、それだけではやはり不十分かもしれません。幸いなことに、地方経済にまでまだそこは十分波及してきてはいないかもしれませんが、例えば、この意識という面でみれば、この 2年くらいの間に、政府それから経済界、労働界は、例えば賃上げを要求してもなかなか財界は受け入れないというのがずっと続いてきたんですが、そういった状況が非常に変わってきました。それからあと大企業の方、なかなか中小企業、下請けのような企業が価格転嫁をしたいと思っても、親会社あるいは大企業になかなか受け入れてもらえないという状況もですね、少しずつ確かに変わりつつある。

§17Asahi Noguchi

これはやはり官民も含めた取り組み、例えばパートナーシップ構築宣言みたいな取り組みがあると。それから公正取引委員会なども非常にその辺を強く意識して、様々な働きかけをされている。そういう一連の流れというのが出来ているというのも、これも事実であります。ですから、そういったことが徐々に今後浸透していけば、こういった地域経済でもですね、かなりスムーズに価格転嫁して、中小企業の状況が今の世ほど苦しい状況からは、少しずつ改善されるような状況になるんではないかというふうに思っております。

§18Question

追加利上げについて伺います。挨拶の中で、ペースについて主要中央銀行と比較にならないほどゆっくりなものと予想していましたが、タイミングについてはどのような条件が揃えば次の利上げが可能になると考えていらっしゃるのか、ご見解をお願い致します。

§19Asahi Noguchi

私自身はかなりゆっくりなものになるであろうというのが基本的なメインシナリオだというふうに考えておりますけれども、これは当然データ次第であって、経済状況次第と。経済状況が予想外に早く進展していくという可能性ももちろんあるわけで、その時には柔軟に考えを変えたいと思いますが、じゃあどういう状況に進展すれば、そういった認識が少しずつ変わっていくのかということについては、私の講演の中でもお話をさせて頂いたように、一つは「第二の力」の賃金は確かに上がってきたと、今回の春闘でですね。ベアもおそらく 3%を超えるような水準に着地しそうだということであれば、これが長く続いていく、来年以降も続いていく、定着していくと。そうであれば、当然、それが今度は賃上げが価格の方に、これまでは物価が上がったから賃金を上げようねという流れでしたけども、今度は賃上げが価格の方に転嫁されていくという流れが来る。そこでですね、やはりそれが一番強く表れるのは、これはやはりサービスであると。というのは、財というのはやはり生産性の上昇というのがかなり恒常的に起こりやすいセクターですので、それに対してサービスというのは必ずしもそうじゃなくて、もちろんAIとか何かで今後変わるかもしれませんが、基本的には技術もかなりもうかっちりと決まっていて、というようなものが多いわけです。かつ労務コストの割合が非常に大きいと。

§20Asahi Noguchi

例えば、理髪なんていうサービスを考えますとですね、床屋さんですが、こういったものを考えれば非常に明らかなように、賃金の割合というのがコストの中で非常に大きい。ですから、それは当然そういうサービス業に関しては、賃上げが行われるということが、当然サービス価格の上昇という形で現れるはずだと。実際、例えば企業向けサービス価格などではそういった傾向がもう既に現れ始めていますので、それがよりはっきりとした形で現れるということが非常に重要だと。これが第一点。第二点は、もう繰り返しになりますけれど、やはり中小企業も含めた価格転嫁がしっかりと進むと。この二つが少なくとも確認をすべきポイント、大きなポイントかなというふうに思っております。

§21Question

冒頭でもありました為替の動向について、この 4月になってから、急速な円安が進んでますけれども、要は物価の上振れリスク、あるいは利上げペースに与える影響についてはどのように感じてらっしゃいますでしょうか。

