経済・物価情勢の展望(2011年10月(基本的見解))基本的見解
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12011年10月27日日本銀行経済・物価情勢の展望(2011年10月)【基本的見解】11.はじめに今回の展望レポート(経済・物価情勢の展望(2011年10月))では、2013年度までの日本経済の見通しを示す。以下では、まず、わが国経済の先行きを左右する国際金融資本市場や海外経済の動向を記述し、その後、わが国の金融環境を評価する。そのうえで、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(中心的な見通し)を記述した後、それに対する上振れ要因・下振れ要因を検討する。最後に、金融政策運営の基本的な考え方を整理する。2.国際金融資本市場および海外経済国際金融資本市場では、本年夏以降、欧州のソブリン問題に対する懸念などから、緊張が高まった。最近に至り、欧州金融安定ファシリティ(EFSF)の機能拡充策が、ユーロ圏 17か国により承認されるなど、金融システムの安定化に向けた動きも進み始めているが、その具体的な実現を巡る不確実性がなお残ることなどから、市場の緊張状態が続いている。すなわち、ギリシャを始めとして、財政不安の強い国の国債利回りは、高止まりしている。また、そうした国債を多く保有する欧州の銀行の株価は大きく低下しているほか、ユーロ市場の銀行間取引における短期金利もはっきりと上昇している。
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金融面の緊張は、金融機関の貸出姿勢の厳格化や貸出金利の上昇、企業や家計のマインドへの影響などを通じて、実体経済に波及し始めている。さらに、財政不安の強い国では、追加的な緊縮財政策を
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110月27日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
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2講じているが、これは短期的には景気の下押しとして作用している。このように、欧州では、財政、金融システムおよび実体経済の三者の間に負の相乗作用が働き始めており、金融情勢や実体経済の先行きに関する不確実性が高まっている。米国でも、夏場以降、市場予想を下回る軟調な経済指標の公表が続くなど、景気減速懸念が強まるとともに、債務上限問題や米国債の格下げなどから市場の不透明感が高まった。こうしたもとで、グローバルな投資家は、リスク回避姿勢を強めている。世界的に株価は振れの大きい展開を続けており、米欧では、社債などの信用スプレッドが拡大している。国際商品市況も総じて下落している。これらと表裏をなす形で、安全と認識される資産に対する需要が強まっており、米国やドイツなどの国債金利は歴史的な水準にまで低下している。為替市場でも、相対的に安全な通貨と認識された円の為替レートは、ドルやスイスフランとともに、対資源国・対新興国通貨を中心に上昇した。以上を踏まえつつ、海外経済の動きをみると、新興国・資源国に牽引される形で高い成長を続けてきたが、本年春以降、先進国を中心に、成長ペースが鈍化している。
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地域別にみると、米国経済については、ガソリン価格の上昇や日本の震災の影響など、一時的な要因が春ごろの減速に寄与した面もあるが、基調的にみても、家計の過剰債務や住宅市場の調整が長引き、雇用の改善も緩慢なもとで、回復のペースはごく緩やかなものにとどまっている。欧州経済は、輸出が好調なドイツなどを中心に、全体として緩やかに回復してきたが、ソブリン問題を背景とした金融環境や企業・家計マインドの悪化などから、減速が明確になっている。一方、新興国・資源国経済では、物価上昇による実質購買力の低下や金融引き締めの効果に加え、先進国経済の減速の影響などから、幾分減速しているが、生産・所得・支出の自律的な好循環が基本的に保たれているもとで、総じて高めの成長が続いている。このため、多くの新興国・資源国では、インフレ圧力
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3は十分に沈静化していない。海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、当面は、国際金融資本市場の緊張が残る中、先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で、再び成長率を高めていくと考えられる。このため、見通し期間中について平均的にみれば、高めの海外経済成長率を想定することができる2。国・地域別にみると、米国経済については、緩和的な金融環境が経済の下支えに働くと考えられるものの、バランスシート調整の圧力が根強く残る中、成長のペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。欧州経済についても、ソブリン問題の影響が当面実体経済に作用し、景気回復の動きは抑制されたものになると考えられる。この間、新興国・資源国経済は、多くの国で、当面は幾分減速した状態で推移するとみられるが、その後は、インフレ圧力の低下に伴って、家計の実質購買力が回復することなどから、高めの成長を実現していく可能性が高い。ただし、こうした見通しについては、経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックは、回避されることを前提にしている。そうした前提を裏付ける政策当局の姿勢として、10月央にパリで開催されたG20 の声明では、銀行システムや金融市場の安定を保つために必要な全ての行動を取ることに引き続きコミットしている旨、明記されている。
