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Bank of JapanPress conferenceAug 7, 2024Shinichi Uchida, Deputy Governor

内田副総裁記者会見(2024年8月7日)

Original in Japanese

Full text

§1Question

二点あります。一点目は本日の懇談会、出席者からどのような意見が出て、どのような議論があったかという点をお聞かせ願いたいと思います。二点目です。函館市を中心とした道南経済の情勢、活性化などについて、どのようにご覧になっているか、この点お聞かせ願えればと思います。

§2Shinichi Uchida

二点は関連しているというふうに思いますが、まず本日の懇談会では、当地の行政、経済界、それから金融界を代表する皆さま方から、当地経済の現状、それから直面する課題、更には日本銀行の政策に関するご意見などを伺うことができました。大変有意義な意見交換ができたと考えております。懇談会にご出席された皆さま方に、この場をお借りしまして、改めて御礼を申し上げたいというふうに思います。席上頂いた意見、かなり多様な意見を頂きましたので全てご紹介することは難しいんですけれども、私なりにまとめますと以下のようなことかなと思っています。まず当地の景気ですけれども、ハイシーズンで盛り上がりをみせる観光需要を追い風にしまして、持ち直しているというお話を伺いました。一方で原材料コストの上昇、それから、これはどの地域にもあることですが、人手不足を背景としまして、人件費高騰が重石になっている、そういう意味で持ち直しの実感がなかなか得にくい企業も少なくないというお話も伺いました。人手不足に関しましては、今全国と申し上げましたが、全国対比でみても、急速な人口減というのが当地重くのしかかっておりまして、これについてはなかなか短期的な解決策は見いだしづらいというお話もございました。

§3Shinichi Uchida

企業において人材確保をしていくうえでは、継続的な賃上げが欠かせないわけですけれども、そのためにはですね、取引価格の適正化ですね、こういったことを含めて努力していかなければいけない、行われなければいけないというご指摘もありました。それから、一問目の最後ですが、日本銀行の金融政策面につきましては、これは両方の意見がありますが、引き続き緩和的な政策のもとで経済活動をしっかり支援してほしいというご意見を伺いました。また、そうですね、反対ということはないですね、すみません、今後の政策変更については、地域経済・金融機関への影響も踏まえて、慎重に行ってほしいというご意見も頂いたところでございます。日本銀行と致しましては、本日頂いたご意見等を踏まえ、引き続き適切な政策運営に努めてまいりたいと思います。それから道南経済でございますけれども、足元持ち直しているというのが私どもの判断、支店が出している通りでございます。個人消費は、これは全国的にもそうですが、財消費を中心に物価高の影響がみられます。一方で、外食・旅行などサービス消費は堅調に推移しています。

§4Shinichi Uchida

当地主力の一つである観光につきましては、当地が舞台の人気アニメ映画、名探偵コナンですかね、の封切に始まって、クルーズ船の来航、函館マラソン、大型コンベンションの開催等による多数の観光客の来訪がありまして、当地経済の持ち直しに寄与しているということだと思います。このように、景気は持ち直していますが、先ほども若干触れましたが、構造的には難しい課題を抱えておられると思います。人口減少の問題は、これは他の地方都市同様ですが、とりわけ当地においては全国よりも人口減少のスピードが速いということ、自然減だけではなくて若年層を中心にいわゆる社会減も多いということが課題と思います。こうした方々、若い方々というのは将来の産業の担い手でございますし、地域の経済、コミュニティにとって欠かすことのできない存在だということですので、大きな課題になっているというふうに思います。ただ、そうした中でも明るい話として、風土を生かしたですね、新しい明るい動きも着実にみられています。講演でも述べましたが、これまでの特産品に加えて、様々な農業分野、水産分野での動きがみられますし、日本海側の洋上風力発電計画などエネルギー分野でもそうした動きがありますので、こうした新しい動きが地場産業の一つとして大きく育っていくということがですね、当地の魅力、何より住みたいと思う街にすることが大事だと思います。

§5Shinichi Uchida

今の時代はですね、仕事があるかどうかというよりも、人がいるかどうかで仕事の方がついてくる面が出てきているわけです、人手不足の中で。ということなので、函館というきわめて魅力のある土地、おそらく日本人なら、函館と言われて、すぐ地図でここだって指せる、この魅力をですね、コンパクトですし、生かして人を呼び込むようなことをですね、やって頂ければいいんじゃないかなというふうに、少し僭越ですけれども思ったところでございます。