§22Asahi Noguchi

基本は、ずっと円安が続くというのは別ですけれども、円安が起きたとしても、それがそれで終わるんであれば一過性のショックですから、それはやがて浸透していけばそれで消えると思うんですが、しかしそうではない可能性は当然あるわけで、先ほどからお話ししていますように、それが今度は「第二の力」、つまり賃金、それから基調的な物価にまで影響を与えていくということですね。これはある程度円安というのが長く続きますと、そういった影響っていうのはいろんな形で出てくる可能性は当然あるわけでありますね。例えば、今いろんな、半導体を含めてですね、生産が日本の中でかなりまた復活するんではないかと。半導体の工場が日本にまた国内回帰してくるとかですね、そういうことの中で、地域によってばらつきがありますけれども、非常に地域の中でも人手不足が強くなっているような地域も垣間見えたりしているわけです。

§23Asahi Noguchi

これはもう明らかにですね、これは「第二の力」に寄与していくということになりますので、そうなれば当然、政策変更する場合にそれを十分考えていかなきゃいけない要因になるということでありますから、結論として言えば、為替それ自体にわれわれが金融政策で対応するということはあり得ませんが、その結果として、そういった物価と賃金の好循環といいますか、そういったものに影響を与えるということであれば、それは当然それを考えていかなきゃいけないと、見極めていかなければいけない影響だというふうに考えております。

§24Question

先ほど物価の見通しで基調的な物価が 2%に達するのがおそらく 25、 26年っていうことでしたけれども、その前の段階で、例えば確度が徐々に高まってくる段階で追加利上げをするという判断もあり得るのか、それとも 25年、 26年になってから、明らかに確度が高まった段階で追加利上げをするのか、っていう部分をお伺いしたいということと。あと一点が、 3月にマイナス金利解除に反対されましたけれども、当時の判断を今どういうふうにみられてるかという点、お伺いできますでしょうか。

§25Asahi Noguchi

まず最初のご質問でありますけれども、これはですね、例えば見極めて、完全に2%の基調的にもう達したという判断が得られなければ政策変更が少しもできないということになりますと、その時点で非常に急激な政策変更、例えば利上げみたいなことを行わなければいけないということになりますので、これはやはりあまりにもやり方として、なかなかリスクが高い政策変更、やり方になると思いますので、その確度の高まりを見極めながら、その中で少しずつ慎重にやっていくというのがやはり基本になると。だから 100%もうこれで [2%に ]いったんだ、ということにならない限り何もできないというものではないということは言えると思います。それから二番目の質問に対するお答えでありますが、私が反対した理由は、一つは今ずっとこれまでお話ししてきた通りですね、賃金と物価の好循環をより慎重に見極めたいというのが一つであります。これは今でも変わりません。

§26Asahi Noguchi

もう一つはですね、 3月の政策決定というのは非常に今までの非伝統的な枠組み、政策の枠組みを、いわば一挙に転換するという非常にドラスティック、ある意味ではドラスティックなものだったというふうに思いますので、その影響というのは、ある意味サプライズ的な効果を金融環境にもたらして、かなり例えば長期金利が跳ね上がるとかですね、そういったような動きになる可能性はあったんじゃないかと、事前の段階では私はそういうふうに判断しておりましたけれども、結果としてみると、いろんな要因があったと思いますけれども、一番大きかったのはやはり春闘で非常に高い賃上げが、誰も予想していなかったぐらいの賃上げが実現されましたので、そっちの方が大きなショックであったために、それならあのぐらいの政策変更をやっても当然だよねっていうですね、逆にそういう受け止め方をされて、結果としてはむしろ一時的に円安になったりとかですね、その円安は今でも続いてるわけですけれども、そういうことのきっかけになったりしたということから言えば、非連続的な金融環境の引き締まりといった、私が危惧していた状況は少なくとも起きていなかったのかなという点では、安心できる結果であったというふうに言っていいと思います。

§27Question

先ほど物価が 2%基調的に上昇するという確度の高まりを見極めるとおっしゃってましたが、これ見極めるために、少なくともどれぐらい期間が必要と考えてらっしゃるか、教えて頂けますでしょうか。

