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Bank of JapanReleaseMar 19, 2021

より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検(背景説明)

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2021年3月19日日本銀行 より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検【背景説明】(注) (注)3月18、19日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定された基本的見解(対外公表文の別紙1)について、その背景を説明するためのものである。

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11.問題意識日本銀行は、 2%の「物価安定の目標」を実現するため、2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、強力な金融緩和を実施している。2%の「物価安定の目標」は、物価統計の性質や政策対応余力の確保の観点から適切なものであり、グローバル・スタンダードとなっている。日本銀行は、2013年1月に、 2%の「物価安定の目標」を導入しており1、政府と日本銀行の共同声明にも、この目標を明記している2。2016年9月には、「量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果に関する「総括的検証」3を行い、検証の結果を踏まえ、新たな枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入した。この枠組みは、新型コロナウイルス感染症の影響への対応も含めて、適切に機能している。しかし、感染症の影響により、この先、経済・物価への下押し圧力は長期間継続し、 2%の「物価安定の目標」の実現には時間がかかることが予想される。こうした状況を踏まえ、 2%の目標を実現する観点から、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行う。2.「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向(1)「総括的検証」とその結果を踏まえた政策対応日本銀行は、2016年9月に、「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果について、「総括的検証」を行った。

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この検証では、次の点が確認された。第1に、2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、金融環境が大きく改善し、経済活動の押し上げや企業収益の改善に繋がった。第2に、そうした経済環境のもとで、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなった。第3に、もっとも、2%の「物価安定の目標」

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1日本銀行「金融政策運営の枠組みのもとでの『物価安定の目標』について」2013年1月。(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122b.pdf)2 内閣府・財務省・日本銀行「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)」2013年1月。(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf)3日本銀行「『量的・質的金融緩和』導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」2016年9月。(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160930d.pdf)

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2の実現には至らなかった。この点については、予想物価上昇率の形成メカニズムが重要である。わが国では、適合的期待形成の影響が大きいが、適合的な期待による予想物価上昇率の引き上げには不確実性があり、時間がかかると見込まれる。第4に、金融緩和は、国債市場の機能度に影響を及ぼすほか、金融機関収益や保険・年金の運用環境などへの累積的な影響を通じて、金融仲介機能に悪影響を与える可能性がある。こうした検証結果を踏まえて、日本銀行は、2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入した(図表1)。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、大きく2つの要素から構成される。第1に、2%の「物価安定の目標」の実現のために、経済・物価・金融情勢を踏まえて、最も適切なイールドカーブの形成を促す「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」である。現在まで、短期政策金利を「▲0.1%」、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」とする「金融市場調節方針」のもとで、適切なイールドカーブの形成を促している。第2に、「消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」ことを約束した、オーバーシュート型コミットメントである。この枠組みを導入した目的は、次の3点である。

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第1に、わが国における予想物価上昇率の形成メカニズムを踏まえ、2%の「物価安定の目標」の実現のために、需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続けることである。第2に、金融緩和の長期化が見込まれるもとで、緩和の効果だけでなく副作用にも配慮しながら、適切な水準に金利をコントロールしていく枠組みとすることである。第3に、オーバーシュート型コミットメントにより、予想物価上昇率に関する「フォワード・ルッキングな期待形成」を強めることである。(2)「総括的検証」以降の経済・物価動向「総括的検証」以降も、物価上昇率が高まりにくい状況が続いた。そうした状況も踏まえ、改めて、物価の変動メカニズムを点検すると、次の点が確認できる(補論1)。まず、予想物価上昇率についての適合的期待形成のメカニズムは、その時点の実際の物価上昇率に影響を受けるだけでなく、過去の経験などにも影響を受けるため、より複雑で、粘着性が高い。すなわち、長期にわたるデフレの経験によって定着した、物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行の転換には、時間がかかるということである。また、女性や高齢者を中心とした弾力的な労働供給や、企業の労働生産性向上は、結果として、物価上昇を抑制する方向に働いた。

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3こうしたもとで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、想定されたメカニズムに沿って、効果を発揮してきた(図表2)。①イールドカーブ・コントロールのもとできわめて低位に抑えられている名目金利と、「量的・質的金融緩和」の導入前の水準を上回る予想物価上昇率のもとで、実質金利(名目金利-予想物価上昇率)は、はっきりとしたマイナス圏で推移している。②低い実質金利は、低い資金調達コストや良好な金融資本市場などを通じて、金融環境を改善させた。銀行貸出は2%程度の伸びを続け、CP・社債発行残高も、2016年以降伸び率を高めながら増加している。金融資本市場では、為替相場が総じて安定的に推移し、株価は上昇基調を辿った。この結果、③経済活動が押し上げられ、企業収益や雇用環境が改善した。需給ギャップは、2017年にはっきりとしたプラス(需要超過)に転じた後、プラス幅を拡大した。こうした良好な経済環境のもとで、④デフレ期にはみられなかったベースアップが7年連続で実現するなど、賃金も緩やかに上昇し、基調的な物価上昇率はプラスの状況が定着した。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、需給ギャップが改善し、労働需給がタイト化した。そうしたもとで、上述のとおり、女性や高齢者の労働参加が進み、企業は労働生産性を向上させた。

