総裁記者会見(2017年5月5日)要旨
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§1Question
今朝のプレスリリースの中で、邦銀がASEAN諸国において現地通貨により容易にアクセスできるようにすることが必要とありましたが、詳しく説明して頂けますか。
§2Haruhiko Kuroda
ご存知の通り、多くの邦銀が、アジアにおいて、現地通貨建て預金を主な原資として、現地通貨建ての融資を増やしています。それらの邦銀が、何らかの形で現地通貨の流動性不足に直面した場合、もちろん域内の中央銀行に流動性支援をお願いしうるわけですが、そのためには担保が必要となります。そうした中、日本銀行は、幾つかの国の中央銀行との間で、邦銀が日本国債などを担保として現地通貨を現地の中央銀行から調達できるようにする取極めを締結しています。また、これに加え、日本銀行は、域内の一部の中央銀行との間で、二国間の通貨スワップ取極めを締結しています。必要があれば、取極めを締結した中央銀行との間で日本円と現地通貨のスワップを実施したうえで、アジアに進出している邦銀に対して、日本銀行が現地通貨を提供することができます。通貨スワップ取極めの相手方の中央銀行が、日本に進出している銀行に対して日本円を供給することもできます。話が技術的になりましたが、もしご関心があれば、日本銀行のスタッフに照会して下さい。
§3Question
一部アナリストは、2%の物価安定目標はいまだに非現実的であって、専ら過去の政策との整合性を維持したいという中央銀行の都合によるものと主張しています。また、FRBの利上げが早まれば、日本及び欧州でも金融引き締めが可能になると期待されているのではないかという見方もありますが、これらの点についての見方を教えて下さい。
§4Haruhiko Kuroda
まず、端的に申し上げて、ご指摘の点はいずれも同意できません。まず、2%の「物価安定の目標」を、日本銀行は4年前に導入したわけですが、ご存知のように、世界中の主要な中央銀行の殆どが、それぞれの国・地域のために導入しているということを、まず指摘したいと思います。また、2 点目として、特に原油価格が急激に下落した後、現実の物価上昇率も下がったわけですが、日本ではそれより若干遅れて予想物価上昇率も下がりました。日本において、予想物価上昇率は、2%の「物価安定の目標」にあまりアンカーされていません。他方、アメリカの予想物価上昇率は比較的2%程度の水準にアンカーされていますので、若干違いはあります。基本的にインフレを決める要素は、需給ギャップと予想物価上昇率の 2 つです。この点、日本経済は成長しており、引き続き潜在成長率を十分に上回る成長を続けると思われますので、今後、需給ギャップは改善を続けると予想されています。このことは、先行き、物価・賃金の上昇圧力を強めます。また、予想物価上昇率は先ほど申し上げた通り、さほどアンカーされておらず、むしろ、足許の現実の物価上昇率によって左右されます。つまり、ある時点で物価上昇率が加速すると、予想物価上昇率も加速するということです。
§5Haruhiko Kuroda
従って、需給ギャップが改善することと、予想物価上昇率を引き上げること、それらの両方の効果で物価上昇率は目標の2%に近づくと思います。現段階において、私どもは、2%の物価上昇率は2018年度頃に達成する可能性が高いと想定しておりまして、この点は全く変わっておりません。もう少し付け加えますと、中央銀行の世界においては、むしろ、2%から3%ないしはそれ以上に物価安定目標を上げるべきだ、下げるのでなくむしろ上げるべきだという強い意見があります。その理由は、デフレに陥ることを本当に避けなくてはならないからです。デフレが長期化するとそこから脱することがどれだけ難しいか、デフレの被害がどれほど大きいかは、日本の経験で示されています。日本の場合、デフレが始まったのが 1998年頃であり、2013年くらいまでデフレが続きました。中央銀行にとって物価安定目標を、そのときどきで達成するのが容易ではないのはその通りかもしれませんが、だからといって、我々として2%の「物価安定の目標」を変えるべきだ、変えようということにはなりません。以上