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Bank of JapanPress conferenceOct 18, 2019Haruhiko Kuroda, Governor

総裁記者会見(2019年10月18日)要旨(G20・議長国記者会見)

Original in Japanese

Full text

§1Question

特に通貨の自主権(sovereignty)みたいな部分が侵害されるのではないかという懸念が新興国で根強い中で、そこをもし国際的に網をかけていくとすれば、やはり量的な規制が今後必要になっていくというのは、G20としては考えているのでしょうか。

§2Haruhiko Kuroda

G20としては、今回初めて財務大臣・中央銀行総裁レベルでステーブルコインについての議論を始めたところであり、FSB(金融安定理事会)やFATF(金融活動作業部会)に具体的な検討を依頼し、それを踏まえて適切な規制を考えないといけないと考えています。ステーブルコインについては様々なリスクに対する懸念が表明されているので、そういった懸念にきちんと対応することができるまでは、発行されるべきでないという点については、G20全体としての合意ができています。また、仮にステーブルコインが、巨大な顧客基盤を持つものとして普及が進み、グローバルに使われるようなことになると、通貨代替の点について、特に新興国、途上国の間で懸念があるのは事実です。ただ、ステーブルコインは、新興国、途上国に限らず、一般的に金融政策や金融システムの安定にも影響を及ぼす可能性があり、更に、競争政策上の問題も引き起こし得るものです。このため、途上国、先進国に限らず、G20の全てのメンバーがそういったリスクについて懸念を表明し、FSB、FATF、その他関係するいわゆる基準設定主体に詳細な検討をしてもらうことになりました。こういうリスクにはこういう規制が必要だという点を早急に検討してもらい、それを受けて具体的な規制等を G20として考えていくということです。

§3Haruhiko Kuroda

具体的には、G20のそれぞれのメンバーが自分の国の規制をどのように行うかといったことを考えていくことになると思われます。まだ今の時点では、色々な懸念がある、従って、そういった懸念に対応できないうちにステーブルコインが発行されることは認められないということです。

§4Question

麻生大臣の冒頭発言によれば、G20会合では、世界経済の成長について議論したほか、財務大臣・中央銀行総裁が、地政学や貿易などの様々な問題がある中で、全ての政策ツールを使って成長を支えていかなければならないという合意に至ったということですが、一方で、中央銀行当局者の間では、どれだけ金融政策の余地が残っているかとか、財政の刺激がより必要だといった議論があります。G20ではこうした点について、新しい考えが生まれたり、コンセンサスが得られたりしたのでしょうか。昨日、BISのカルステンス総支配人と話した際に、同氏は、大規模な金融緩和を継続すれば金融システムの安定性が阻害されかねないことに懸念を示していましたが、G20会合ではどのような議論が行われたのでしょうか。

§5Haruhiko Kuroda

具体的に個別の国の金融政策についてどのような議論があったかについて述べるのは差し控えたいと思いますが、一般的に、緩和的な金融政策がここまで続いてきて、今後更に緩和する余地は少なくなっていると発言する方はおられました。ただ、それぞれの国の財政や金融の状況、経済・物価の状況を具体的にみる必要があり、一般論として、金融政策の余地は少なくなってきたと割り切ることはできないと思います。わが国について申し上げると、日本経済は緩やかな拡大を続けているわけであり、このような状況が続けば消費者物価の前年比も、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に上昇率が高まっていくと考えています。もっとも、それにはなお時間がかかるというのも事実であり、かなり強力な金融緩和を粘り強く続けていく必要があります。そういった大幅な金融緩和を長く続けていく場合に、よくいわれる金融システムに対するリスクとして、二つのものがいわれます。一つは、過剰な金融投資、金融のバブルのようなものが生じて、経済に大きなマイナスの影響が生ずるのではないかというリスクです。現時点では、日本の経済あるいは日本の金融について、そういったリスクは見当たらないと申し上げてよいと思います。もう一つのリスクは、非常に低い金利が長く続き、金利のスプレッドが非常に薄くなっているために金融機関が融資に消極的になっていくリスクです。

§6Haruhiko Kuroda

いわゆる金融仲介機能が低下するのではないかという懸念もいわれますが、これも日本の金融機関については、足許融資残高を毎年2、3%増加させているので、金融仲介機能が低下しているというリスクも今のところ見当たりません。非常に緩和的な金融政策を長く続けている、あるいは今後も続くという中で、副作用についてよく注意していく必要があるということは事実だと思いますが、今の時点で日本の金融政策の余地が非常に限られているということはありません。必要があれば金融緩和を更に行うことも十分に可能であり、経済・物価動向を慎重に点検して、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムが失われる惧れがあるときには、当然金融緩和を検討するということになります。その前提として、日本については、金融政策の緩和の余地がないとか非常に限られているということはないということです。このように、米国の場合、欧州の場合、アジアの途上国の場合など、それぞれの国毎にみていく必要がありますが、一般論として金融政策の限界がきているとか、金融政策の余地が狭まったというようなコンセンサスがG20であったということはありません。

§7Question

金融政策には様々なリスクがあり、資本フローの大幅な変動をもたらしているということですが、資本フローの管理について協調的な対応をとることは議論されたのでしょうか。また、市場の分断の問題について、G20では、どのような行動や解決策が決定されたのでしょうか。

§8Haruhiko Kuroda

このところ資本フローが非常に変動しているという感じはむしろありません。途上国、新興国が一番この点を気にしているわけですが、最近は、途上国でも、例えば急速に資本が流出するとか、逆にものすごい勢いで流入して困るとか、どちらも生じていません。従って、資本フローが非常に変動して困る、あるいはそれを防止するように金融政策の協調を考えたらどうか、といった議論は、現時点ではあまりありません。また、市場の分断については、かなり長く議論されており、色々なレポートが出ていて、各国とも非常に強い関心を持っています。ただ、この問題は、単純に割り切って考えられないところがあります。一方で、金融規制が各国で違っていることで生じているのではないかという議論もありますし、他方では、マネーロンダリングやテロ資金供与にかかる規制、その他様々な規制が厳しくなり、それが金融機関相互の取引をよりコスト高にし、取引をやりにくくしているのではないか、など様々な議論があります。このため、市場の分断の話は、それぞれの問題に適切に対応していく必要があるということで、一つの解決策があって単純に割り切れる問題ではないと思います。

§9Question

リブラであれその他のステーブルコインであれ、その発行を阻止したい場合、中央銀行総裁または財務大臣として、それを実現する手段は持ち合わせているのでしょうか。

§10Haruhiko Kuroda

ステーブルコインについては色々なアイデアがあり、一例として Facebook が主導していくつかの主体とリブラというものを発行するというアイデアが示されています。ただ、既にG7やG20でも議論したように、色々なリスクや懸念もあるので、それらにきちんと対応することができるまでは、発行するということはよろしくない、発行されるべきでないと言っているわけです。その場合に、具体的にどういう法的措置で対応するかについては、それぞれの国のシステムの中で十分に対応可能だと思いますが、そもそもステーブルコインのそれぞれの法的性格やシステム等がまだ確実に決まっているわけではなく、どのように規制するかについても現在検討しているわけなので、そのような検討中に、発行されるということは許されるものではないと思っています。具体的に発行されないようにするための規制にどういうものがあるかは、それぞれの各国の法制の中で十分考えられることだと思います。以上