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Bank of JapanPress conferenceFeb 23, 2023Haruhiko Kuroda, Governor

総裁記者会見(2023年2月23日)

Original in Japanese

Full text

§1Haruhiko Kuroda

議論の内容につきましては、ただいま鈴木大臣から説明があったとおりであります。今回の会議では、やはり、ロシアによる戦争や世界的な金融引締めのもとでの世界経済と、そのもとでの財政金融政策等について議論がされました。私からは、世界および日本の経済動向、それから金融政策について、簡単にお話ししました。ご案内のとおり、世界経済については、最近の経済指標を踏まえますと、想定と比べると底堅いという見方が示されましたが、依然として、世界的にインフレーションのレベルは非常に高いということで、やはりこれを物価安定の目標に向けて近づけていくために、引き続き、金融の引締めを維持する必要があるというお話がありました。それから、日本経済については、私から、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、設備投資や個人消費の緩やかな増加を背景に持ち直しているということをご説明しました。また、消費者物価については、輸入価格の上昇を背景に生鮮食品を除くベースで消費者物価が足元で4%上昇までなっておりますけれども、2023年度半ばにかけて 2%を下回る水準まで低下していくというふうにみております。そのうえで、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を目指して、金融緩和を継続するということをご説明しました。

§2Question

黒田総裁に伺います。財務官時代からG7・G20への出席を重ねてきたかというふうに思いますけれども、今回が総裁として参加する最後のG7・G20になるかと思います。これまでのG7・G20を振り返って、どのような実績を残されたというふうにお考えでしょうか。また、本日は議長国としてG7を率いる形になりましたが、他国の参加者から何かお声をかけられたりとか、再度握手を求められるだったり、そういったことはありましたでしょうか。差し支えない範囲で具体的に伺えればと思います。

§3Haruhiko Kuroda

ご指摘のように、私、財務官として1999年から 2003年までG7に毎年3、4 回参加致しました。その頃の大きな議論のテーマというのは、一つはアジア通貨危機後のアジア経済、あるいは世界の金融についての議論がありました。また、アフガニスタン支援の問題なども議論されました。2013年から2023年までの10年間は、日本銀行の総裁として、これもまた毎年3 回か4 回、参加してまいりました。そのときに議論されたことは、初めはいわゆるグローバル・ファイナンシャル・クライシス、それのアフターマスというか、それが世界経済に大きな影響を与えていたわけですから、それに対応する経済政策であれ、あるいは金融規制であれ、そういうことが議論されましたし、2020年から最近までは、いわゆる COVID-19、コロナ感染症の世界経済に対する影響、経済に対する影響、政策対応というのが議論されましたし、それからこの1年間は、ウクライナ戦争問題、それがG7のみならず世界的な経済にマイナスの影響を与え、それからインフレーションを加速したということについて、様々な議論がありました。

§4Haruhiko Kuroda

それぞれの時期において、課題、G7として対応しなければならない経済・金融の問題というのはそれぞれ違っていたわけですけれども、いずれの場合も、G7諸国の人々と議論することによって、適切な対応が図られたというふうに思っておりまして、私自身も非常に学ぶところが大きかったということで感謝をしております。

§5Question

黒田総裁にお願いします。先ほどの説明ですと、G7の中では、各国とも引き続き物価抑制のために金融の引締めの必要性が議論されたという一方で、日本の場合は2023年度半ばに2%未満に下がっていく見通しなので、引き続き金融緩和が必要だということだったんですけれども、ご承知のように、黒田総裁の任期が迫っている中で、次の人員、日銀の新体制になったときに、ポリシーコンティニュエーション、どういうふうに今までの政策の継続性、移行というのがなされるべきなのかというところがあると思うんですけど、ターゲットを 2%でできるだけ早くという目標、それからYCCと量的な緩和ということで、そういう手法でそこを目指してきたわけですけれども、そこの継続性については、次期リーダーシップのもとでどうしてほしい、あるいは、どうすべきだというようなご意見があれば、よろしくお願い致します。

§6Haruhiko Kuroda

まず、新しい総裁・副総裁、まだ任命されていないので、政府が国会に同意を求める提案をしたところですので、それについて何か私が申し上げるのは僣越であると思いますので、具体的なことは一切申し上げられません。ただ、日本銀行として、2%の物価安定目標というのを掲げて金融政策をやってきたわけでして、足元で消費者物価が 4%上がっているわけですけれども、これはほとんど全て輸入物価の上昇によるものでありまして、既に輸入価格の上昇率は下がってきているわけです。それに加えて、さらに政府が、エネルギー高騰に対する消費者に対して補助を始めますので、これもさらに消費者物価の上昇率を引き下げているということになるので、現在のわれわれの見通しで言うと、2023年度の半ばまで上昇率はずっと下がっていくと。そして2%を割るという見込みになると。これは日本銀行の政策委員会のメンバーの見通しですけれども、ご案内のとおり、民間のエコノミストの見通しは、もっと低い物価上昇率になると。そういう状況であって、民間も、それからわれわれの見通しでも、2024年度も今のところは2%を割るという状況が続くというふうに。もちろん、これは今年・来年の賃金の上昇率が上がっていけば、もう少し来年度中に、あるいは2%の物価上昇率が安定的・持続的に達成されるということが起こるかもしれません。

