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Bank of JapanPress conferenceFeb 23, 2014Haruhiko Kuroda, Governor

総裁記者会見(2014年2月23日)要旨

Original in Japanese

Full text

§1Haruhiko Kuroda

私からは、今回のG20の主な成果について報告します。まず昨日のセッションでは、米国の量的緩和縮小や新興国経済などの世界経済情勢について、活発な議論が行われました。今回合意されたコミュニケでは、金融政策のあり方について、継続的な情報交換や世界経済に対する影響への配慮を踏まえつつ、注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行うことが重要であるとのコミットメントを確認しました。また、新興国経済に関しては、国内のマクロ経済政策、構造政策、金融規制・監督政策の枠組みを更に強化・改良すべきであることが確認されました。今後、各国がこうした合意に沿った適切な経済運営を行うことで、市場の安定が確保されることを期待しています。次に、成長戦略に関しては、11月のG20サミットに向け、G20としての包括的な「成長戦略」を策定することとしていますが、今回のG20でも活発な意見交換が行われました。これに関し、日本からは、アベノミクスの「第三の矢」として、成長戦略を強力に推進していることを説明しました。

§2Haruhiko Kuroda

具体的には、昨年秋の国会で 9 つの関連法案を成立させ、現在開催中の国会にも 30 本程度の関連法案の提出を見込むなど、迅速な実施に取り組んでいること、電力の小売り自由化やコメの減反廃止、「国家戦略特区」の設立等、大胆な構造改革に取り組んでいること、GDPや投資、女性の就業率などに成果目標を設定し、政策の対外的な説明に活用していること、を説明しました。このような日本の積極的な取組みを紹介することで、今後本格化するG20による「成長戦略」の策定作業に弾みをつけることができたのではないかと考えています。また、G20の「成長戦略」に関しては、今後 5年間で、G20全体のGDPの水準を 2%以上引き上げることを目指して政策を策定していくことが合意されました。「2%以上」という数値は、G20全体を対象とした国際機関の分析に基づくものであり、各国ごとに具体的な成長率目標を設定するものではありませんが、いずれにせよ、日本としては、成長戦略などを通じてより高い成長の実現を目指すことで、世界経済の成長にも貢献していくことが重要と考えています。

§3Haruhiko Kuroda

金融規制については、各国が合意された改革を着実に実施することが重要であり、その際はクロスボーダー問題に関する国際的な調整が必要であること、を発言したほか、国際合意の実施の例として金融指標に関する制度整備を、成長のための取組みとして投資型クラウド・ファンディングの枠組み整備を、わが国の取組みとして紹介しました。税に関しては、自動的情報交換の新たな国際基準やOECD/G20 BEPSプロジェクトについて、活発な意見交換が行われました。日本としても、時代に合った新しい国際課税ルールの策定に向け、引き続き積極的に取り組んで参りたいと考えています。今回の会議は、オーストラリアが議長国となって初めてのG20でありましたが、11月のサミットに向けて、良いスタートが出来たものと考えています。

§4Question

麻生大臣は、昨日のG20の会合の席で、ユーロ圏のデフレリスクを意識した上で、日本のデフレの経験について説明されたということでしたが、黒田総裁も、何かその件について会議場で発言されましたか。今回発言がなかったとしても、デフレリスクに直面しているユーロ圏の国々は、日本の経験から具体的に何を学べるのか所見を伺えればと思います。特にQEに踏み込むべきという市場の声もあるので、政策的にどういうことができるのかという点について何かありましたらお願いします。

§5Haruhiko Kuroda

ご質問の点について、日本銀行の金融政策に関しては、私から特段発言はしませんでした。日本経済が長期にわたるデフレから脱却することは、日本経済にとってはもちろん、世界経済全体にも、好影響をもたらすことになります。この点については、これまでも国際会議等の場で説明してきましたが、今回のG20においても、十分に理解されているという印象を持ちました。ただ、日本銀行の金融政策について、具体的に改めて特段の説明はしませんでした。また、ユーロ圏のデフレ懸念云々の話につきましては、ユーロ圏の物価上昇率自体が下がっていることは事実ですけれども、ご承知のように、ユーロ圏の経済も底を打って持ち直しています。また、インフレ期待は、目標の周りに比較的アンカーされていることから、一般的に、ユーロ圏がデフレに陥る可能性が高いと見られている訳ではないと思います。私からユーロ圏の方々に申し上げることは特にありませんが、引き続き、ユーロ圏は、一つの経済体としては世界最大の規模ですので、経済が順調に回復し、ECBの物価安定の目標に向けて、徐々に近づいていくことを期待しています。

§6Question

前回 10月のG20では、新興国は成長の重要な推進力というようなトーン、新興国の成長に大いに期待しているというようなトーンが出ていましたが、今回は、むしろ、世界全体の成長戦略ということが示されています。新興国が牽引してきた世界経済が今変わろうとしているのか、現状をどのように認識されているのかお伺いします。

§7Haruhiko Kuroda

先進国と新興国の成長率を比較してみると、一部の新興国で若干成長率がダウンしたところもありますが、依然として、新興国全体の成長率は先進国全体の成長率に比べるとはるかに高く、世界経済の成長にとって、新興国の貢献は引き続き重要であると思います。ごく短期的にみると、米国、日本、欧州は、それぞれ経済の回復というか成長率の加速が全体として起こっている一方、新興国は、かつての成長率に比べると、若干低下しています。こうしたこともあり、これまでのように、世界経済の成長に新興国が圧倒的に寄与するということではなく、今の局面では、特に先進国の成長が加速し、新興国は若干減速気味ということもあって、先進国の成長の先行きについて関心が集まっているということは事実だと思います。しかし、最初に申し上げたように、新興国の成長率は、依然として先進国よりもかなり高いわけですし、新興国には様々な国があり、ある国が高所得国になっていけば自ずと成長率は下がっていきますが、その代わりに、次から次へと、別の中所得国、低所得国が高所得国、中所得国に向かっていきますので、新興国全体の成長率が趨勢的に下がることはないと思います。

