経済・物価情勢の展望(2012年4月(基本的見解))基本的見解
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12012年4月27日日本銀行経済・物価情勢の展望(2012年4月)【基本的見解】11.はじめに今回の展望レポート(経済・物価情勢の展望(2012年4月))では、2013年度までの日本経済の見通しを示す。以下では、まず、わが国経済の先行きを左右する国際金融資本市場や海外経済の動向を記述し、その後、わが国の金融環境を評価する。それらを踏まえて、相対的に蓋然性が高いと判断される経済・物価の見通し(中心的な見通し)を記述した後、それに対する上振れ要因・下振れ要因を検討する。最後に、金融政策運営の基本的な考え方を整理する。2.国際金融資本市場および海外経済昨年夏以降、国際金融資本市場では、欧州債務問題に対する懸念を主因に、年末にかけては緊張が高まった。これに対して、各国の政府・中央銀行は、さまざまな施策を講じてきた。すなわち、欧州中央銀行(ECB)は、期間3年の大規模な長期資金供給を実施した。債務問題が最も深刻なギリシャに対しては、民間債権者保有分の既存債務削減が実施され、それを受けて欧州連合(EU)および国際通貨基金(IMF)による第2次支援策が決定された。財政規律の向上や資金面からの危機対応力の強化についても、EU各国が「財政協定」に署名したほか、欧州金融安定基金(EFSF)および欧州安定メカニズム(ESM)の融資能力増強に合意するなど、進展がみられた。
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この間、日本銀行を含む6中央銀行は、昨年11月末に、国際短期金融市場の緊張への協調対応策として、米ドル資金供給
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14月27日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
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2オペレーションの貸付金利の引き下げなどを公表した。これらの措置等を背景に、ユーロやドルの銀行間取引における短期金利が低下するなど、欧米の金融機関の資金調達環境は改善してきており、国際金融資本市場は、全体として落ち着きを取り戻している。財政状況の厳しい国の国債利回りは、上昇圧力が根強いが、昨年秋から本年初にかけての局面に比べれば、低下している。こうしたもとで、昨年末頃に強く懸念されていたテイル・リスク、すなわち、国際金融資本市場が動揺し世界経済が大きく下振れる可能性は低下してきている。また、米国経済の緩やかな改善が続くなど、世界経済にはやや明るい動きがみられるようになってきている。これらを反映して、グローバルな投資家のリスク回避の度合いは、昨年後半に比べて弱まっており、各国株価や国際商品市況の持ち直し、米欧社債市場における信用スプレッドの縮小などの動きがみられた。極端な「安全資産への逃避」が巻き戻された結果、為替市場においても、円は対ドル、対ユーロとも、昨年末頃に比べ幾分円安となっている。次に、海外経済の動きをみると、2011年春以降、欧州債務問題の影響による国際金融資本市場の緊張の高まりや、新興国・資源国における既往の金融引き締めの影響などから、海外経済の成長ペースは鈍化した。最近の海外経済は、なお減速した状態から脱していないものの、改善の動きもみられている。
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地域別にみると、米国経済は緩やかな回復を続けている。すなわち、企業部門では、良好な企業収益を背景に設備投資が緩やかに増加している。家計部門についても、バランスシート調整圧力が引き続き重石となっているものの、最近は、雇用情勢の緩やかな改善などから、個人消費は底堅い動きとなっている。欧州経済は、緊縮財政の影響などから停滞色の強い状態が続いているが、最近では、金融資本市場が幾分落ち着きを取り戻しているもとで、全体として、停滞感の一段の強まりには歯止めが
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3かかっている。新興国・資源国経済については、総じて高めの成長を維持しており、このところ、先進国向け輸出が下げ止まっているほか、インフレ率が総じて低下傾向にあり、そのもとで内需が底堅く推移していることから、全体として成長ペースの鈍化傾向が止まってきている。海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもとで、新興国・資源国に牽引されるかたちで、徐々に成長率が高まっていき、見通し期間中の年平均成長率は、過去の長期平均との比較で高めになると見込まれる2。国・地域別にみると、米国経済については、バランスシートの調整圧力は残るものの、緩和的な金融環境などを背景に、緩やかな景気回復を続けると考えられる。欧州経済については、債務問題に端を発するテイル・リスクが顕在化しないとの想定のもとで、緩やかな回復に向かうが、その動きは緊縮財政の継続などから抑制されたものになる可能性が高い。この間、新興国・資源国経済については、先進国経済の改善のほか、インフレ圧力の低下やその下での金融緩和などを背景に、生産・所得・支出の好循環が徐々に強まり、高めの成長で推移する可能性が高いと考えられる。3.わが国の金融環境わが国の金融環境をみると、日本銀行が強力に金融緩和を推進する中、緩和の動きが続いている。