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3.わが国の金融環境わが国の金融環境をみると、日本銀行が強力に金融緩和を推進する中、緩和の動きが続いている。すなわち、市場金利が長めの金利も含めてきわ
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2 国際通貨基金(IMF)が9月に発表した世界経済の成長見通し(各国・地域の実質成長率見通しを購買力平価ベースで集計したもの)は、6月時点の見通しから先進国を中心に下方修正されたが、2011年、2012年ともに 4.0%、2013年については、成長率が 4.5%へと加速する見通しとなっている。ちなみに、1980年以降 30年間の平均成長率は 3.3%である。
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4めて低い水準で推移するもとで、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。CPの発行環境は、震災直後の一時期を除き、良好な状態が続いている。社債市場についても、震災直後には、信用スプレッドが幾分拡大する中、発行を見送る動きが一時的にみられたが、その後は、経営環境の不透明感から起債が困難な電力会社を除き、社債市場の発行環境は良好な状態となっている。企業からみた金融機関の貸出態度についても、改善傾向が続いている。企業の資金繰りについても、震災後に、中小企業を中心に厳しいとする先がいったん増加したが、その後は再び改善している。資金繰りや貸出態度については、企業の規模によって緩和度合いに差はあるものの、全体として改善傾向にあり、いずれも2000年以降の平均と同程度か、これを上回る水準にまで回復している。このように、わが国の企業を取り巻く金融環境は、緩和の動きが続いている。そうしたもとで、企業の資金調達残高をみると、銀行貸出は前年比減少幅が縮小傾向を続け、足もとではほぼ前年同水準にまで回復しているほか、社債・CPの発行残高は前年を上回っている。国際金融資本市場が不安定な中にあって、以上述べたわが国の金融環境と、米欧の金融環境との間には、際立った違いがみられる。
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例えば、銀行間取引の緊張度を表すLIBOR-OISスプレッドは、米ドルとユーロについては夏場以降拡大しているが、円については安定している。社債の信用スプレッドも、米欧では上昇が目立っている一方、わが国では上述の通り低水準で安定している。こうした違いの背景として、第1に、わが国では、金融機関が、欧州ソブリン問題の中心となっている諸国の国債等を、多く保有していない点が挙げられる。第2に、金融機関が保有するリスク全体についても、これまで充実に努めてきた自己資本との対比でみて、概ね抑制された状態にある。実際、信用コスト率や不良債権比率は、米欧に比べて低位にとどまっているほか、外貨を含む資金流動性リスクも抑制され
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5ている。第3に、企業サイドでも、手元資金を比較的厚めに保有しており、国際金融資本市場が不安定な中にあっても、追加的な資金調達を急ぐ動きはみられていない。第4に、日本銀行が、市場に対して潤沢に資金を供給していることや、包括的な金融緩和政策のもとで、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J―REIT)といったリスク性資産の買入れを行っていることも、金融環境の緩和に寄与していると考えられる。今後も、わが国の金融環境は、日本銀行による強力な金融緩和の効果が一段と浸透していく中で、緩和の動きが続き、国内民間需要が自律回復に向かう動きを支えていくと予想される。日本の金融システムが、大幅な景気後退や株価下落に対して相応の頑健性を有するようになってきていることも、先行きの金融環境の安定確保に資すると考えられる。しかし、国際金融資本市場の連関が高まっているもとで、日本の金融環境も、海外の展開と無縁ではあり得ない。現に、夏場以降、円高や株安の動きがみられた点では、グローバルな投資家のリスク回避姿勢の強まりは、日本の金融市場にも一部波及している。
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国際金融資本市場が一段と不安定化する場合などに、内外の金融資本市場間の連関を通じて株価や債券価格が下落したり、金融機関の資金調達環境の悪化を招くことを通じ、その影響がわが国の金融システムひいては金融環境に及ぶ可能性には、引き続き注意する必要がある3。4.わが国の経済・物価の中心的な見通し(1)経済情勢上述の海外経済の動向と内外の金融情勢を踏まえたうえで、わが国経済の先行きについて、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(中心的な
