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Bank of JapanSpeechMar 7, 2024Junko Nakagawa, Board Member

【挨拶】「わが国の経済・物価情勢と金融政策」(島根県金融経済懇談会)

Original in Japanese

Full text

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日本銀行政策委員会審議委員中川順子わが国の経済・物価情勢と金融政策 ── 島根県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──日本銀行2024年3月7日 11.はじめに日本銀行の中川です。本日は、島根県の行政および金融・経済界を代表される皆様との懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。皆様には日頃より、松江支店の円滑な業務運営に多大なご協力を頂いておりますこと、この場をお借りして御礼申し上げます。本日は、最初に私から、経済・物価の現状と先行き、日本銀行の金融政策運営などについてご説明させて頂き、その後、皆様から当地の実情に即したお話や、日本銀行の政策・業務運営に対するご意見をお伺いできればと存じます。

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2.経済・物価の現状(1)海外経済の現状はじめに、海外経済の現状についてお話しします。海外経済は、全体として回復ペースが鈍化しています。企業の景況感をみると、サービス業は、改善・悪化の分岐点を上回るものの、新型コロナウイルス感染症からの経済活動再開の動きが落ち着くもとで、ひと頃に比べ低下しています(図表1)。製造業は、改善・悪化の分岐点近傍で推移しています。この点、グローバルでの貿易量についてみますと、経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、中間財やIT関連財の在庫調整が進んでいることから、底入れの兆しもみられています。主要地域の状況について、ごく簡潔に説明させていただきます。米国は、金融引き締めが不動産・住宅市場などに影響を及ぼしていますが、個人消費や雇用・所得環境を中心に、底堅く推移しています。中国は、2023年の経済成長率が5%を超えたと話題になりましたが、不動産市場や外需関連に弱さがみられており、緩やかな減速傾向が続いています。欧州も、中国経済の影響もあって緩やかな減速が続いています。 2

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(2)国内経済の現状続いて、国内経済の現状についてご説明します。まず、輸出は、グローバルでの製造業の弱さと同様に横ばい圏内の動きとなっているほか、鉱工業生産は、一部自動車メーカーの工場稼動停止の影響も加わって、足もと弱めの動きがみられています。こうした海外経済の回復ペースの鈍化の影響を受けながらも、高水準の企業収益に支えられ、設備投資は緩やかな増加傾向をたどっており、雇用・所得環境は改善傾向にあります。個人消費は、足もと弱めの指標もみられますが、基調として大きな変化はなく、緩やかに増加しているとみています。実際、消費者マインドは、物価上昇の影響はみられるものの、雇用・所得環境の緩やかな改善などから、これまでのところ維持されています。以下では、企業部門と家計部門に分けて、より詳しく説明させていただきます。(企業部門)まず、企業部門から確認します。企業収益は、増益傾向にあります。法人企業統計の全規模全産業ベースの経常利益は、比較可能な 1985年4-6月期以降で最高水準となっており、マクロでみた企業収益は好調です。大企業と中堅・中小企業別にみますと、大企業では、経済活動の回復や販売価格の引き上げが寄与し、為替円安が進むもとで、為替差益や海外子会社からの受取配当金も経常利益を押し上げています(図表2)。相対的に大企業が牽引していますが、中堅・中小企業の収益環境も改善傾向にあります。

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企業の景況感も改善しています(前掲図表2)。少し古くなりますが、 12月調査の日銀短観の結果をみると、製造業、非製造業、ともにすべての企業規模で前回調査から改善しました。製造業は、価格改定の進捗や自動車生産の回復から、中小企業を中心に改善し、非製造業では、経済活動の回復のほか、製造業と同様、価格改定が進んだことで、個人消費関連を中心に幅広い業種

