総裁記者会見(2018年6月2日)要旨
Full text
§1Haruhiko Kuroda
「金融セクターにおけるサイバーリスクへの対処」のセッションでは、私から、サイバーリスクへの対応として、サイバー事案の発生時には、実態把握とタイムリーかつ円滑な対外コミュニケーションが重要であることと、国際的な協調の枠組みが、金融システムや金融市場、ひいては、広く人々の不安の抑制につながり得ることを指摘しました。
§2Question
日本の経済について伺います。足許の物価指数に弱さがみられることに加えて、欧州諸国をはじめ先進国の経済も、好調とはいえ少し成長に天井感も出てきています。そうした中で、日銀の今年度の物価の見通しが既に楽観的すぎるのではないかという指摘がありますが、その点についてどう考えていますでしょうか。また、今回話題になった貿易摩擦を巡る不透明性が世界経済のリスクであると思いますが、これが日本の経済をみるうえで、日銀の見通しにどのような影響を及ぼし得るのか、お願いします。
§3Haruhiko Kuroda
まず、わが国の景気は緩やかに拡大している、との見方に変わりはありません。ご指摘のような海外経済の動向については、いくつかの不確実性があることは事実であり、特に最近の保護主義的な通商政策の影響には注意を要するとは思いますが、現時点でそれらがわが国の経済に影響を及ぼしているという状況にはなっていないと思います。他方、物価面では、ご指摘の通り、最近やや弱めの動きがみられますが、これには、為替相場の変動、あるいは宿泊料など一部の項目の振れがあり、一時的な要因が下押ししている面もあります。私どもとしては、マクロ的な需給ギャップの改善を背景に、引き続き、2%に向けたモメンタムは維持されていると考えています。ただ、先行きの経済・物価見通しについては、今後とも、それぞれの時点で利用可能なデータに基づいて、金融政策決定会合において、しっかりと点検していくことになります。2 点目の貿易を巡る不透明性については今お答えした通りです。
§4Question
今回の議論の中で、中央銀行のデジタル通貨についての議論も出たと聞いていますが、どういったところが各国の議論としてあったのかということと、改めて、日銀も発行する計画はないと以前からおっしゃっていると思いますが、見解を教えて下さい。
§5Haruhiko Kuroda
デジタル通貨の議論もありましたが、これはいわゆる暗号通貨の話です。中央銀行のデジタル通貨の話は殆どありませんでした。むしろ、暗号通貨の現在の問題点、つまり、マネロンなどに使われているのではないか、あるいは消費者保護、投資家保護の観点から問題があるのではないか、といったことを考えると、適切な規制を検討すべきではないか、ということです。こうした点については、既にG20において、マネロンなどはFATF(金融活動作業部会)に、消費者保護や投資家保護の点はIOSCO(証券監督者国際機構)に、早急な検討を依頼しており、その検討結果を踏まえて、G7やG20のベースでできるだけハーモナイズした形でやっていくことになっています。中央銀行のデジタル通貨に言及する方もいましたが、どの方も発行しようという趣旨で言っているのではありませんし、日本銀行も発行する予定はありません。ただ、ご案内のように、日銀ネットという形で銀行間の決済をするところは既にコンピューターでやっており、いわばホールセールではデジタル通貨になっています。これは、米国はFedwireですし、各国ともそうです。一般の個人や企業に対して中央銀行がデジタル通貨を発行しているところはなく、私のみるところ、G7の中央銀行でそうしたことを検討しているところはないと思いますし、少なくとも日本銀行ではその予定はありません。以上