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このように、良好な経済情勢が続き、その中で、日本経済の中長期的な課題についても、前向きな動きが進んだ。3.「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の政策効果(1)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の名目長期金利の押し下げ効果イールドカーブ・コントロールのもとでの国債金利の動向をみると、長期金利(10年物国債金利)はゼロ%程度で、その他の年限の金利も低位で安定的に推移している(図表3)。感染症拡大以降、国債市場の流動性が低下した局面や、その後の国債増発に伴う金利上昇圧力が加わるもとでも、イールドカーブは全体として低位で安定している。長期金利は、経済・物価に対する見通しのほか、海外の長期金利などの影響を受けて形成される。そこで、日本銀行の国債買入れが長期金利に与えた影響について、これらの要因をコントロールしながら、定量的な分析を行った(図表4)。その結果、日本銀行の国債買入れは、長期金利の押し下げに有意に影響しており、均してみれば概ね▲1%程度の下押し効果があることが確認できた。

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4(2)緩和的な金融環境の経済・物価への影響「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、主に低い実質金利を起点に、緩和的な金融環境を実現することで、経済・物価に好影響を及ぼすというメカニズムを想定している。上述したとおり、実際の経済・物価動向をみると、こうしたメカニズムに沿って推移してきた。そこで、日本銀行の大型マクロ経済モデル(Q-JEM)を用いて、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による金融緩和の効果が、経済・物価にどの程度の影響を与えたかを分析した(補論2)。具体的には、「量的・質的金融緩和」を導入しなかった場合の仮想の経済・物価の動きを試算し、経済・物価の実績値と比較する「カウンターファクチュアル・シミュレーション」を行ったところ、2020年第3四半期までの期間において、実績値が仮想の試算値に比べて、実質GDPの水準で平均+0.9~+1.3%程度、需給ギャップで同+0.9~+1.3%ポイント程度、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比で同+0.6~+0.7%ポイント程度、それぞれ高いという結果となっており、それだけの押し上げ効果があったことを示している。

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昨年以降、感染症の大きなショックによる需要減少を受けて、需給ギャップは大きく悪化し、物価上昇は抑制され、予想物価上昇率も弱含んでいるが(前掲図表2)、このシミュレーションの結果からは、感染症のショックが加わる中でも、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの金融緩和が、経済・物価を支える効果を発揮していることが示された。(3)金利低下が経済・物価に影響を及ぼす経路金利低下が経済・物価に影響を及ぼす経路としては、第1に、資金調達コストを通じた波及経路がある。実際、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、貸出金利はしっかりと低下しており、CP・社債金利はきわめて低い水準で推移している(図表5)。第2に、金融資本市場を通じた波及経路がある。金利の低下は、良好な金融資本市場を通じても、経済・物価に影響を及ぼす。なお、貸出などの取引では、マイナス圏での金利水準で取引が行われることは多くないが、金融資本市場では、相対的に、マイナス圏の金利水準であっても取引は行われやすいため、金融資本市場を通じた波及経路は、名目金利の実効下限制約に服しにくい点が指摘できる(前掲図表3(1))。以上のことを確認するため、多変量自己回帰(VAR)モデルを用いて、金利低下が、需給ギャップを改善させる効果の波及経路について、分析を行った(図表6)。その結果、資金調達コストを通じた経路が3割強、金融資本

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5市場を通じた経路が5割強の影響を与えていることが示された。この結果については、幅を持ってみる必要があるが、金利低下は、資金調達コストと金融資本市場の双方の経路を通じて、経済・物価に影響を与えていることが確認された。(4)年限別にみた金利低下の経済・物価への影響実質金利の低下が、経済・物価に影響をもたらす度合いは、金利の年限によって異なる。2016年の「総括的検証」では、実質金利1単位の低下が需給ギャップに与える影響について、「均衡イールドカーブ4」の概念を用いて分析を行い、短中期ゾーンの金利の効果が相対的に大きく、年限が長くなるにつれて小さくなるとの結果を得た。今回、その後の経済・金融情勢の変化を踏まえたうえで、同じ手法を用いて確認したところ、そうした傾向が変わっていないことが示された(図表7(1))。また、2016年の「総括的検証」では、超長期金利の過度な低下は、将来における広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性に留意する必要がある点を指摘した。今回、多変量自己回帰(VAR)モデルを用いて、超長期金利の低下が消費者態度指数に及ぼす影響を分析したところ、超長期金利の低下は、消費者マインドにマイナスの影響を及ぼすことが示された(図表7(2))。

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(5)短期金利の引き下げについての市場参加者の認識市場参加者へのサーベイの結果をみると、短期金利の引き下げの追加緩和の選択肢としての認識が、マイナス金利政策導入直後と比べて、低下してきていることが示されている(図表8)。もとより、市場参加者の短期金利引き下げ予想は、時々の経済・物価情勢により変化しうるが、ヒアリング情報などからは、金利引き下げを予想しない理由として、金融仲介機能への影響を指摘する市場参加者が多くなっている傾向が窺われる。(6)感染症の影響への政策対応の効果日本銀行は、昨年3月以降、感染症の影響への対応として、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、第1に、企業等の事業継続を資金繰り面から支援すること、第2に、金融資本市場の安定を図ることで市場の混乱

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4 自然利子率の概念を、特定年限の金利ではなくイールドカーブ全体に拡張したもの。分析の詳細は、日本銀行「『量的・質的金融緩和』導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証」(2016年9月)の補論8を参照。(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel160930d.pdf)

