経済・物価情勢の展望(2011年4月(基本的見解))基本的見解
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12011年4月28日日本銀行経済・物価情勢の展望(2011年4月)【基本的見解】11.はじめにわが国経済は、本年入り後、景気の改善テンポが鈍化した状態から脱しつつあったが、3月11日に発生した東日本大震災により、状況は大きく変化した。震災により、当面、わが国経済に対して大きな下押し圧力がかかり続けることは避けられない。今回の展望レポート(「経済・物価情勢の展望(2011年4月)」)で示す 2012年度までの日本経済の見通しを点検するに当たっては、以下のような視点を持っておくことが重要である。第1に、震災による経済への下押し圧力は、基本的には資本設備の毀損等による供給面のショックとして現われており、海外経済の高成長など、震災前まで日本経済の回復を支えていた基本的な条件に大きな変化はない。この点、金融ショックによって世界的に需要が急減したリーマン・ショック時とは異なる。第2に、震災の影響は、時間の経過とともに変化していくことに留意する必要がある。短期的には供給面の制約に伴う影響が大きく出るが、その後は、供給面の制約が和らいでいくうえ、毀損した資本ストックを復元していく動きが顕現化してくる。さらにより長期的には、震災が、わが国経済の趨勢的な成長力にどのような影響を与えていくかという点も重要である。
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第3に、これらの震災の影響の現われ方については、その時期や規模を含め様々な点で不確実性が大きい。このため、先行きの経済・物価動向を見通すに当たっては、中心的な見通しだけではなく、従来以上にリスク要因を注意深く点検していくことが重要である。
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14月28日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
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2以下では、上記の留意点を念頭に置いたうえで、まず、わが国経済の基調的な動きを左右する海外経済や国際金融資本市場の動向を記述し、その後、わが国の金融環境を評価する。そのうえで、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(「中心的な見通し」)を記述した後、中心的な見通しに対する上振れ要因・下振れ要因を検討する。最後に、金融政策運営の基本的な考え方を整理する。2.海外経済および国際金融資本市場海外経済は、2010年夏場以降、回復初期局面における在庫復元の動きが一巡したこともあって、成長ペースが幾分鈍化した。もっとも、海外経済の回復基調自体は途切れず、新興国・資源国の高成長に牽引される形で、昨年秋以降、世界経済の成長率は、再び、歴史的にみてかなり高い水準となってきている。こうした高成長を背景に世界的に物価上昇圧力が徐々に高まりつつあり、新興国・資源国では金融引き締めの動きが続いているほか、先進国においても、一部で金融緩和を修正する動きがみられ始めている。地域別にみると、米国経済は、2010年秋以降、金融緩和や減税措置延長などの財政刺激策などもあって、先行きの回復傾向の持続性に対する懸念は後退している。
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欧州経済は、輸出が伸びているドイツなど一部の国と、ソブリン問題を背景とした緊縮財政の影響から低調な動きが続く域内周縁国の間で、景気回復ペースの格差が顕著となっているが、全体としてみると、緩やかに回復している。この間、新興国・資源国経済は、旺盛な内需や海外からの資本流入のもとで高成長が続いている。先行きの海外経済については、新興国・資源国経済の高成長に牽引され、回復を続けることが想定される。世界経済全体の成長率は、2010年に続き、2011年、2012年も、高い成長率を記録した金融危機前の 10年間の平均を上回って推移する見込みである2。地域別にみると、米国経済については、
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2 因みに、IMFが4月に発表した世界経済の成長見通し(各国・地域の実質成長率見
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3新興国・資源国向けを中心に輸出が増加基調をたどるほか、緩和的な金融環境を背景に、個人消費や設備投資が引き続き緩やかに増加するため、回復を続けると考えられる。欧州経済については、輸出の増加が徐々に内需に波及し、中心国と周縁国の格差を伴いながらも、全体として緩やかな回復が続くとみられる。新興国・資源国経済は、インフレ懸念の高まりを背景に、金融引き締めの動きが続くとみられるが、旺盛な内需や海外からの資本流入が続くもとで、高めの成長を維持する公算が高い。このうち、中国経済は、所得水準の向上や都市化の進展を背景として、個人消費や住宅投資、各種のインフラ投資が増加基調をたどるため、高成長を維持すると考えられる。NIEs・ASEAN 諸国の経済は、輸出に加え、設備投資や個人消費などの国内民需も増加が続くと見込まれるため、景気は拡大基調をたどると予想される。国際金融資本市場の動きをみると、2010年秋以降は、米国景気に対する見方が改善したことなどを背景に、投資家のリスク回避姿勢が後退し、多くの国で株価が上昇基調をたどった。債券市場では、米国の長期金利が上昇し、これにつれて、各国の長期金利は上昇した。