§7Haruhiko Kuroda

ただ、今の見通しでは少なくとも2023年度、2024年度も、いずれも消費者物価上昇率は2%を割るという見通しになっておりまして、そういう意味では、あくまでも日本銀行の物価安定目標2%というものは、賃金の上昇を伴う形で2%の物価上昇率が持続的・安定的に達成されるということが目標ですので、そういう目標自体が、これは 2013年1月に日本銀行が政策委員会で決めたもので、それを一貫して維持してきているわけですけれども、その物価安定目標というものを、私を含む今の政策委員会のメンバーは適切なものだと思って、それを目標に金融政策を運営してきている。それを前提にすれば、先ほど申し上げたように、当面、金融政策は緩和的な状況を続ける必要があるというふうに、今の政策委員会のメンバーは考えているということは申し上げられると思いますが、まだ任命されていない人達のことについて、さらには、少なくとも今の政策委員会のメンバー、特に総裁、2 人の副総裁、違う人になったときのことを私が何か言うのは僣越だし、適切でないというふうに思います。

§8Question

黒田総裁には、先ほどご説明の中で、金融緩和が引き続き必要だということをG7の会合の中でご説明されたということですけれども、それについて他の国から何かご意見があったのかということと、黒田総裁、13年に総裁になられてから10年間、金融緩和への理解を国際社会に求めてきたという10年間だと思うんですけれども、そこを振り返られて、その政策の難しさですとか、どのように感じていらっしゃるかというのをお伺いできますでしょうか。

§9Haruhiko Kuroda

金融政策については、過去 10年間G7で議論があったときに、日本の金融政策について批判的なことを言われたことは一度もありません。今回も、先ほど申し上げたことを申し上げて、それに対して特にコメントみたいなものはありませんでした。2013年から 10年間の金融政策を振り返ったときに、どうしてこの2%の物価安定目標が持続的・安定的に達成できなかったかということについては、既に包括的検証とかその他でも述べていますし、様々な分析ペーパーでも述べていますように、やはり1998年から 2012年(注)まで 15年続きのデフレの中で、一種のデフレマインドというか、デフレが一種のノルムになって、賃金や物価が上がらないというのが経済主体の間に染みついているということがあって、その結果、要するに、経済分析的に言えば、予想物価上昇率が非常に低位、そして賃金の上昇率も低位、そのマインドセットがなかなか変わらなかったということで時間がかかっているということだと思います。ただ、基本的にやはり金融政策を緩和的に保つことによって、まずデフレでない状況はできたと。それから実質成長も回復したと。さらに、この10年間で雇用が400 万人以上増えたわけですね。そういう経済全体のパフォーマンスは改善したわけですけれども、賃金・物価の上昇率はずっと低位で来たと。

§10Haruhiko Kuroda

それはやはり先ほど申し上げたような15年続きのデフレがあったことのレガシーというか、マインドセットというか、それが続いていたと。ただ、今少しずつそういう状況も変わってきているんじゃないかと。労働市場も極めてタイトになっていますし、それから最近の労使交渉の状況をみても、これまでと少し違ったような賃金引上げ、賃金上昇率がみられ始めているということもありますので、少しそこに動きがみられているということは言えると思うんですけれども、ただ、今年そして来年の賃金上昇率がどのくらいになるかということは、まだ十分注視していく必要があるというふうに思っています。

§11Question

黒田総裁へご質問させてください。先ほど質問にもありましたけれども、財務官時代から色々国際会議の場で発信されてこられたことと思います。大きな国際会議の場としては今回が任期満了までは最後になるかなと思うんですけれども、ご自身の 10年間を振り返って、国際発信の観点からご自身をどう評価されているか、その辺りの思いも聞かせて頂ければと思います。

§12Haruhiko Kuroda

もちろん過去 10年間、G7、それからG20、更にIMFC、またBISの総裁会議等々に参加してきまして、世界の主要国の中央銀行総裁の経済・金融に対する見方、考え方も学ぶことができましたし、また私の方から日本の経済・金融の状況をよく説明して、十分理解して頂いたというふうに思っております。(注)会見では「2013年」と発言しましたが、1998年から15年であるため正確には「2012年」です。以上