§6Question

7月の利上げの後ですね、金融市場で株安と円高が進んでいます。市場ではですね、米国経済の減速が主因ではないかという見方も少なくない一方、日銀の利上げが引き金になったという声もあります。追加利上げと金融市場の変動の関係についてお伺いします。併せて、7月の利上げのタイミングが妥当であったのか、この点についてもお願い致します。

§7Shinichi Uchida

これは講演でも述べさせて頂きましたので詳しくは申し上げませんが、今回の基本的な動きとしては、米国経済の減速懸念を契機として世界的な市場の変動が起きたということだと思っています。ただ、その中にあって、日本銀行の政策変更に伴って円安が修正された、修正が進んだというべきですね、修正が進んだということですので、このことがわが国の株価が他の国に比べてもより大きく下落ないし変動した要因の一つであるというふうには思っております。そのうえで適切だったのかということですが、これも講演でかなり詳しく述べましたので繰り返しは避けたいというふうに思いますけれども、今回の政策は、一つには、経済・物価が見通しに沿って展開している。そうした中で、二つ目に、円安による輸入物価の上昇、再びの上昇ですが、など物価の上振れリスクも出てきている。こういうことを考慮して行ったものです。なお 0.15[%]という幅の利上げになるわけですが、今回の政策金利の引き上げ後も実質金利は大幅なマイナスであり、引き続ききわめて緩和的な金融環境が維持されています。そのことを通じて経済活動をしっかりとサポートしていくという姿勢には変わりはありません。もとより、その金融資本市場の動きはきわめて急激だというふうに思っていますので、その動向、あるいはそれが経済・物価に与える影響については引き続き十分注視していきたいというふうに思っております。

§8Question

二点お願いします。今回このタイミングで、市場が不安定な状況で利上げしないと、明確なメッセージを打ち出された理由について教えてください。あともう一点、今朝の講演で当面現在の水準での金融緩和を続けるとおっしゃっていますが、この後の追加の利上げに向けた条件、必要なデータは何になるのか、当面ということは年内に更なる利上げというところは可能性としてないのか、併せてお答え頂けますでしょうか。

§9Shinichi Uchida

これも関連した質問かなというふうに思いますが、中央銀行のコミュニケーションというものは通常二つのファクターというか要素で構成されています。皆さんよくご存じの通りですが、一つは政策運営の考え方、いわゆる政策反応関数と言われるものと、そこに代入する経済・物価情勢の見方、この二つをコミュニケーションして、市場は市場でそれぞれ考えたうえで、市場金利というのは決まっていくという性質にあるわけです。その中で、一つ目のその考え方については、条件付きではありますけれども展望レポートに書いているわけです。そうした中で、今回、急激な国際金融資本市場の変動というべきですかね、変動が起こったわけですから、その影響を注視して、そのことを政策に反映していくということは当然だと思いますので、このタイミングで申し上げた理由は、まさにその経済金融情勢が大きく変化する、あるいは変化するかもしれない大きな要素が生じたためということになります。そのうえで、当面とはいつまでかというのはですね、書いた以上当然聞かれると思って書いているわけではありますが、これはですね、例えば今の市場というのが、どういうふうに落ち着いていくのかっていうのはまだはっきり分からないわけです。

§10Shinichi Uchida

私の考え方を述べさせて頂ければ、基本的には、例えば株価であれば、企業収益とか、日本の経済、あるいはアメリカであればアメリカの経済ですが、こういったものを反映して、いずれ落ち着いていくというふうに思っています。ただ変動が急激であったこと自体は事実です。引き続き、きわめて不安定な状態にあるわけですから、その帰趨は、これはよく注視して、緊張感を持ってと申し上げましたけれども、みていかなければいけないというふうに思います。そのうえでですね、そういう意味でお答えとしては、今後の経済・物価・金融情勢次第であるということになりますし、何より当然、決定会合で9人の委員の中で議論したうえで決定していくべきものでありますから、その範囲内で私の個人的な意見ということになってしまいますけれども、私個人としてはですね、そういう意味で当面がいつまでかということはともかくとしてということになりますが、これまでよりも慎重に考えるべき要素が生じているということではないかというふうに思っています。