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この間、欧州では、ギリシャ危機以降、安定化に向けた各種枠組みが整備されつつあるもとで、アイルランドやポルトガルが金融支援を要請するなど、欧州周縁国のソブリン問題とその国際金融資本市場への影響が懸念される状況が続いている。わが国における震災発生直後は、一時的に、経済の先行きを巡る不透明感の高まりから各国で株価や長期金利が下落するなど、市場のリスク回避姿勢が高まったが、その後は概ね落ち着きを取り戻している。為替市場では、ボラティリティが大きく高まり、円の対米ドル相場は一時史上最高値の 76円 25 銭を記録したが、G7諸国による協調介入を機に、82 円~83 円での
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通しを購買力平価ベースで集計したもの)をみると、2011年、2012年の成長率は、それぞれ 4.4%、4.5%となっている。なお、金融危機前の 10年間(1998~2007年)の平均の成長率は、4.0%となっている。
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4推移となった。今後も、国際金融資本市場については、欧州周縁国のソブリン問題の帰趨、世界的な金融緩和修正に伴う資本移動の変化など、投資家のリスクテイク姿勢の変化に留意しつつ、その動向を注意してみていく必要がある。3.わが国の金融環境わが国の金融動向をみると、震災後も、金融機能は維持されており、資金決済の円滑も確保されている。金融市場も、日本銀行による潤沢な資金供給を背景に安定して推移している。わが国の金融環境は総じて緩和の動きが続いているが、震災後は、中小企業を中心に一部で資金繰りが厳しくなったとする先がみられている。今後の金融環境を展望すると、当面は、震災の影響による売り上げの落ち込みを主因に、資金繰りが厳しくなる先が、中小企業を中心に増えるとみられるほか、先行きの不透明感の高まりから手元資金を積み増す動きもみられており、企業の資金需要が増加する可能性が高い。もっとも、企業の資金調達環境について、CP・社債市場をみると、CP市場では、良好な発行環境が続いているほか、社債市場についても、不透明感の高まりから、震災後に発行を見送る動きがみられていたが、このところ信用スプレッドの実勢が震災直後と比べて幾分低下するなか、社債発行の動きが徐々にみられ始めている。
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一方、中小企業の資金調達に占めるウェイトの高い銀行貸出を巡る状況をみると、民間金融機関は、これまでの増資や内部留保の蓄積を通じて自己資本の充実に努めていることから、今後の資金需要の増加に十分応えられる状況にある。また、信用保証協会による災害関連保証など、金融面での各種措置の効果も見込まれる。そうしたもとで、金融環境は、日本銀行による強力な金融緩和策が一段と浸透していくにつれて、基調的には緩和の動きが続くと考えられ、国内民間需要が回復に向かう動きを下支えしていくと予想される。
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54.わが国の経済・物価の中心的な見通し(1)経済情勢上述の海外経済の動向と内外の金融情勢を踏まえたうえで、わが国経済の先行きについて、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(「中心的な見通し」)を検討する。わが国の経済は 2010年秋口以降、耐久消費財に関する駆け込み需要の反動の影響が大きかったうえ、海外経済の成長ペースが一時的に鈍化するもとで、夏場の円高の影響や情報関連財の在庫調整の動きも加わり、輸出が横ばい圏内の動きとなった。このため、景気は改善の動きが弱まった。もっとも、2011年入り後は、海外経済の成長率が再び高まるもとで、震災前には、輸出や生産が増加基調に復する動きがみられるなど、改善テンポの鈍化した状態から徐々に脱しつつある状況となっていた。このように、震災前までの景気展開は、前回(2010年10月)の展望レポートにおける見通しにほぼ沿った動きとなっていた。こうした状況は、今回の震災によって大きく変化している。震災後は、わが国経済が、供給面で大きな制約を受けているため、海外経済の回復を起点として輸出や生産の増加がわが国経済の回復を支えていくというメカニズムが弱まっている。すなわち、震災により、広範囲に及ぶ被災地域で、多くの資本設備が失われたほか、全国的に、材料・部品調達の困難化からサプライチェーンに大きな障害が生じている。
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また、電力不足の問題も供給面の制約となっている。このため、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内向けの出荷・販売に大きな影響が及んでいる。このように、震災の影響は主として供給面の制約を通じてわが国経済に現われているが、需要面でも、今回の原子力発電所の事故による影響をはじめ、先行きに関する不透明感を背景とした企業や家計のマインドの悪化を通じて、設備投資や個人消費を下押ししているとみられる。今回の原子力発電所の事故は、