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6と実体経済の悪化の悪循環を回避することを企図し、強力な金融緩和措置を実施している。日本銀行による感染症の影響への対応は効果を発揮している(図表9)。「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」は、政府の資金繰り支援策、金融機関の積極的な取り組みと相俟って、外部資金の調達環境を緩和的な状態に維持している。「新型コロナ対応金融支援特別オペ」は、金融機関が行う感染症対応融資のバックファイナンスを、残高に応じた金利をインセンティブとして付与するという有利な条件で行うことで、金融機関の取り組みを促進している。CP・社債買入れの増額は、スプレッドの上昇を抑制し、企業のCP・社債発行による資金調達環境を支えている。金融資本市場をみると、感染症拡大以降、国債市場の流動性が低下した局面や、その後の国債増発に伴う金利上昇圧力が加わる中でも、イールドカーブ・コントロールのもとで、国債金利は低位で安定的に推移した。感染症のショックにより米ドル資金の需要が急激に高まり、ドル資金の調達コストが大きく上昇する局面もみられたが、FRBや日本銀行を含む6中銀の協調による米ドル資金の流動性供給によって、影響は一時的なものにとどまった。また、弾力的なETFやJ-REITの買入れは、金融資本市場の不安定な動きを抑制する効果があった(詳細は後述)。

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4.国債市場の機能度や金融仲介機能への影響等(1)国債市場の機能度への影響イールドカーブ・コントロールは、国債市場の機能度に影響を及ぼしている。イールドカーブ・コントロールの導入後、金利の変動幅が縮小するもとで、多くの指標が、国債市場の機能度が低下したことを示唆している(図表10)。イールドカーブ・コントロールが、国債市場の機能度に影響を及ぼすことは、金利をきわめて低位で安定的に推移させる効果に必然的に伴うものという面がある。こうしたもとで、イールドカーブ・コントロールの持続的な運営の観点からは、市場機能の維持と金利コントロールの適切なバランスを取ることが重要である。この点、金利の大幅な変動は、経済・物価に悪影響を及ぼす可能性があるが、金利の変動が一定の範囲内であれば、金融緩和の効果を損なわず、市場の機能度にプラスに作用すると考えられる。金利の変動が設備投資に及ぼす影響を分析したところ、長期金利(10年物国債金利)の

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7過去6か月の変動域が 50bps を超える場合を除けば、金融緩和が設備投資に影響を及ぼす度合いは、概ね不変であるとの結果が示された(補論3)。日本銀行では、2018年7月に、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化するため、国債買入れの運営を柔軟化し、長期金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうることを明確にした。具体的には、長期金利の変動幅については、「それまでの概ね±0.1%の幅から、上下にその倍程度変動しうる」ことを示した。その後、2019年までの間をみると、実際、長期金利の変動幅は+0.16~▲0.29%に拡大し、そうしたもとで、多くの指標が、国債市場の機能度が改善したことを示唆していた。昨年の感染症拡大以降の長期金利の動きをみると、金融資本市場が不安定化するもとで一旦大きく変動した後は、本年初まで狭い範囲での動きが続いた。そうしたもとで、国債市場の機能度は一旦大きく悪化し、その後、回復しているものの、依然として、感染症拡大前の水準には戻っていないことが示唆される。(2)金融仲介機能への影響低金利による金融機関収益の圧迫は、金融機関の貸出姿勢が消極化することなどを通じて、金融仲介機能に悪影響を与える可能性がある。金融機関の基礎的な収益力は、国内の預貸利鞘の縮小などから、趨勢的に減少を続けている(図表11)。

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預貸利鞘の縮小には、低金利環境の長期化に加え、人口減少などに伴う借入需要の趨勢的な減少や、そのもとでの厳しい競争といった構造要因が影響している。この間、金融機関は、貸出や有価証券投資におけるリスクテイクのほか、経費節減などを通じて、収益力向上に向けた取り組みを続けている。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、経済活動が押し上げられ、企業収益が改善したことは、貸出の増加や信用コストの抑制などを通じて、金融機関収益にもプラスに作用したと考えられる。もっとも、今後も、低金利環境と構造要因が作用し続けるもとで、地域金融機関を中心に、収益に下押し圧力がかかり続けると予想される。収益の金融機関体力への影響は累積的なものであり、金融機関収益の下押しの長期化により、金融仲介が停滞方向に向うリスクには注意を要する。他方で、金融機関は、引き続き、収益性を高めるための様々な取り組みを行うと考えられるが、その過程で、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性がある。こうした両方向のリスクについては、これまでも

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8「金融システムレポート」を踏まえ、「経済・物価情勢の展望」で、より長期的な視点から金融面の不均衡として点検している。(3)補完当座預金制度の運営状況日本銀行では、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入した。これは、日本銀行の当座預金金利をマイナス化することでイールドカーブの起点を引き下げ、大規模な国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていくことを目的としたものである。そのうえで、日本銀行の当座預金金利をマイナス化するに当たっては、金融機関収益への直接的な負担を和らげ、限界的な当座預金の増加部分にのみマイナス金利を適用することで、マイナス圏での短期金利の形成を図ることとした。具体的には、補完当座預金制度を見直し、日銀当座預金を基礎残高、マクロ加算残高、政策金利残高の3つの階層(三層構造)に分け、大部分を占める基礎残高とマクロ加算残高には、それぞれ+0.1%およびゼロ%の金利を適用し、 ▲0.1%のマイナス金利は政策金利残高にのみ適用することとした。そのもとで、現在まで、短期金利はマイナス圏で安定的に推移している。もっとも、補完当座預金制度の見直しから5年以上が経過するもとで、実際の政策金利残高は完全裁定後の政策金利残高と乖離しており、かつ、このところ乖離幅が大きくなっている(補論4)。

