【挨拶】「わが国の経済・物価情勢と金融政策」(石川県金融経済懇談会)
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日本銀行政策委員会審議委員高田創わが国の経済・物価情勢と金融政策── 石川県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──日本銀行2024年9月5日
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11.はじめに日本銀行の高田でございます。はじめに、能登半島地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。能登半島地震から8か月程度が経ちましたが、今なお避難所での暮らしを余儀なくされ、厳しい生活を送られる方々がいらっしゃるなど、ご心配は尽きないと存じます。そうしたなか、本日は、石川県の行政、財界、金融界を代表する皆様と懇談させて頂く貴重な機会を賜りましたこと、誠にありがとうございます。皆様には、日頃から日本銀行金沢支店の業務運営に対し、ご支援、ご協力を頂いておりますこと、この場をお借りして改めて厚く御礼申し上げます。本日は、わが国の経済・物価情勢や日本銀行の金融政策運営などについてお話しします。その後、復旧・復興に向けた取り組みを進める石川県経済の動向や日本銀行の業務・政策運営に対するご意見などをお聞かせ頂ければと存じます。2.経済・物価情勢経済・物価の現状です。海外経済は、総じてみれば緩やかに成長しています。図表1 は IMFが本年7月に改訂した世界経済見通しです。米国経済は、既往の利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に緩やかに成長しており、先行きも継続するとみられます。欧州経済は、下げ止まりつつあり、先行きは緩やかに持ち直していくとみられます。
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中国経済は、不動産市場の調整の影響は続いているものの、政策面の下支えもあり、緩やかな成長が維持されるとみています。2024年の成長率見通しの変化をみると、米国を中心に過去1年程度上方修正が続いています。8月前半には、米国の雇用関係の統計公表を契機とした景気減速懸念を背景に、株式・為替相場の大幅な変動が生じましたが、足もとでは、落ち着きを取り戻しつつあります。私としては、米欧で引き締め的な金融政策運営が続いたなか、海外の経済・物価情勢をリスク要因として捉えたうえで、市場環境も含め極めて高い緊張感をもって注視する必要があると考えています。
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2わが国経済は、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復しています。図表2 で家計部門をみると、物価高の影響から食料品などの非耐久財消費に弱さがみられます。一方、サービス消費を中心に底堅さは維持されているほか、足もとでは高めの賃金改定率となった春季労使交渉の結果が反映される形で賃金の伸び率も高まっています。企業部門では、 6月短観において、良好な業況感が維持されるもと、今年度の設備投資計画は 10%を超える高めの伸びとなるなど堅調な設備投資が継続している姿が確認されています(図表 3 )。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰してきているものの、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足もとは 2% 台後半となっています(図表 4 )。先行きについては、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きな循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。図表5 で7月公表の展望レポートにおける経済・物価見通しをみると、実質 GDP 成長率は、政策委員見通しの中央値で 2024年度+ 0.6%、 2025年度+ 1.0%、 2026年度+ 1.0%と予想しています。
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足もとで一部に弱さがみえる個人消費も、当面は物価上昇の影響を受けつつも、賃金上昇率の高まりなどを背景に緩やかに増加していくとみています。更に、ガソリン代の負担緩和策継続などの政府による施策も、個人消費を下支えすると考えています。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、 2024年度+ 2.5% となったあと、 2025年度+ 2.1%、 2026年度+ 1.9% と、概ね2%程度で推移し、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると想定しています。今年4月時点の見通しと比べ、政府による施策の影響で 2024年度が下振れる一方、 2025年度が上振れていますが、全体としてみれば見通しが維持されています。株式・為替相場の大幅な変動がありましたが、「物価安定の目標」実現がなお
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3展望できる状況と考えており、その背景を改めて振り返ると、次の三つの段階を経て、企業の賃金・価格設定行動に変化が生じ、企業収益の改善と物価上昇に対応した持続的な賃金上昇による好循環や、根強く定着する賃金や物価は上がらないものと考える規範(ノルム)が漸く転換する変曲点を迎えたため、と捉えています。具体的には、図表 6 のように、第一段階として、 2022年後半に海外発の原材料高のコストプッシュ――1つ目の「ビッグ・プッシュ」 ――で、財価格への転嫁が進みました。さらに、第二段階として、賃金上昇のコスト増加分――2つ目の「ビッグ・プッシュ」 ――の一部を、サービスを含む価格に転嫁する動きが生じています。今春の労使交渉での賃上げ率は 5.1%と 33年振りの水準となりました(図表7 )。こうしたもとで、第三段階・最終段階として、予想物価上昇率は、緩やかながら着実に底上げされてきています。足もとでは、 2024年度に入って輸入物価が再び上昇しています。先行きの物価を展望するうえで、現時点の輸入物価上昇は、今申し上げた三つの段階を経た2022年以降のような価格転嫁をもたらす震度ではないとみています。