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6上記のマインドを通じる影響に加えて、海外からの訪日者数の減少などを通じて、個人消費や観光などに悪影響を与えている可能性も高い。今後の経済の見通しは、電力を始めとする様々な供給面の制約が、いつ、どの程度のペースで解消していくかに大きく依存する。そのうえで、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状況が続くと考えられる3。すなわち、企業は、被災設備の復旧、代替施設での生産、代替調達先の確保などを進めつつあるが、サプライチェーンの再構築にはある程度の時間を要するとみられる。さらに、電力の供給不足の問題は、電力需要がピークを迎える夏場には経済活動に対して相応の制約となる可能性がある。しかし、秋口以降は、サプライチェーンの再構築も一段と進むとみられることから、電力の需給逼迫が改善に向かうもとで、供給面の制約は和らいでいくと見込まれる。そうした状況になれば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながり、わが国経済の回復を支える原動力として、再びはっきりと作用してくる。さらに、震災によって毀損した資本ストックの復元に向けた動きも、次第にわが国経済を押し上げる方向で寄与してくるものと考えられる。
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以上のような動きを背景に、わが国経済は、2011年度前半は、下押し圧力が強い状態が続いた後、年度後半にかけては、輸出や生産がはっきりとした増加に転じるもとで、年度前半からの反動もあって、景気回復テンポが高まる可能性が高い。2012年度入り後は、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとともに、資本ストックの復元に向けた需要の増加も続くため、潜在成長率を上回る成長が続く
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3 阪神・淡路大震災発生時(1995年1月)の全国の生産は、前月比-2.6%と落ち込んだが、翌2月には同+2.2%と反動増となった。輸出についても、同様の動きを示した。このように、短期間のうちに震災の全国的な影響が減退したのは、電力供給やサプライチェーンの面で制約が生じなかったこともあって、代替生産が短期間で可能になったためと考えられる。
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7と考えられる4。こうした見通しの内容を、企業・家計の部門別にやや詳しく述べると、以下の通りである。まず、企業部門をみると、製造業では、当面、供給面の制約から、生産活動が大きく制約され、輸出も大きく落ち込むと考えられる。非製造業部門についても、電力供給の制約や製造業の生産活動水準の低下の影響から、当面、業況が悪化する可能性が高い。企業収益は、輸出・生産の大幅な減少に、国際商品市況上昇の影響も加わり、大きく下押しされるとみられる。このため、震災前に緩やかに持ち直していた設備投資も、いったん弱含みとなる可能性が高い。もっとも、2011年度後半を展望すると、供給面の制約が和らいでいくため、海外経済が高めの成長を続けるもとで、輸出や生産は、再び増加していくとみられる5。また、震災によって毀損した資本ストックを復元する動きも顕現化してくると予想される。そうしたもとで、震災の影響によっていったん下振れた企業収益は再び改善に向かい、つれて設備投資も持ち直しに向かうと考えられる。次に、家計部門について、雇用・所得環境をみると、震災の影響により生産活動の水準が低下し、雇用の過剰感が高まるため、弱めの動きとなる可能性が高い。また、先行き不透明感を背景とする消費者マインドの慎重化もあって、当面、個人消費はいったん落ち込む可能性が高い。
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その後、2011年度後半以降は、生産活動の回復に伴う雇用・所得環境の改善を背景
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4 見通し期間中の潜在成長率を、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると「0%台半ば」と計算される。ただし、潜在成長率については、推計手法に依存する面が大きいほか、今後のデータ蓄積を経てより正確な認識が可能になる性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。なお、今回の震災の影響による供給制約については、一時的であり、やや長い目でみた供給能力の増加ペースに相当する潜在成長率には基本的に影響しないと考えられる。5 生産や輸出が増加基調に復していく過程では、これまで抑えられてきた需要が顕現化することや、取り崩した在庫を復元していく動きも考えられるため、その伸び率がいったん大幅なものとなる可能性が高い。もっとも、生産が増加に転じていくタイミングについては、サプライチェーンが再構築されていくペースや、電力の需給動向に大きく左右されるため、不確実性が大きい。