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こうした事象に対しては、マクロ加算残高枠の算出方法の一部を見直すことにより、マクロ加算残高枠の未利用分と政策金利残高の一部をそれぞれ圧縮する方向で技術的な調整を図ることが可能である。5.ETFおよびJ-REIT買入れの効果と留意点(1)ETFおよびJ-REIT買入れの効果日本銀行が実施しているETFやJ-REIT買入れは、株式市場やJ-REIT市場のリスク・プレミアムに働きかけることを通じて、経済・物価にプラスの影響を及ぼすことを目的としている。そこで、リスク・プレミアムに関する幾つかの指標5(①オプション価格に含まれる株式リスク・プレミアム、②イールド・スプレッド)について、E

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5 リスク・プレミアムの状況を捉える単一の指標はなく、日本銀行では、企業収益や配当の動向、株価変動や金利水準といった様々なデータや指標の動きを踏まえつつ、市場参加者からのヒアリング情報なども加味したうえで、総合的に判断している。本稿の分析では、その中から2つの指標を用いて、ETF買入れの効果を推計している。

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9TF買入れの効果を推計した(図表 12、補論5)。その結果、ETF買入れは、リスク・プレミアムを縮小させる効果を持つとの結果が得られた。さらに、この分析では、市場の局面やETFの買入規模に応じた効果の違いについても推計した。推計結果をみると、ETF買入れ1単位当たりの効果は、①買入れ時点の株価水準がトレンド対比低いほど、②(株価水準がトレンドを下回る状況下で)株式市場のボラティリティが高まるほど、③買入れ実施直前の株価の下落率が大きいほど、④買入れ規模が大きいほど、大きいことを示唆する結果となった。この結果は、市場参加者の見方とも整合的なものとなっている(図表 13)。すなわち、市場参加者に対するサーベイ結果をみると、株価が下落し、ボラティリティが高まるなど、市場が不安定な局面では、日本銀行によるETF買入れが市場で注目され、また、それは株式市場に対してプラスの要素と評価されている。一方、株式市場が落ち着く局面では、注目度は下がり、プラス要素との評価は低下している。(2)ETFおよびJ-REIT買入れの留意点ETFやJ-REITの買入れについては、効果が認められる一方で、留意点を指摘されることがある。例えば、日本銀行がETFを保有することによる、コーポレート・ガバナンス面への影響についてである。すなわち、日本銀行がETFを保有すると、企業経営の規律付けが弱まるとの指摘がある。

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この点、ETFを構成する個別株式の議決権については、スチュワードシップ・コードの受入れを表明した投資信託委託会社により適切に行使される扱いとなっており、これを通じて、企業経営への規律付けを図っている。もっとも、先行き、保有ETFの残高がさらに増加するにつれ、こうした懸念は高まる可能性がある(図表14)。また、買入対象が連動する指数については、TOPIX、日経225およびJPX日経400としてきたが、後2者に連動するETFは、TOPIXに連動するETFと比べ、買入れにより一部の構成株式の間接保有比率の上昇が進みやすい。この点、これまでTOPIX連動型ETFの買入割合を増やす措置を通じて、こうした影響の抑制に努めてきている。J-REIT買入れについては、基本要領において発行済投資口総数の10%を上限としている中、保有比率の高まっている銘柄がある。これらの他に、日本銀行の財務面への影響についての指摘もある。この点に関し、時価の総額が帳簿価額の総額を下回る場合には、引当金を計上する扱いとなっており、財務健全性確保のための手当てを講じている。もっとも、先行き、保有ETFの残高がさら

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10に増加するにつれ、財務面への影響は大きくなる。6.オーバーシュート型コミットメントの有効性の再確認2016年9月の政策対応では、適合的期待形成の要素が強いわが国の予想物価上昇率を引き上げていくことには、時間がかかる可能性がある点を踏まえ、枠組みの中心にイールドカーブ・コントロールを据えることで、金融緩和の効果と副作用のバランスを取りながら、政策の持続性を高めることとした。それと同時に、「フォワード・ルッキングな期待形成」を強めるため、「オーバーシュート型コミットメント」を導入した。「オーバーシュート型コミットメント」は、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針の継続を約束するものである。一般的に、金融政策は、経済・物価に影響を及ぼすのに相応の時間がかかることから、経済・物価の先行き見通しを踏まえつつ、運営することが望ましいと考えられている。この点、このコミットメントでは、消費者物価上昇率の「見通し」ではなく、「実績値」に基づいて金融緩和の継続を約束しており、非常に強力なものとなっている。こうしたオーバーシュート型コミットメントは、いわゆる「埋め合わせ戦略」、すなわち、物価上昇率の実績値が目標を下回る期間が続いた場合には、そうした状況を勘案して金融緩和を行うという考え方を実践したものである。

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その背後にある考え方は、物価上昇率が、景気の変動などを均してみて、平均的に2%となることを目指すということであり、日本銀行はこうした方針を明示している6。簡易なマクロ経済モデルを用いてシミュレーションを行った結果、わが国において、実績の物価上昇率が目標を下回っている場合に、ある程度の期間の過去の物価上昇率も参照して、金融政策運営を行うことが望ましいとの結果が得られた(補論6)。また、本シミュレーションでは、自然利子率が低いほど、より長く過去の物価上昇率を参照することが望ましいことが示された。以上