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もっとも、価格を据え置くとするノルムの転換が進んできていることもあり、従前より価格転嫁が進みやすく、下期に向け、価格引き上げの波が再び生じる可能性を、 8月前半の円高進行も踏まえつつ、予断なく見極める必要があると考えています。また、 2%を超える物価上昇が既に 3年目となるなか、「物価安定の目標」の厳密な意味での実現と別に、家計を中心に「目標」実現が従前よりも意識されてきている点を認識する必要もあると考えています。3.最近の金融政策運営次に、金融政策運営に対する考えをお話しします。日本銀行は、今年3月の金融政策決定会合で、「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、金融政策の枠組みの見直しを行いました。イールドカーブ・コントロールの枠組みおよびマイナス金利政策といった大規模な
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4金融緩和はその役割を果たしたことから撤廃し、短期金利の操作を主たる政策手段として、「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現に向けて、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営することにしています。更に、 7月の金融政策決定会合で、市場参加者の意見も参考にしつつ、 2026年3月までの国債買入れの減額計画を決定しました(図表8 )。長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切との考え方に基づき、相応の規模となる減額計画を策定したところです。ただし、日本銀行のバランスシート規模は大きく、今後もかなりの期間にわたってバランスシートの縮小を続けることが予測されるため、現時点では、最終的な国債保有残高やバランスシートをどこまで縮小するのが望ましいかを議論することは難しい点も指摘したいと思います。海外中央銀行が既に保有債券額の削減を進めてきており、こうした事例も参考にしていく必要があります。加えて、主な政策手段である短期金利については、 0.25% 程度への引き上げを決定しました(図表9 )。
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これまで示してきた経済・物価見通しに概ね沿って推移する一方、物価上振れのリスクに注意する必要がある状況を踏まえ、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現との観点から、金融緩和の度合いを調整することが適当と判断しました。政策金利を引き上げましたが、金融緩和度合いを評価するうえでは、実質金利と比較する対象となる自然利子率の把握が重要となります。もっとも、自然利子率は、現実の世界で直接観察できるデータではなく、様々な手法で推計した結果をみても大きなばらつきがあり、足もとの水準をピンポイントで把握することは極めて困難です(図表 10)。ただし、こうした様々な試算結果と比べても、足もとの実質金利は自然利子率を下回っており、政策金利引き上げ後も、緩和的な金融環境はなお継続しているとみています(図表 11)。8月前半に株式・為替相場の大幅な変動が生じその影響が残存するだけに、当
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5面はその動向を注視し影響を見極める必要があります。そのうえで、緩和的な金融環境が続くもと、私自身としては、先行きについても、物価が概ね見通しに沿って推移するもとで、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など「前向きな企業行動」の持続性が確認されていけば、その都度、もう一段のギアシフト―― 金融緩和度合いの更なる調整――を進め、言わば「金利のある世界」にしていくことは必要だと考えています。ただし、自然利子率のピンポイントでの把握が困難なもと、「物価安定の目標」実現の時期に向けて一定の中立金利の水準を念頭に政策金利を引き上げていく訳ではなく、十分な時間をかけつつ、その都度、政策金利引き上げの経済・物価・金融情勢への影響を検証しながら対応するというアプローチが現実的ではないかと考えています。振り返ると、 1970年代の変動相場制への移行後、先進国の金融政策スタンスとそれに対応する景気サイクルは概ね連動していましたが、足もと、内外の景気サイクルは異なります。米欧では利下げに向けた動きが生じていますが、これまでの利上げが急だっただけにその影響が時間を経て生じる場合、わが国の経済を下押しするリスクがあり、同時に、金融政策スタンスの違いから金融市場に変動が生じる可能性もあるだけに、当面は内外の動向を慎重に見守る必要があります。
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4.バブル崩壊からの「過去・現在・未来」今年の春以降、 ①約 35年振りの株価の史上最高値更新や、 ② 33年振りの 5%を上回る賃上げ実現など、 30 数年振りの現象が話題となっています。私自身としては、バブル崩壊以降の歴史的な転換点を迎えていると考えており、大規模な金融緩和からの転換とも関連していると捉えています。こうした歴史的転換にいたるまでには予想以上に長期にわたる時間を要しました。以下、「企業行動」の変化を中心に、バブル崩壊からの転換について、「過去・現在・未来」の視点に分けて私見を述べたいと思います。
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6(「過去」:バブル崩壊後の企業行動の転換とノルムの定着)まず、起点となる「過去」を振り返ります。わが国の経済成長率の推移をみると、 1990年代以降、バブル崩壊とともに低成長が続きました(図表 12)。成長率の低下には、人口動態など様々な要因が影響していますが、バブル崩壊以降に直面した環境変化に対応した企業の行動変化が大きいと考えています。具体的には、図表 13 に示されるような、大幅な資産デフレ環境のなかでバランスシート上の資産圧縮と投資抑制を通じた「持たない経営」の広がりと、損益計算書上における海外との競合環境を背景とする「リストラ経営」の拡大が指摘できます。個々の企業の立場からみれば、以上の対応は置かれた環境変化を踏まえた合理的な対応ではありましたが、マクロ的には、「合成の誤謬」で縮小均衡に陥りました。一方、家計では、デフレ環境のもと資産を現預金で保有することが合理的でした。今日、わが国家計の金融資産は約 2,200 兆円ですが、米欧と異なり、現預金が過半を占めるなど、リスク資産の保有を回避したこともリスクマネーに資金が集まらず、マクロの縮小均衡に繋がる影響をもたらしました。また、企業の「持たない経営」「リストラ経営」は、設備投資圧縮に止まらず、人的投資の抑制も相まって、わが国の潜在成長率を低下させたと考えられます(図表 14)。