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8に、個人消費も緩やかに持ち直していくものとみられるが、雇用者報酬の増加が明確となるのは、景気の自律的な回復がよりはっきりする 2012年度以降になるとみられる。このため、個人消費の回復ペースも暫くの間は緩やかなものに止まる公算が高い。この間、住宅投資については、震災の影響による資材不足などから、当面、住宅建設が一部で遅延する可能性がある。もっとも、見通し期間を通じてみれば、借入金利の低下や毀損した住宅ストックの復元に向けた動きなどを背景に、緩やかに改善していくと考えられる。(2)物価情勢以上の経済情勢の展望を踏まえ、物価の動向を点検する。まず、消費者物価(除く生鮮食品。以下同じ。)の現状をみると、前年比下落幅は縮小を続けてきた。最近では、高校授業料無償化等の影響を除けば、マクロ的な需給バランスが緩やかに改善するもとで、国際商品市況高の影響もあって、消費者物価の前年比は小幅のプラスに転じている6。先行きの物価を巡る環境を展望すると、個別の財やサービス市場では、震災の影響による供給制約が、ボトルネック状況などにつながり、これが物価上昇圧力となる可能性はあるものの、マクロ的な需給バランスは、震災の影響により供給面での制約が厳しくなると同時に、需要も減退するとみられるため、その変動については、短期的には不確実性が高い7。
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もっとも、やや長い目でみれば、景気が緩やかな回復経路に復していくに従って、マクロ的な需給バランスは徐々に改善していくと考えられる。中長期的な予想物価上昇率は、家計や企業、エコノミストを対象としたアンケート調
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62010年度の消費者物価指数については、物価の基調的な動きを判断するため、前年比を1年間大きく押し下げる要因となった高校授業料無償化等の影響を除いている。7 もともと、マクロ的な需給バランスの計測値は、やや長い目で、かつ幅をもってみるべきものである。足もとは、電力の供給不足やサプライチェーンの障害など異例の現象が生じているため、その点に特に注意する必要がある。
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9査等からみて、これまでのところ大きな変化は窺われず、見通し期間においても安定的に推移すると想定している。市場参加者やエコノミストによる中長期的な予想物価上昇率は、ここ数年、概ね1%程度で安定的に推移している。国際商品市況については、新興国・資源国の高い成長などを背景に、持続的に上昇しており、先行きについても、緩やかに上昇を続けることを想定している。以上の環境を前提に、物価情勢の先行きをみると、国内企業物価指数の前年比は、マクロ的な需給バランスが改善基調で推移するもとで、国際商品市況の上昇を反映し、見通し期間を通じて上昇が続くと見込まれる。消費者物価についても、国際商品市況上昇の影響がラグを伴いつつ波及すると考えられる。加えて、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが基調的にみて改善していくことから、消費者物価の前年比は、見通し期間を通じて、小幅のプラスで推移すると見込まれる8。5.上振れ要因・下振れ要因(1)経済情勢以上は、現時点で相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(「中心的な見通し」)である。こうした見通しに対する上振れまたは下振れ要因としては、以下のような点に注意する必要がある。第1に、今回の震災がわが国経済に与える影響については、不確実性が大きい。
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まず、電力の供給不足やサプライチェーンにおける障害の帰趨について現時点で見通すことは難しく、このため、供給面の制約が解消する時期については、不確実性が高い。その経済活動に対する影響も、問題の
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8 今回の消費者物価の見通しは、現行の 2005年基準の指数をベースにしているが、統計作成当局は、同指数について2011年8月に2010年基準の指数に切り替えるとともに、前年比計数を 2011年1月分に遡って改定する予定であることを公表している。その際には、前年比上昇率が下方改定される可能性が高い。
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10解決テンポや企業による対応の進捗度合いに大きく依存している。さらに、毀損した資本ストックを復元していく動きについても、その時期と規模については不確実性が大きい。より長い目でみると、今回のサプライチェーンの障害や電力インフラの毀損などへの対応を機に生産拠点の海外への移管が加速する可能性がある一方、新たなサプライチェーンの構築、震災の経験を踏まえたリスク管理体制の見直しや、農漁業の再興などの過程で、各経済主体の前向きかつ創造的な動きが新しい需要の創出に繋がっていく可能性もある。一方、マインドを通じた影響については、原子力発電所の事故の帰趨が及ぼす影響に加え、企業収益や雇用者所得見通しの不確実性等について留意する必要がある。他方、震災後の上記懸念材料が早期に解消方向に向かい、経済の先行きに対する不確実性が低下していけば、企業や家計のマインド好転を通じて、わが国経済が見通しに比べて上振れる可能性がある。第2に、中心的な見通しでは、企業や家計の中長期的な成長期待は維持されることを想定しているが、震災を契機とした企業や家計の成長期待の変化にも注意を要する。この点、わが国経済は、これまでも、成長力強化という基本的な課題に直面してきたが、その重要性は一段と増している。