§11Question

二問関連して質問させて頂きます。講演で、先ほどの緩和のところの、現在の水準のくだりは講演の中で二回、現在の水準で金融緩和をしっかり続ける必要があると考えているのは当面、これ二回強調されていますが、この意図っていうのは、同じことを二度強調しているというのはやはり、前の質問にも関連するかもしれないですけど、9月であったり 10月は、緩和は取りあえずかなりしないのでないかというような、織り込むようなメッセージのようにもとらえられるのですが、その辺をどうとらえたらいいのかというのが一点目です。もう一点は、前回の金融政策決定会合から 1 週間での今回、副総裁の講演、会見なのですが、市場の中で総裁と副総裁の意見が違って、これが結果的に市場とかのコミュニケーションに誤解を生むのではないかみたいな見方をしている人もいますが、その点について総裁と副総裁の考えは、意見は整合的なものなのかどうか、その辺の見解をお聞かせください。

§12Shinichi Uchida

まず一点目ですね。二回書いたのは文章の流れ上、最初に書いて、それから詳しく敷衍するかたちでその後文章がつながっていますので、流れの中で全部説明しきった後にもう一度結論を書いたということですので、それ以上の他意はないですけれども、結論部分になっている、あるいは「先取りすると」と結論を先に書いているという意味では強調していることは間違いありません。当然、皆さんもそこを見出しに取ったでしょうから、それは強調していると思って頂いて結構です。そのうえで、次回会合以降の話は、これは当然政策委員会で話すべき話であって、私が今どうだと申し上げるべきではないし、実際この後状況がどう変わるかにもよりますけれども、正直個人的にはですね、慎重に考えるべき状況にあるというふうには思っています。そのうえで、総裁とどうかという話については、一問目、二問目でしたっけ、にお答えしたことを繰り返すのがよいと思うのですけれども、総裁会見でもですね、当然ですけれども、「見通しに沿って展開していくのであれば」という条件をつけたうえでお話を申し上げているわけです。いわゆる政策反応関数が条件付きであることは、9 人のボードメンバーが全員一致で決めていることですから、そこについての違いはないわけです。

§13Shinichi Uchida

そのうえで、総裁会見より後の段階で、今回の市場の急激な変動が起きているわけですから、そのことをその政策反応 [関数]に入れれば、当然のことながらより慎重に考える必要があるということが起きているということですので、総裁と私の間に考えの違いがあるということではなくて、状況が変化したということだとご理解頂ければと思います。

§14Question

先ほど、副総裁、日銀の政策変更で円安修正が進んだとあった。それで他国の株価の指数と比べると日本の変動が大きかったということですけれども、円キャリー取引の影響があったとかですね、いろいろ市場で言われていますが、その点どのようなメカニズムでですね、日本の株価が他国と比べて下がったのか、もう少し詳しく教えてくださいというのが一点。あと講演の中で、7月31日に指摘されたその上振れのリスクが小さくなっているということですけれども、今の段階でその金利のパスに変化があったと考えてらっしゃるのか、その点について教えてください。

§15Shinichi Uchida

ポジションについてはですね、円安方向で大きなポジションが積み上がっていたことは事実であって、これは皆さんもご存じの通りであって、それが巻き戻された。そのきっかけはもちろん、日本銀行の政策と、それから当然アメリカの利下げ見通しが出てきたこと、その他いろいろあるわけですけれども、一つだけの原因ではありませんが、ポジションが大きかったからそれだけ大きく反応が出たということは事実だろうというふうに思います。そのうえで、円安修正、すみません為替自体はもちろん日々の動きにコメントすることは適切ではないと思いますし、いつも言っていることですが、為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要だというふうに思います。そのうえで申し上げますが、見通しとの関係というご質問ですけど、見通しとの関係ではですね、円安が修正されたことが、ある種懸念していた輸入物価(注)の上昇による上振れ、消費者物価の上振れリスクをその分だけ減らした、少なくしたということは事実だと思います。ただ当然、為替は動いていくものですので、それ自体が経済・物価見通しあるいは物価のリスク、更には確度といったものをですね、どう変えていくのかは、まだ市場が動いている過程にあるわけですから、この段階で確定的なことは言いづらいということです。