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3 わが国の金融システムの安定性に関する評価について、詳しくは「金融システムレポート」(日本銀行 2011年10月)を参照。
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6見通し)を検討する。わが国の経済は、東日本大震災の後、生産・輸出を中心に、大きく落ち込んだ。すなわち、生産設備の毀損やサプライチェーンにおける障害など供給面の制約を背景に、生産活動が大きく低下し、その結果、輸出も大幅に減少した。また、わが国の経済の先行きや原子力発電所の事故の影響などを巡る不透明感から、企業や家計のマインドが悪化したこともあって、国内民間需要も弱い動きとなった。その後、多くの企業で、被災設備の復旧とともに、代替施設での生産や代替調達先の確保など、様々な努力と工夫が行われ、供給面の制約解消は、当初の予想を上回るペースで進んだ。電力需給を巡っては、定期検査後の原子力発電所の再稼働の問題などから、先行きの不確実性は払拭されていない。ただし、当初強く懸念されていた本年夏場については、電力会社による緊急的な供給体制の整備に加え、企業や家計による節電や電力使用平準化の工夫などによって、経済活動への大きな制約となることは回避できた。以上の結果、震災直後に大幅に落ち込んだ生産や輸出は、すでに震災前の水準に復している4。そうしたもとで、企業や家計のマインドの改善もあって、設備投資や個人消費などの国内民間需要についても、持ち直している。以上のように、震災直後から夏場までは、日本経済の回復ペースは、供給面の制約が解消に向かう速度によって規定されてきた。
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しかし、供給面の制約がほぼ解消された現在では、需要面の動向が重要性を増してきている。そのことを念頭に置いて、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、海外経済の減速や円高の影響を受けるものの、その後は海外経済の成長率
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4 鉱工業生産の公表指数は、リーマン・ショックに伴う極端な振幅の影響を受けて、10~12月、1~3月の伸び率が高めに、4~6月、7~9月の伸び率が低めに算出されるようになっていると考えられる。したがって、7~9月の生産水準は、実勢としては統計に表れている以上に高いと考えられる。
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7が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。すなわち、2011年度下期は、輸出や生産を中心に、海外経済減速や円高の影響を受けるとみられる一方、資本ストック等の復元に向けた復興需要が、公共投資、民間設備投資、住宅投資、さらには耐久消費財の消費といった様々な面で、徐々に顕在化してくると考えられる。2012年度は、復興需要が年度を通じて寄与することに加え、海外経済の成長率が緩やかに高まり、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムが働くため、比較的高い成長率となることが予想される。2013年度については、復興需要の押し上げ寄与が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012年度対比では鈍化するものの、新興国・資源国を中心とする堅調な海外需要のもとで、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる5。なお、2012年度までの見通しを、7月の中間評価時点の見通しと比べると、海外経済の減速や円高の影響から、幾分下振れると考えられる。以上の見通しについて、企業・家計の部門別にやや詳しく述べると、以下の通りである。企業部門について、輸出や生産は、新興国・資源国を中心とした堅調な海外需要を背景に、増加を続けるとみられる。
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この点、当面は、海外経済の減速や円高の影響が下押し要因となるものの、その間においても、自動車を中心に、震災後に大きく取り崩された海外在庫を復元する動きや、国内で積み上がった受注残への対応も予想されるため、輸出や生産の増加基調自体は維持される可能性が高い。震災復興関連の需要については、今後、設備投資や住宅投資などの民間需要、公的需要ともに、徐々に強まっていくと予想される。このため、企業収益は、緩やかに改善していくと考えられる。設備投資についても、企業の年度計画にもみられるとおり、収益や
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5 見通し期間中の潜在成長率を、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると、「0%台半ば」と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。