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6日本銀行「金融緩和強化のための新しい枠組み:『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』」(2016年9月)では、「『物価安定の目標』の実現とは、物価上昇率が、景気の変動などを均してみて、平均的に2%となることを意味する」としている。(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921a.pdf) 11

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(補論1)わが国の物価の変動メカニズム「総括的検証」以降の状況も踏まえ、改めて、物価の変動メカニズムを点検した。(複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズム)「総括的検証」で指摘したように、わが国の予想物価上昇率の形成メカニズムにおいては、適合的な要素が強く働いている。最近までのデータを用いて、改めて予想物価上昇率の形成メカニズムを確認したところ、わが国では、引き続き、米国などに比べて、適合的期待形成のウエイトが高いことが示された(補論図表1-1)。適合的期待形成については、その時点の実際の物価上昇率に影響を受けるだけでなく、過去の経験などにも影響を受ける面がある7。わが国の家計の物価観に関して、その世代による違いを「生活意識に関するアンケート調査」の個票データを用いて確認すると、インフレを経験していない若年世代ほど、①予想物価上昇率は低く、②実際の物価変動に対する予想物価上昇率の感応度も鈍いことが示された。この結果は、過去の経験やその過程で培われた規範(ノルム)といったものが、予想物価上昇率の形成に深く影響していることを示唆している(補論図表1-2)。また、人々の予想物価上昇率の形成を理論的な枠組みで捉える際に、従来は、経済主体が利用可能な情報を全て利用して期待形成を行う「完全情報下の合理的期待8」に従うと仮定することが多かった。

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しかし、近年は、その形成過程の粘着性や複雑性を考慮すると、「粘着情報仮説9(情報の取得コストが存在するもとでは情報が予想に織り込まれるまでに時間を要するとの考え方)」や「合理的無関心

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7 過去の経験が予想物価上昇率に影響を及ぼすことを分析した研究には、以下の論文などがある。Malmendier, U., and S. Nagel (2016), "Learning from Inflation Experiences, " TheQuarterly Journal of Economics, 131(1): 53-87.Diamond J., K. Watanabe, and T. Watanabe (2020), "The Formation of Consumer InflationExpectations: New Evidence from Japan's Deflation Experience," InternationalEconomic Review, 61(1): 241-281.8 Sargent, T. J. , and N. Wallace (1975), "'Rational' Expecta tions, the OptimalMonetary Instrument, and the Optimal Money Supply Rule," Journal of Political Economy,83(2): 241-254 など。

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9 Mankiw, N. G., and R. Reis (2002), "Sticky Information versus Sticky Prices: AProposal to Replace the New Keynesian Phillips Curve," The Quarterly Journal ofEconomics, 117(4): 1295-1328 など。

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仮説10(情報処理能力に限界がある場合には重要性が低いと判断した情報は予想に織り込まなくなるとの考え方)」などの妥当性が指摘されている。この点、わが国企業のインフレ予想の形成過程における、「完全情報下の合理的期待」、「粘着情報仮説」、「合理的無関心仮説」の妥当性を検証した分析11によれば、約6割の企業が粘着情報の制約に服しており、そうした制約に服していない企業、すなわち、情報を頻繁に取得して予想をアップデートする企業は、約4割との結果になっている。また、粘着情報の制約に服していない約4割の企業のうち半数は、必要性の低い情報を用いずにインフレ予想を形成する「合理的無関心」な企業であり、残りの半数、つまり、全体の約2割の企業だけが、「完全情報下の合理的期待」に従い、現時点で利用可能な情報を全て利用してインフレ予想を形成していることが示されている(補論図表1-3)。このように、適合的な期待形成のメカニズムは、より複雑で、粘着性が高い。すなわち、長期にわたるデフレの経験によって定着してしまった、物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行の転換には時間がかかる、といえる。

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(弾力的な労働供給・企業の労働生産性向上)これに加えて、「総括的検証」以降の物価動向には、弾力的な労働供給が賃金上昇圧力を吸収してきたこと、また、企業の労働生産性向上がコスト上昇圧力を吸収してきたことも影響している。2010年代半ば頃から、需給ギャップが改善し人手不足が進むもとで、政府による就労環境の整備や高齢人口の増加なども背景に、女性や高齢者の労働参加が加速した。わが国の女性や高齢者は、生産年齢の男性に比べて、賃金弾力性(賃金が1%増加した場合の労働供給の増加率)が高い傾向がある。そのため、女性や高齢者の労働参加が進んだことは、日本経済にとってプラスだが、短期的には賃金の上昇を抑制する方向で作用したとみられる(詳しくは、日本銀行「経済・物価情勢の展望(2018年7月)」BOX1を参照)。この間、企業は、人手不足に対して、労働生産性を高めることでコストの上昇圧力を吸収してきた。労働集約的な業種(小売、宿泊・飲食、建設等)を中心に、ITを活用した省力化・効率化投資が積極化してきた。また、既存の提供サービスを再考するといった、ビジネス・プロセスの見直しなども進めてきた。企業の