§16Shinichi Uchida

現時点だけ、その変化だけをとらえれば、書いた通り、その分だけ上振れリスクは小さくなったと言えると思います。もともと、これは前年比でみるか、流れでみるかによって違うのですけれども、流れでみると、ドルベースというか、契約通貨ベースも一緒に上がってるんですけど、少なくとも前年比でみる限りは、契約通貨ベースはほぼゼロですので、今 9.5%でしたっけ、ちょっと間違っているかもしれませんが、輸入物価が上がっているものは、専らこの間の円安が原因ということです。その部分が修正されれば、その分だけ、そのリスクは減るというのは、これは計算上その通りですので、そういったことが起きたということもですね、当然ながら他の条件を一定とすれば、パスには影響するということになると思います。

§17Question

講演の中で市場の変動の結果として、当然、金利のパスは変わってくるということを言及されていますけれども、今回の変動を受けて、 7月末に描いていたパスに比べて、今回は変動を受けて、今後のあり方のパスというのは比較的ゆっくりになっていくというとらえ方でよろしいのかということが一点と、あとビハインド・ザ・カーブに陥ることは少ないでしょうということを書かれているのですが、以前の総裁の会見では金利の引き上げが遅れると、後に大きな幅で引き上げが強いられる可能性があってということで、ビハインド・ザ・カーブに懸念を示されているかと思うのですけど、その認識の違いについてどのように感じているか。

§18Shinichi Uchida

前者についてはですね、書いていることは割と正確に書いたつもりなのですけれども、変動そのものというよりは変動の結果として、見通し、上下のリスク、それから確度、こういったものが変われば、それは当たり前のことですけれども、金利のパスが変わってくるということです。現時点でですね、これを評価することは難しいです。難しいという意味は、これは最初から二番目の質問にお答えした通りですが、現にまだ不安定な状況にあるわけです。先ほどの為替の質問もそうですし、株価の質問もそうですけれども、株価も為替相場も不安定な状態にあるので、これが落ち着いていく中でですね、いろんな評価をしていかなければいけない。逆にそういう不安定な状況であるときには、当然リスクを考えないといけないわけです。そのことが二番目の質問につながってくるわけであって、そういう状況でも、ちょっと例えが良くないかもしれませんけど、今回の欧米のようなケースだったら、これは利上げせざるを得ないのですね、危なくても。1 回 75[bps]上げたり、毎回75[bps]上げてるようなケースだと、これはやらないといけないのですけど、われわれそういう状況には全くないわけです。つまり時期を選べるわけですね。

§19Shinichi Uchida

ですから総裁の申し上げていることと基本的に同じことを言っているのですけれども、一定のペースで上げていかないと、ビハインド・ザ・カーブになるわけではないので、当然ですけど、待てば後の方が重たくなるのはそれはそうだけれども、それがすごく急速な利上げにつながってしまうようなパスを想定されてる方は、もともと市場にはおられないと思うんですね。リスクがあることですから、必ずそうなるわけじゃないですけど。そういうことなので、ある意味緩やかなパスで利上げをしていくことができる状態っていうのは、時期を選べるので、いろんな状況によって、これは一つのアドバンテージなわけです。そういう意味でですね、条件が満たされていくのであれば、ゆっくりとではあるのですけど、上げていく必要があるということをですね、総裁会見では申し上げたわけであり、全く同じ論理の中で、不安定な状況のときに利上げをするということはないということは申し上げられるわけです。当然その不安定な状況がいつ解消するか分かりませんし、不安定な状況がもう解消しましたっていうふうに 100%晴れるということもないわけですから、そのリスクを感じながら政策運営をしていかなければいけない、そういうことを考えれば、何度も言いますが私の個人としてはですね、利上げについて慎重に考えるべき要素が生じたというふうに言わざるを得ないと思っているということです。

