金融政策決定会合議事要旨(5月19、20日開催分)
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2011.6.17日本銀行 政策委員会金融政策決定会合議事要旨(2011年5月19、20日開催分) 本議事要旨は、日本銀行法第 20 条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2011年6月13、14日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。 公表時間6月17日(金) 8 時50 分 本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合(引用は含まれません)は、予め日本銀行政策委員会室までご相談ください。引用・転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。 1(開催要領)1.開催日時:2011年5月19日(14:00~16:19)5月20日( 9:00~12:09)2.場所:日本銀行本店3.出席委員:議長白川方明(総裁)山口廣秀(副総裁)西村淸彦(〃)野田忠男(審議委員)中村清次(〃)亀崎英敏(〃)宮尾龍蔵(〃)森本宜久(〃)白井早由里(〃)4.政府からの出席者:財務省木下康司大臣官房総括審議官(19日)櫻井充財務副大臣(20日)内閣府梅溪健児政策統括官(経済財政運営担当)(執行部からの報告者)理事山本謙三理事雨宮正佳理事木下信行企画局長門間一夫企画局政策企画課長加藤毅金融市場局長外山晴之調査統計局長前田栄治調査統計局経済調査課長関根敏隆国際局長大野英昭(事務局)政策委員会室長飯野裕二政策委員会室企画役橘朋廣企画局企画役峯岸誠企画局企画役一上響
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2Ⅰ.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要1.最近の金融市場調節の運営実績金融市場調節は、前回会合(4月28日)で決定された方針 1のもとで、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を行い、金融市場の安定確保に万全を期した。こうした中、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.06%台で推移した。2.金融・為替市場動向短期金融市場は、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、落ち着いて推移している。GCレポレートは、 0.1%近傍で推移している。ターム物金利をみると、短国レートは、1年物まで含めて、0.1%台前半で、幾分弱含んで推移している。長めのターム物の銀行間取引金利は、横ばい圏内で推移している。長期金利は、米国金利が低下したほか、国債需給の悪化懸念が幾分後退していることもあって、低下しており、足もとでは 1.1%台前半で推移している。株価は、企業の決算発表が概ね市場予想の範囲内となっていることなどから、総じてみれば横ばい圏内の動きとなっており、最近では、日経平均株価は9千円台半ばで推移している。為替市場をみると、円の対米ドル相場は、米国金利が低下するもとで、幾分円高方向の動きとなり、足もとでは、81 円台で推移している。3.海外金融経済情勢世界経済は、回復を続けている。米国経済は、回復を続けている。
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輸出が新興国向けを中心に増加を続け、設備投資も緩やかに増加している。個人消費も、財政刺激策の効果などを受けて堅調に推移しているが、バランスシート問題は引き続き家計支出の重石となって作用している。住宅投資は、なお低水準で推移しており、住宅価格は軟調な動きとなっている。物
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1 「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」
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3価面では、財市場や労働市場の緩和的な需給環境が物価押し下げ圧力として作用し続ける中、エネルギーと食品を除いたベースの消費者物価の上昇テンポは緩やかなものにとどまっているが、既往の国際商品市況上昇の影響から、総合ベースの消費者物価の前年比プラス幅は拡大している。欧州経済をみると、ユーロエリア経済は、国ごとのばらつきを伴いながらも、全体としてみれば、緩やかに回復している。輸出が新興国向けを中心に増加を続けているほか、個人消費や民間設備投資も緩やかに増加している。物価面をみると、緩和的な需給環境や賃金の伸び鈍化が、なお物価押し下げ圧力として作用しているが、既往のユーロ安や国際商品市況上昇の影響を受けて、総合ベースの消費者物価の前年比プラス幅は拡大している。この間、英国経済も、緩やかに回復している。アジア経済をみると、中国経済は、高成長を続けている。輸出と生産が増加を続けているほか、個人消費も、家計の所得水準の向上などを背景に、堅調に推移している。固定資産投資も、高い伸びを続けている。NIEs、ASEAN経済も、内外需ともに増加基調を続ける中、回復を続けている。この間、インド経済も、高めの成長を続けている。物価面をみると、これらの国・地域の多くで、国際商品市況の上昇を受けた食料品・原材料価格の上昇や労働や資本など生産要素の稼働水準の高まりから、物価上昇圧力が強まっている。