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震災の影響からわが国経済の中長期的な成長力に対する懸念が高まる場合、企業や家計の支出意欲を抑制し、長期間にわたって経済を下押しするリスクがある。また、震災を契機に、成長戦略への取り組みに弾みをつけていくことができれば、企業や家計の中長期的な成長期待が上振れる可能性もある。第3に、海外経済の動向である。先進国経済の動向をみると、米国経済については、先行きの不透明感が昨年秋以降後退しているが、他方で、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石となって作用している。欧州については、周縁国のソブリン問題を巡る懸念が、金融市場の動揺を通
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11じて、実体経済活動をも下押しし、それらが相乗的に悪影響を及ぼし合うこととならないか、注意が必要である。この点、わが国を含め、多くの先進国では、公的債務残高が大きく増加している。こうしたもとで、財政再建に向けた取り組みが急務となっており、仮にこうした取り組みが市場によって不十分と評価された場合には、長期金利の上昇やコンフィデンスの低下などを通じて、実体経済にマイナスの影響が及ぶ可能性が高い。新興国・資源国経済は、旺盛な内需を中心に高めの成長を維持する公算が高く、海外からの資本の流入も相俟って、これらの国の景気が強まる可能性がある。その場合、輸出の増加を通じて、わが国経済にとって上振れ方向に作用する可能性がある。一方、多くの新興国・資源国では、金融引き締めの動きが続いているが、景気の過熱感やインフレ懸念が十分に沈静化されている状況ではない。このため、景気の振幅が拡大し、より長い目で見れば、持続的成長を損なう可能性もある点には留意が必要である。第4に、国際商品市況が一段と上昇した場合の影響についても注意が必要である。国際商品市況上昇の背景としては、まず、エネルギー効率が低い新興国経済が高成長を続け、そうした高成長のもとで生活水準が急速に高まるといった、実需面の要因が挙げられる。
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このため、国際商品市況の上昇が新興国・資源国の高成長に見合ったものであれば、わが国への影響は、こうした国への輸出や直接投資収益の受取りの増加で相殺されると考えられる。もっとも、このところの価格上昇には、中東や北アフリカにおける地政学的リスクの高まりや、天候不順・自然災害などに伴う供給面の要因も作用している。また、世界的な金融緩和継続などを背景とする金融面の動きが、国際商品市況の動きを加速させている面もある。国際商品市況が一段と上昇した場合、交易条件のさらなる悪化に伴う実質購買力の低下や企業収益の悪化が国内民間需要を下押しする方向で作用することには留意が必要である。
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12(2)物価情勢物価情勢の先行きについても、上下両方向の不確実性がある。まず、景気について、上述のような上振れ、下振れ要因が顕現化した場合、物価にも相応の影響を及ぼすとみられる。この点、震災が物価に与える影響の評価については注意が必要である。前述の通り、震災がマクロ的な需給バランスに与える影響は、供給面の制約による引き締まり方向への動きと、需要が減少することによる緩和方向への動きの両面を考慮する必要がある。この間、電力不足などにより、経済全体の供給能力が長期間にわたって制約されることになれば、物価に対しては、マクロ的な需給バランスの引き締まりが、上振れ要因として作用する可能性も高い。ただし、供給制約による景気悪化が長期化し、企業収益や雇用者所得に持続的な下押し圧力がかかり続ければ、需給バランスの悪化につながり、物価に対して下振れ要因となる可能性もあることに注意が必要である。このほか、物価に固有の要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率が挙げられる。わが国経済は、先行きにかけて、回復経路に復していくと考えられるが、景気回復のペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。こうした環境のもとで、企業や家計が持続的な物価下落を予想するような事態が生じた場合には、実際の物価にも、賃金とともに、下方圧力がかかる可能性がある。