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すなわち、市場金利が、長めの金利も含めてきわめて低い水準で推移するもとで、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。CPの発行環境は、良好な状態が続いている。社債市場についても、経営環境を巡り不透明感が強い電力会社を除き、発行環境は総じて
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2 IMFによる世界経済の成長見通し(各国・地域の実質成長率見通しを購買力平価ベースで集計したもの)をみると、本年1月に、昨年9月対比で、欧州を中心に下方修正された後、4月の改定見通しでは小幅ながら上方修正されている。4月時点の 2012年の世界経済成長率の見通しは+3.5%であり、2013年には、成長率は+4.1%に再加速する見通しとなっている。ちなみに、1980年以降 30年間の平均成長率は+3.3%である。
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4良好な状態となっている。企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和方向の動きが続いている。企業の資金繰りも、総じてみれば、改善した状況にある。資金繰りや企業からみた貸出態度を表わす各種の判断指標は、企業の規模によって緩和度合いに差はあるものの、いずれも 2000年以降の平均以上の水準となっている。資金需要面では、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。企業の資金調達残高をみると、銀行貸出の前年比は、昨年末にプラスに転化し、足もとではプラス幅が拡大している。CP・社債については、振れを均してみると、両者合わせて前年比小幅のプラスで推移している。以上のように、わが国の金融環境は、欧州債務問題を受けて国際金融資本市場の緊張が強かった局面においても、大きな影響を受けることはなく、安定を維持してきた。こうした金融環境の安定の背景として、日本の金融システムが、景気後退、株価下落、長期金利上昇などの負のショックに対し相応の耐性を備えていることや、日本銀行が強力に金融緩和を推進していることが挙げられる。先行きについても、こうした緩和的な金融環境が、国内民間需要の自律回復への動きを支えていくと予想される。
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もっとも、金融資本市場の国際的な連関が高まっていることを踏まえると、国際金融資本市場の今後の動向次第では、その影響がわが国の金融システムや金融環境に及ぶ可能性には、引き続き注意する必要がある3。4.わが国の経済・物価の中心的な見通し(1)経済情勢上述の海外経済の動向と内外の金融情勢を踏まえたうえで、わが国経済の先行きについて、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(中心的な見通し)を検討する。
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3 わが国の金融システムの安定性に関する評価について、詳しくは「金融システムレポート」(日本銀行 2012年4月)を参照。
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5わが国の経済は、リーマン・ショックからの回復の途上において、東日本大震災により再び大きく落ち込んだ後、昨年秋口までは、サプライチェーンの修復につれて、着実に持ち直してきた。その後、2011年度後半は、輸出や生産が海外経済の減速や円高の影響などを受け、景気は横ばい圏内の動きとなった。2011年度の成長率は、1月の中間評価時点の見通し通り、震災後の落ち込みを反映して、小幅のマイナスになったと見込まれる。最近の景気をみると、なお横ばい圏内にあるが、前向きの経済活動に広がりがみられるなど、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。こうした足もとの状況も踏まえつつ、わが国経済の先行きを展望すると、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、2012年度前半には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。すなわち、輸出が増加基調に復するほか、復興需要の増加が公的需要・民間需要の両面で、年度を通じて景気の押し上げに寄与すると考えられる。こうしたもとで、生産から所得・支出への波及メカニズムも徐々に強まるため、2012年度全体をみると、比較的高い成長率となることが予想される。