§20Question

関連して二点お願い致します。今もおっしゃって頂いたのですが、これまでよりも、より慎重に考えるべき要素が生じているということなのですけれども、これは言い換えればですね、国際金融市場の乱高下っていうものが経済の下振れのリスクになっているというふうにとらえ始めているということなのでしょうか。あともう一点がですね、今日もそうなのですけれども、政策変更やですね情報発信によってこのマーケットが大きく反応するっていうことが続いています。この状況は望ましいことではないと思ってるんですけれども、副総裁のお考えと、もしこれがやはり望ましくないのであれば、何か改善すべき点があるのかどうか、その辺りの考えをお願いします。

§21Shinichi Uchida

下振れについてはですね、少なくとも下振れリスクであるのは明白だと思います。言うまでもないことですね、それは。株価の影響というのはいくつかあるんですけれども、まず大前提としてですね、株価は基本的にはファンダメンタルズがあるので、それが反映されるはずだというのがあるので、どこかではきちんと解消されるはずだと思います。そのことを大前提としてお話ししますけれども、急激に変動することは、もちろん市場だからやはりあるわけで、そのことはですね、これがある種のネガティブフィードバックにはなり得るわけです。その具体例としては、これも書いていますし、よく言われることですが、一つは、今、企業の投資はきわめて積極的なので、例えば今日の時点でどうかと言われれば、これが投資行動に影響するとまでは思いませんけれども、少なくとも投資行動っていうのは、一つのルートとしてリスクとして考える必要がある。もう一つは、資産効果ですね。資産効果による個人消費への影響というのは、これはあり得て、日本の場合には資産効果がどこまで大きいかというのはいつも議論される、特に株については議論されることですけれども、この間ですね、個人消費は底堅いというのが私どもの判断ですが、決して強いわけでもないわけです。

§22Shinichi Uchida

これは、サービスはほぼコロナ前に戻ったけれども、価格が上がっている日用品・食料品、大事なものですね、そういったものが低価格志向になっている。これのもう一方の方の、よく二極化と皆さん書かれている、調子が良い方のですね、高額品が売れているって話は資産効果と無縁ではない可能性がありますので、当然のことながらこれは下振れリスクになり得るということだと思います。実際に下振れるのかどうかはですね、それはこれがどのくらい長く続くのか、どの程度の調整になるのかによりますし、当然そこはですね、慎重に見極めるべき要素だって言ったものの一つ大きな要因になってくるということだと思います。マーケットの反応についてはですね、確かに大き過ぎる反応はよろしくないというふうに思いますし、私どももコミュニケーションには注意していかなければいけないというふうに思います。重ねて言いますけれども、中央銀行のコミュニケーションは、いわゆる政策反応の考え方、政策反応関数を示すということと、これは大きく変わってはいけないので、基本的には分かりやすくするために排除というか、省略されてる部分はやっぱりあるので、その中でのニュアンスの違いはどうしても出てきます。これは日本銀行に限らず出てきてしまいますけれども、大きな考え方はきちんと示していく必要があると思いますし、そこはこの間、ぶれてないというふうには思います。

§23Shinichi Uchida

ただそこに代入するというか、われわれがどう経済・物価をみているのか、それから市場がどうみているのかっていうところのですね、ギャップというのは常にこの間もありましたし、今回のような大きな変動のときには、そこは大きく出てくるわけであって、そのことがですね、政策が読みにくいとかそういったことにつながっていくのだとすればですね、そこは更なる努力が必要だというふうに思います。もう一つですね、そこがなかなかきちんと伝わらない理由っていうのが、先ほど申し上げたパスが緩いからっていう面はやっぱりあるんですね。つまり、時期を選べるっていうことはイコール、人によって、今回の方が、次回の方が、前の回の方がいいってことが選べるわけです。また悪い例を申し上げて申し訳ないけど、アメリカが 75[bps]とか連続で上げている時に、次回上げるわけないということには絶対ならないわけですよ。50[bps]か 75[bps]かは分からないけど。われわれのようなケースっていうのは、もっとずっと緩いペースで考えているので、今回絶対やらないとおかしいよねっていう話を市場の人がみんな納得するっていうことにはどうしてもならないんですよ。そういう意味で分かりにくいということはあります。ただ、逆に申し上げるとですね、そういう話なので、そのことによって大きく反応するほどのことでは本当はないんです。