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8内外需要の回復を背景に、緩やかに増加を続けていく可能性が高い6。この点に関連して、企業は、今後、円高の影響もあって、とくに海外での投資活動を強化していくとみられる。過去を振り返ると、海外投資の拡大は、部分的には国内投資を代替する面もみられたが、多くの場合、増加する現地需要をより有効に取り込むための戦略として実施され、国内では、海外拠点との差別化を図る高付加価値化などが進められてきた。今後についても、海外シフトが急速に進む場合には国内の設備投資や雇用への影響などについて注意が必要であるが、基本的には、海外投資と国内投資が、補完し合いながら増加していく動きが予想される。また、国内投資には、被災設備の修復・建替え、耐震工事、データのバックアップを含む事業継続能力の強化など、震災に起因する案件も押し上げに寄与する可能性が高い。次に、家計部門について、雇用・所得環境をみると、震災後は、雇用調整助成金の支給要件が緩和されたこともあって、経済活動の落ち込みにもかかわらず、大幅な雇用調整は回避された。その間に削減された労働時間についても、生産を中心とした経済活動の持ち直しに伴い、製造業を中心に、回復してきている。賃金については、震災に伴う企業収益の悪化を背景に、本年夏の賞与が中小企業を中心に前年比マイナスとなるなど、弱めの動きとなった。
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先行きについては、経済活動の持ち直しが雇用・所得環境にも徐々に波及していくと考えられる。ただし、波及のタイムラグを考慮すると、雇用や賃金の増加基調が明確になるのは、2012年度以降になるとみられる。こうした雇用・所得環境のもとで、個人消費についてみると、震災後、生産の落ち込みやマインドの悪化などから、いったん弱い動きとなったが、このところ、全体として持ち直している。先行きについては、雇用・所得環境が徐々に改善に向かうもとで、次第に底堅さを増していく
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6 ちなみに、国内設備投資を対象とした短観の設備投資計画(9月)をみると、今年度下期分が小幅上方修正され、前年度を上回る計画となっている。
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9と予想される。この間、住宅投資については、低金利や復興需要などを背景に、見通し期間を通じて、緩やかに増加していくと考えられる。(2)物価情勢以上の経済情勢の展望を踏まえ、物価の動向を点検する。消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比の推移を基調的にみると、マクロ的な需給バランスが緩やかな改善傾向を続ける中、2009年末頃から下落幅は着実に縮小を続け、最近は概ねゼロ%となっている7。先行きの物価を巡る環境を展望すると、マクロ的な需給バランスを反映する労働や設備の稼働状況は、景気が緩やかな回復をたどるもとで、徐々に改善していくと考えられる。中長期的な予想物価上昇率は、家計や企業、エコノミストを対象としたアンケート調査等からみて、これまでのところ大きな変化はみられず、見通し期間においても安定的に推移すると想定できる。市場参加者やエコノミストによる中長期的な予想物価上昇率は、ここ数年、概ね1%程度で安定的に推移しており、基準改定によって消費者物価の前年比が下方改定された後も、特段の変化は見られていない。国際商品市況については、世界経済の減速などを背景にこのところ軟化しているが、やや長い目でみれば、基礎的な衣食住の水準を引き上げるニーズの旺盛な新興国が高い経済成長を続ける中で、食料やエネルギーを中心に、緩やかな上昇傾向をたどると考えられる。
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以上の環境を前提に、物価情勢の先行きをみると、国内企業物価指数の前年比は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間を通じて緩やかな上昇を続けると見込まれる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移したあと、中長期的な予
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7 消費者物価については、本年8月に、2010年基準の指数に切り替わり、前年比計数が本年1月分に遡って下方改定された。全国の総合除く生鮮ベースでの前年比下方改定幅は、1~7月の平均で約 0.6%ポイントとなった。下方改定の要因としては、旧基準で低下していた耐久消費財の指数水準がリセットされたことに伴い、その価格下落が指数全体に与える影響が高まったことの影響が大きい。
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10想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間の後半にかけてゼロ%台半ばになっていくと考えられる。5.上振れ要因・下振れ要因(1)経済情勢以上は、現時点で相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(中心的な見通し)である。こうした見通しに対する上振れまたは下振れ要因としては、以下のような点に注意する必要がある。第1に、欧州ソブリン問題を中心とする国際金融資本市場を巡る動向である。欧州のソブリン問題の帰趨について、その世界経済への影響も含めて不確実性が大きく、為替・金融資本市場において、グローバル投資家のリスク回避姿勢が一段と強まる可能性がある。その結果として、円高や株価の下落が進めば、企業や家計のマインドを通じた影響も含め、わが国の景気の下振れ要因となる。また、欧州周縁国に限らず、多くの先進国における公的債務残高の増大が、国際金融資本市場の不安定化要因となっているだけに、わが国についても、財政再建に向けた取り組みが、市場によって不十分であると評価された場合は、長期金利の上昇や株価の下落などを通じて、実体経済にマイナスの影響が及ぶリスクがある。第2に、上述の要因とも関連するが、海外経済の動向に関する不確実性がある。