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ここからは、企業の「持たない経営」に繋がった資産デフレについて、歴史的観点から確認します。1980年代、ピーク時には世界の株式市場の時価総額の半分近くをわが国が占めましたが、図表 15 で示されるように 1990年代以降、株価は大きく下落したほか、不動産価格も低迷しました。バブル崩壊後にわが国が直面した危機の本質は、資産価格の下落(資産デフレ)にありました。国富でみたその震度は、バブル期ピークとボトムの比較で約 900 兆円と GDP の倍近い規模であり、第二次世界大戦時の国富の消失と比べても、バブル崩壊のインパクトの大きさが窺われます 1。こうしたなか、実質自己資本が大幅に低下すること1 経済安定本部「太平洋戦争による我国の被害総合報告書」に基づく国富の被害額( 643 億円)を、 1944年度の国民総生産と比較すると、 86% となる。
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7で投資の抑制や有利子負債削減が進みました。また、バブル崩壊後の金融システムの問題に伴う資金調達への不安が、現預金を積み上げる企業行動にも繋がり現在も根強く影響が続いていました。続いて、「リストラ経営」に繋がった海外との競合環境について振り返ります。第二次世界大戦後、日本は長らく、西側陣営の工場として世界貿易の追い風を享受しました。もっとも、 1989年のベルリンの壁崩壊以降は、地政学的環境に転換が生じ、わが国の経済的な脅威論拡大から米国との通商摩擦が高まるとともに、 1990年代以降、為替市場では急速な円高が進行しました(図表 16)。こうしたもと、本邦企業は、半導体産業では生産シェア抑制を余儀なくされたほか、自動車など幅広い業種で海外への生産拠点のシフトが求められ、国内の産業空洞化に繋がりました。また、円高環境でも輸出価格を据え置いて価格競争力を維持し、国内では、リストラに向けた経営やマージンを圧縮しつつ従業員の賃金を上げない対応が定着し、その後も長期にわたって、原材料価格が上昇しても販売価格に転嫁せず、コスト削減によって吸収することが習慣化されました。賃金も価格も据え置くのが当たり前だとノルムとして定着した状況であり、実際にデフレ期と評される 1990年代後半以降、長年にわたり賃金も物価も上昇率がほぼゼロで推移しました(図表 17)。
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新たな需要創出といったプロダクト・イノベーションではなく、海外との競合上、販売価格を下げるためのプロセス・イノベーションに偏重したとの指摘も聞かれます。こうした点は、図表 18 のように、米国企業とは大きく異なり、本邦企業は、国内需要の低迷を背景に、企業の価格支配力が低下し、販売価格の抑制とマージンの縮小――経済学の言葉では、「価格マークアップの縮小」――が生じました 2。同時に、企業は、賃金抑制傾向 ――「賃金マークダウン」 ―― を強める、言わば「消耗戦」で収益を確保してきたことも示唆されます。2 青木浩介、法眼吉彦、伊藤洋二郎、金井健司、高富康介( 2024)「わが国企業における価格マークアップの決定要因と生産性への含意」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No.24-J-11 を参照。
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8(「現在」:ノルムの転換の変曲点)こうしたなか、「現在」では、賃金や物価は上がらないものと考えるノルムが漸く変曲点を迎えています。この象徴的な変化の背景には、前段で触れたように、2022年以降の海外発の輸入物価上昇に起因したビッグ・プッシュ(前掲図表6 )がありますが、加えて、バブル崩壊後の企業行動や家計行動の変化に繋がった資産価格低迷や海外との競合環境激化からの転換も指摘できます。すなわち、 2010年代入り後、前掲図表 15 のように、株式や不動産市場を中心に資産価格が上昇したなど、バランスシート面で「持たない経営」に繋がった資産デフレは大きく改善しています。また、「リストラ経営」についても、同じく 2010年代以降、損益計算書の面で海外との競合激化に繋がった為替の過度な円高進行が解消したほか、 1990年前後とは大きく異なるわが国の地政学的な立場の変化から、熊本や北海道で半導体の国内生産が強化されるなど、経済安全保障の観点から日本に回帰する歴史的な動きも生じています。他方、資産価格の改善や極端な円高からの反転はここ 10年程度にわたって続きましたが、ノルムの転換は「現在」になって漸く見えてきた程度であり、転換には長い時間を要しました。バブル崩壊後に定着したノルムの根強さが窺われますが、その根強さをみる観点で、負の経験について1つの試算を紹介します。
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図表 19 では、多くの人が就業すると考えられる 22 歳から、毎月一定金額を日経平均株価に投資したと仮定した場合の累積リターンを年齢別に示しています。過去 10年余り株価上昇が続いたことから、 20 歳代や 30 歳代の世代は、マイナスを殆ど経験していない一方、 40 歳代・ 50 歳代の世代は、バブル崩壊後の長期間の株価低迷から、就業してから半分近くの期間でマイナスを経験してきたことが確認できます。一例としての株価による試算ですが、現在、企業等の組織で中核を占める 40 歳代・ 50 歳代の世代を中心に、長期にわたる負の経験、トラウマのような経験があったことが、その後、慎重化した企業行動の根強さの一
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9因になっていると考えられます。加えて、こうしたノルムと化した根強い企業行動等の転換には、1つの世代を形成する 10年単位( decade)と、予想以上に時間を要する可能性も示唆されます。同様に、予想物価上昇率の「適合的」な期待形成 ―― 図表 20 のとおり、日本は他国と比べてその度合いが高いことが確認できます――においても、ノルムが定着した期間が長いだけに、その慎重化した状況からの転換、上昇には当初の想定をはるかに超える時間を要したとの解釈もできると思います。また、変化は生じたものの、現在もまだ変わりにくいという二極化した面も残ると考えられます。この点、 2021年3月の「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」では、金利低下が需給ギャップを改善させる効果の波及経路として、資金調達コストの低下を通じた経路に加え、金融資本市場(株価・為替)を通じた経路も大きな影響を与えていたことが示されています(図表 21)。この結果から、日本銀行の金融緩和が、バブル崩壊後の企業行動の変化を招いた要因である資産デフレや円高も含めたいわゆる「六重苦」からの転換に貢献した可能性が示唆されます。