§24Shinichi Uchida

本当はと申し上げたのは、[反応は]あるんですけど、市場ですから当然あるのですが、今回のケースについても、ちょっと正確には覚えてないのですけど、 10月まで[の利上げ]だったら確か100%織り込まれていたわけであって、その違いなわけですよね。ですから、そのことによってかたちが大きく変わるということは本来ないはずなんですけれども、われわれの政策反応関数を象徴するのではないかとか、いろいろなことがそこからプラスとして読み込まれていくということは、これ実際にはあるので、そういったところはですね、より丁寧にその部分を説明していくという努力は必要だなというふうに思っています。

§25Question

先ほど講演の方で道南経済の現状と展望について講演して頂いたのですけれども、北海道全体のそういった課題であったりとか、逆に期待していらっしゃる、そういった要素があれば何かお伝え頂ければと思います。

§26Shinichi Uchida

ちゃんと勉強してないので間違ったことを言うかもしれないんですけれども、北海道に限らずどこもそうなんですが、地域経済をどうやって活性化していくのか、あるいは後ろ向きの言い方をすると、どう維持していくのかということは、各地域にとって喫緊の課題になっていると私は認識しています。今日の講演、もちろんそこが注目されるような状況ではなかったので報道されているわけではないですが、私自身は、人口動態の図表を出して説明したところにはそれなりの思い入れを持って書いています。例えば、これは中核都市とその周り、あるいは北海道の場合には広いですから、中核都市がないような地域についてですね。人に余裕があるときには、儲からないけど何とかしようというかたちで維持されていたサービスがあるわけですけれども、そういったものが本当に人が足りなくなってくると、普通に市場メカニズムでは供給されなくなりますので、そういったときにどういうインフラ、都市のつくり方、周辺のつくり方、そういったことを含めて考えることがですね、あの北海道地図でみると、みんな一見一都道府県だと思っていますけど、ものすごく大きいわけであって、そういうことを考える必要があると、課題の方を先に言っちゃいましたけど。一方で魅力は、それは間違いなくこれだけの自然がある地域はないということですね。

§27Shinichi Uchida

先ほど申し上げたように、さっきの行きたい街のランキングの上から四つのうち、京都を除くと全部北海道なのですよね。みんな北海道には行きたいわけで、行きたいを住みたいに変えるかどうかが、北海道の最大のチャンスだと私は思います。それができれば、これからはリモートワークとかいろんなことを含めて、住みたいところで仕事ができるようになっていくので、北海道にはものすごく大きなチャンスだと思いますけどね。それができるだけの自然と食べ物と土地と、いろんな意味での魅力が十分に備えられていると思いますので、北海道の中ではちょっと札幌に集中しているという問題も別途ありますから、そうじゃない地域も含めて、私はすごく期待の持てる地域のように思いますけれども。

§28Question

繰り返しで恐縮なのですが、市場変動が下振れリスクになることは明白ということなのですけれども、そのうえで確認させて頂きたいのは、そうした市場変動を受けても、経済・物価が日銀の見通しに沿っているという判断になれば、今後も淡々と利上げを進めていく方針に、これ自体は変わりはないということでよろしいのか。つまり、市場が大きく変動することをもって利上げを躊躇するということにならないということで、確認ですが、よろしいのかお願いします。

§29Shinichi Uchida

これは、講演の方が正確に書いているので、その通りに言いたいと思いますけど、市場の変動の結果として、見通し、上下のリスク、見通しの確度が変われば、パスは変わってくるということですので、当然そこに影響があります。それが一つです。もう一つ、そのうえでなんですけれども、「そのうえで」と書いてないから読みづらいかもしれませんが、大きなパスはそれで決まる。そのうえで、わざわざ不安定な時期にやらなくてもいいくらい、ビハインド・ザ・カーブになるリスクは小さくて、緩やかなパスが想定、もともとされているのであると書いているわけであるので、そういう意味で、今の答えは、正確に申し上げると、リスク、確度、もちろん見通し自体が変われば当然ですけど、そういったものに影響すれば変わるし、そこについて一定程度留保が残るとしても、わざわざ危ない時にやることはないという意味では、今申し上げた要素が確実に変わっていなくても、それは当然要素になり得るということです。