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海外の金融資本市場をみると、米欧の株価は、良好な企業決算が好感されたものの、一部経済指標が市場予想比弱めであったほか、欧州周縁国のソブリン問題の悪化懸念や原油価格の下落に伴うエネルギー株の下落が影響し、前回会合対比では小幅下落した。長期金利については、米国の金融緩和継続がFOMCで確認されたことや、ECBの早期追加利上げ観測が後退したことを受けて、前回会合対比幾分低下した。欧州周縁国については、国債利回りの対独スプレッドが既往最高水準で高止まるなど、ソブリン問題への市場の懸念が続いている。4.国内金融経済情勢(1)実体経済輸出は、震災後、大幅に減少している。先行きについては、当面
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4は低水準で推移するとみられるものの、海外経済が改善を続けるもとで、供給面からの制約が和らぐにつれ、増加に転じるとみられる。公共投資は、減少幅が縮小しつつある。先行きについては、被災した社会資本の復旧などから、徐々に増加していくとみられる。国内民間需要をみると、設備投資は、震災後、生産活動の低下やマインド悪化の影響から、弱めの動きとなっている。先行きについては、被災した設備の修復もあって、徐々に増加していくとみられる。雇用・所得環境は、震災の影響もあって、引き続き厳しい状況にある。個人消費は、供給制約による販売減少やマインドの悪化による消費抑制傾向がみられる。先行きについては、生産活動が回復するにつれて、家計のマインドの改善もあって、持ち直していくとみられる。住宅投資は震災の影響により弱めとなっている。先行きは、供給制約の緩和や被災住宅の再建などから、徐々に増加していくと予想される。生産は、サプライチェーンにおける障害など供給面の制約を背景に、大幅に減少している。先行きについては、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。物価面をみると、国際商品市況は、上昇してきたが、このところ反落している。国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。
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先行きについても、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。先行きは、小幅のプラスに転じていくとみられる。(2)金融環境わが国の金融環境は、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある。資金供
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5給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いているほか、社債市場では、震災後、発行を見送る動きが一時みられたが、このところ徐々に発行が再開され始めている。資金需要面をみると、このところ運転資金需要が増加する動きがみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は減少幅が縮小している。社債の残高は前年を上回っており、CPの残高は減少幅が縮小傾向にある。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にあるが、震災後、中小企業を中心に一部で資金繰りが厳しくなったとする先がみられている。この間、マネーストックは、前年比2%台後半の伸びとなっている。Ⅱ.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要1.経済情勢委員は、海外の金融経済情勢について議論を行い、海外経済は、新興国・資源国の高成長に牽引されるかたちで回復を続けており、先行きも回復を続けていくとの見方を共有した。米国経済について、委員は、回復を続けているとの認識を共有した。個人消費について、委員は、追加財政刺激策や雇用者数の増加、株価上昇による資産効果などを挙げ、堅調に推移しているとの見方を示した。ある委員は、好調な収益を背景に設備投資も増加していると述べた。複数の委員は、新興国向けを中心に輸出も好調に推移しているとの見方を示した。
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更に、複数の委員は、緩和的な金融環境が続いていることも景気を全体として下支えしていると述べた。もっとも、何人かの委員は、1~3月期の成長率が減速したことについて言及し、ガソリン価格の上昇が実質所得の減少を通じて個人消費に影響を与えているとの見方を示した。何人かの委員は、労働市場は改善しているものの、そのペースは依然として緩慢であるとの見方を示した。多くの委員は、バランスシート調整の重石から米国経済が上に弾みにくく、下に振れやすい状態が続いていることが改めて確認されているとの見解を示しつつ、こうした動きは、これまで想定していた米国経済の先行きの見方に対して大きな変更を迫るものではないとの認識を示した。ある委員は、一部経済指標の事前予想対比下振れを受けて、米国経済の先行きに関する市場の見方がこのところ再び悲観的な方向に振れていると指摘したうえで、米
