← Back
Bank of JapanReportApr 26, 2013

経済・物価情勢の展望(2013年4月(基本的見解))基本的見解

Original in Japanese

Full text

§1

12013年4月26日日本銀行経済・物価情勢の展望(2013年4月)【基本的見解】11.わが国の経済・物価の中心的な見通し2(1)経済情勢わが国の経済をみると、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。先行きは、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。その後は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環が維持されるもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。第1に、海外経済は、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、米国や中国などを中心に、緩やかながらも次第に成長率を高めていくと考えられる。こうした海外情勢に加えて、為替相場の円安方向の動きにも支えられ、わが国の輸出は増加していくと見込まれる。第2に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。すなわち、「量

§2

14月26日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。2 今回、見通し期間を1年間延長し、2015年度までとした。3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、見通し期間平均では「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。

§3

2的・質的金融緩和」は、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、期待の転換を通じて予想物価上昇率を上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できる。これらが民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。第3に、公共投資は、各種経済対策や復興関連予算の増額などから、当面、高水準で増加を続けるとみられる。第4に、政府による規制・制度改革や企業による内外の潜在需要の掘り起こしなどの取り組みが徐々に進展し、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。以上を前提に、先行きの景気展開を展望すると、2013年度は、公共投資と輸出の増加を起点とした生産・所得・支出の好循環が働き始めるとみられる。すなわち、設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果を背景に、防災・エネルギー関連投資や老朽化設備の更新需要などもあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、家計のマインド改善や高齢者の高い消費意欲に加えて、雇用者所得の改善も徐々に後押しとして作用していくことから、底堅さを増していくとみられる。こうしたもとで、日本経済は、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくとみられる。その後、2013年度下期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されることから、年度全体の成長率はかなり高めになると考えられる。

§4

2014年度から 2015年度にかけては、消費税率引き上げによる振れの影響を受けつつも、輸出の増加や金融緩和効果に支えられた国内民間需要の前向きな動きが続き、基調的には潜在成長率を上回る成長が見込まれる4。2014年度までの見通しを、 1月の中間評価時点と比べると、

§5

4 消費税率の引き上げは、主として税率の引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動(異時点間の代替効果)を通じて、経済に影響を及ぼすと考えられる。年度毎の成長率に及ぼす影響を定量的に試算すると、2013年度+0.3%ポイント程度、2014年度-0.7%ポイント程度、2015年度+0.2%ポイント程度となる。ただし、これらは、その時々の所得環境や物価動向にも左右されるなど不確実性が大きく、相当な幅をもってみ

§6

3成長率は、「量的・質的金融緩和」の導入、金融資本市場の状況の好転、公共投資の増額などにより、上振れて推移すると見込まれる。(2)物価情勢消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、このところゼロ%ないし小幅のマイナスが続いている。先行きの物価上昇率を規定する要因を点検すると、第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。この間、労働需給の引き締まり傾向は明確となり、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる。第2に、中長期的な予想物価上昇率については、足もと上昇を示唆する指標がみられる。先行きも、「量的・質的金融緩和」のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。第3に、輸入物価については、為替相場の動きが当面の上昇要因として働くうえ、国際商品市況が世界経済の成長に沿って緩やかな上昇基調をたどるとの想定のもと、見通し期間中、上昇を続けると見込まれる。以上を前提に、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると5、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向をたどり、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている。

§7

今回の 2014年度までの消費者物価の見通しを、1月の中間評価時点と比較すると、上振れしている。

§8

る必要がある。52回の消費税率引き上げが物価に及ぼす影響について、税率の引き上げ分が現行の課税品目すべてにフル転嫁されると仮定して機械的に試算すると、2014年度の消費者物価は2.0%ポイント、2015年度下期の消費者物価は1.3%ポイント(2015年度全体では0.7%ポイント)押し上げられる。

§9

42.上振れ要因・下振れ要因(1)経済情勢上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、国際金融資本市場の動向が挙げられる。欧州債務問題が国際金融資本市場の動揺と世界経済の大きな下振れにつながるテイル・リスクは後退しているが、欧州情勢を巡ってはなお不透明感が強く、今後の市場の展開を含め引き続き注意していく必要がある。第2に、海外経済の動向に関する不確実性がある。米国については、バランスシート調整の進捗や住宅市場等における金融緩和効果の強まり、新型エネルギーの好影響などを背景に景気が上振れる可能性がある一方、財政問題などから下振れる可能性もある。また、緊縮財政の影響が続く欧州や、持続可能な成長経路との対比で過剰設備を抱えているとみられる中国では、成長率の高まる時期が想定よりも遅れる可能性がある。海外経済の成長率が想定通り高まったとしても、世界的な設備投資の回復が相対的に遅れる場合には、わが国の輸出や鉱工業生産は、資本財・部品のウエイトが高いだけに、十分な恩恵を受けられない可能性もある。第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革等の今後の展開次第によって、上下双方向に変化する可能性がある。第4に、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の規模は、その時々の実質所得や物価の動向によって大きく変化し得る。