§30Shinichi Uchida

従って、条件が満たせばというのは、その条件を満たせばというのは何かっていうことを真剣に毎回議論しているわけであり、皆さんにご説明しているわけなので、当然ながら、「こうであればこうです」というふうに一言で答えられるくらいであればですね、それは決定会合であれだけ議論を重ねる意味はないわけだから、それについては、一言で答えるのは難しいけれど、あえてかたちを言えば、今言った、二つの要素が市場変動との関係ではあるということですね。

§31Question

なかなか難しいと思うのですが、この市場の変動の影響を見極めるにはどれくらいの時間がかかりそうなのか、過去の経験から踏まえて、どうご覧になっているのかという点と、やっぱり、特に海外からみると、日銀の政策反応関数は市場なんじゃないかとみえてしまうと思います。先週の利上げもやはり円安のリスクを意識したという要素が強く出ているように思いますし、今日は逆に大きなマーケットの変動があったから、ちょっとハト派に転じたのではないかとマーケットは受け止めていると思うので、それに対する反論があればお願いします。

§32Shinichi Uchida

見極めがどのくらいになるのかは、正直分からないし、皆分からないから、こういうことになっているのだと思います。それから、これも重ねて言いますが、大丈夫だろうと思っても、100%ということはないので、当然のことながら、慎重に見極めていきたいというふうに思います。「見極める」という言葉が、もしかするとはっきり 100%分かるという意味で、日本語としてとらえられているかもしれませんが、金融政策、あらゆる政策そうですけれども、完全に分かるということはどっちにしてもないわけです。非常に大きな変動とか変化が起きている、あるいはもしかすると、そもそも今回起きた理由は、アメリカの景気後退懸念が、高々というと問題かもしれませんが、単月のいくつかの指標の中で急にクローズアップされたわけで、いろんなルールとかの中でですね、やっぱりそういうふうに市場というのは急に変わることはあるわけだし、そのことは、みんな 100%大丈夫だとソフトランディングだと思っているわけでもないし、100%駄目だと思っているわけでもないから、ちょっとしたことで動くわけです。

§33Shinichi Uchida

当然のことながら、私はソフトランディングすると思っているのですけれど、100[%]で思っているわけじゃないから、そこは見極めるといっても、ある程度のリスクの中で考えなきゃいけないし、リスクが不安定なことが起きた後は当然慎重に見極めていく、見極めていくとまた言っちゃいましたけども、点検していく必要があると思います。それから市場については、一つ前の質問でお答えした通りです。市場の変動の結果として、見通しとか、リスク、あるいは確度が変われば変わりますし、先ほど申し上げた通り、市場が大きく変動している中にあって、ある特定の時期に利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥るようなパスにわれわれはいないので、当然のことながら、それは配慮しながらやっていけるし、そういう過程にわれわれはあるということですので、当然われわれの目的は物価の安定であり、当たり前ですが、そのことを通じて国民経済の健全な発展ということですが、景気に配慮しながらやっていくということになります。

§34Question

先ほどの会見の中で、年内の利上げに対する質問に対して、副総裁はこれまでより慎重に考えるべき要素が出てきたというふうにおっしゃっていたと思います。先行きを見れば、FRBの利下げですとかアメリカの大統領選などですね、金融市場に大きな影響を与えるイベントが既に秋に見込まれているわけですけれども、こうしたものが、更に不確実性を高めるというふうに考えておられますでしょうか。あともう一点がですね、7月の決定会合の追加利上げによって円高が進みましたけれども、円キャリー取引の巻き戻しっていうのは、その時点である程度想定されていたかと思います。そうすると、株価が下がるということもある程度は想定されていたかと思うのですけれども、どの程度想定されていたのかというのと、おっしゃっていたアメリカの景気後退の懸念、経済指標のところの話は想定外だったということでよろしいでしょうか。

§35Shinichi Uchida

不確実性の定義によるのですが、何が起こるか分かっていることについては、当然いろんなケースがあり得るよねということは頭の中で想定しますけども、その結果何が起こるかまでは分からないので、そのことも含めて、リスクマネジメント・アプローチと呼んでいますけども、上下いろんなリスクがあることを勘案して、ちょうどいいところに政策金利を置いていくというのが基本的な考え方なので、この後リスクはありますかということについて、それは常にあるし、今もまさにおっしゃった通り、ネームアウトできる「これとこれとこれ」というやつは分かっているリスクの範疇ですよね。そうじゃないことも起きるわけですよ。ですからそこまで考えたときに、上下のリスクの中で、この辺に置いておく方が、両方リスクを置きますからね、両方のリスクにとってちょうど良いのかということを考えながらやるというのは政策、実践的な政策なので、それについては意識しているのかと言われれば、当然意識していますし、予想しているのかと言えば、それは予想できないことがいっぱいあるというのが答えだろうと思います。