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2013年度については、復興需要による景気押し上げ効果が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012年度対比では幾分鈍化するものの、海外経済が高めの成長を続けるもとで、潜在成長率をはっきりと上回る成長が続くと考えられる4。1月の中間評価時点の見通しと比べると、2012年度および 2013年度の成長率は、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低下し、市場環境がやや改善したことなどから、2012年度を中心に、幾分上振れて推移すると考えられる5。企業・家計の部門別にやや詳しく述べると、以下の通り
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4 見通し期間中の潜在成長率を、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると、「0%台半ば」と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。5 今回の見通しにおいては、消費税率引き上げとその影響は織り込んでいない。わが国
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6である。企業部門について、輸出は、なお横ばい圏内の動きとなっているが、タイの洪水の影響を受けた落ち込みからは既に回復しているほか、世界的な情報関連財の在庫調整にも目途がつきつつあるなど、少しずつ明るい動きがみられ始めている。先行きについては、海外経済が減速局面から脱し、円高の下押し圧力も徐々に弱まっていくと考えられることから、輸出は再び増加基調に復していくと考えられる。震災復興関連の需要については、これまでも、被災した設備の修復や、震災後に一旦抑制された消費関連の需要の復元、瓦礫の処理や仮設住宅の建設などの動きがみられていたが、最近では、公共投資についても増加に転じており、今後、さらに強まっていくと予想される6。こうした内外需要を背景に、生産や企業収益が増加していくとみられ、企業の中長期的な成長期待が下振れしないとの想定のもとで、設備投資も緩やかに増加を続けていく可能性が高い7。次に、家計部門について、雇用・所得環境をみると、有効求人倍率が緩やかに上昇しているなど、改善の動きがみられる。先行きについては、被災地を含めた地域間、あるいは業種間の違いは残るとみられるものの、全体としてみれば、生産等の経済活動が持ち直していく中で、その好影響が雇用・所得環境にも徐々に及んでいくと考えられる。
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ただし、東日本大震災、海外経済減速、円高などを受けた 2011年度の企業業績の厳しさが、タイムラグを伴って影響する可能性などを考慮すると、雇用・所得環境の改
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や各国の過去の経験では、消費税率引き上げ前における駆け込み需要とその後の反動が相応にみられた。6 震災復興関連の予算をみると、平成 23年度補正予算と平成 24年度予算の東日本大震災関係経費をあわせて、「東日本大震災からの復興の基本方針」で示された、当初5年間で少なくとも 19 兆円程度、という事業規模のほとんどが、すでに手当てされている。これは、日本全体のGDPの約4%、被災4県(岩手県、宮城県、福島県および茨城県)のGDPの6割強に達する大規模なものである。7 ちなみに、内閣府の「企業行動に関するアンケート」(調査時点は本年1月)をみると、先行き3年間あるいは5年間の平均経済成長率に関する企業の見通しは1%台半ばとなっており、震災前に行われた昨年の調査結果とくらべて、幾分上昇している。
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7善が明確になるのは、2012年度後半以降になるとみられる。個人消費についてみると、震災後の落ち込みから経済活動や労働需給が回復し、消費者マインドも改善するもとで、このところ、底堅さを増している。こうした動きには、自動車に対する需要刺激策の効果などの一時的な要因や、高齢化に対応した潜在需要の掘り起こしが徐々に進んでいることなども寄与している。先行きの個人消費については、雇用・所得環境が改善に向かうもとで、徐々に伸びを高めていくと予想される。この間、住宅投資については、低金利や復興需要などを背景に、見通し期間を通じて、緩やかに増加していくと考えられる。(2)物価情勢日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として、金融政策を運営している。その際、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を、「中長期的な物価安定の目途」として数値で示している。具体的には、「中長期的な物価安定の目途」については、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途としている。こうした「中長期的な物価安定の目途」を踏まえつつ、物価の動向を点検する。