§28Asahi Noguchi

これもやはりデータ次第というか、経済状況次第で、これっていうのはなかなか事前にですね、例えば、見通し期間というのはもちろん設けておりますけれども、見通し期間中にちゃんと見通した通りになるっていうのは、なかなか実際にはあまりそううまくはいかないっていうのがほとんどなわけで、逆に言えば相当前倒しされる可能性も、もちろんあるわけですね。例えば、先月政策変更を行いましたけれども、これも例えば去年とかいう時点ではこれほど早く行われるっていうのは、おそらくマーケット関係者もそれほど予想はしていなかったんじゃないかと。それだけ賃上げのモメンタムが強かったということがだんだん明らかになってきたということですね。そういうふうに考えますと、今からどのぐらいのタイミングでっていうのを、今の時点で、例えば 2年先のことをですね、一応われわれとしてこういう何かショックがない限りこういう見通しになるだろうということは言えてもですね、じゃあショックがないっていうことが言えるかというとそんなことはなくて、もう予想外のいろんなショック、これはプラスに影響するショックもあればマイナスのショックもある、そういうものが起きるということですので、なかなかそこは難しいなというふうに思っております。

§29Question

ちょっとしつこいようですけれども、その点について、利上げのペースですね、かなりゆっくりなものになるのではないかっていうのがメインシナリオってことですけども、このゆっくりというのも人によっていろんな定義というか意味合いがあるので、そこは例えば上手くいけば年内にも追加利上げっていうのは可能になるとみていらっしゃるのかどうか、それがまず一点です。あともう一点、為替についてなんですが、最近、財界からもですね、足元の円安について懸念をする声が少し強まっている感じがあります。今の円安、水準についてはコメントされないと思うんですけれども、経済・物価に与える影響について、プラスなのかマイナスなのか、そういったことについてお願いします。

§30Asahi Noguchi

まず最初ですが、これは追加利上げというのがあるとして、それが今年中なのかそうでないのかっていうのは、今年中にないということを言うことはできないということだと思うんですが、あるとももちろん言えないんですが、ないとも言えないと。それはもう繰り返しになりますけど、経済状況次第で、相当今の状況である種の上振れ的な、賃上げもですね、相当人手不足感が更に強まるというようなことが起きる、いろんなケースがあり得るわけですが、そういった形である種上振れ的な状況が生じる可能性っていうのはいくらでもあると。その場合、それに対してある程度の調整っていうのは当然行われるというふうに考えておくのは、最も自然ではないかと思いますので、今年中にやりませんよとかやるつもりはないですよということを言うつもりはありません、というのが第一番目です。それから第二番目の円安についてでありますけれども、これは基本的にはやはり最大の原因というのは、これはいろんな専門家の方が議論していることがそれほど外れてはいないと思うんですが、やはりアメリカ経済が予想以上に強い。

§31Asahi Noguchi

予想以上に強いということの反面は、なかなかインフレもですね、ラストワンマイル、 3%前後ぐらいまでは下がったけどそこから先なかなか下がらないという状況ですから、FRBもですね、当初は利下げを今年(注 1)に始めて今年中に 3 回はやると、マーケットの方はもう 6 回(注 2)やるんだというふうに決めつけていたという状況がしばらく前まであったわけですが、しかしマーケットも含めてですね、もう今年はもしかしたらやらないんじゃないかとか、あるいは一部の人は利上げをもう一度やるんじゃないかというようなことを言い始める人も出てきたと。これは誰も予想していない状況だったというふうに思いますので、そういったものがあればですね、当然今までのドルが非常に強い状況っていうのが、ある種のアメリカの強さというサプライズによって非常にクローズアップされてですね、それがドル高をもたらした。日本の方は、政策変更をしていてもですね、やはり私が強調していますように、なかなか物価と賃金の好循環が、どんどんどんどん進むという、さすがにそこまで強気にはまだなれてない。ということはやはり政策変更もどうしてもゆっくりなものにならざるを得ないと。この両方の効果が相まった結果として、今のような状況になっているということかな、というふうに思っております。(注 1)会見では「今年6月」と発言しましたが、正しくは「今年」です。

§32Asahi Noguchi

(注 2)会見では「 9 回」と発言しましたが、正しくは「 6 回」です。以上