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また、本年8月の基準改定に伴い、実際に消費者物価指数の前年比が下方改定された場合、企業や家計の予想物価上昇率に影響を与えることがないか注意していく必要がある。第2に、輸入物価の動向である。原油をはじめとする一次産品の価格動向には、上下両方向に不確実性が大きい。中東や北アフリカの政治状況を巡る動き、相対的にエネルギー効率が低い新興国経済の動向や、世界的な金融緩和を背景とする商品市場への資金流入の状況次第では、一次産品価格が上下に大きく変動する可能性がある。為替相場の変動も、実体経済の
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13振幅を通じるルートに加え、輸入物価の変化を通じて、消費者物価に相応の変化をもたらし得る。6.金融政策運営日本銀行は、東日本大震災発生の直後から、主に、金融・決済機能の維持、金融市場の安定確保、経済の下支えの3つの観点から、様々な措置を迅速に講じてきた。まず、金融・決済機能を維持するため、被災地への現金の供給や、日銀ネットをはじめとした主要決済システムの安定稼働確保に万全を期してきた。また、震災直後の予備的な資金需要の高まりに対応して、金融市場の安定確保のため、市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を行ってきた。さらに、企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが経済に悪影響を与えることを未然に防止するため、リスク性資産を中心に資産買入等の基金を5兆円程度増額し、金融緩和を一段と強化した。こうした措置に加えて、日本銀行は、被災地の金融機関を対象に、今後予想される復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を資金面から支援するため、長めの資金供給オペレーションを実施するほか、今後の被災地の金融機関の資金調達余力確保の観点から、担保適格要件の緩和を図ることとしている。
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日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」、すなわち「金融政策運営に当たり、各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率」を念頭に置いた上で、経済・物価情勢について2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理することとしている。また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件に、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにしている。「中長期的な物価安定の理解」については、今回の会合において点検を行った結果、「消費
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14者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」となった。まず、第1の柱、すなわち先行き 2012年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しについて点検する。上述の通り、わが国経済は、震災の影響により、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状況が続くと考えられる。もっとも、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、震災によって毀損した資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、わが国経済は、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。物価面では、マクロ的な需給バランスが基調的に改善していくもとで、消費者物価の前年比は、見通し期間を通じて、小幅のプラスで推移すると見込まれる。こうした経済・物価見通しを総合的に評価すると、日本経済は、「中長期的な物価安定の理解」に基づいて物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要するものの、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられる。次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。景気については、震災がわが国経済に及ぼす影響の不確実性が大きい。
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さらに、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けて、新興国・資源国の経済が上振れる可能性がある。米国経済については、成長率が上振れる可能性もある一方で、バランスシート調整が景気を下押しするリスクがあるほか、欧州については、ソブリン問題の帰趨に引き続き注意が必要である。この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加に繋がる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の