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消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比の推移をやや長い目で振り返ると、2009年8月に過去最大の下落幅(-2.4%)となった後、労働や設備の稼働状況、すなわちマクロ的な需給バランスが緩やかな改善傾向を続ける中、2009年末頃から下落幅は着実に縮小を続け、最近では、概ねゼロ%で推移している。先行きの物価を巡る環境を展望すると、マクロ的な需給バランスは、上述の通り、景気が緩やかな回復をたどるもとで、改善していくと考えられる。中長期的な予想物価上昇率については、市場参加者やエコノミストの見方は概ね1%程度で安定的に推移しているほか、家計の見方にも大きな
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8変化はみられず、見通し期間においても安定的に推移すると想定できる。国際商品市況については、地政学リスクの高まりなどから原油価格を中心に強含んでおり、先行きについても、新興国の経済成長に伴う食料・エネルギーの需要拡大などを背景に、基調的には緩やかな上昇傾向をたどると想定される。以上の環境を前提に、物価情勢の先行きを展望すると、国内企業物価指数の前年比は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間を通じて緩やかな上昇を続けると見込まれる。消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。今回の消費者物価の見通しを、1月の中間評価時点と比較すると、景気の見通しが幾分上方修正されており、その分、マクロ的な需給バランスの改善も見込まれるうえ、為替円高の修正や原油価格上昇の影響もあって、幾分上振れしている。上記のとおり、物価情勢は、「中長期的な物価安定の目途」に向かって改善しているが、その実現にはなお時間がかかるとみられる8。
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この点について、実体経済の強さが物価上昇圧力を生み出すというメカニズムに即して整理すると、循環的な要因と構造的な要因の双方が作用していると考えられる。循環的な要因としては、リーマン・ショックによる景気の落ち込みがきわめて大きかったため、マクロ的な需給バランスは現在なお改善途上にあることが挙げられる。このため、先行き景気が緩やかな回復をたどるもとでも、マクロ的な需給バランスが概ねバランスした状態に達し、マ
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81990年代以降の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の動きを年度ベースでみると、1年間に約1%ポイント改善したのは、消費税率の引き上げや国際商品市況の大幅な上昇といった要因が影響した時期に限られている。
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9クロの需給面から物価を押し上げる力がある程度明確になってくるのは、見通し期間の終わり頃になると予想される。また、構造的な要因としては、経済成長率が趨勢的に低下してきたことが挙げられる。すなわち、他国に例をみない急速な高齢化に対して、成長力を強化する取り組みや社会保障制度の持続可能性を高める見直しが十分に進まなかったことで、企業や家計の成長期待が弱まり、支出行動が慎重化した。こうした状況が、物価の下落圧力をもたらす要因として作用してきたと考えられる。5.上振れ要因・下振れ要因(1)経済情勢以上は、現時点で相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(中心的な見通し)である。こうした見通しに対する上振れまたは下振れ要因としては、以下のような点に注意する必要がある。第1に、国際金融資本市場や国際商品市況の影響を含めた、海外経済の動向である。国際金融資本市場が動揺し世界経済が大きく下振れるテイル・リスクは低下したが、そうしたリスクの根源的な原因である欧州債務問題の解決には、なお多くの課題が残っている。
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欧州中央銀行の資金供給等により市場の安定が保たれている間に、周縁国における競争力の引き上げや、財政の持続可能性の確保といった改革が着実に進めば、市場からの信認が強化され、世界経済の上振れ要因となる可能性がある一方で、改革の実行に関する懸念が再燃した場合には、国際金融資本市場における緊張が再び高まり、世界経済ひいてはわが国経済の下振れ要因となりうる。こうした国際金融資本市場を通じるルートのほかにも、海外経済にはなお様々な不確実性がある。欧州経済については、ユーロ圏中核国の国際競争力の強さなどを背景に上振れる可能性がある一方、周縁国における財政緊縮や金融環境の悪化から下振れる可能性もある。米国経済については、バランスシート調整の進捗度合いについて不確実性が大きい。住宅価格が