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先進国経済の動向をみると、米国経済については、バランスシートの調整圧力が引き続き経済の重石となって作用しており、景気は上に弾みににくく、下に振れやすい状況にある。金融・財政政策の発動余地が限られているうえ、住宅価格の低迷が続き、雇用の回復ペースも鈍い中で、米国経済の減速が想定以上に長引くリスクには注意が必要である。欧州については、ソブリン問題を契機として、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が、強まっていくことにならないかどうか、注視していく必
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11要がある。この間、多くの新興国・資源国は、物価安定と成長を両立する形でソフトランディングできるかどうか、なお不透明感が高い。インフレ圧力の鎮静化がなかなか進まない場合は、成長率が下振れるリスクがあることに、注意が必要である。以上の国際金融資本市場や海外経済の動向を巡っては、欧州における財政再建、金融システムの安定化や構造改革など、上述した様々な問題への取り組みが進められる結果、投資家のリスク回避姿勢や世界経済を巡る不確実性が後退していく可能性もある。その場合は、企業や家計のコンフィデンス回復を通じて、世界経済ひいては日本経済に対する上振れ要因になると考えられる。第3に、復興需要に関する不確実性がある。被災地では、自動車や家電製品をはじめとした耐久消費財の買い替え需要が、すでにある程度顕在化している。また、瓦礫の処理や仮設住宅の建設など、復興に向けた様々な活動も進められている。しかし、インフラ、企業設備、住宅建設など、各種資本ストックの復元は、民間需要、公的需要とも、現時点では限定的な規模にとどまっている。これらの復興需要については、今後、街づくりの全体像も含めて復興計画が具体性を増し、補正予算等が執行されていく中で、徐々に本格化していくと考えられる。
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ただし、復興需要の規模やタイミング、またその景気刺激効果については、復興計画が具体化していくスピードや、民間需要の好循環を生み出す地域経済の将来展望を描けるかどうかなど、いくつかの要因に依存するため、引き続き幅をもってみておく必要がある。第4に、企業や家計の中長期的な成長期待に関する不確実性がある。中心的な見通しでは、企業や家計の中長期的な成長期待は維持されることを想定しているが、企業や家計の成長期待が変化することがないかどうか注意を要する。すなわち、日本経済は、もともと急速な高齢化の進展などを
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12背景に、経済成長率の趨勢的な低下という問題を抱えていたが、震災後は、電力需給を巡る不確実性や、震災からの着実な復旧・復興への取り組みなど、新たな課題にも直面している。こうした課題への対応を巡る展望がなかなか拓けない場合や、円高傾向が進み、企業収益や雇用・所得環境を継続的に下押す場合、また、海外生産シフトに対してそれに代わる新たな国内生産活動が生まれてこない場合には、企業や家計の中長期的な成長期待が低下し、見通し期間の景気も下振れるリスクが強まる。一方、企業が、M&Aを含めた海外進出によりグローバル需要の開拓力を強め、国内では独自性や非価格競争力に優れた財・サービスの開発力を高めていけば、急速に高齢化が進む中にあっても中長期的な成長期待が高まる可能性もある。震災からの復興を契機に地域経済の活性化が進む場合や、財政や社会保障の持続性に向けた展望が拓けていく場合も、成長期待にプラスの影響がある。電力需給を巡る課題についても、それに取り組む中で技術革新や新たなビジネスモデルが生まれ、成長力強化へ向けた一つのきっかけになる可能性もある。(2)物価情勢物価情勢の先行きについても、上下両方向の不確実性がある。まず、景気について、上述のような上振れ、下振れ要因が顕現化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。
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また、物価に固有の要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率が挙げられる。経済成長率が今回の中心的な見通しに沿って推移する場合でも、消費者物価がしっかりとプラス圏で定着するようになるには、時間がかかると予想される。そうした環境のもとでは、企業や家計が、物価は中長期的にも上昇しにくいという予想を強める可能性がある。中長期的な予想物価上昇率が低下する場合には、見通し期間における実際の物価や賃金も、下振れる可能性が高まる。