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15物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。以上の2つの柱に基づく点検を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。ただし、当面は、震災の影響を中心に、景気の下振れリスクを意識する必要がある。先行きの金融政策運営については、上述の2つの柱による点検を踏まえ、日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、「包括的な金融緩和政策」を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けていく。今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である。以上
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16(参考1)▽2010~2012年度の政策委員の大勢見通し――対前年度比、%。なお、<>内は政策委員見通しの中央値。実質GDP 国内企業物価指数消費者物価指数(除く生鮮食品)2010年度+2.8~+2.8<+2.8>+0.7 -0.31月時点の見通し+3.3~+3.4<+3.3>+0.5~+0.6<+0.5>-0.4~-0.3<-0.3>2011年度+0.5~+0.9<+0.6>+1.6~+2.6<+2.2>+0.5~+0.8<+0.7>1月時点の見通し+1.4~+1.7<+1.6>+0.7~+1.2<+1.0>0.0~+0.4<+0.3>2012年度+2.7~+3.0<+2.9>+0.3~+0.7<+0.6>+0.5~+0.7<+0.7>1月時点の見通し+1.9~+2.2<+2.0>+0.5~+0.8<+0.7>+0.2~+0.8<+0.6>(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。(注2)各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。(注3)2010年度について、実質GDPは政策委員の見通し。
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国内企業物価指数と消費者物価指数(除く生鮮食品)は実績値。(注4)2010年度の消費者物価指数については、前年比を1年間大きく押し下げる要因となった高校授業料の影響を除いている。高校授業料については、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比を 0.5%程度押し下げたと試算される。(注5)今回の消費者物価の見通しは、現行の 2005年基準の指数をベースにしているが、統計作成当局は、同指数について 2011年8月に2010年基準の指数に切り替えるとともに、前年比計数を 2011年1月分に遡って改定する予定であることを公表している。その際には、前年比上昇率が下方改定される可能性が高い。(注6)政策委員全員の見通しの幅は下表の通りである。――対前年度比、%。実質GDP 国内企業物価指数消費者物価指数(除く生鮮食品)2010年度+2.7~+2.9 +0.7 -0.31月時点の見通し+3.2~+3.5 +0.4~+0.6 -0.4~-0.22011年度+0.5~+1.0 +1.5~+2.7 +0.5~+0.91月時点の見通し+1.4~+1.8 +0.6~+1.2 -0.1~+0.42012年度+2.5~+3.0 +0.1~+1.0 +0.4~+0.71月時点の見通し+1.8~+2.4 +0.3~+1.00.0~+0.8
§39
17(参考2)リスク・バランス・チャート(1)実質GDP (2)消費者物価指数(除く生鮮食品)<2011年度><2011年度><2012年度><2012年度>(注1)縦軸は確率(%)を、横軸は各指標の値(前年比、%)を示す。今回の確率分布は棒グラフで示されている。実線は2011年1月時点の確率分布を表す。(注2)縦の太点線は、政策委員の見通しの中央値を表す。また、○で括られた範囲は政策委員の大勢見通しを、△で括られた範囲は全員の見通しを、それぞれ表す。(注3)縦の細点線は、2011年1月時点の政策委員の見通しの中央値を表す。(注4)リスク・バランス・チャートの作成手順については、2008年4月の「経済・物価情勢の展望」BOXを参照。
§40
0510152025303540455005101520253035404550-6.0未満-6.0~-5.6-5.5~-5.1-5.0~-4.6-4.5~-4.1-4.0~-3.6-3.5~-3.1-3.0~-2.6-2.5~-2.1-2.0~-1.6-1.5~-1.1-1.0~-0.6-0.5~-0.10.0~0.40.5~0.91.0~1.41.5~1.92.0~2.42.5~2.93.0~3.43.5~3.94.0~4.44.5~4.95.0~5.45.5~5.96.0~6.46.5~6.97.0~7.47.5~7.98.0以上051015202530051015202530-2.0以下-1.8-1.6-1.4-1.2-1.0-0.8-0.6-0.4-0.20.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.0以上