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10ピークを打ち既に5~6年が経過していることを踏まえると、バランスシート調整圧力は徐々に減衰してきているとみられる。したがって、雇用の改善とも相まって住宅市場の底打ちがはっきりしてくれば、景気回復のモメンタムが強まる可能性がある。一方、調整がさらに長引き、景気回復のペースが想定以上に緩やかなものにとどまる可能性もある。このほか、米国については、財政政策の帰趨を巡る不確実性も高い。新興国・資源国については、物価安定と成長が両立する形でソフトランディングできるかどうか、なお不透明感が強い。潜在需要が強いことや、財政・金融政策により景気を支える余地が大きいことなどを踏まえると、インフレ圧力が速やかに低下すれば、成長率が上振れる可能性もある一方で、根強い賃金上昇や原油高などからインフレ圧力が十分に鎮静化されず、成長率が下振れる可能性もある。この間、国際商品市況については、地政学リスクの高まりなどによって原油価格等が一段と上昇した場合、世界経済の下振れリスクが高まるほか、資源輸入国であるわが国にとっては、交易条件の悪化から企業収益や家計の実質購買力が下押しされる。一方、国際商品市況の上昇が世界経済の拡大を反映したものである場合には、輸出拡大等のプラス面が、交易条件悪化のマイナス面を上回る可能性もある。第2に、復興関連需要を巡る不確実性がある。
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復興関連需要については、最近では、復興計画の策定が進められ、補正予算等の執行が進捗する中で、資本ストックの復元などに向けた公共投資も含めて、復興関連需要は徐々に強まってきている。先行きについても、復興関連需要は、一段と明確になっていくと予想されるが、一方で、こうした動きが、建設労働者の不足を始めとした様々な供給サイドのボトルネックによって影響を受ける可能性もある。また、復興関連需要がどの程度成長率を押し上げるかについては、それが一時的な需要増加にとどまらず、地域経済の再生に向けた道筋
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11がよりはっきりし、将来に関する不確実性が低下してくることを通じて民間需要の継続的な増加につながるかどうかが重要であり、現時点では幅を持ってみておく必要がある。第3に、企業や家計の中長期的な成長期待に関する不確実性がある。中心的な見通しでは、企業や家計の中長期的な成長期待に大きな変化は生じないと考えているが、今後の展開によっては上下双方向に変化する可能性がある。例えば、グローバル需要の取り込みや内外における立地の最適化が企業の重要な課題であることを踏まえると、今後も海外での生産や業務の拡大が見込まれるが、それに代わる新たな国内生産活動が生まれてこない場合は、企業や家計の国内の需要や雇用に関する中長期的な成長期待が低下する可能性がある。電力需給を巡る問題についても、夏場などの電力需要期において、天候要因等によっては、生産活動への制約となる可能性があるが、こうした短期的な影響だけでなく、中長期的な成長期待の下振れにつながりうるという点に注意が必要である。他方、グローバル需要の開拓、高齢層のニーズや多様化した内需の掘り起こし、業務リスク管理体制の見直し、エネルギー関連の技術やビジネスモデルの革新など、様々な分野において、日本経済の成長力強化に向けた取り組みが着実に進められ、その成果が現れ始めれば、中長期的な成長期待が上振れることも考えられる。
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第4に、わが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題がある。例えば、高齢化の進行にもかかわらず、近年、家計の貯蓄率が下げ止まっていることなどを踏まえると、人々は、政府債務残高の累積から、社会保障制度の維持可能性や将来の税負担増などへの不安を感じ、支出行動を慎重化させている可能性がある。財政の持続可能性に対する信認が低下するような場合には、そうした人々の将来不安の強まりから、経済の下振れにつながるおそれがある。他方、中長期的な財政再建の道筋が明らかになり、また、
