← Back
Bank of JapanReportNov 9, 2017

金融政策決定会合における主な意見(10月30、31日開催分)

Original in Japanese

Full text

§1

1 2017 . 11 . 9日本銀行金融政策決定会合における主な意見(2017年10月30、31日開催分)1 Ⅰ .金融経済情勢に関する意見(経済情勢) わが国の景気は緩やかに拡大している。先行きも、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、きわめて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、景気の拡大が続くとみている。 グローバル経済の先行きの不透明感が和らぐ中、世界的にみると、過去数年間に控えられてきた設備投資が今後相応に出てくる可能性が高い。来年にかけて世界経済がしっかりと成長を続ける確度は高まっている。 海外経済の動向はリスク要因であるが、不確実性が徐々に後退している項目も少なくない。新興国経済の足取りはしっかりしてきており、欧州の金融セクター問題なども、時間とともに対応が進み、一頃ほどの不透明感はなくなってきた。全体としてリスクが減退しているように思う。 わが国の景気は緩やかに拡大している。個人消費や設備投資といった内需は増加傾向にあり、先行き2017 、2018年度は潜在成長率を上回る成長を続けると見込まれる。その後、2019年度は、消費税率引き上げの影響もあり、成長ペースは鈍化するとみられる。 わが国経済は、需要と供給の両面がバランスよく成長している。内外需要が増加するもとで、企業や政府の取り組みもあって、労働力率や労働生産性が上昇している。

§2

1 「金融政策決定会合における主な意見」は、①各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、②議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。公表時間11月9日(木)8 時50分 2

§3

 「量的・質的金融緩和」導入後のわが国の労働生産性の伸び率は、導入前の 10年間と比べても、また、主要国と比べても高くなっている。 企業の内部留保が過度に積み上がれば、経済全体として過剰貯蓄の状態となり、自然利子率が低下する可能性がある。企業の貯蓄・投資・労働者への配分のバランスが重要である。(物価) マクロ的な需給ギャップが改善を続けるもとで、企業の賃金・価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も上昇するとみている。この結果、消費者物価の前年比は、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくとみている。 労働需給が引き締まり、パート時給がはっきりとした上昇基調を続けているほか、既往の為替円安による仕入れ価格の上昇もあって、企業のコスト面からみた価格上昇圧力は着実に高まっている。 わが国では、値上げが20 数年振りという企業も多い。社会のノルム(規範)の変化という意味においては、企業が自社商品・サービスの値上げの経験を積み重ねていくことも大切である。 労働力率や労働生産性の上昇は、短期的には、物価の下押しに作用するが、スラックの縮小につれてそうした影響はいずれ減衰するほか、長期的には、潜在成長率を引き上げ、人々の将来不安の後退等を通じて物価の押し上げに寄与すると考えられる。

§4

 日本銀行の金融緩和政策等による経済の改善を背景とした高水準の企業収益、人手不足などにより、企業が設備投資や人的投資を積極化し、生産性を飛躍的に向上させる環境は十分整っている。こうした生産性の向上が持続的な実質雇用者所得の増加をもたらすことで、個人消費は増加基調に転じ、2%の「物価安定の目標」の達成も視野に入ってくる。 今後、エネルギー関連の物価押上げ効果が徐々に低下していくことが見込まれるほか、通信関連の物価下押し効果が長引く可能性がある点に留意が必要である。もっとも、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されている。 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2%に向けて緩やか

§5

3

§6

に上昇していくとみられる。しかし、マクロ的な需給ギャップはプラスである一方、予想物価上昇率の形成が適合的であるため、 2% に達するには暫く時間がかかると見込まれる。 資本・労働市場ともに供給過剰が残存しており、日本経済は、「物価安定の目標」を達成するに足る状況からまだ距離がある。Ⅱ.金融政策運営に関する意見 2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されている。もっとも、物価にはなお弱さがみられていることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要である。 息長く経済の好循環を支えて脱デフレの完遂に資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。 「イールドカーブ・コントロール」の枠組みには、予想物価上昇率が上昇すれば、実質金利が低下し、金融緩和効果が強まる仕組みが内在しているため、金融市場調節方針を維持することにより、 2% に向けたモメンタムを強化していくことが可能である。 現在の金融政策は、企業が不断の生産性向上に取り組むことができる環境を整えるうえで、政策効果の不確実性が最も小さく、最適な金融政策である。仮に政策を変更する場合には、「物価安定の目標」の達成を早め、持続可能性を高めることがより確実なものでなければならない。政策変更の効果に確信が持てない限り、現状維持が適切である。

§7

 2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されており、当面は現行の政策の効果を見守ることが肝要である。目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると、金融不均衡の蓄積や金融仲介機能の低下といった副作用が生じる恐れもある。 追加緩和に関しては、市場や金融機関への影響、政策の持続性等の観点から、プラスの効果より副作用の方が大きいとみている。 国債市場の流動性に加え、国内外投資家の動向や金融機関の保有有価証券ポートフォリオの中身について一層注視する必要がある。 ETFをはじめ各種リスク資産の買入れについては、政策効果

§8

4

§9

と考え得る副作用について、あらゆる角度から点検すべきである。 2%の「物価安定の目標」の実現に向けて、政府・日銀が一貫した姿勢で臨むことが非常に重要である。 米欧の中央銀行が出口に向かっているので、日本銀行も同様に出口に向かうべきだという意見があるが、これらの国に比べて、金融緩和の開始時期が遅いため、出口に向かう時期が遅くなることについても不思議はない。 金融緩和の出口では、日本銀行が赤字を計上して大変なことになるという議論があるが、これは木を見て森を見ない議論である。金融緩和の過程では、日本銀行の収益増加で納付金が増え、税収が増大して財政赤字の対 GDP 比も減少する。出口の後でも長期的には、金利上昇に伴う日本銀行の収益の増加が見込まれる。 より長期の金利を引き下げる観点から、長期の金利操作対象として、 10年物国債金利に代えて、15年物国債金利が0.2% 未満で推移するよう長期国債の買入れを行う追加緩和策を講じることで、 GDP ギャップや予想インフレ率の上昇、消費者物価への波及を強化し、「物価安定の目標」の早期達成への確度を高めるべきである。 「展望レポートにおける消費者物価指数の政策委員見通し中央値について、国内要因により『物価安定の目標』の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じる」というコミットメントを導入すべきである。

§10

Ⅲ.政府の意見(財務省) 「生産性革命」と「人づくり革命」の実現に向けて、年内にも新たな経済政策パッケージをとりまとめる。 財政再建の旗は降ろすことなく、プライマリーバランス黒字化を目指して、歳出・歳入両面から改革を続け、今後達成に向けた具体的な計画を策定する。 日本銀行が、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目

§11

5 標」の実現に向けて努力されることを期待する。(内閣府) 「人づくり革命」と「生産性革命」の2本の柱の施策を具体化するため、年内に新しい経済政策パッケージを策定し、可能なものから速やかに実行に移していく。 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ2%の「物価安定の目標」の実現に向け着実に取り組むことを期待する。 金融政策運営の状況や物価の見通し等を引き続き十分説明いただきたい。 以上