§10

第5に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋が明らかになり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。

§11

5(2)物価情勢物価に固有の上振れ、下振れ要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について不確実性が高い。企業や家計の予想物価上昇率が過去の緩やかな物価下落を反映するかたちで形成され、これがなかなか高まらない可能性がある一方、期待の転換により予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。第2に、マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度についても不確実性がある。企業が、厳しい競争環境が続く中でも、需給バランスの引き締まり度合いに応じて価格や賃金を引き上げていくかどうか注意が必要である。第3に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への転嫁の状況については不確実性が高い。3.金融政策運営以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」を念頭に置いたうえで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、見通し期間の後半にかけて、日本経済は、2%程度の物価上昇率が実現し、持続的成長経路に復する可能性が高いと判断される。次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。

§12

物価の中心的な見通しについても、中長期的な予想物価上昇率の動向を巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしていると考えられる。より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す

§13

6動きは観察されない。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は高水準である点には留意する必要がある6。先行きの金融政策運営については、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する7。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。 以上 6 詳しくは「金融システムレポート」(日本銀行2013年4月)を参照。7日本銀行は、「量的・質的金融緩和」の実施に当たり、市場から大量の長期国債を買入れることとなるが、これは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない。日本銀行としては、政府が、1月の「共同声明」の趣旨に沿って、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進することを強く期待している。 7 (参考)▽2012~2015年度の政策委員の大勢見通し――対前年度比、%。なお、<>内は政策委員見通しの中央値。 実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品) 消費税率引き上げの影響を除くケース2012年度+1.0~+1.0<+1.0>-0.2

§14

1月時点の見通し+1.0~+1.1<+1.0>-0.2~-0.1<-0.2>2013年度+2.4~+3.0<+2.9>+0.4~+0.8<+0.7>1月時点の見通し+1.9~+2.5<+2.3>+0.3~+0.6<+0.4>2014年度+1.0~+1.5<+1.4>+2.7~+3.6<+3.4>+0.7~+1.6<+1.4>1月時点の見通し+0.6~+1.0<+0.8>+2.5~+3.0<+2.9>+0.5~+1.0<+0.9>2015年度+1.4~+1.9<+1.6>+1.6~+2.9<+2.6>+0.9~+2.2<+1.9>(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。(注2)各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、上記の見通しを作成している。(注3)今回の見通しでは、消費税率が2014年4月に8%、2015年10月に 10%に引き上げられることを織り込んでいるが、各政策委員は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた消費者物価の見通し計数を作成している。

§15

(注4)消費税率引き上げの直接的な影響を含む 2014年度と 2015年度の消費者物価の見通しは、税率引き上げが現行の課税品目すべてにフル転嫁されることを前提に、物価の押し上げ寄与を機械的に計算したうえで(2014年度:+2.0%ポイント、2015年度:+0.7%ポイント)、これを上記の政策委員の見通しに足し上げたものである。(注5)政策委員全員の見通しの幅は下表の通りである。――対前年度比、%。

§16

実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品) 消費税率引き上げの影響を除くケース2012年度+1.0~+1.1 -0.2 1月時点の見通し+0.9~+1.1 -0.2~-0.12013年度+2.1~+3.1 +0.4~+1.01月時点の見通し+1.8~+2.5 +0.1~+0.72014年度+0.6~+1.7 +2.6~+3.7 +0.6~+1.71月時点の見通し+0.2~+1.3 +2.4~+3.0 +0.4~+1.02015年度+1.3~+2.1 +1.5~+3.0 +0.8~+2.3 8 ▽政策委員の見通し分布チャート

§17

(1)実質GDP(2)消費者物価指数(除く生鮮食品)(注1)上記の見通し分布は、各政策委員の示した確率分布の集計値(リスク・バランス・チャート)について、①上位10%と下位10%を控除したうえで、②下記の分類に従って色分けしたもの。なお、リスク・バランス・チャートの作成手順については、2008年4月の「経済・物価情勢の展望」BOXを参照。(注2)棒グラフ内の○は政策委員の見通しの中央値を表す。また、縦線は政策委員の大勢見通しを表す。(注3)消費者物価指数(除く生鮮食品)は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベース。

§18

-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.02006200720082009201020112012201320142015(前年比、%)年度実績値(前年比、%)-4.0-3.5-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.5-4.0-3.5-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.52006200720082009201020112012201320142015(前年比、%)年度実績値(前年比、%)上位40%~下位40% 上位30%~40%下位30%~40%上位20%~30%下位20%~30%上位10%~20%下位10%~20%