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3で改善しています。コロナ禍で激減していた外国人入国者数は、コロナ禍前の水準を回復しており、インバウンド需要は企業の景況感の支えになっています。設備投資は、デジタル化・省力化など、将来の成長に向けた投資に牽引され、緩やかな増加傾向が続いています(図表3)。今年度の設備投資は、2022年度に続き、高めの伸びとなる見込みです。資材価格高を背景に投資計画を先送りする動きが一部にありますが、最近の資源価格に落ち着きがみられるもとで、計画を再開する動きがみられています。輸出は、海外経済の回復ペース鈍化の影響もあって横ばい圏内、鉱工業生産は、一部自動車メーカーの工場稼動停止の影響も加わって、足もと弱めの動きがみられています(図表4)。実質輸出について、地域別にみると、米国や欧州向けは、自動車関連を中心に高水準となっています(図表5)。一方、中国、NIEs・ASEAN向けは、ひと頃に比べ低水準となっていますが、グローバルでのIT関連財の在庫調整の進捗に伴い、下げ止まりの動きをみせています。財別でみますと、自動車関連は、車載向け半導体の供給制約の緩和が進み、増加基調にあります。資本財や情報関連は、IT関連財の在庫調整の進捗に伴い、半導体製造装置や半導体等電子部品を中心に、下げ止まっています。化学製品等の中間財は、中国の不動産市場の弱さの影響を受けて、ひと頃に比べ低水準となっています。

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(家計部門)続いて、家計部門について、個人消費と雇用・所得環境を中心にお話しします。まず、個人消費は、緩やかに増加していますが、物価上昇や天候の影響が一部にみられています(図表6)。内訳をみますと、財消費は、飲食料品や衣料品などの非耐久消費財を中心に、物価上昇による節約志向の高まりから、購入量を減らすといった動きがみられています。こうした非耐久消費財の弱

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4さは、例年に比べ暖冬であった影響から、秋冬物衣料品が販売不振であった一時的な要因も影響しているとみられます。また、この間の消費者マインドは、物価上昇のもとでも維持されています。これは、政府による物価対策等の諸施策、雇用・所得環境の緩やかな改善、さらには小売企業の様々な販売促進策が寄与しているものと考えます。対して、耐久消費財は、高めの水準で推移しています。例えば、新車販売台数は、供給制約が徐々に解消するもとで、増加基調にありますが、先行きについては、一部メーカーの工場稼動停止による供給側の影響が現れる可能性には留意する必要があります。サービス消費は、新型コロナウイルス感染症の法的な位置付けが見直された後の回復が緩やかに続いています。次に、雇用・所得環境についてお話しします(図表7)。雇用・所得環境は、緩やかな改善が続いていると判断しています。就業者数は、正規雇用は人手不足感の強い医療・福祉や情報通信、非正規雇用は小売や対面型サービスを中心に、緩やかな増加傾向にあります。1人当たりの名目賃金は、物価の伸びには追い付いていないながらも、高めの伸びを示しています。所定内給与は、一般労働者において 1993年以来の高い賃金改定率となった昨年の春季労使交渉の結果が反映されていること、パート労働者においては労働需給が引き締まるもと、最低賃金の引き上げもあって増加しています。

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特別給与は、企業業績の改善による賞与増額により増加しています。以上の結果、雇用者数と1人当たり名目賃金を掛け合わせた雇用者全体の所得も増加を続けています。雇用や賃金について、企業経営者の方々からは、人手不足に対する危機感と、賃上げに対する前向きな声が昨年にも増して聞かれるようになったと感じます。実際、短観の雇用人員判断DIから労働需給を確認すると、景気の回復が緩やかに続くもとで、非製造業を中心に過去との対比でみてもかなり高い水準まで強まっていることが確認できます(図表8)。大企業中心に経済・物価情勢を踏まえて毎年賃金を見直す慣行が、概ね復活したといえるのでは