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6国経済の下振れリスクは小さくないとの見方を示した。ユーロエリア経済について、委員は、全体としては緩やかに回復しているものの、輸出に牽引され好調なドイツなどの中心国とソブリン問題を抱えた周縁国との格差が大きい状態にあるとの認識を共有した。ある委員は、ギリシャでは、緊縮財政による景気の悪化が、税収減を通じて、結局は財政赤字の更なる拡大につながり、これに伴う市場の信認低下が市場金利の上昇をもたらすという悪循環に直面していると指摘した。何人かの委員は、これまでのところ市場の反応は、ギリシャ、アイルランドおよびポルトガル以外の国に対しては比較的冷静であるとの評価を示した。しかし、別の何人かの委員は、ギリシャの債務再編を巡る市場の思惑を受けて、ソブリン問題に対する懸念が再び高まっており、今後、国際金融資本市場全体の不安定化につながることはないか、注視していく必要があるとの見解を示した。とくに、複数の委員は、ソブリン問題については、短期的な解決策は見出し難いことに懸念を示した。この間、複数の委員は、ユーロエリアではインフレ率が高まっており、ECBはこれまでの金融緩和を修正する動きを進めていることを指摘した。ある委員は、ソブリン問題などを背景とした域内の格差が、ユーロエリア全体としての金融政策を難しくする面があるのではないかと述べた。中国経済について、委員は高成長が続いているとの認識で一致した。
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複数の委員は、固定資産投資、小売売上高など内需が好調であり、輸出も高い伸びを示していると指摘した。大方の委員は、5月に預金準備率が再び引き上げられるなど、金融引き締め方向への動きが続いている点について言及した。複数の委員は、これまでの金融引き締めの効果などから、中国経済が目先幾分鈍化する可能性を指摘したが、多くの委員は、景気の過熱感からインフレ圧力が高まった状態にあり、金融政策の対応が遅れ気味になっているのではないかとの懸念を示した。また、多くの委員は、高成長が続く中で消費者物価の伸び率がかなり高めとなっている点に言及した。このうちのある委員は、消費者物価上昇の中身が、これまでの食料品から住居費などその他のサービスに拡がっており、こうした動きの背景として賃金の上昇傾向を指摘した。この間、複数の委員は、中央政府が、インフレ圧力抑制のため、電力料金の上昇を直接的に統制していることに対して、電力供給会社の収益を圧迫し、設備投資やメンテナンス不足につながっている面があるとしたうえで、この夏
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7場に電力不足問題が顕在化し、これが経済活動を抑制するリスクを指摘した。先行きについて、ある委員は、インフレ圧力が更に高まるリスクを指摘した。複数の委員は、金融政策の対応の遅れが、短期的には景気の上振れにつながったとしても、やや長い目でみれば、景気の振幅が拡大し、結果として持続的成長を損なう可能性には、注意を払っていく必要があるとの見解を示した。NIEs、ASEAN経済について、複数の委員は、内外需とも好調であり回復を続けているが、一方でインフレ圧力も高まった状態にあるとの認識を示した。何人かの委員は、日本の震災が海外経済に及ぼす影響についても言及し、製造業に占める日系企業のウェイトが高い国々では、日本からの部品などの輸入が減少し、これが一部の生産活動を下押ししている模様であり、こうした動きについては、今後も注意してみていく必要があるとの見解を示した。この間、委員は、国際商品市況について議論を行い、米国景気の先行きに対する見方が慎重化していることや、そのことを受けた投資家のリスク許容姿勢の変化などを背景に、このところ、一旦、調整局面にあるとの見方を共有した。複数の委員は、こうした調整には、一部の商品市場において、先物取引の証拠金引き上げが投資ポジションの巻き戻しを誘発したことも影響している模様であると指摘した。
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もっとも、先行きの商品市況については、多くの委員が、調整は一時的なものであり、世界経済が新興国を中心に高めの成長を続けるもとにおいては、商品市況についても、緩やかな上昇トレンドは変わらないのではないかとの見方を示した。複数の委員は、商品市況の調整が続いた場合、そのことによるインフレ圧力の後退は、世界経済の持続的成長に資する面もあるとの見方を示した。こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。委員は、景気の現状について、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にあるとの認識で一致した。先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられるとの見方を共有した。こうした点については、委員は、展望レポートで示した中心的な見通しに沿ったものであるとの認識を示した。