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13第2に、輸入物価の動向である。原油をはじめとする一次産品の価格動向については、上下両方向に不確実性が大きい。基礎的な衣食住の水準を引き上げるニーズの旺盛な新興国が、高い経済成長を続ければ、食料やエネルギーに対する世界需要は拡大する一方、一次産品の供給力の拡大余地は、少なくとも短期的には限られている。そうした一次産品の需給構造を考えると、新興国経済の上振れが、国際商品市況の大幅な上昇につながる可能性がある。他方、世界経済の下振れリスクが顕現化した場合、グローバル投資家のリスク回避姿勢のさらなる強まりが、国際商品市況の下落を増幅する可能性もある。このほか、為替相場の変動も、実体経済を通じる間接的な波及経路や、輸入物価を通じるより直接的な経路を通じて、消費者物価に相応の変化をもたらし得る。6.金融政策運営日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」、すなわち「金融政策運営に当たり、各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率」を念頭に置いた上で、経済・物価情勢について2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理することとしている。現在、「中長期的な物価安定の理解」については、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である」としている。
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まず、第1の柱、すなわち先行き 2013年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しについて点検する。上述の通り、わが国経済は、当面、海外経済減速や円高の影響を受けるものの、見通し期間を通じてみれば、新興国・資源国を中心に海外経済が高めの成長を維持するとみられることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。物価面では、消費者物価の前年比は、2009年末頃から下落幅は着実に縮小
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14を続け、最近では概ねゼロ%となっている。以上の最近までの動きも踏まえつつ、先行きを展望すると、消費者物価の前年比は、当面はゼロ%近傍で推移するが、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間の後半にかけてゼロ%台半ばになっていくと考えられる。こうした経済・物価見通しを総合的に評価すると、日本経済は、「中長期的な物価安定の理解」に基づいて物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要するものの、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられる。次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する8。景気については、バランスシート調整が米国経済に与える影響には引き続き注意が必要である。また、欧州のソブリン問題については、今後、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が、強まっていくことにならないかどうか、注視していく必要がある。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、丹念に点検していく必要がある。
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物価面では、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きい。中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。日本銀行は、昨年10月に導入した「包括的な金融緩和政策」のもとで、資産買入等の基金による金融資産の買入れ等を進めており、買入れ等の規模については、この間、累次にわたり大幅な増額を行ってきている。また、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていな
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8 例えば、発生確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因も含めて、点検を行っている。