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5ないかと考えられます。さらには、官民連携の後押しもあり、中小企業が価格改定の交渉をしやすくしようとする動きも大きくなっています。先ほど述べました通り、企業収益が改善傾向にある中で、利益のうちどの程度を従業員に賃金として配分したかを示す労働分配率は、低下傾向にあります。もちろん、企業によって事情は様々ですので、これらはあくまでわが国全体としての傾向ではありますが、こうした動きから、今春の賃金改定も過去対比で高めの水準で着地する蓋然性が高まっているといえます。

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(3)国内物価の現状続いて、国内の物価情勢についてです。以下では、企業物価と消費者物価の動向についてお話しします。(企業物価)企業物価について、まず輸入物価から確認します。原油など多くの商品価格が落ち着いた動きとなっているため、輸入物価指数は、前年を下回る水準で推移しています(図表9)。こうしたもとで、国内の企業間取引を調査している企業物価指数の前年比は、プラス幅の縮小が続き、足もとではほぼゼロ%となっています。一方、企業向けサービス価格指数の前年比は、インバウンドを含む旅行需要の回復、人件費や財価格の上昇を背景に、宿泊サービス、ソフトウエア開発、リース・レンタルなど幅広い分野で価格上昇がみられており、全体でもプラス幅の拡大傾向が続いています。(消費者物価)消費者物価についても、ひと頃の高い伸び率と比べると、上昇ペースが鈍化しています。政府の経済対策により、電気代やガス代等のエネルギーが押し下げに寄与しているほか、先ほど述べた通り、企業取引価格が落ち着いてきたためです。1月については、生鮮食品を除く消費者物価は、前年同月比2%の伸びとなりました(図表 10)。生鮮食品とエネルギーを除いたベース

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6でみますと、こちらも同様に、前年比プラス幅が縮小し始めていますが、3%半ばとなお高めの伸びが続いています。これは、昨年、オイルショック時以来の勢いで上昇してきた食料品価格には落ち着きがみられ始めているものの、これまでの原材料価格上昇の影響がラグを伴いながら、時間をかけて反映されているためであり、今後次第に伸び率は減衰すると考えられます。

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3.経済・物価の先行き見通しとリスク(1)経済・物価の先行き見通し続いて、国内の経済・物価の先行き見通しについてお話しします。国内経済は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化や政府の経済対策の効果にも支えられて、緩やかな回復を続けると考えています。その後、こうした一時的な押し上げ効果は次第に和らいでいくものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、国内経済は潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。1月の金融政策決定会合で決定した「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)でみますと、実質GDP成長率の見通しは、政策委員の中央値で 2023年度は+1.8%、 2024年度は+1.2%、 2025年度は+1.0%となっています(図表11)。次に、消費者物価をみると、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格上昇の影響は今後も減衰していくと考えています。一方、経済回復に伴ってマクロ的な需給ギャップがプラス転化するとともに、賃金上昇期待が強まるもとで、予想物価上昇率は「物価安定の目標」と整合的な水準に向かって徐々に高まっていくとみています。

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こうしたもとで、1月会合での、生鮮食品を除いたベースの消費者物価の見通しは、政策委員の中央値で、 2023年度は+2.8%、2024年度は+2.4%、2025年度は+1.8%となっています(前掲図表11)。1月時点まで高めの伸びが続いている生鮮食品とエネルギーを除いたベ

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7ースは、2023年度は+3.8%、2024年度、2025年度はいずれも+1.9%となっています。

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(2)経済・物価見通しにおけるリスク以上お話しした通り、わが国経済は、高水準の企業収益に支えられ、賃金と物価の好循環が展望できると考えています。もちろん、こうした経済・物価の先行きの見通しについては、様々な不確実性が存在します。以下では、私が特に注目する経済・物価見通しにおけるリスクについて3点お話しさせていただきます。リスクの1点目は、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向です。高水準であった米欧の物価上昇率は、このところ着実に低下してきています。この背景には、各国の中央銀行が急速なペースで利上げを実施してきたことがあります。もっとも、先進国を中心に、賃金上昇を介してインフレ率が高止まりし、金融引き締めが想定以上に長期化するリスクがあるほか、これまでの利上げの影響が時間をかけて実体経済や金融市場に影響を及ぼし、わが国経済に波及するリスクが考えられます。2点目は、地政学的リスクと資源・穀物価格の動向です。資源・穀物価格は、一昨年半ば頃をピークに、総じて下落しています。しかしながら、先行き、世界経済の動向や気候の影響を受けることはもちろん、ウクライナ情勢や中東などを巡る地政学的な動向によっては、再び資源・穀物価格が上昇することで、わが国の経済活動へ下押しの影響を及ぼすリスクがあります。3点目は、消費者マインドの動向です。