§8Haruhiko Kuroda

もちろん、個々の国については、高成長を遂げてきた国が高所得国あるいは先進国の仲間入りをすれば、成長率が段々と低下してくるのは、現在の先進国をみてもその通りですので、そういうことはあり得ると思いますが、新興国全体でみて成長率が趨勢的に下がっていくとは、あまり考えられていないのではないかと思います。

§9Question

金融政策のあり方について、引き続き、注意深く測定され、明確なコミュニケーションが行われるというコミットメントは維持しているというような文言になりましたが、これは、これまで通りのやり方でよい、これまでのような説明を引き続き続けるべきだという、お墨付きのようなもの、と理解してよいのでしょうか。

§10Haruhiko Kuroda

最初に申し上げた通りですが、コミュニケをご覧になって頂くと、先進国の金融政策について、多くの国で、引き続き緩和的である必要がある、あるいは、今後、物価安定や経済成長に関する見通しに基づいて、タイミングを計りながら正常化される必要がある、ということについて認識が共有されたとあります。そのうえで、全ての参加国の中央銀行が、金融政策のあり方について、継続的な情報交換や世界経済に対する影響への配慮を踏まえつつ、注意深く測定し、明確にコミュニケーションを行うことが重要であるというコミットメントを確認したわけです。文言は違っていますし、内容も豊富になっていますが、基本的には、継続的な情報交換、世界経済に与える影響への配慮といった文言は、これまでのコミットメントをより明確化したものである、ということだと思います。中央銀行は、これまで以上に緊密な情報交換に努め、金融政策の決定にあたって、世界経済に与える影響に配慮すべきということが改めて確認された、ということだと思っています。

§11Question

新興国問題について批判合戦になるようなことがなく、協調できた背景を教えて下さい。また、G20の成長率 2%の更なる引き上げは、具体的な成長戦略がない場合、絵に描いた餅になりかねませんが、それに向けてどのようなことが必要なのか、日本として何をやるべきか、について、お聞かせ下さい。

§12Haruhiko Kuroda

前段については、G20は、主要な先進国や新興国が集まり、協調して、世界経済の安定や金融の安定を図ろうというフォーラムですので、G20としての協調に向けて、議論を行い、今回のコミュニケができたということです。一方、市場の状況については、年初来、特に 1月末から神経質な動きをしましたが、やや落ち着いてきましたし、アジアの新興国は、そうした神経質な動きにはほとんど影響されませんでした。昨年の春、夏頃とは異なり、米国の量的緩和縮小によって、すぐに新興国経済全体、金融が激動するという状況ではなくなっていることも背景にあるかもしれません。基本的には、G20は、先進国や新興国の中央銀行総裁や財務大臣が集まって、世界経済成長の確保あるいは金融の安定を図る会議ですので、こういう形になったのはある意味当然のことですが、そうした中で、建設的な意見交換が行われたこともあって、こうしたコミュニケになったということです。次に、G20の成長戦略については、G20全体を対象としたIMF見通しの 5年後の水準を 2%以上引き上げるというものです。その場合、平均的には年率で 0.5%程度引き上げる必要があります。日本の場合には、政府の成長戦略の中で、10年程度の中長期的な期間をとって、平均して年間 2%程度の実質成長を目指しています。

§13Haruhiko Kuroda

日本の中長期的な潜在成長率は、国際機関や学者によって異なりますが、多くは 1%未満としていますので、政府がとっている中長期にわたる 2%の実質成長はかなり野心的なものであり、その下で、先程申し上げたような様々な規制改革や民間投資を中心として経済成長率が押し上げられる方策を検討し、実施に移そうとしています。G20の成長率は、あくまでG20全体としてであり、各国ごとにどれだけ押し上げるかといった話ではありませんが、日本だけを取り上げて、10年程度の期間をみると、成長戦略はかなり野心的であり、規制改革や昨年出された日本再興戦略をみれば分かるとおり、大幅かつ抜本的な対策を講じようとしているということだと思います。

§14Question

ほかの参加者の方のコメントについては何もおっしゃらないということは十分理解していますが、ホッキー財務大臣は、今回、イエレンFRB議長が初めてG20に出席されたということで、highly impressive という言葉を使って評価されていました。もし、黒田総裁からも、イエレン議長について、何らかの評価といいますか、印象に残ったことがあれば、コメントをお願いします。また、最近、日銀の政策を含めて、2 という数字が黒田総裁の周りにはありますが、もちろん、その理由はそれぞれあって、適切に決められたことですが、その 2 という数字について、コメントがあれば、お願いします。

§15Haruhiko Kuroda

会議の中での参加者のご発言等についてコメントするのは差し控えたいと思います。ホッキー財務大臣は、議長として、20 か国──19 か国+ヨーロッパの方々──の発言を聞いておられて、かつ、昨日、本日と 2日に亘ってチェアをされた感想を、議長として述べられたのだと思います。したがって、私から何か個別に申し上げるのは控えたいと思います。ただ、G20とは関係なく、私自身も、イエレン議長につきましては、非常に有能な方であり、政策運営とか、様々なご発言等も、highly impressive だと思います。これはG20とは、全く別の話です。2 の数字については、今回のG20でも、2%以上引き上げとか、実質ベースで2 兆米ドル以上の増加とか出ていますが、私とは何の関係もなく、特に2 について特別な感情を持っている訳ではありません。以上