§33

10 Sims, C. A. (2003), "Implications of Rational Inattention," Journal of MonetaryEconomics, 50(3): 665-690 など。11 北村冨行・田中雅樹 (2019)、「合理的無関心や粘着情報の企業のインフレ予想形成に対する含意―小型マクロモデルを用いた分析―」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No. 19-J-10。 13 こうした取り組みは、長い目でみれば、企業の生産性の向上を通じて、わが国経済の成長力を高め、物価の上昇圧力を強める方向に作用していくと考えられるが、短期的には、物価の上昇抑制に働いた(詳しくは、日本銀行「経済・物価情勢の展望(2017年7月)」BOX3、「経済・物価情勢の展望(2018年7月)」BOX4を参照)。 14

§34

(補論2)マクロ経済モデル(Q-JEM)を用いた政策効果の点検日本銀行の大型マクロ経済モデル(Q-JEM12)を用いて、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果を点検した。まず、主要な金融変数について、「量的・質的金融緩和」が導入されなかった場合の「仮想的なパス」を想定し、金融変数がその「仮想的なパス」を辿った場合の実質GDP、需給ギャップ、消費者物価の推移についてシミュレーションを行った(カウンターファクチュアル・シミュレーション)。そのうえで、実績値とシミュレーション結果の差分を、政策効果とみなしている。(シミュレーション概要)当シミュレーションでは、日本銀行の政策が、①実質金利の低下、②貸出市場のアベイラビリティの改善、③為替円安、④株価上昇という、4つの金融変数の経路を通じて、経済・物価に影響を与えることを前提とする。そのうえで、この4つの金融変数の「量的・質的金融緩和」が導入されなかった場合の「仮想的なパス」を、それぞれ、次のように考えた。

§35

① 実質金利名目長期金利については、(a)図表4-1で示した方法によって、「量的・質的金融緩和」の導入前までの名目長期金利と、有効求人倍率、消費者物価、米国債長期金利の3変数の関係から、その後の仮想的なパスを推計する方法(推計アプローチ<有効求人倍率等に基づく>)と、(b)日本銀行の国債買入れによる名目長期金利の押し下げ効果を図表4-2で示した方法によって推計し、政策効果分を控除して仮想的なパスを推計する方法(推計アプローチ<国債保有割合に基づく>)、の2つのケースを想定した。仮想的な中長期予想物価上昇率のパスは、2012年第4四半期から横ばいと仮定した。そのうえで、名目長期金利と予想物価上昇率の仮想的なパスから、仮想的な実質金利(名目長期金利-予想物価上昇率)のパスを、2種類想定した。

§36

12 Q-JEMとは、実体変数、金融変数、期待変数など、日本経済を分析するうえで重要な200 以上の変数を持つ大規模なマクロ経済モデルであり、わが国のデータを用いて、各方程式が推計されている。詳細は、Hirakata, N. et al. (2019),"The Quarterly Japanese EconomicModel(Q-JEM): 2019 Version," Bank of Japan Working Paper Series, No. 19-E-7、および菅和聖・喜舎場唯・敦賀智裕(2016)、「『量的・質的金融緩和』導入以降の政策効果-マクロ経済モデルQ-JEMによる検証-」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No. 16-J-11を参照。 15 ② 貸出市場のアベイラビリティ貸出市場のアベイラビリティ(貸出態度判断DI)については、「量的・質的金融緩和」導入前までの業況判断DIと貸出態度判断DIの関係をもとに、その後の業況判断DIが示唆する貸出態度判断DIの水準を仮想的なパスとした(推計アプローチ)。

§37

③ 為替為替については、(a)実質金利の仮想的なパス(上記①(a))のもとで推計される水準を仮想的なパスとする方法(推計アプローチ)と、(b)各種政策変更がなければ、政策公表前の水準が、翌四半期まで続いていたと仮定して仮想的なパスとする方法(イベントスタディ・アプローチ)の、 2つのケースを想定した。 ④ 株価株価については、(a)実質金利と為替の仮想的なパス(上記①(a)と③(a))のもとで推計される水準を仮想的なパスとする方法(推計アプローチ)と、(b)各種政策変更がなければ、政策公表前の水準が、翌四半期まで続いていたと仮定して仮想的なパスとする方法(イベントスタディ・アプローチ)の、 2つのケースを想定した。 以上4つの金融変数の仮想的なパスについて、次のような組み合わせを用いた4つのカウンターファクチュアル・シミュレーション(A~D)を行った。各シミュレーションにおける政策効果の試算手法(政策が実施されなかった場合の各金融変数の「仮想的なパス」)シミュレーションで用いた仮想的パスA B C D① 実質金利 (a) 推計アプローチ(有効求人倍率等に基づく)(b)推計アプローチ(国債保有割合に基づく)② 貸出市場のアベイラビリティ推計アプローチ③ 為替(a)推計アプローチ(b)イベントスタディ・アプローチ(a)推計アプローチ(b)イベントスタディ・アプローチ ④ 株価

§38

16

§39

以上の4つのシミュレーションに加えて、「総括的検証」で行ったシミュレーションと同様に、①実質金利の「仮想的なパス」について、「量的・質的金融緩和」の実施前から横ばいと想定したうえで、 ②~④の金融変数の「仮想的なパス」は、実質金利の「仮想的なパス」からQ-JEMで内生的に算出される値をとると想定した、カウンターファクチュアル・シミュレーションEを行った。(シミュレーション結果)シミュレーション結果をみると、実質GDP、需給ギャップ、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)前年比の3つとも、政策効果がなかった場合の仮想的な推移は、いずれのケースでも、実績値を下回った(補論図表2(1)~(3))。すなわち、「量的・質的金融緩和」の導入以降の低位な実質金利や、良好な金融資本市場、緩和的な貸出態度を通じた政策効果が、需給ギャップと物価を押し上げたことを示唆している。政策効果の大きさをみると、「量的・質的金融緩和」の導入から 2020年第3四半期までの期間において、実質GDPの水準を平均+0.9~+1.3%程度、需給ギャップの水準を同+0.9~+1.3%ポイント程度、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比を同+0.6~+0.7%ポイント程度押し上げるという結果となった(補論図表2(4))。

