総裁記者会見(2019年4月12日)要旨(G20・共同記者会見)
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§1Question
ちょっとG20の話と逸れて恐縮なのですが、 IMFが世界経済のリスクについて語るときに、政策余地の話についても、色々WEOでも書いているんですけれども、 IMFは金融政策の緩和余地という論点とは別に、かねてより金融政策についてコミュニケーションに改善の余地があるのではと指摘してきました。この度IMFの対日ミッションチーフにインタビューしましたけれども、昨年7月に導入された、金利のフォワードガイダンスについて、もっと物価上昇率との関係を一段と明確にすべきというふうに述べておりました。また、80 兆円をめどとする国債の買入れのガイダンスについても、金利ターゲットを主眼とする今の政策意図をもっとより明確にするために、その 80 兆円については撤回すべきなのではないかというふうに指摘していました。こうしたコミュニケーション上の工夫というのは、今後検討に値するものでしょうか。また、こうしたコミュニケーション上の工夫は、インフレ期待を高める効果があるとするIMFの指摘については、どうお考えでしょうか。
§2Haruhiko Kuroda
現在のフォワードガイダンスは、日本銀行が強力な金融緩和を粘り強く続けていくという政策スタンスを明確にし、その信認を確保する趣旨から導入したものです。その後の金融市場の状況などを踏まえると、こうした日本銀行の政策運営スタンスは市場関係者にもしっかりと理解されています。その意味で、フォワードガイダンスは効果を十分発揮していると思っています。なお、インフレ率など、具体的な経済指標を条件としたガイダンスとすべきではないかというご意見だと思いますが、フォワードガイダンスというのはコミットメントの実効性の確保と、政策運営の柔軟性確保という二つの要請をバランスよく考慮することが重要です。近年多くの主要中央銀行でもフォワードガイダンスを導入していますが、少なくとも導入当初の段階では、経済情勢やリスク評価などを踏まえた定性的な条件を示しつつ、金利水準の維持などに明確にコミットするものが一般的です。現在のフォワードガイダンスは、そうした点も踏まえて決定したものです。80 兆円については、毎回の政策決定会合後の公表文書でもお分かり頂けるように、あくまでもイールドカーブ・コントロールということで、短期政策金利が-0.1%、10年物国債金利の操作目標がゼロ%程度ということを実現するように国債の買入れを行っています。
§3Haruhiko Kuroda
その際に 80 兆円を一つのめどにしていますが、もともと操作目標自体はイールドカーブ・コントロールですから、短期政策金利と 10年物国債金利の操作目標を決めて、適切なイールドカーブを形成するということが目的です。国債の買入れ数量自体はそれによって決まってきますが、大幅な国債の買入れを行うという方針には変わりありません。従来から 80 兆円程度をめどとし、そういう中で弾力的に買入れを行い、適切なイールドカーブを形成することにしていますので、今の時点で何かそれを変える必要があるとは思っていません。なお、こうしたイールドカーブ・コントロールあるいは金利のフォワードガイダンスによって、日本銀行が大胆な金融緩和を粘り強く続けていくことは、市場関係者のみならず経済主体の方々にもしっかり伝わっていると思っています。
§4Question
先程政策余地の乏しさということがありました。世界の中央銀行をみてみると、政策金利が低い水準にあって、政府の債務残高も積み上がっている中で、金融緩和や財政出動が難しくなっている状況にあるかと思います。こういった大きなリスクを抱える中で、 IMFが政策余地の乏しさについて言及していることをどういうふうに受け止めていらっしゃいますか。
§5Haruhiko Kuroda
IMF が今回の会議で具体的にどう言ったかは申し上げられませんが、おっしゃるようにWEOやその他で書かれていること、あるいはスタッフが会見等で話していることをみますと、金融政策については、主要国の金利が極めて低い状況にあるので、これ以上引き下げる余地は比較的限られているのではないかということを言っていると思います。一般的にはそのように言われているわけですが、その中でもいわゆる非伝統的な金融政策については、様々な工夫をしてきていますので、一概に金融政策の余地がもうないと決めつけることはできないと思います。金利が高いときに比べれば、主要国の金利は極めて低い水準にありますので、金利だけを取り出して言えば、大幅なマイナス金利にできるのかといった議論があり得るかとは思います。ただ、一般的にこういう水準になっているので、前よりも余地が狭まっているでしょうということは言えると思いますが、個々の国の金融状況を踏まえて、個々の国の中央銀行が政策をやる場合に、もはやこれ以上の緩和の余地は全くないということはないと思います。わが国についても、まだ必要があれば更なる追加緩和を考える余地はあると思っています。なお、財政については、IMFは常に、財政政策の余地はそれぞれの国の財政状況によって違うので、一概には言えませんということを言っているわけです。
§6Haruhiko Kuroda
一般論として、財政政策の余地がもう全ての国、あるいは多くの国でないということは言っていないと思います。
§7Question
今回示された世界経済の見通しでは、持ち直しの動きにつながっていく要因の一つに、FRBの緩和的な金融政策というのが挙げられていたかと思います。実際、 FRBが利上げの路線を停止していることが、世界経済のこの間の持ち直しにつながっているのであれば、どういった部分でつながっているのか、あるいはこの先どういった影響が出てくるのかについて、総裁のご見解をお聞かせください。
§8Haruhiko Kuroda
それはIMFの人に聞いた方がいいと思うのですが、察するには、二つぐらいあり得るとは思います。一つは、FRBが説明しているように、昨年の終わり頃から世界経済の減速がやや目立ってきた一方で、米国自身のインフレ率は2%の少し下ぐらいで極めて安定しているわけです。そういう中で、金融の正常化を急ぐ必要がないという判断をされたんだと思います。それ自体はよく理解できることです。もう一つは、昨年の前半頃を思い出して頂くと、国際会議等で色々議論がされていたことの一つが、米国の金融政策の正常化が進んで、米国の金利が上がっていくと、新興国から資本が流出し、新興国が金融を引き締めなくてはならなくなるということです。必ずしもそれぞれの新興国の景気が過熱しているわけではなくても、資本が流出して為替が下落する状況においては、どうしても金利を上げて為替下落を防衛しようということになり、それが新興国経済の足を引っ張るのではないかという議論があったわけです。そういう状況が今は全くなくなり、先程申し上げた二つの意味で、おそらくFRBの政策変更が世界経済にとってプラスになっているということを評価しているんだと思います。ただ、これは私自身の感想ですが、それは昨年12月に金利を上げたことが間違いだったということではありません。その時その時の内外経済・金融情勢を判断して、政策は決定しているわけです。
§9Haruhiko Kuroda
ただ、その後の状況をみると、今言ったようなことがあったということで、正常化を急がないという判断になったのではないかと思っています。
§10Question
今回初めて議長ということで、率直な感想をお聞かせください。
§11Haruhiko Kuroda
ごく個人的な感想で、あまり客観的なものではないと思いますが、1999年にG20財務大臣・中央銀行総裁会議が始まり、第1 回会合があったときにも、財務官として参加致しました。それから 19年くらい経っているわけですが、そうした中で、日本に議長国が回ってきました。たまたま私も麻生副総理とともに共同議長を務めたということは、何となく感慨深いものがあります。これは全く個人的な感想です。以上