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8景気の現状について、委員は、前回会合後に公表された経済指標によって震災直後の景気の落ち込みがきわめて大きなものであったことが確認されたとの見方を共有した。この点、多くの委員は、1~3月期の実質GDP成長率が年率-3.7%と、大幅に低下したことに言及し、その背景として、震災直後に、供給制約から生産が大幅に減少し、その結果、輸出が大きく落ち込み、在庫が取り崩されたことを指摘した。個人消費についても、多くの委員は、3月に大きく減少したことを指摘した。多くの委員は、震災後に調査されたいくつかの指標において、企業や家計のマインドの大幅な悪化が確認されており、この点も、供給面からの制約に加えて、国内民間需要の下押し要因となっているとの見方を示した。もっとも、委員は、最近の経済指標や企業からのヒアリング情報などを踏まえれば、経済活動の水準はなお低いながらも、震災直後の大幅な落ち込みからは徐々に改善していく兆しがみられるとの見方を共有した。何人かの委員は、生産予測指数やヒアリング情報を踏まえて評価すると、生産活動は、先行き、その水準を徐々に切り上げていくとみられると指摘した。また、何人かの委員は、機械投資の先行指標とみられる機械受注について、3月の実績および4~6月の見通しが増加している点を指摘した。
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この点、ある委員は、もともと振れの大きい統計であるうえ、震災の影響による不透明感の高まりから見込み発注が発生している可能性もあるため、ある程度割り引いて評価する必要があると付け加えた。更に、多くの委員は、最近の個人消費の動きについて、4月入り後、百貨店や外食産業などの売上高が、震災直後の急減少からはある程度回復している模様であるとの見方を示した。もっとも、複数の委員は、消費の水準は、震災前の水準との対比でみれば依然として低いと指摘した。また、ある委員は、旅行などサービス関連消費の回復のペースは依然として不確実性が高いとの見方を示した。こうした中、家計マインドの動きについて、多くの委員が、4月末を調査時点とする景気ウォッチャー調査で、現状判断が下げ止まり、先行きについての期待も改善していると述べた。企業マインドについても、複数の委員が、いくつかの指標で、このところ下げ止まりの動きがみられると指摘した。この間、何人かの委員は、マインドの動きについて、短期的な委縮という面だけではなく、将来の所得・成長見通しやそれに関する不確実性など、中長期的な観点も重要な点であるとの見解を示した。
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9委員は、サプライチェーンの障害や電力供給など、供給面での制約が解消していくタイミングについても議論を行った。サプライチェーンの障害について、委員は、依然として生産活動を制約しているが、徐々に改善方向に向かっているとの見方を示した。多くの委員は、元々の企業の見込み自体が相当に保守的だった可能性もあり、この点についてはある程度割り引いて考える必要があるものの、一頃の見通しに比べて、生産ラインの再開時期や部品等の供給体制が正常化する時期の想定を前倒しする動きもみられているとの見方を示した。更に、需要がピークを迎える夏場の電力供給について、多くの委員は、電力会社の供給能力の増強の動きに加えて、企業サイドでも様々な工夫を目指す動きが進んでいることを踏まえると、経済活動の制約要因となる程度は、和らいでいる可能性を指摘した。以上の点を踏まえ、複数の委員は、このところ、供給制約の解消に関する不確実性は低下しているとの見方を示した。景気の先行きのリスクについて、委員は、展望レポート時点から大きな変化はなく、震災の影響を中心に、当面、下振れリスクを意識する必要があるとの認識を共有した。何人かの委員は、原子力発電所の事故処理に関する不確実性などを考慮すれば、依然としてマインドに関する下振れリスクが残っているとの見方を示した。
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また、ある委員は、震災直後の落ち込みから回復に向かう動きは確認されているが、重要な点はこうしたモメンタムが年度後半以降も維持できるかどうかであるとしたうえで、雇用・所得面を含めて景気の下押し圧力は潜在的に大きく、景気は、震災前に想定していた経路よりも水準でみて下方にシフトした緩やかな回復経路を辿る可能性が依然として高いと述べた。複数の委員は、より長い目でみた場合、震災の影響によって、わが国製品の世界的なシェアが低下したり、生産拠点や部材調達先の海外シフトが加速するリスクを指摘した。この間、何人かの委員は、定期点検後の原子力発電所の再稼働の問題を考えると、やや長い目でみて、電力の安定的供給についての不確実性はむしろ増しているのではないかとの見方を示した。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられるとの認識を共有した。その背景として、複数の委員は、マクロ的な需給バランスが基調的に改善していくことに加えて、既往の商品市況上昇の影響がラグをもって波及していくことを