§40

このように、政策効果がなかった場合の金融変数の「仮想的なパス」をどのように捉えるかによって幅があるものの、「(長短金利操作付き)量的・質的金融緩和」が、わが国の経済・物価にプラスの影響を及ぼしたことは明確である。また、感染症による大きな負のショックに直面した昨年以降も、金融緩和によって経済・物価を支える効果が発揮されていることも示されている。

§41

17

§42

(補論3)金利変動が実体経済に及ぼす影響の推計金利変動は、大幅であれば「不確実性」の高まりを通じて、経済・物価に悪影響を及ぼし、金融緩和の効果を阻害しうる。そこで、金利変動がどの程度大きくなると、こうした悪影響が生じるか確認するために、金利感応度が相対的に高い設備投資を対象に分析を行った。(推計概要)設備投資(設備投資対資本ストック比率)を、経済変数や経済の不確実性をコントロールしたうえで、金融緩和度合いを示す実質金利ギャップに対して回帰することで、金融緩和の設備投資への影響を推計した。その際、金利変動による緩和効果への影響を捉えるために、実質金利ギャップの係数について、①長期金利の変動状況(補論図表3 (1))に関わらず共通して観察される係数(β1)に加え、②長期金利の変動域毎に観察される係数(β2)を設定した。設備投資対資本ストック比率(%)= α1 × 自己ラグ(1 期)+α2 × 実質GDP成長率見通し(%)+α3 × 経済不確実性指数(水準)+β1 × 実質金利ギャップ(%)+β2 × 実質金利ギャップ(%)× 金利変動域の状態 i+定数推計期間は、1995/1Q~2020/3Q。金利変動域の状態i は、長期金利(10年物国債金利)の過去6か月の変動域第i 四分位に属する時に1をとるダミー変数。実質GDP成長率見通しは、 6~10年後の見通し。

§43

経済不確実性指数は、新聞記事から経済や政策に関連する言葉と不確実性に関連する言葉を同時に含む記事を数え、指数化したもの。(推計結果)推計結果から、実質金利ギャップの係数(β1+β2)を確認すると、金利変動域が最も大きい第4分位(長期金利水準で0.51%超)では、ゼロ近傍となっており、実質金利ギャップが緩和的であっても、設備投資の押し上げ効果がみられない(補論図表3 (2))。一方、金利変動域の第1分位から第3分位(長期金利水準で0.51%以下)では、係数(β1+β2)は、概ね同程度のマイナスとなっており、実質金利ギャップが緩和的(マイナス)になると、設備投資を同程度押し上げることが確認される。このように、長期金利の過去6か月の変動域が 50bps を超える場合を除けば、金融緩和が設備投資に影響を及ぼす度合いは、概ね不変であるとの結果が示された。

§44

18

§45

(補論4)補完当座預金制度の運営状況(背景)日本銀行では、2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入した際、補完当座預金制度を見直し、日銀当座預金を、①+0.1%を適用する「基礎残高」(基準平均残高<2015年の平均残高>から法定準備預金額を控除した金額)、 ②ゼロ%を適用する「マクロ加算残高」(法定準備預金額等、オペ関連部分、基準比率による調整部分<基準平均残高×基準比率>が算入対象)および③▲0.1%のマイナス金利を適用する「政策金利残高」(当座預金残高から基礎残高およびマクロ加算残高を控除した金額)の3つの階層(三層構造)に分けて運営している。▽ 補完当座預金制度の三層構造適用金利①基礎残高基準平均残高(2015年の平均残高)-法定準備預金額+0.1%②マクロ加算残高基準平均残高×基準比率ゼロ%各種オペの残高(オペ1階部分)各種オペの 2016年3月末対比での残高増加額(オペ2階部分)MRF 特則・新規先特則に基づく金額法定準備預金額③政策金利残高当座預金残高から①と②を控除した金額 ▲0.1%そのもとで、見直しから5年以上が経過する中、次のような事象が生じている。1.各取引先の基礎残高およびマクロ加算残高枠の決定に際しては、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入前の 2015年を基準期間とする基準平均残高を用いて計算することとしている。

§46

この点、それ以降に、資金の流入等により、当座預金残高が大幅に増加し、かつ、日本銀行に対するネット利払が常態化している取引先が一部にみられる。2.政策金利残高は、それを有する取引先とマクロ加算残高枠の未利用分を有す

