← Back
Bank of JapanPress conferenceSep 22, 2011Masaaki Shirakawa, Governor

総裁記者会見(2011年9月22日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Masaaki Shirakawa

私からは、日本経済、世界経済、および、世界全体としての政策対応のあり方を中心に話をしました。ポイントを 4 点に分けて申し上げます。まず日本経済ですが、震災直後の厳しい供給制約がほぼ解消し、経済活動が着実に持ち直しているということを申し上げました。世界経済については、先行きを巡る不確実性が高まり、国際金融・資本市場の緊張も高まっていることについて説明致しました。3 番目は、そうした不確実性の増大のもとで、安全資産選好が生じ、そのことが日本の円高の原因となっていることを申し上げました。そして、この円高が日本経済に対し悪影響を及ぼしていることを申し上げました。4 番目は、こうした状況のもとでの政策対応についてですが、なかんずく現在、欧州の問題が大きな焦点となっています。その欧州について、既に7月の首脳会談で決まったことを着実に実行に移していくことが大事であることを強調致しました。

§2Question

今回、 G20で欧州の問題については今日、世界経済をみると先進国が減速している中で新興国の役割が大きくなっています。こうした先進国と新興国の役割の過去と比べた変化をどう捉えていらっしゃって、その中で日本の存在感、役割は今後どのようにして発揮していくのかということについて教えて頂けますでしょうか。

§3Masaaki Shirakawa

先進国と新興国の経済は、もちろん実体経済面、金融面でリンクしています。かつてデカップリング論という議論がありましたが、完全なデカップリングも完全なカップリングもなく、真実はその中間にあるわけです。いずれにしろ、先進国、とりわけ欧州の経済・金融市場の混乱がもし広がれば、実体経済面、金融面を通じて新興国にもやがて影響して来るので、そういう意味で、この問題は、どちらかの問題ではなくて、世界経済全体の共通の問題だという認識で取り組んでいるということです。それから日本の貢献についてですが、日本の経済は確かに、現在、 GDPの相対的な順番で第 3 位になりましたが、それでも日本の経済規模は非常に大きいわけですし、金融の面でもプレゼンスはなお大きいわけです。その日本がどのような状況であるのかは、世界経済に大きく影響するわけです。一例を挙げると、欧州の短期金融市場は緊張感を強めていますが、日本の金融市場、円の金融市場は(相対的には)非常に安定しています。世界経済が不確実性を増す中で、大きな経済規模を占める日本の金融市場が安定していることの世界経済に対する貢献は非常に大きいと思います。

§4Masaaki Shirakawa

ふたつめは、現在の状況にどう対応するかという時に、日本はこの問題を先んじて経験しましたので、私どもが経験した中で学んだことを、できるだけ相手の立場に立って伝えていく努力をしていく必要がありますし、これを通じる貢献も大きいと思います。それから中央銀行プロパーの貢献としては、先週、日本銀行も含めて主要国の中央銀行は 3 か月物のドル資金供給の面でさらに協調行動を強めたわけです。これはバックストップとしての意味が非常に大きいと思います。もちろん、協力関係はこれに限るものではありませんが、引き続き中央銀行としての協力を行う中で、日本としてしっかり貢献していきたいと思っています。

§5Question

白川総裁にお伺いしたいのですが、声明の中でも金融システムについてかなり言及があるようで、欧州債務危機から銀行部門への悪循環というかネガティブフィードバックがIMFの報告等でも指摘されていました。この金融部門の波及に関して今回G20の中ではどのような議論がなされ、総裁はどのようにそこでの議論を感じられたのか見解をお聞かせ下さい。

§6Masaaki Shirakawa

今、記者の方がおっしゃったように、この会議に合わせて公表されたIMFのレポートでもそうですが、財政、金融システム、実体経済の三者の負の相乗作用が現在の国際金融市場をみていく上でのキーワードであると思っています。そうした認識を私自身も持っていますし、会議の出席者は――もちろん全員がこの点について発言したわけではありませんが――、皆が共有している問題意識だと思いました。従って、そのフィードバックを断ち切るためには、この声明にも書かれている通り、各国が財政の再建にしっかり取り組むこと、さまざまな構造改革に取り組むこと、それから金融の面では最後から 2 番目のパラグラフに書かれているような銀行システム・金融市場の安定化に向けた対策をしっかりとっていくことが大事だと思いますし、中央銀行については先程申し上げた通りです。

§7Question

総裁にお聞きしたいのですが、昨日FRB のFOMCの公表文が出て、その中でsignificant downside risks という表現で、かなりマーケットもそれによって動いたりしています。マーケットの話はお聞きしませんが、今の世界経済の現状として、このFRBの言っているダウンサイドリスクはどのような状況にあるのか。リーマン危機の後の世界経済の状況と比較して、今はどのような状況にあるとお考えですか。

§8Masaaki Shirakawa

世界経済の下振れリスクについての認識ですが、日本銀行の8月初の金融政策決定会合後の発表文にもある通り、日本銀行自身も世界経済の不確実性の増大を強く意識しています。そういう意味では――もちろん言葉は正確には同じではありませんが――、昨日の発表文を見ながら、同じような問題意識を持っていると感じました。その背後にある原因としては、先進国におけるバランスシートの調整は、もちろん国によって部門は違いますが――米国の場合は主として家計部門と政府ですし、欧州の場合には金融機関と政府ですが――、まだ時間がかかるということが問題の根源だと思っています。それから、リーマンとの比較についての質問について申し上げると、経済の局面が少し違っていると思います。リーマンの時は景気が既にピークを過ぎていました。現在の世界経済は、ごく最近までは全体の成長率が4%台の半ばと、高い成長率の状況でした。そういう状況の中で今、国際金融市場の緊張が発生しているわけですが、前回との違いを中央銀行の世界からみると、例えばドル資金供給ひとつ取ってみても、先進国間の体制は随分と整備されていると思います。危機というものは――もちろん問題の根源は色々あるでしょうが――、現われ方は流動性の危機という形で出てくるわけです。この流動性という面でみて、中央銀行の体制はしっかり組めていると思います。

§9Masaaki Shirakawa

ただ、中央銀行の流動性供給は基本的には「時間を買う」という政策ですから、その間に(各国において)しっかりとした取り組みがなされるかどうかがポイントです。しかし、ここは予測ではなくて、そういうようにならないように各国が取り組んでいくという決意を新たにしているということだと思います。以上