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消費者マインドが悪化に転じ、デフレに戻ることがないかが重要と考えます。これまで、食料品、日用品など身近な品目や、外食、宿泊での価格上昇率が相対的に高かったことなどから、家計部門では生活防衛的な動きがみられますが、政府による物価対策等の諸施策、さらには雇用・所得環境の改善、企業努力が寄与し、現時点では、消

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8費者マインドは維持されています。今後も、当面は、賃金の上昇期待によって支えられるのがメインシナリオですが、実質所得が伸びず下振れる場合、消費者マインドの悪化を通じて、需要が減衰し、経済・物価に対して下押し圧力を及ぼすリスクがあります。

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4.日本銀行の金融政策運営続いて、日本銀行の金融政策運営について、私自身の考えをもとにお話しさせていただきます。現在、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指し、金融緩和を行っています。金融緩和の具体的な手段として、長期国債の買入れを含むイールドカーブ・コントロールのほか、社債やコマーシャルペーパー、ETF、J-REITなどの資産の買入れを行っています。日本銀行は、金融市場に与える影響を考慮しつつ、持続的な金融緩和を可能とするために、こうした政策ツールを導入し、その後見直しを行ってきました。現在のイールドカーブ・コントロールは、短期政策金利について「-0.1%」というマイナス金利を適用するとともに、10年物金利は「ゼロ%程度」を目標としつつ、その上限は 1.0%を目途とする枠組みです。イールドカーブ・コントロールについては、2022年12月に 10年物金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大するとともに、昨年7月に 10年物金利の変動幅は「±0.5%程度」のままで、変動幅の位置づけを「目途」として柔軟に運用し、市場の状況によっては、この範囲を超えることを許容することにしました。ただし、10年物金利が1.0%以上に上昇しないよう抑制することで、金融緩和効果を担保しました。

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その後、昨年10月に、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、10年物金利の上限を1.0%で厳格に抑えることは、強力な効果の反面、副作用も大きくなり得ると判断し、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこ

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9とにしました。こうした見直しを経て、イールドカーブの歪みは軽減されたほか、長期金利が市場実勢にあわせて変動しやすくなりました(図表 12)。市場参加者が判断する債券市場の総合的な機能度は、ひと頃の低水準から改善に向かっています。ETF、J-REITなどのリスク性資産の買入れについても、2021年3月に見直しを行い、その目的から、市場が大きく不安定化した場合に限定し、よりメリハリを付けて買入れを行うこととしました。これらのほかにも、金融緩和の円滑な実施のため、適格担保と呼ばれる日本銀行が金融機関から受け入れる担保についての基準や、国債補完供給と呼ばれる日本銀行が市場参加者に対して国債を貸し出す制度について、必要に応じて見直しを行ってきました。このように、日本銀行は、様々な工夫を行いながら、緩和的な金融政策を継続しています。こうしたなかで、企業の賃金設定に対する姿勢に明確な変化の兆しがみられるなど、わが国の経済・物価情勢は、2%の「物価安定目標」の実現に向けて着実に歩を進めています。もちろん、わが国経済には、先ほど述べたようなリスクのほか、自然災害の発生など様々な不確実性が常に存在しますので、その時点での適切な政策運営のため、予断を持たずに情報収集を続けたうえで判断したいと考えています。