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10挙げた。この点、ある委員は、このところの商品市況の調整が続く場合には、その分、前年比プラス幅は抑制される可能性を指摘した。この間、震災が物価に与える影響について、ある委員は、景気への下押し圧力が物価についても下方圧力となる可能性を指摘した。別の委員は、震災の影響が一時的であり、中長期的な予想物価上昇率が安定している限り、経済全体のインフレ率には大きな影響は与えないのではないかとの見方を示した。委員は、先行きの物価を巡るリスク評価についても、展望レポート時点から変化していないとの見方で一致した。また、委員は、消費者物価の前年比が、先行き小幅のプラスに転じていくとはいえ、8月に予定されている基準改定の結果、下方改定される可能性が高いとの認識を共有した。2.金融面の動向わが国の金融環境について、委員は、総じて緩和の動きが続いているが、中小企業を中心に一部で資金繰りに厳しさが窺われるとの見方で一致した。短期金融市場について、委員は、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、落ち着いて推移しているとの見方を共有した。長期金利について、何人かの委員は、米国金利が低下する中、国債需給の悪化懸念が幾分後退していることもあって、わが国の長期金利も低下していると指摘した。企業金融について、多くの委員は、CP市場の発行環境は良好であり、発行レートも、震災前の水準に復していると述べた。
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また、委員は、社債市場について、これまで市場においてベンチマーク的な機能を担ってきた電力債の発行が停止している中にあっても、このところ、徐々に発行を再開する動きがみられると指摘した。社債の発行レートについて、複数の委員は、投資家の需要は旺盛であり、震災前との比較でみたスプレッドの上乗せ幅は小さい模様であると述べた。また、複数の委員は、企業からみた銀行の貸出態度も改善傾向が続いているとの見方を示した。資金需要面について、ある委員は、依然として予備的に手許資金を積み増す動きがみられていると指摘したほか、何人かの委員は、企業の運転資金需要が増加していると指摘した。こうした金融市場全体の動きについて、ある委員は、震災後、実体経済の落ち込みがきわめて大きかった中にあっても、金融システムの安定が保たれたことの意義は大きいとの見解を示した。この間、大方の委員は、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りの厳しさが窺われる点には、引
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11き続き、十分な注意が必要であると述べた。Ⅲ.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」という現在の方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。複数の委員は、こうした金融市場調節方針のもとで、今後とも、市場の状況に応じて、潤沢な資金供給を行っていくことが重要であると述べた。この間、複数の委員は、市場の安定を図るうえで、時間軸に対する市場の理解と信認を確保していくことも引き続き重要であるとの認識を示した。先行きの金融政策運営について、委員は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく必要があるとの見解で一致した。そのうえで、委員は、今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていくとの方針を確認した。
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この間、資産買入等の基金の運営について、ある委員は、前回会合時点では、原子力発電所事故等の展開を背景に将来に対する不安が増大し企業や家計のマインドが更に悪化するリスクが高まっており、基金の増額を図ることが望ましいタイミングだと判断して増額を提案したと述べた。この委員は、その後、景気の先行きの見方に関する指標やヒアリング情報などにより、懸念していたマインドの更なる悪化の兆候がみられていないことなどを指摘したうえで、追加緩和の必要性は潜在的には大きいものの、現時点で基金の増額を行うメリットは大きくないとの見解を示した。別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は依然として存在しているものの、各緩和措置の効果波及経路と副作用などの検討を続けながら、適切なタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。大方の委員は、震災直後に決定した追加緩和の枠組みのもとで、多様な金融資産の買入れを着実に進め、その効果波及を確認していくことが引き続き適当であるとの考えを示した。委員は、成長基盤強化を支援するための資金供給についても議論