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私としては、ノルムの転換には1つの世代を形成する 10年単位の時間が必要な可能性を踏まえると、日本銀行が長年にわたって粘り強い緩和姿勢を続け、資産価格の改善や極端な円高からの反転を支えたことが、バブル崩壊からの歴史的な変化となるノルム転換の変曲点を迎える「下地」となったと捉えています。前掲図表 13 に沿って改めてみると、バランスシート面では株式や不動産市場といった資産価格の改善が、損益計算書の面では為替の過度な円高進行の解消に加え、地政学的にも日本の産業立地がサポートされる環境となったことが寄与しています。また、過去のトラウマからの脱却には、大規模緩和以降の10年にわたる時間軸に加え、 2022年以降、海外発の輸入物価上昇に起因したビッグ・プッシュもあり、 2024年に漸く歴史的な 30 数年振りの転換という象徴的な変化が生じたと考えられます。
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10(「未来」:前向きな企業行動が続くか)続いて、「未来」を展望したいと思います。「過去」のバブル崩壊後の企業行動の変化が、賃金や物価は上がらないものと考えるノルムの定着に繋がり、「現在」になってそのノルムが漸く変曲点を迎えていると捉えると、「未来」を考えるにあたっての注目点は、再び、前掲図表 13 に沿って改めてみて、将来にわたって前向きな企業行動が続くか、となるかと思います。もう一段のギアシフトに向けて、「前向きな企業行動」の持続性を挙げたのもこの考え方が背景です。「前向きな企業行動」を判断するにあたっては、バブル崩壊後の企業行動が「持たない経営」と「リストラ経営」に代表されるだけに、こうした観点からの確認がポイントとなると考えています。すなわち、「持たない経営」の観点では、先行きの堅調な設備投資が挙げられます。この点、中小企業も含めて前向きな投資に踏み出す事例も生じています。中小企業は比較的担保に依存するという資金調達の構造から、不動産などの資産価格の上昇は、設備投資が進みやすく、収益環境の変化以上に企業活動に前向きなモメンタムを生み出す可能性もあるとみています。マクロでみて受取利息が支払利息を上回るほどに利払い負担が低下しているという企業の財務内容の良さもこうした動きを下支えするとみられます(図表 22)。
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加えて、デジタル化やEV等電動化に向けた動き 3や脱炭素に向けた世界的な取り組みなど、新たな社会への転換に向けた投資意欲が高まっている点も先行きを展望するうえでの注目点です。「リストラ経営」の観点では、賃金や販売価格の引き上げ、マージンの確保などが挙げられます。この点、経営者は人的資本投資・賃金引き上げへの社会的要請の高まりを意識し、賃金や販売価格を据え置く行動原理が当然であるという考え方にも変化が生じています。実際に、多角的レビューの一環で実施したアン3日本政策投資銀行「 2024年度設備投資計画調査」では、デジタル化の加速を受けて、EVや半導体関連の能力増強投資が拡大するなど、 2024年度の設備投資は高めの伸びとなる計画が示されている。
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11ケートでは物価と賃金の緩やかな上昇を好ましいとする回答が7割を占めています(図表 23)。中小企業や地域も含め、足もと増加が続く事業承継やM&Aなど、一定のイノベーションを促す力が働き出し、販売価格引き上げに向けた動きがみられ始めたと考えることも可能です 4。加えて、前掲図表 19 でもみたように、バブル崩壊後の負の経験や縮小均衡を経験していない新たな世代の台頭は、これまで浸透してきた行動原理、ノルム等からの転換に繋がり得ると指摘できます。同時に、家計の資産運用も、従来の現預金中心からの変化が若い世代中心に生じると展望されます。(「真の夜明け」となるか)バブル崩壊後の 30年強の間、日本経済はいくつかの「偽りの夜明け ――経済の一時的な回復―― 」 5を経験してきたことも事実です。2000年前後、日本では回復期待が高まりましたが、その後、海外の IT バブル崩壊もあり、回復は頓挫しました。その後、 2000年代半ばにかけてミニバブルとされた高揚期もありましたが、海外でのリーマンショックの影響もあり、回復は途切れ、「偽りの夜明け」を繰り返しました。「未来」を展望するにあたって、改めて「持たない経営」「リストラ経営」の観点からいくつかの過去の回復局面――海外発のショックによる影響を受けた部分が大きいですが――を振り返りたいと思います。
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まず、 2000年前後の回復局面については、銀行部門の不良債権処理が未了であったもと、企業部門のバランスシート調整も完了していない、すなわち「持たない経営」が継続したままであり、前向きな設備投資が不足していたと捉えられます。また、 2000年代半ばの回復局面では、企業や銀行部門のバランスシート4 「令和 5年度年次経済財政報告―動き始めた物価と賃金―」では、「経済産業省企業活動基本調査」の調査票情報を活用して、研究開発や人的資本など、無形資産への投資はマークアップ率とプラスの関係性があることを確認している。5 白川方明( 2009)、「経済・金融危機からの脱却:教訓と政策対応――ジャパン・ソサエティNYにおける講演の邦訳――」。https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/press/koen_2009/ko0904c.htm
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12調整は一巡していましたが、バブル崩壊後のトラウマのような経験が根強く残るもと、「リストラ経営」から脱出することができず、賃金や価格が据え置かれた状況が継続したと解釈できると思います。このように、何回か海外からの追い風で回復局面を迎えながらも、結局は「偽りの夜明け」に終わり、「真の夜明け」6は実現されなかったと言えます。一方、足もとは、バランスシート調整に目途が付いたなか、ビッグ・プッシュに加えて、 10年以上も続く追い風―― 資産価格低迷や海外との競合環境激化からの転換 ―― を背景に、「持たない経営」と「リストラ経営」の両者から脱却し、長年のノルム、トラウマからの脱却が生じ「前向きな企業行動」の持続が漸く期待できる状況になったと言えます。私としては、「真の夜明け」が、「これまでとは違って( This time is different)」、本当に実現していくか、状況を注視していきたいと思います。前段で触れたとおり、「金利のある世界」を展望しているのも、こうした歴史的な転換を背景としています。ただし、過去を振り返っても海外発のショックが制約になったことが繰り返されてきただけに、海外経済や市場動向には十分留意する必要があるとも考えています。
