← Back
Bank of JapanPress conferenceFeb 29, 2024Kazuo Ueda, Governor

総裁記者会見(2024年2月29日)

Original in Japanese

Full text

§1Kazuo Ueda

世界経済に関するセッションについては、今、神田財務官から概ねお話がありましたので、私からは今朝ありました金融システムに関するセッションの模様について、ごく簡単にご説明します。そのセッションでは、グローバルな金融システムの安定と金融セクターに関する幅広い課題について、 FSBをはじめとする国際機関等が進めている作業について報告を受け、議論を行いました。特にこれまで議論を進めてきました暗号資産やクロスボーダー送金に係る対応に加えて、トークン化、 AI等デジタル技術の進展がもたらす恩恵と脆弱性に対する理解を深めていくことが重要であるという認識が改めて共有されました。今後、引き続き作業が進められていくと思いますが、私どもも国際的な議論の動向を適切にフォローしていきたいと思っております。

§2Question

本日、日本の経済の状況ですとか物価に関する動向についてもご共有されたのではないかと思うんですけれども、例えば 10~12月期のGDPではリセッション入りとなりまして、中身をみても、消費ですとか設備投資ですとか内需が弱くて、先行きを懸念する向きもございます。総裁は先週の国会でも好循環が強まっていくとの見方を示されたかと思うんですけれども、こうした足元の経済の弱さが今後の政策判断にどのように影響するのか、こういったことについても伺えればと思います。

§3Kazuo Ueda

日本の実質GDPですが、おっしゃるように2 四半期連続してマイナス成長になったわけです。ただ、一応大まかな姿としては、私どもは、昨年の初めから半ばにかけてコロナからの経済再開を受けてかなり強い成長を暫く続けた後の踊り場というような感じでみております。もちろんこの間の高いインフレ率が、消費、あと一部設備投資に若干の悪影響を及ぼしたということはあるわけですけれども、ちょっと長くなって恐縮ですが、どちらについてもまずインフレ率がヘッドラインをみますとかなりのペースで減速傾向にあること、それから特に消費の方は春闘での賃金の結果にある程度の期待ができること、従って実質賃金が直ちにプラスに転じるということはないかもしれないですけれども、追い風の動きが続くということが消費にプラスになるであろうということと、設備投資については、いつもお話ししていることですけれども、計画が非常に強いということは、どこかで実現してくるであろうというふうにみておりますので、基本的にはわが国の景気が緩やかに回復しているという、これがまた先行きもその姿を続けるという見方に、これまでのところ変化はございません。ただ、注意深くみてまいりたいとは思っております。

§4Question

植田総裁には先ほどの質問との関連なんですが、今回のG20では、世界経済、ソフトランディングの可能性が高まったということで、日本経済、回復を続けていく見通しということですが、その見通しにも追い風になる議論だったと思いますけれども、マイナス金利の解除のタイミングやその後の利上げのペースにこうした前向きな動きがどう影響するのか。また、総裁は 2%の物価安定目標の実現可能性、蓋然性、もう既に見通せる状況になっているとお考えでしょうか。

§5Kazuo Ueda

世界経済および日本経済と金融政策というご質問ですね。世界経済についてはご質問にありましたように、ソフトランディング、特に米国を中心にソフトランディングがベースラインの見方になりつつあるということは、今回も確認できたかと思います。これはただ、ある意味では、私ども直近では1月に展望レポートを作成したわけですが、そのときにみていた世界経済についての姿と大体同じもので、そのときの見通しが世界経済については確認できたというのが今回の収穫であったかなというふうには思います。そのうえで日本について、物価目標はもう持続的・安定的な達成が見通せる状況になっているかどうかというご質問ですが、私の考えでは、今のところ、まだそこまでには至っていないということかと思います。それが見通せるということの確認のためには、これまでもそうしてきましたが、賃金と物価の好循環がうまく回り出しているかどうか、強まりつつあるかどうかということを確認していく作業を続けるということだと思います。ただ、そのうえで申し上げれば、今年の春季労使交渉の動向は、その確認作業の中で一つの大きなポイントであるというふうには考えております。

§6Question

重ねての金融政策に関する質問なんですが、今年の春闘の動向が大事だというご発言がありましたが、これまでにもかなりの大企業で春闘、いい数字が出てきていると思うんですけれども、その春闘の数字が出てきている状況について、コメントとかがあればお願いします。そして市場ではですね、春闘の結果が分かる3月ないし4月の会合でのマイナス金利の解除や金融政策の転換を予想する声がありますが、それに対するコメントですとか、1月の会見のときと比べて確度がどう変化したかとかありましたらお願いします。

§7Kazuo Ueda

春闘ですけれども、ある程度まとまって数字が出てくるのは3月以降というふうに考えております。ただ、例えば、1月時点でみていた姿と比べて、現在判明しているところでは、労働側の要求がまず昨年をある程度上回っているということ、それから企業側も、特に大企業を中心に前向きの姿勢がかなりの企業から発せられているということ、これらには注目していますけれども、ある程度集計された数字が出てきたところで、それ及びヒアリング等で集められた情報を加えて、いろいろな段階がありますけれども、春闘あるいは賃金の動きについては確認をしたうえで、その他の賃金・物価の好循環に関する情報と併せて、各回の会合で議論してまいりたいというふうに思っています。

§8Question

今回ブラジルが議長国で、格差とか不平等ということがテーマの一つになっていまして、最初ブラジルの中銀の総裁がインフレを低位に抑えることが格差の是正につながるといった趣旨の話をされていまして、中央銀行としてこういったテーマにどうやって取り組むことができるのか、中央銀行と格差みたいなテーマでどういったことができるのか、この辺り、ちょっとご意見をお伺いしてみたいと思います。

§9Kazuo Ueda

格差に政策的に対応するということでは財政政策の方が本筋の政策だと思うんですけれども、金融政策に限ってということであれば、直接、格差の是正をターゲットとして金融政策を運営するということは普通ないわけですけれども、おっしゃいましたように、高率のインフレが進行しているというようなことになりますと、インフレとともに利回りが上がっていくような資産をあまり持っていないような貧困層にとっては非常に苦しい事態になるということが一般的によく知られていますので、そういうことを避けるということのためにも、インフレをインフレ目標の辺りで安定化させるということが非常に良いことであるという議論は、今回の会合でも複数の方からなされたというふうに覚えております。以上