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12を行った。多くの委員は、第4回目の資金供給の結果が判明した段階で、これまでの同制度に基づく資金供給の効果について、金融機関からの声も踏まえたうえで、総括的な評価を行い、今後の同措置の在り方について検討を行う必要があるとの見方を示した。何人かの委員は、被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションと担保適格要件の緩和について言及し、こうした措置が被災地金融機関の支援につながることを期待していると述べた。複数の委員は、初回の貸出実行額は、全体の枠からすれば必ずしも大きくはないが、今後、系統金融機関も含めた金融機関側の準備や、復旧・復興に向けた動きが進むにつれ、応札が増えていくのではないかとの見方を示した。委員は、上記オペレーションの目的は、あくまで、復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を支援することであり、今後の対応については、復旧・復興資金需要が本格化してくる時期を見極めながら、どのような政策が必要となるかについて、検討を続けていく必要があるとの見解を共有した。この点、ある委員は、途切れなく、金融面からの資金サポートを続けていくことが重要であるという見解を示したほか、別のある委員は、現地・現場のニーズについて、被災地の日本銀行の支店や事務所も活用し、十分に情報を収集していくことが重要であると述べた。
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多くの委員は、復旧・復興の過程においては、これまでもわが国が直面してきた成長力強化という基本的な課題に、同時に取り組んでいく必要があるとの見解を述べた。何人かの委員は、復旧・復興自体の資金需要はかなり出てくると思うが、資金需要を成長力強化へ結び付けていくための「呼び水」という観点から、日本銀行が果たすべき役割は大きいとの見解を示した。この点につき、ある委員は、復興資金需要の様々な特性を踏まえた必要な修正を加えたうえで、「成長基盤強化を支援するための資金供給」の枠組みを活用する余地があるのか、検討することも考えられると述べた。別の複数の委員は、復興に向けた資金需要が本格化するタイミングなどについて、現時点では不確実性が大きいため、政府や民間金融機関の対応も十分に踏まえながら、別枠の仕組みとすることも含め、様々な可能性を検討していくことが必要であるとの見解を示した。
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13Ⅳ.政府からの出席者の発言財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。 わが国の経済情勢をみると、東日本大震災の影響により、弱い動きとなっている。先行きについても、当面弱い動きが続くと見込まれている。また、原発の問題の影響等を背景としたマインドの悪化も含め、不確実性がきわめて高い状況にある。 5月2日、平成 23年度1次補正予算が成立した。政府としては、仮設住宅や被災者の雇用の確保等の生活支援、瓦礫処理・インフラ施設の復旧等に全力を挙げていく。現在行われている復興の道筋、あり方に関する議論を踏まえ、今後さらなる補正予算について検討していく。1次補正予算では、中小企業等の資金繰り支援のため、新たな保証制度や低利融資制度の創設等の予算措置を盛り込んだ。政府・日本銀行が足並みを揃えて被災地を中心とした金融の円滑に取り組んでいきたい。 また、5月17日に閣議決定した政策推進指針の中で、経済財政運営の基本方針として、大震災がもたらした制約を順次、確実に克服するとともに、新たな成長を実現する取り組みを強化し、日本経済の潜在的な成長力を回復することとしている。同時に、財政・社会保障の持続可能性の確保、信認維持についても着実な取り組みを進めることとしている。 社会保障・税一体改革について、昨年末の閣議決定にしたがって 6月末までに成案を得るべく議論を進めていく。
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また、昨年閣議決定した財政運営戦略の中で定められたスケジュールに沿って、本年半ば頃に中期財政フレームを改定することとしており、経済成長、社会保障改革と一体的に財政健全化を着実に推進していく。 日本銀行におかれては、必要と判断される場合には適切な措置を講じていく方針を示されているが、今後とも、震災が経済や市場に与える影響や復興の状況等を踏まえ、果断な金融政策対応をお願いしたい。また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。 1~3月期の実質GDP成長率は、年率-3.7%となった。わが国の景気は、当面は弱い動きが続くと見込まれるが、その後は生産活