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(バブル崩壊後のバランスシート調整 ――「国債」の視点から―― )ここまで「企業行動」に着目しバブル崩壊以降のバランスシート調整をみてきましたが、「国債」という視点からもバブル崩壊以降を振り返りたいと思います。前掲図表 13 で示した企業による資産・負債の圧縮――バランスシート調整――は、不良債権処理を進める過程で金融機関が損失を負担し、公的資金注入に繋がりました。加えて、経済全体の低迷を受け、財政支出が拡大傾向をたどり、国債発行残高の増加にも繋がりました。すなわち、この間の国債増加とはバランスシート調整を行う過程で、民間の過剰債務の負担を政府が肩代わりすることで6 中曽宏( 2017)、「日本経済の底力と構造改革――ジャパン・ソサエティおよびシティ・オブ・ロンドン・コーポレーションの共催講演会における講演の邦訳」。https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2017/ko171005a.htm
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13生じた――言わば、「身代わり地蔵」 ――と評することができると思います。2000年代初には民間部門の過剰債務問題や金融システムの問題の目途がつきましたが、こうした観点から、バブル崩壊後の調整は、日本全体のバランスシート調整とも表現できるかと思います。バランスシート調整に伴う企業部門の資金需要低迷から、金融機関の国債保有も拡大し、 2000年代においては国債の 4割程度を預金取扱機関が保有していました(図表 24)。その後、日本銀行は、「物価の安定」が課題となるなかで、大規模な金融緩和を実施してきました。金利低下が需給ギャップを改善させる効果の波及経路として、金融資本市場を通じた経路も大きな影響を与えていたことも示されています(前掲図表 21)。前掲図表 13 で示された企業のバランスシート調整を円滑に進める観点から、一定の時間をかけイールドカーブを押し下げることで前向きな企業行動に向けたサポートとなったと考えられます。こうした国債買入れプロセスのもと、預金取扱機関から日本銀行に国債保有がシフトし、足もとでは日本銀行が国債の半分近くを保有しています。
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この点、金融機関が有していた金利リスク量の多くを日本銀行が抱える状況となっており、日本銀行が「物価の安定」を実現するために実施してきた大規模な金融緩和は、結果として、バランスシート調整――言わば、資産デフレを起点とした日本全体のバランスシート調整――プロセスの最終的段階を金融面から時間をかけて支えた側面もあったと評価できると思います。前段のとおり、 7月の金融政策決定会合で国債買入れの減額計画を決定しました。現状、金融緩和の効果が大きく変化することはないと思いますが、イールドカーブ・コントロールによって緩和効果を追求していた時点からは大きな転換を意味します。同時に金融面からは、これまで日本銀行が保有していた国債の残高が減少し、民間セクターの残高が増加するプロセスとなるため、国債買入れの減額局面において、財務面も含めて、民間(含む金融機関)、政府、日本銀行の状況を注視していくことが重要だと思います。国債買入れの減額は事実上の
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14市中への国債発行増加と同じような効果をもたらすと捉えることもでき、今回の減額により、歴史的な点からも有数の大量発行局面を迎えるとの見方もできます。それだけに、今後の国債保有構造の在り方を念頭に、中長期的観点から新たな市場構造が幅広く議論されることも必要だと思います。その際、市場参加者を取り巻く前提となる環境を踏まえた議論も重要です。日本銀行として、普段のコミュニケーションはもとより、債券市場参加者の会合などを活用して市場参加者の意見をお聞きするなど、新たな環境に対処して市場との対話に努めるほか、内外市場や投資家動向を丁寧にモニタリングして参りたいと考えています。5.石川県経済について最後に、石川県経済について、お話しさせて頂きます。能登半島地震からの復旧の途上にあるものの、回復に向けた動きがみられています。足もとの生産については、被災した設備の復旧が進み、現時点では、電子部品や化学、繊維等の主だった工場の生産量は、概ね震災前のレベルにまで持ち直してきています。当県の特徴として、伝統を重んじつつ、それらを発展的に変容させ、付加価値を高めていく点を挙げることができると思います。
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例えば、地場産業として栄える機械工業や繊維業は、明治時代の鉱山開発や産業振興を興りとし、現在では、建設機械では、情報通信技術を活用した製品で世界的な需要を取り込んでいるほか、繊維業では、高性能な素材により世界的ブランド企業とも取引を有するなど、今やその高い技術力は世界に認められているところです。このほか、電子部品では、ニッチトップ企業が数多く存在し、国内外の電子部品の供給を担う拠点となっているなど、わが国経済において重要な地域となっています。さらに、こうした企業を、重厚な調達先、効率的な物流、生産性の高い労働力など、地域全体で下支えする仕組みが構築されているのが印象的です。さて、年初に地震に見舞われた能登地方についてですが、私自身、今回、輪島、和倉、能登町など被災地を訪問し、被災地の現状を拝見するとともに、復興にご
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15尽力されている方々から様々なご意見を伺いました。能登地方は、輪島塗や珠洲焼などの伝統文化や自然、人々の生活様式が「能登の里山里海文化」として一体的に形成された特色ある地域で、 2011年には世界農業遺産に登録されています。里山・里海で育まれた産業は相互に関係しており、不要資源を、肥料等で再利用するなど、持続可能な自然資源の利活用が行われています。古くから現在の SDGs の考えに通じる生活様式が実践され、自然や人、文化との多様な繋がりが今日まで存続している点が世界でも評価されているものと思います。そうした良い面を維持していくためにも、まずもって地震からの復旧・復興を一日も早く実現することが重要です。この点、 7月1日に「能登創造的復興タスクフォース」が設置されましたが、復旧・復興が一段とペースアップしていくことはもとより、より良い社会基盤の構築が進められていくことを期待します。この間、石川県も他県と同様に、人口減少や少子高齢化が進む下で、中小企業を中心に人手不足や後継者不足が大きな課題となっています。この点、県内の金融機関では、デジタル技術を活用した中小企業の業務効率化支援を通じ、地域の生産性向上に貢献しているほか、石川県信用保証協会では、企業の強みを販売価格に反映させる取り組みを通じ、企業価値の見える化を支援することで事業継続意欲の維持に努めています。