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12社会保障制度の維持可能性が高まれば、人々の将来不安は軽減され、経済に好影響が及ぶと考えられる。なお、金融市場のグローバル化が進展している現状を踏まえると、多くの先進国で公的債務残高への懸念が生じている中で、わが国の財政運営に対する市場の目も厳しくなってきているとみられる。そうしたもとで、仮に財政再建に向けた取り組みが不十分であると市場に評価された場合は、長期金利の上昇を招き、金融機関の経営ひいては日本経済全体に悪影響が及ぶと考えられる。(2)物価情勢物価情勢の先行きについても、上下両方向の不確実性がある。まず、景気について、上述のような上振れ、下振れ要因が顕現化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。また、物価に固有の要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。消費者物価の前年比上昇率が1%に達するにはなお時間を要すると判断されるが、そうした環境のもとで、企業や家計が物価はなかなか上昇しないという予想を強めた場合、実際の物価にも、賃金とともに下方圧力がかかる可能性がある。他方、成長力強化への取り組みが成功し、差別化された新たな財・サービスが広く創出されていけば、潜在需要が顕在化するかたちで価格が上昇し、中長期的な予想物価上昇率が高まることも考えられる。
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こうしたシナリオにおいては、経済成長率が上振れるとともに、物価は経済成長率の上振れから予想される以上に上振れる可能性がある。第2に、輸入物価の動向である。原油については、地政学リスク等を背景に、大きく変動する可能性があるほか、それ以外の一次産品の価格動向についても、上下両方向に不確実性がある。また、為替相場の変動も、実体経済を通じる間接的な波及経路のほか、輸入物価を通じるより直接的な経路を通じて、消費者物価に変化をもたらしうる。
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136.金融政策運営以上の経済・物価情勢について、「中長期的な物価安定の目途」を念頭に置いた上で、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。まず、第1の柱、すなわち先行き 2013年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しについて点検する。上述の通り、わが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、2012年度前半には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。こうした経済・物価見通しを総合的に評価すると、やや長い目でみれば、日本経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられる。次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する9。景気面では、欧州債務問題に端を発するテイル・リスクは低下しているが、国際金融資本市場や海外経済を巡り、なお大きな不確実性が存在する。
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また、国際商品市況の一段の上昇が、交易条件の悪化に伴う実質購買力低下などを通じて、国内民間需要を下押しする可能性もある。さらに、復興関連需要については、今後の強まり方や経済効果などを巡る不確実性がある。この間、中長期的な成長期待については、成長力強化への取り組み次第では、上振れ・下振れ双方向の可能性がある。財政の持続可能性確保へ向けた取り組みも、経済動
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9 例えば、発生確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因も含めて、点検を行っている。
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14向に大きな影響を及ぼし得る。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。先行きの金融政策運営については、上述の2つの柱による点検を踏まえ、強力な金融緩和の推進と成長基盤強化の支援の双方を通じて、デフレ脱却に向けて適切な政策運営に努めていく。すなわち、第1に、日本銀行は、当面の「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないことを条件としている。この点、現時点において、過度に楽観的な期待に基づいて金融的な不均衡が生じているとは考えにくい 10。もっとも、政府債務残高が顕著に累増しているなかで、金融機関は多くの国債を保有しており、何らかのきっかけで、長期金利が上昇した場合、経済・金融に大きな影響を与える可能性がある点に留意しておく必要がある。こうした観点からは、金融政策の運営に対する信認を維持していくことが重要である。第2に、日本銀行としては、強力な金融緩和の推進と併せて、わが国経済の成長基盤強化にも、中央銀行の立場から引き続き取り組んでいく。