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14動の回復に伴い持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約や原発問題などの景気下振れリスクが存在することには、十分留意が必要である。 物価については、震災の影響による供給制約の一方で、需要も減少していることから下落圧力が続いており、依然として緩やかなデフレ状況にある。当面、震災の影響により景気の弱さが続くことが懸念される中で、供給制約やエネルギー価格などの高騰によるコスト上昇圧力が実体経済に与える影響については、十分注意していく必要がある。 政府は、震災を踏まえた経済財政運営の基本方針を含む政策推進指針を、5月17日に閣議決定した。同指針に基づき、震災からの早期立ち直りのため、補正予算を迅速に執行するとともに、供給制約下にある日本経済の潜在的な成長力を回復するための取り組みを強化していく。同時に、財政に対する信認を維持することが重要であり、社会保障・税一体改革は 6月末までに成案を得ていく。 日本銀行におかれては、被災地の復旧・復興を金融面から支えるため、被災地金融機関支援のための資金供給オペレーションを着実に実施するとともに、政府と政策推進指針に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、引き続き、政府との緊密な情報交換・連携のもと、適切かつ機動的な金融政策運営により経済を下支えするようお願いする。
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Ⅴ.採決以上の議論を踏まえ、委員は、当面の金融市場調節方針について、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す」という現在の金融市場調節方針を維持することが適当である、との考え方を共有した。議長からは、このような見解を取りまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。
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15 金融市場調節方針に関する議案(議長案) 1.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。記無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す。 2.対外公表文は別途決定すること。 採決の結果賛成:白川委員、山口委員、西村委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員反対:なしⅥ.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)の検討対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が検討され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。Ⅶ.議事要旨の承認議事要旨(4月28日開催分)が全員一致で承認され、5月25日に公表することとされた。以上
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162011年5月20日日本銀行当面の金融政策運営について1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注1))。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す。2.わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。すなわち、震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。この間、金融環境をみると、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。3.先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられる(注2)。
§31
以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。4.リスク要因をみると、景気については、震災がわが国経済に及ぼす影響の不確実性が大きい。海外経済については、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けて、新興国・資源国の経済が上振れる可能性がある一方、米欧経済は、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意
§32
(注1)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員。反対:なし。(注2)本年8月の基準改定に伴い、消費者物価指数の前年比は、下方改定される可能性が高い。別紙 17が必要である。この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。とくに、当面は、震災の影響を中心に、下振れリスクを意識する必要がある。物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。5.日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である。以上