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今後、仮に2%の「物価安定目標」が見通せる状況に至ったと判断され、金融政策を見直すことになった場合には、この間に導入された、イールドカーブ・コントロールのほか、リスク性資産の買入れなどの政策手段について、金融市場への影響とともに、これらが非伝統的なものであることも念頭におきながら議論が行われ、修正要否について判断することになると考えています。

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105.島根県経済について最後に、島根県の経済について、松江支店を通じて得た情報も踏まえつつお話ししたいと思います。足もとの島根県経済は、持ち直しています。雇用・所得環境が持ち直すもとで個人消費がサービスを中心に回復しているほか、設備投資も増加するなど、内需が当地の景気を下支えしています。この間、鉱工業生産については、これまで海外経済減速などの影響を受けて低調であった電子部品・デバイスや一般機械などが足もとでは持ち直しの動きをみせており、全体として下げ止まっています。先行きについては、こうした反転の兆しがみえる生産が継続的に持ち直していくか、また足もと本格化している賃上げが個人消費を支えていけるかについて、注意深くみていく必要があります。こうした中、当地経済最大の構造的課題は、全国に先駆けて進行する少子高齢化・人口減少への対応であり、現在、行政や経済団体、各企業において、様々な取組みが進められていると伺っています。例えば、島根県では、県外への情報発信の強化によりU・Iターンを促進しているほか、島根大学に新しく創設された材料エネルギー学部と県内企業との連携強化を支援することで、若者の県内定着とともに人材育成を推進しています。また、隠岐島前の各自治体では、「大人の島留学プロジェクト」と銘打ち、島外の若者に一定期間、住人として働くことで島の魅力を知ってもらっています。

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さらに出雲市では、国際情勢が不安定化する東ヨーロッパの出身者を中心に多くの高度 IT人材を受け入れることで、地域企業の IT人材不足に対処しようとする取組みも進んでいます。その上で、人口減少による地域経済の縮小を防ぐためには、県外需要を獲得していくことも重要です。この点、例えば観光では、古事記と出雲國風土記が伝える数々の神話の舞台となった地であるのはもちろんのこと、茶の湯、たたら製鉄、日本庭園、神楽といった伝統文化、中海・宍道湖、隠岐、三瓶

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11山の自然や美肌効果で知られる温泉など、大きな強みとなる資源が豊富に存在します。現在、こうした資源を生かしたコンテンツの磨き上げや、情報発信を強化する取り組みが進められており、例えば、昨年夏に行われた松江の水郷祭の湖上花火大会は、打上げ数を大幅に増やして開催し、西日本最大級の規模に成長したと伺っています。また、県西部の伝統芸能である石見神楽は最近、メタバースを活用した情報発信にも取り組むことで、これまで神楽に触れたことがない人も含めて多くの人に魅力を伝えることができています。島根県は、隣接する鳥取県と合わせ、昨年3月には観光庁の「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」のモデル観光地に認定されたこともあり、今後、訪日客も含む観光の活性化が大きく期待されると考えています。これら以外にも、知恵と工夫を凝らした様々な取組みにより、地域経済が困難な課題を克服し、活力に溢れ持続可能なものとなることを大いに期待しています。日本銀行としましても、松江支店を通じて金融経済の動向をきめ細かく把握・分析し、中央銀行として、地域経済のさらなる発展に貢献していきたいと考えています。ご清聴ありがとうございました。以上

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わが国の経済・物価情勢と金融政策2024年3月7日日本銀行政策委員会審議委員中川順子― 島根県金融経済懇談会における挨拶 ―海外経済(図表1)<グローバルPMI ><世界貿易量>80901001101201301400810121416182022(季節調整済、2010年=100)(注)世界貿易量は、世界実質輸入。(出所)オランダ経済政策分析局年202530354045505560081012141618202224製造業サービス業(季節調整済、DI)(注)製造業は、J.P.Morganグローバル製造業PMI。サービス業は、J.P.Morganグローバルサービス業PMI事業活動指数。(出所)Copyright © 2024 by S&P Global Market Intelligence,a division of S&P Global Inc. All rights reserved.年