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また、石川県産業創出支援機構では、各機関と連携して事業承継に関する相談会を開催するなど、県内一丸となった取り組みが進められております。能登半島地震からの復旧・復興や人口減少への対応など、石川県が直面する課題は決して容易なものではありませんが、石川県の特性とも言える、環境の変化に応じて付加価値を高めながら新しいものに変容させていく力や、北陸新幹線による経済効果を復興の下支えの力とし、当県がさらに発展していくことを祈念して、ご挨拶といたします。以上
§32
わが国の経済・物価情勢と金融政策── 石川県金融経済懇談会における挨拶 ──2024年9月5日日本銀行政策委員会審議委員高田創0.51.01.52.02.53.02.02.53.03.54.04.521/422/423/424/4世界計米国(右目盛)(前年比、%)月↑上方修正(前年比、%)-4-3-2-101234567800020406081012141618202224(前年比、%)00年IMF見通し1990~ 2019年平均:+ 3.6%(注)右上図の ( )内は、 2024/4月見通しからの修正幅。(出所)IMF海外経済の動向(IMFの 2024年7月見通し)図表1(前年比、%、%ポイント)主要国・地域の経済成長率世界経済成長率2023年2024年2025年[見通し ] [ 見通し ]世界全体 3.33.23.3(0.0) (0.1)先進国 1.71.71.8(0.0) (0.0)米国 2.52.61.9(-0.1) (0.0)ユーロ圏 0.50.91.5(0.1) (0.0)新興国・資源国 4.44.34.3(0.1) (0.1)中国 5.25.04.5(0.4) (0.4)2024年の見通しの改訂状況
§33
-3-2-10123456192021222324所定内給与所定外給与特別給与名目賃金実質賃金(前年比、%)年707580859095100105110192021222324実質個人消費耐久財< 8.9%>非耐久財< 40.5%>サービス< 50.7%>( 2019年= 100)年日本の個人消費(注) 1. 左図の実質個人消費は、実質消費活動指数(旅行収支調整済)。除くインバウンド消費・含むアウトバウンド消費(日本銀行スタッフ算出)。<>内は、消費活動指数におけるウエイト。2. 右図の各四半期は、 1Q: 3~ 5月、 2Q: 6~ 8月、 3Q: 9~ 11月、 4Q: 12~ 2月。共通事業所ベース。2024年2Qは、6月の値。(出所)日本銀行、厚生労働省、総務省図表2賃金実質個人消費500520540560580600620131415161718192021222324名目GDP実質GDP(季節調整済年率換算、兆円)年-10-505101520131415161718192021222324GDP民間企業設備投資(名目)短観(全産業+金融機関、実績)短観( 6月調査時点の当年度計画値)(前年比、%)年度日本のGDPと設備投資計画(注)右図の短観は、ソフトウェア投資額・研究開発投資額を含み、土地投資額は含まない( 2016/12月調査以前は、研究開発投資額を含まない)。
§34
GDP民間企業設備投資の 2024年度は、 2024/2Qの値。(出所)内閣府、日本銀行図表3設備投資計画GDP
§35
-2-10123456789101118192021222324一時的要因エネルギー< 7%>サービス< 50%>財< 40%>CPI(除く生鮮食品)< 100%>(前年比、%)年-2-10123456789101118192021222324エネルギー< 10%>サービス< 45%>財< 45%>HICP< 100%>(前年比、%)年-2-10123456789101118192021222324エネルギー< 7%>サービス< 66%>財< 27%>CPI< 100%>(前年比、%)年(注) 1. 日本の「一時的要因」は、消費税率引き上げ・教育無償化政策、旅行支援策、携帯電話通信料の影響からなる日本銀行スタッフによる試算値。2. <>内はウエイト。2024年3Qは、いずれも7月の値。
§36
(出所)総務省、 Haver日米欧のインフレ率図表4(日本)(米国)(ユーロ圏)実質GDP 消費者物価指数(除く生鮮食品 )(参考)消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)2024年度+ 0.5 ~+ 0.7<+ 0.6>+ 2.5 ~+ 2.6<+ 2.5>+ 1.8 ~+ 2.0<+ 1.9>4月時点の見通し+ 0.7 ~+ 1.0<+ 0.8>+ 2.6 ~+ 3.0<+ 2.8>+ 1.7 ~+ 2.1<+ 1.9>2025年度+ 0.9 ~+ 1.1<+ 1.0>+ 2.0 ~+ 2.3<+ 2.1>+ 1.8 ~+ 2.0<+ 1.9>4月時点の見通し+ 0.8 ~+ 1.1<+ 1.0>+ 1.7 ~+ 2.1<+ 1.9>+ 1.8 ~+ 2.0<+ 1.9>2026年度+ 0.8 ~+ 1.0<+ 1.0>+ 1.8 ~+ 2.0<+ 1.9>+ 1.9 ~+ 2.2<+ 2.1>4月時点の見通し+ 0.8 ~+ 1.0<+ 1.0>+ 1.6 ~+ 2.0<+ 1.9>+ 1.9 ~+ 2.1<+ 2.1>――対前年度比、%。なお、<>内は政策委員見通しの中央値。
§37
政策委員の大勢見通し( 2024年7月展望レポート)(注) 1. 「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限を意味しない。2. 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、上記の見通しを作成している。(出所)日本銀行図表5
§38