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わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面している。こうした課題を克服し、新たな経済成長の基礎を築いていくためには、民間企業が付加価値の創造力を高め、外需の取り込みや内需の掘り起こしを進める必要がある。また、このような企業の前向きな活動を支えていくために、政府が環境整備に努めることや、民間金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを行うことも、
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10 詳しくは「金融システムレポート」(日本銀行 2012年4月)を参照。 15重要である。さらに、政府債務が対GDP比でみて先進国中最大となっているもとで、中長期的な財政の持続可能性をしっかりと確保していくことも不可欠である。このように、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。 以上 16(参考1)▽2011~2013年度の政策委員の大勢見通し――対前年度比、%。なお、<>内は政策委員見通しの中央値。
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実質GDP 国内企業物価指数消費者物価指数(除く生鮮食品)2011年度-0.2~-0.2<-0.2>+1.70.01月時点の見通し-0.4~-0.3<-0.4>+1.8~+1.9<+1.8>-0.1~ 0.0<-0.1>2012年度+2.1~+2.4<+2.3>+0.4~+0.7<+0.6>+0.1~+0.4<+0.3>1月時点の見通し+1.8~+2.1<+2.0>-0.1~+0.2<+0.1>0.0~+0.2<+0.1>2013年度+1.6~+1.8<+1.7>+0.7~+0.9<+0.8>+0.5~+0.7<+0.7>1月時点の見通し+1.4~+1.7<+1.6>+0.6~+1.0<+0.8>+0.4~+0.5<+0.5>(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。(注2)各政策委員は、政策金利について市場金利に織り込まれたとみられる市場参加者の予想を参考にしつつ、上記の見通しを作成している。(注3)2011年度について、実質GDPは政策委員の見通し。国内企業物価指数と消費者物価指数(除く生鮮食品)は実績値。(注4)消費者物価指数の参考指数として、連鎖基準指数が公表されている。
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その連鎖基準指数ベースでみた場合、先行き 2013年ごろの前年比は、通常の固定基準年指数に基づく今回の消費者物価見通しに比べて、若干低くなっている可能性がある。(注5)政策委員全員の見通しの幅は下表の通りである。――対前年度比、%。実質GDP 国内企業物価指数消費者物価指数(除く生鮮食品)2011年度-0.2~-0.1 +1.70.01月時点の見通し-0.5~-0.3 +1.7~+1.9 -0.1~ 0.02012年度+2.1~+2.4 +0.3~+0.8 +0.1~+0.41月時点の見通し+1.8~+2.2 -0.2~+0.2 -0.2~+0.32013年度+1.5~+1.8 +0.6~+1.0 +0.4~+0.81月時点の見通し+1.4~+1.8 +0.5~+1.0 +0.2~+0.6
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17(参考2)リスク・バランス・チャート(1)実質GDP (2)消費者物価指数(除く生鮮食品)<2012年度><2012年度><2013年度><2013年度>(注1)縦軸は確率(%)を、横軸は各指標の値(前年比、%)を示す。今回の確率分布は棒グラフで示されている。実線は2012年1月時点の確率分布を表す。(注2)縦の太点線は、政策委員の見通しの中央値を表す。また、○で括られた範囲は政策委員の大勢見通しを、△で括られた範囲は全員の見通しを、それぞれ表す。(注3)縦の細点線は、2012年1月時点の政策委員の見通しの中央値を表す。(注4)リスク・バランス・チャートの作成手順については、2008年4月の「経済・物価情勢の展望」BOXを参照。
§40
0510152025303540455005101520253035404550-6.0未満-6.0~-5.6-5.5~-5.1-5.0~-4.6-4.5~-4.1-4.0~-3.6-3.5~-3.1-3.0~-2.6-2.5~-2.1-2.0~-1.6-1.5~-1.1-1.0~-0.6-0.5~-0.10.0~0.40.5~0.91.0~1.41.5~1.92.0~2.42.5~2.93.0~3.43.5~3.94.0~4.44.5~4.95.0~5.45.5~5.96.0~6.46.5~6.97.0~7.47.5~7.98.0以上0051015202530051015202530-2.0以下-1.8-1.6-1.4-1.2-1.0-0.8-0.6-0.4-0.20.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.0以上