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国内経済(企業部門)(図表2)<経常利益><業況判断>-60-40-20020406090950005101520全産業製造業非製造業(「良い」-「悪い」、DI、%ポイント)年(注)1. 短観の業況判断DI(全規模ベース)。2003/12月調査には、調査の枠組み見直しによる不連続が生じている。2. シャドー部分は、景気後退局面。(出所)日本銀行良い悪い02468101214160810121416182022大企業中堅・中小企業(季節調整済、兆円)年(注)1. 法人季報ベース。金融業、保険業を除く。2. 2009/2Q以降は、純粋持株会社を除く。3. シャドー部分は、景気後退局面。(出所)財務省国内経済(企業部門)(図表3)<設備投資一致指標><設備投資計画>-20-15-10-5051015200810121416182022GDP民間企業設備投資(名目)短観(実績)短観(12月調査時点の当年度計画値)(注)1. 短観は、ソフトウェア投資額・研究開発投資額を含み、土地投資額は含まない(2016/12月調査以前は、研究開発投資額を含まない)。全産業+金融機関の値。2. GDP民間企業設備投資の2023年度は、2023/2~4Qの値。

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(出所)日本銀行、内閣府年度(前年比、%)60708090100110120130657075808590950810121416182022民間企業設備投資(GDPベース、実質、左目盛)資本財総供給(右目盛)建設工事出来高(民間非居住用、実質、右目盛)(季節調整済年率換算、兆円)(季節調整済、2015年=100)年(注)建設工事出来高の実質値は、建設工事費デフレーターを用いて日本銀行スタッフが算出。(出所)内閣府、経済産業省、国土交通省

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国内経済(企業部門)(図表4)<鉱工業生産><実質輸出入>-4-202468607080901001101200810121416182022実質貿易収支(対実質GDP比率、右目盛)実質輸出(左目盛)実質輸入(左目盛)(季節調整済、2020年=100)年(注)日本銀行スタッフ算出。(出所)日本銀行、財務省、内閣府(季節調整済、%)8090100110120130140081012141618202224生産(季節調整済、2020年=100)(注)1. シャドー部分は、景気後退局面。2. 2024/1Qは、1月の値。(出所)経済産業省年国内経済(企業部門)(図表5)<地域別実質輸出><財別実質輸出>405060708090100110120130181920212223自動車関連<24.4>情報関連<19.0>中間財<20.1>資本財<16.8>(季節調整済、2018/1Q=100)(注)日本銀行スタッフ算出。<>内は、2023年通関輸出額に占める各財のウエイト。(出所)日本銀行、財務省年5060708090100110120130181920212223米国<20.1>EU<10.3>中国<17.6>NIEs・ASEAN等<34.4>(季節調整済、2018/1Q=100)(注)1. 日本銀行スタッフ算出。<>内は、2023年通関輸出額に占める各国・地域のウエイト。

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2. EUは、全期間において、英国を含まない。(出所)日本銀行、財務省年

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国内経済(個人消費)(図表6)<個人消費とマインド指標><消費活動指数(実質)>707580859095100105110115181920212223耐久財<8.9>非耐久財<40.5>(注)1. 日本銀行スタッフ算出。<>内は、消費活動指数におけるウエイト。2. 非耐久財は、GDP統計において半耐久財に分類される品目を含む。(出所)日本銀行等(季節調整済、2018/1Q=100)年707580859095100105110115181920212223サービス<50.7>(季節調整済、2018/1Q=100)年0102030405080859095100105110115120131415161718192021222324消費活動指数(旅行収支調整済、左目盛)消費者態度指数(右目盛)(季節調整済、2015年=100)(注)消費活動指数(旅行収支調整済)は、除くインバウンド消費・含むアウトバウンド消費(日本銀行スタッフ算出)。(出所)日本銀行、内閣府等年(季節調整済)国内経済(雇用・所得環境)(図表7)<就業者数><1人当たり名目賃金>-2-101231314151617181920212223特別給与所定外給与所定内給与名目賃金(前年比、%)年(注)1. 各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。2023/4Qは、12月の値。