「待機資金」のバッファーコロナ禍からのペントアップ需要1つ目のビッグ・プッシュ海外発の原材料価格上昇賃金・物価間の相互連関・パススルーの強まり個人消費の緩やかな増加人手不足・転職増加による労働者の交渉力増大賃金上昇分を価格に転嫁する動き CPI上昇賃金上昇労働代替的投資生産性向上実質賃金の上昇2022年に生じた動き2023年以降に生じた2つ目のビッグ・プッシュ予想物価上昇率の底上げ持続的な好循環へ第一段階第二段階第三段階2024年賃金と物価との相互連関の考え方 (目標実現への3段階 )図表60.00.51.01.52.02.5070911131517192123合成予想物価上昇率( 10年後)うち家計うち企業うち専門家年(%)-1012345678808590950005101520ベースアップ分定期昇給分(前年比、%)年5.1%第二段階と第三段階の現状(注) 1. 左図は、 2014年までは中央労働委員会、 2015~ 2024年は連合の公表値。2. 合成予想物価上昇率は、企業・家計・専門家によるインフレ予想について、主成分分析を用いて共通成分を抽出したもの。作成方法等の詳細は、展望レポート( 2024年4月)のBOX4を参照。
§39
(出所)日本労働組合総連合会、中央労働委員会、日本銀行、 QUICK「 QUICK月次調査<債券>」、 Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、 Bloomberg図表7合成予想物価上昇率:第三段階賃上げ率:第二段階
§40
長期国債買入れの減額計画図表8月間の買入れ予定額5.75.34.94.54.13.73.32.9024/71025/1471026/14月兆円程度原則、毎四半期4,000億円程度ずつ減額26年4月~中間評価時に検討・公表中間評価日本銀行の保有国債残高01002003004005006001314151617181920212223242526兆円年おおよそ7~8%減少① 来年6月の金融政策決定会合で中間評価を実施②長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に、買入れ額の増額等を実施③必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直す2026年3月までの減額計画の考え方①長期金利:金融市場において形成されることが基本②国債買入れ:国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形での減額が適切<予見可能な形での減額><柔軟性の確保>金融市場調節方針の変更図表9政策委員見通しの中央値(対前年度比、%、括弧内は4月からの変化)幅)物価のリスク・バランス 経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移、賃上げの動きに広がり 輸入物価は再び上昇に転じており、先行き、物価が上振れするリスクには注意短期金利(無担保コールO/N物):「0.25%程度」に引き上げ(従来は「0~0.1%程度」)2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整 実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持 → 経済活動をしっかりとサポート 見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整2024年度 2025年度 2026年度(上振れ)(上振れ)(バランス)実質GDP 0.6 (▲ 0.2) 1.0 ( ― ) 1.0 ( ― )2.5 (▲ 0.3) 2.1 (+ 0.2) 1.9 ( ― )(参考)除く生鮮食品・エネルギー 1.9 ( ― ) 1.9 ( ― ) 2.1 ( ― )消費者物価(除く生鮮食品)2024年度 2025年度 2026年度
§41
-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.03.54.092949698000204060810121416182022Holston・Laubach・Williams[2023]モデルNakajima et al.[2023]モデル今久保・小島・中島 [2015]モデル岡崎・須藤 [2018]モデルDel Negro et al.[2017]モデルGoy・Iwasaki[2023]モデル(%)年日本の自然利子率図表 10(注)各モデルをベースに推計した試算値。シャドーは推計された自然利子率の最小値から最大値のバンド。(出所)日本銀行、財務省、厚生労働省、総務省、内閣府、 Bloomberg、 Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」▲ 1.0~+ 0.5%程度のレンジ-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.51012141618202224名目長期金利予想物価上昇率実質長期金利( 10年)(%)年-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.51012141618202224名目短期金利予想物価上昇率実質短期金利(1年)(%)年日本の実質金利図表 11(注)実質金利は、各年限の国債利回りから予想物価上昇率を差し引いて算出。
§42
予想物価上昇率は、様々な経済主体(企業・家計・専門家)の年限ごとのインフレ予想の情報を用いて日本銀行スタッフが推計。具体的には、企業は短観、家計は生活意識に関するアンケート調査、専門家は QUICK調査、コンセンサス・フォーキャスト、インフレ・スワップ・レートのデータを使用。(出所)日本銀行、 QUICK「 QUICK月次調査<債券>」、 Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、 Bloomberg実質長期金利( 10年)実質短期金利(1年)
§43
-6-4-202468818691960106111621(前年比、%)年度81~ 89年度平均:+ 4.4%90~ 99年度平均:+ 1.5% 00~ 09年度平均:+ 0.5%10~ 19年度平均:+ 1.0%日本の実質GDP成長率の長期推移(注) 1981~ 1994年度は、簡易遡及系列。(出所)内閣府図表 12成長期待の低下・悲観的マインドバブル崩壊後の企業行動(私見)図表 13バブル崩壊後の企業行動(私見)損益計算書(P/L)バランスシート(B/S)圧縮資産価値の低下個別企業レベルでは収益性が改善個別企業レベルでは財務体質が改善マクロでは信用収縮・デフレが発生海外との競争激化投資抑制・デレバレッジ製品価格引き下げ人件費などの圧縮マージン圧縮「持たない経営」「リストラ経営」縮小資本(資産デフレ )円高進展通商摩擦長い時間の中、ノルム化負債為替・海外環境の転換賃上げの拡がり資産価格の改善今日の変化今日の変化
§44