§36Shinichi Uchida

それから、どの程度ポジションが作られる、あるいは作られているのかというのは、もちろんそれはいろんな計算があるし、われわれ市場のインテリジェンスもやっていますので当然いろんなことは分かっていますけれども、そのうえでですね、どのぐらいの大きな反応があるのかは、これは完全に読み込むことは今の技術では難しいと思います。これはどんな中央銀行にとっても、どんな専門家にとっても難しいというふうに思います。そういう意味では、個々のリスクはある程度あるということを前提に、今回のちっちゃい、小さいというと語弊があるかもしれませんが、0.15[%]の変化ですけれども、この間、大規模な金融緩和から抜け出してきているわけです。役割を終えたということをやっているわけですから、その中でですね、どこかで大きく反応されてしまうということは、やっぱり一つのリスクとしては考えながら政策を進めないといけないということだと思います。そういう意味でも、慎重にいろんなことを考えていくべき材料が、今、市場で起きているということかな、というふうには思います。

§37Question

ちょっと中長期の話もお伺いしたいのですけれども、副総裁、今日図表 13 の方で短期の実質金利というのを参考としてお見せして頂いているわけですけど、これをみるとやはり改めてですね、名目金利がいかに低いかというところと、あと数回、金利を引き上げていく余地はあるという感じがするのですけど、そういった、やっぱりまだ、その中長期でもちろんマーケット今不安定な状態ですけど、それが落ち着いていって、アウトルック、見通し通りに経済・物価がいくということであれば、あと数回利上げもできるというふうに考えてらっしゃるのか、あとその中立金利について、今の時点で、内田さんご自身はどういうふうに考えているか、お願いします。

§38Shinichi Uchida

同じことの質問だと思うのですけれども、根としては。中立金利の水準はいつもいろんな推計をお見せしています。お見せしておいて、私の講演でも使ったことありまして申し訳ないのですけれども、今出しているのは確か- 1[%]~0.5[%]っていうレンジを出していると思いますが、正直申し上げてそこまで広いレンジで、かつそれぞれにエラーバンドがあることを考えると、実践的には使えないわけです。これはどの中央銀行もそうで、実際には中立金利というのは上げていく過程で、経済と物価の反応をみながら確認していくものなわけです。それは今欧米で r*はどうなのかということが議論されているのは、上げてみたけど、アメリカの場合ですけども、思ったより[経済が]締まらないよねっていうことで、 r*がもっと高いのじゃないかっていう議論になるわけであって、そのことが今回の、逆に本当に r*が高ければ、後退懸念なんてないだろうって話になるはずなのでいろんな議論になるわけです。要するに、あそこまで上げた後ですらよく分からない概念なわけですから、概念上はそこが引き締めと緩和を分ける分水嶺ですから、きわめて重要な基準なのですけれども、実際の運営上はですね、それほどはっきりしたかたちで今いくらですというふうに思ってこういう政策をやりましたって言える中央銀行って多分ないというふうに私は思います。

§39Shinichi Uchida

今の段階でそれをわれわれが想定しておくレベルにまだいませんので、何か特定の金利水準というものを意識しているということはありません。これは少し先の話ですし、今回は 0.15[%]という幅の利上げを行ったわけですから、その中でですね、いろんな反応もみながら、逆に言えばそういうことの反応をみながら考えていくだけの時間的余裕のあるパスが念頭に置かれているということかなというふうに思います。そういう意味では、今念頭にあるのは、当面続けるということが、これは私の考えとしてはそうだということですし、常識的な考え方とは思いますけども、それ以外の何か特定の金利水準を頭に置きながら、何かを考えているという状況では今はないということです。(注)会見では輸出物価と発言しましたが、正しくは輸入物価です。以上