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2. 2016/1Q以降は、共通事業所ベース。(出所)厚生労働省626364656667680810121416182022就業者(出所)総務省年(季節調整済、百万人)

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国内経済(雇用・所得環境)(図表8)<雇用人員判断DI><労働分配率>-50-40-30-20-10010203040808590950005101520非製造業製造業(注)短観ベース(全規模)。2003/12月調査には、調査の枠組み見直しによる不連続が生じている。(出所)日本銀行(「過剰」−「不足」、DI、%ポイント、逆目盛)年人手不足6065707580950005101520全規模ベース(注)1. 法人季報ベース。金融業、保険業を除く。2. 2009/2Q以降は、純粋持株会社を除く。3. シャドー部分は、景気後退局面。(出所)財務省年(季節調整済、%)企業物価(図表9)<輸入物価><財・サービス物価>-20-10010203040506018192021222324輸入物価指数(円ベース)(前年比、%)年(出所)日本銀行-6-4-202468101215161718192021222324国内企業物価指数企業向けサービス価格指数(前年比、%)(注)消費税を除くベース。(出所)日本銀行年

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消費者物価(図表10)<総合指数とコア指数><一時的な要因を除く>-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.5192021222324総合除く生鮮食品除く生鮮食品・エネルギー(前年比、%)年(出所)総務省-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.04.52021222324公共料金一般サービス財(除く食料品)食料品CPI(除く生鮮・エネルギー)(前年比、%)(注)1. 食料品(除く生鮮)=「農水畜産物」+「食料工業製品」2. 公共料金(除くエネルギー)=「公共サービス」+「水道料」3. CPIは、消費税率引き上げ・教育無償化政策、旅行支援策、携帯電話通信料の影響を除いた日本銀行スタッフによる試算値。

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(出所)総務省年国内経済・物価見通し(図表11)<展望レポートの経済・物価見通し(2024年1月)>(出所)日本銀行(対前年比、%、<>内は政策委員見通しの中央値)実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品)(参考)消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)2023年度 +1.6 ~ +1.9<+1.8>+2.8 ~ +2.9<+2.8>+3.7 ~ +3.9<+3.8>10月時点の見通し +1.8 ~ +2.0<+2.0>+2.7 ~ +3.0<+2.8>+3.5 ~ +3.9<+3.8>2024年度 +1.0 ~ +1.2<+1.2>+2.2 ~ +2.5<+2.4>+1.6 ~ +2.1<+1.9>10月時点の見通し +0.9 ~ +1.4<+1.0>+2.7 ~ +3.1<+2.8>+1.6 ~ +2.1<+1.9>2025年度 +1.0 ~ +1.2<+1.0>+1.6 ~ +1.9<+1.8>+1.8 ~ +2.0<+1.9>10月時点の見通し +0.8 ~ +1.2<+1.0>+1.6 ~ +2.0<+1.7>+1.8 ~ +2.2<+1.9>

§35

債券市場の動向(図表12)<長期金利><債券市場サーベイ>-0.50-0.250.000.250.500.751.001.2516171819202122232410年物国債金利(%)年許容変動幅拡大±0.25%程度⇒±0.5%程度長短金利操作の運用柔軟化長短金利操作のさらなる柔軟化(出所)日本相互証券-70-60-50-40-30-20-1001015/217/219/221/223/2機能度判断DI(現状)(「高い」―「低い」、DI、%ポイント)月(注)1. 調査対象先は、2017/11月調査までは国債売買オペ対象先のうち協力を得られた先。2018/2月調査以降は、上記に加え大手機関投資家(生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等)を含む。2018/2月調査は、旧ベースの計数も併記している。2. 各年2、5、8、11月に調査を実施している。(出所)日本銀行