日本の潜在成長率(注)日本銀行スタッフによる推計値。(出所)日本銀行図表 14-2-10123458590950005101520TFP資本投入労働投入潜在成長率(前年比、%)年度半期1,0001,5002,0002,5003,0003,5004,0004,500808590950005101520(末残、兆円)年ピーク: 90年約 3,500兆円ボトム: 04年約 2,600兆円約 900兆円日本の資産価格と国富(注)SNAベース。点線は 1993SNA( 2000年基準)。(出所)内閣府図表 15株式土地国富05001,0001,5002,0002,5003,000808590950005101520(末残、兆円)年ピーク: 90年約 2,500兆円ボトム: 13年約 1,100兆円02004006008001,0001,200808590950005101520(末残、兆円)年バブル期ピーク: 89年約 900兆円ボトム: 02年約 320兆円
§45
6080100120140160180200220240260280300808590950005101520(月末値、円)年ドル円相場(出所)日本銀行図表 16-5051015202530718191011121CPI(除く生鮮食品)名目賃金(前年比、%)年度デフレ期 QQE導入以降日本の物価と給与図表 17(注) 1. CPIは、消費税率引き上げ・教育無償化政策、旅行支援策、携帯電話通信料の影響を除いた日本銀行スタッフによる試算値。2024年度は、4~7月の値。2. 名目賃金は、 1990年度以前は 30人以上の事業所、 1991年度以降は5人以上の事業所が対象。 2024年度は、4~6月の値。(出所)総務省、厚生労働省
§46
価格マークアップと賃金マークダウン(注)価格マークアップ・賃金マークダウンは、日本政策投資銀行「企業財務データバンク」の個社データを用いた青木・高富・法眼 [2023]の手法を参考に推計したもの。米国製造業は Yeh et al. [2022]をもとに計算。直近の 2023年度は、 2023/4~ 12月の値。(出所)内閣府、日本政策投資銀行、財務省、経済産業研究所、 Yeh et al. [2022]図表 18賃金マークダウン価格マークアップ0.91.01.11.21.3950005101520全産業製造業非製造業(参考)米国製造業(倍)年度↓販売価格抑制米国0.20.61.01.41.82.22.6950005101520(倍)年度↑賃金抑制米国日本株投資の年代別累積リターン図表 19(注)年初から日経平均株価を毎月一定額購入した場合における年末時点の累積リターンがプラスの場合は赤、マイナスの場合は青を示す( 2023年末時点)。色が濃いほどプラスまたはマイナス幅が大きい。累積リターンがマイナス期間の比率は、「年末時点の累積リターンがマイナスの年数」/「総投資年数」で試算。
§47
(出所) Bloomberg123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142431981198219831984198519861987198819891990199119921993199419951996199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020202120222023投資年数投資開始年20歳代30歳代40歳代50歳代60歳代累積リターンマイナス期間(比率 )50歳代平均53%20歳代平均11%30歳代平均13%40歳代平均35%60歳代平均35%
§48
適合的なインフレ予想形成の程度(注) 1. 被説明変数を6~ 10年先のインフレ予想、説明変数を実績インフレ率としたときの、後者にかかる回帰計数θの値。推計式は、6~ 10年先のインフレ予想(%)=θ ×前四半期の実績インフレ率(%)+( 1-θ) ×中央銀行の物価目標(2%)。2. 推計期間は、日本・米国が 2000/1Q~ 2024/1Q、ユーロ圏が 2003/2Q~ 2024/1Q、英国が 2005/1Q~ 2024/1Q。(出所) Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、総務省、 Bureau of Labor Statistics、 Eurostat、 Office for National Statistics図表 200.00.10.20.30.40.5日本米国ユーロ圏英国より適合的金利低下の波及経路図表 21需給ギャップ押し上げ経路(累積 5年間)概念図資金調達コスト33%株価36%為替20%その他11%需給ギャップ押し上げその他金融資本市場の改善(為替、株価)資金調達コストの低下金利低下(名目金利)(注) 1. 需給ギャップ、金利(3か月物)、金利スプレッド(2年物-3か月物、5年物-2年物、 10年物-5年物)、総資金調達コスト、円の名目実効為替レート、株価の8変数の係数制約付多変量自己回帰モデルで推計。
§49
2. 総資金調達コストは、国内銀行の新規貸出約定平均金利、社債発行金利、 CP発行金利を加重平均して算出。3. 日本銀行「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」( 2021年)を参照。(出所)日本銀行、 Bloomberg等
§50
-35-30-25-20-15-10-5059597990103050709111315171921企業全体中小企業(兆円)年-35-30-25-20-15-10-5059597990103050709111315171921(兆円)年日本の利息収支図表 22(注)左図の中小企業は配当金を含む。(出所)財務省、内閣府家計企業企業部門への大規模アンケート(注)右図は、左図において「物価と賃金がともに緩やかに上昇する状態」を好ましいと回答した企業に占める割合。(出所)日本銀行図表 23物価と賃金が緩やかに上昇する状態が好ましいと考える理由事業活動上好ましい物価と賃金の状態0255075100物価と賃金がともに緩やかに上昇する状態物価と賃金がともにほとんど変動しない状態どちらの状態でも変わらないわからない製造業 /大・中堅企業製造業 /中小・零細企業非製造業 /大・中堅企業非製造業 /中小・零細企業%0255075100賃金が増えると家計のマインドや消費にプラスだと思うから価格転嫁が容易になり収益を確保しやすいと思うから値上げを抑制するためのコストカットが不要になり、前向きな設備投資や賃上げを行えるようになるから海外の物価との乖離が小さくなり、為替が安定するから販売価格や賃金を調整しやすいから既存の債務の返済負担が軽くなるから景気悪化の際に金利が低下する余地ができるからその他%
§51
010203040506080828486889092949698000204060810121416182022中央銀行預金取扱機関保険・年金基金公的年金家計海外年度(構成比、%)主体別の国債等保有比率(注)資金循環統計ベース。なお、資金循環統計上、国債・財投債には、国庫短期証券は含まれない。ただし、 2009/2月に政府短期証券と割引短期国債が国庫短期証券として統合発行される以前の資金循環統計では、割引短期国債が国債・財投債に含まれている。(出所)日本銀行図表 24(直近)中央銀行53%預金取扱機関9%