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15いことを条件に、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにしている。先行きの金融政策運営については、上述の2つの柱による点検を踏まえ、日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。日本経済が直面している問題は、リーマン・ショック後の大幅な需要の落ち込みからの回復という短期・循環的な問題にはとどまらない。より根源的には、中長期的な成長期待の低下という、長期的・構造的な要因が重要である。すなわち、わが国経済は、これまでも、急速な高齢化や労働生産性の伸び悩みなどを背景とした経済成長率の趨勢的な低下という基本的な課題に直面してきた。加えて、日本経済は、震災からの復旧・復興という新たな課題にも直面している。対GDP比で先進国中最大の政府債務を抱えるもとで、市場からの信認を確保し続けていくため、中期的な財政健全化への展望を明確にする必要にも迫られている。
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こうした課題を克服し、先行き、新たな経済発展の基礎を築いていくためには、日本経済が置かれている以上の状況を正しく認識しつつ、政府、中央銀行、金融機関、民間企業とも、中長期的に持続可能な成長力の強化に向けて、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要である。以上
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16(参考1)▽2011~2013年度の政策委員の大勢見通し――対前年度比、%。なお、<>内は政策委員見通しの中央値。
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実質GDP 国内企業物価指数消費者物価指数(除く生鮮食品)2011年度+0.2~+0.4<+0.3>+1.7~+2.0<+1.8>0.0~ 0.0<0.0>7月時点の見通し+0.2~+0.6<+0.4>+2.2~+2.5<+2.4>+0.6~+0.8<+0.7>2012年度+2.1~+2.4<+2.2>+0.1~+0.3<+0.2>0.0~+0.2<+0.1>7月時点の見通し+2.5~+3.0<+2.9>+0.5~+0.9<+0.6>+0.6~+0.7<+0.7>2013年度+1.3~+1.6<+1.5>+0.7~+0.9<+0.8>+0.4~+0.6<+0.5>(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。(注2)各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。(注3)消費者物価指数は、従来の 2005年基準から 2010年基準に変更されている。前回から今回にかけての見通しの修正には、この基準年の変更が大きく影響している。(注4)消費者物価指数の参考指数として、連鎖基準指数が公表されている。
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その連鎖基準指数ベースでみた場合、先行き 2013年ごろの前年比は、通常の固定基準年指数に基づく今回の消費者物価見通しに比べて、若干低くなっている可能性がある。(注5)政策委員全員の見通しの幅は下表の通りである。――対前年度比、%。実質GDP 国内企業物価指数消費者物価指数(除く生鮮食品)2011年度+0.2~+0.4 +1.7~+2.1 -0.1~+0.17月時点の見通し+0.2~+0.6 +2.2~+2.6 +0.5~+0.82012年度+2.0~+2.4 +0.1~+0.4 -0.1~+0.37月時点の見通し+2.5~+3.0 +0.3~+1.0 +0.4~+0.82013年度+1.2~+1.7 +0.6~+1.0 +0.3~+0.7
§42
17(1)実質GDP (2)消費者物価指数(除く生鮮食品)<2011年度><2011年度><2012年度><2012年度><2013年度><2013年度>(注1)縦軸は確率(%)を、横軸は各指標の値(前年比、%)を示す。今回の確率分布は棒グラフで示されている。実線は2011年7月時点の確率分布を表す。(注2)縦の太点線は、政策委員の見通しの中央値を表す。また、○で括られた範囲は政策委員の大勢見通しを、△で括られた範囲は全員の見通しを、それぞれ表す。(注3)縦の細点線は、2011年7月時点の政策委員の見通しの中央値を表す。(注4)消費者物価指数は、従来の2005年基準から2010年基準に変更されている。前回から今回にかけての見通しの修正には、この基準年の変更が大きく影響している。(注5)リスク・バランス・チャートの作成手順については、2008年4月の「経済・物価情勢の展望」BOXを参照。
§43
051015202530354045500510152025303540455005101520253035404550-6.0未満-6.0~-5.6-5.5~-5.1-5.0~-4.6-4.5~-4.1-4.0~-3.6-3.5~-3.1-3.0~-2.6-2.5~-2.1-2.0~-1.6-1.5~-1.1-1.0~-0.6-0.5~-0.10.0~0.40.5~0.91.0~1.41.5~1.92.0~2.42.5~2.93.0~3.43.5~3.94.0~4.44.5~4.95.0~5.45.5~5.96.0~6.46.5~6.97.0~7.47.5~7.98.0以上051015202530051015202530051015202530-2.0以下-1.8-1.6-1.4-1.2-1.0-0.8-0.6-0.4-0.20.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.0以上(参考2)リスク・バランス・チャート