§47

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§48

る取引先との間で裁定取引が行われることにより、短期金融市場におけるマイナス金利創出力が維持されるために必要最低限の残高(「完全裁定後政策金利残高」)に向けて圧縮されることが想定されている。もっとも、実際には、取引コスト等の存在を背景に、完全には裁定が行われていない。その結果、恒常的に、政策金利残高が完全裁定後政策金利残高を上回り、その一方で、マクロ加算残高枠の未利用分が存在する状態となっている(補論図表4(1))。また、マクロ加算残高枠の計算に際しては、各種オペの利用インセンティブを付与する観点から、その残高(「オペ1階部分」)に加え、2016年3月末対比での残高増加額(「オペ2階部分」)を算入することとしている。この点、新型コロナ対応特別オペ等の利用増加に伴いマクロ加算残高枠に占めるオペ関連部分が拡大するもとで(補論図表4(2))、その拡大分ほどには当座預金残高が増加せず、このところ、マクロ加算残高枠の未利用分が増加傾向にある。3.2.のとおり、各種オペの利用増加を背景に、マクロ加算残高枠に占めるオペ関連部分が拡大していることから、基準比率による調整部分が縮小している。この結果、基準比率は 10~15%程度まで低下している(補論図表4(3))。(見直し内容)上記の当座預金の動向を踏まえ、補完当座預金制度のより円滑な運営に資する観点から、次の見直しを実施することが適当である。

§49

<1.への対応>「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入以降に当座預金残高が大幅に増加し、かつ、日本銀行に対するネット利払が常態化している取引先については、2019年までの当座預金残高の増加度合いに応じて一定金額をマクロ加算残高枠の計算に加算することとする。

§50

[イメージ]基準平均残高(2015年平均残高)2016/2~2019/12月積み期平均残高(オペによる増加分除く)基準平均残高の3倍を超える部分の3分の1相当について、マクロ加算残高枠を引き上げ 20 <2.への対応>恒常的にマクロ加算残高枠の未利用分が大幅に発生している取引先について、当該先のマクロ加算残高枠を一定割合圧縮し、これを全取引先に再配分することとする。具体的には、一定期間(例:3積み期連続)マクロ加算残高枠(注1)の利用実績が一定割合(例:50%)未満となった(注2)取引先について、その翌々積み期の枠を一部(例:25%)圧縮するといった方法が考えられる。これにより、裁定取引がより円滑に進みやすい環境を整備する。 (注1)法定準備預金額を除く。(注2)一定割合未満となったか否かの判定は、本件による圧縮前のベース(オペ1階部分、オペ2階部分および基準比率による調整部分の合計値)で行う。<3.への対応>基準比率が一段と低下した場合の取り扱いを明確化する。具体的には、基準比率の下限をゼロとした上で、仮にゼロまで引き下げてもマクロ加算残高枠の調整ができない場合には、オペ2階部分に0~1の比率(「加算比率」<今回導入>)を乗じることとする。

§51

[イメージ][イメージ]T-4 T積み期3積み期連続でマクロ加算残高枠(注1)の利用実績が50%未満(注2)T積み期のマクロ加算残高枠(注1)を25%圧縮する一方、これを基準比率算定の際に勘案することにより、全取引先に再配分「3積み期連続」「50%」「25%」は仮置きT-3 T-2所要準備等オペ1階部分オペ2階部分基準比率による調整部分(基準平均残高×基準比率)所要準備等オペ1階部分オペ2階部分×加算比率(0~1)(現在の調整方法)(基準比率がゼロとなる場合) 21

§52

(補論5)ETF買入れ効果の推計株式市場のリスク・プレミアムに対する日本銀行のETF買入れ効果の有無と、市場の局面や買入れ方に応じた効果の違いについて分析した。(推計概要)株式市場のリスク・プレミアム関連指標を、日本銀行によるETF買入れ量を表す指標(「買入れ量指標」)に対して回帰することで、買入れ効果を推計した。まず、買入れ量指標がリスク・プレミアムに有意な影響を持つかを確認した(推計Ⅰ)。次に、市場の局面や買入れ方に応じて、買入れ1単位当たりの効果に違いがあるのかについても確認を行った(推計Ⅱ)。具体的には、買入れ効果を示す、買入れ量指標に係るパラメータ(推計Ⅰのθの部分)が、買入れ時の株価やボラティリティの状況、買入れ額の規模といった「状態変数」に応じて変化するように定式化(買入れ効果関数)した。推計期間は、日本銀行がETFの買入れを始めた2010年12月以降を対象とした。

§53

<推計Ⅰ>被説明変数(リスク・プレミアム指標)= β × コントロール変数+ θ × 買入れ量指標<推計Ⅱ>被説明変数(リスク・プレミアム指標)= β × コントロール変数+買入れ効果関数 × 買入れ量指標ただし、買入れ効果関数= F(状態変数)<推計期間:2010年12月~2020年12月>(推計に用いる変数)被説明変数には、リスク・プレミアムを示す指標として、①オプション価格に含まれる株式リスク・プレミアム(ERP:Equity Risk Premium13)の変化幅、②個別銘柄のイールド・スプレッドの変化幅の2つを用いた。①は日次の単一時系列データ、 ②は週次のパネルデータとなっている。「買入れ量指標」は、 ①では、

§54

13 ERPは、投資家が株価の変動リスクを負うことの対価として要求する追加リターンのこと。「期待株価収益率-無リスク金利」として定義される。当補論では、日経225 オプション価格のデータから、下記の論文の手法を用いて、推計した値(「先行き30日間の期待株価収益率-無リスク金利」の推計値の年率換算値)を使用した。Martin, I. (2017), "What is the Expected Return on the Market?" The Quarterly Journalof Economics, 132(1): 367–433. 22

§55

TOPIX時価総額対比のETF買入れ額、②では、当該銘柄の時価総額対比の当該銘柄買入れ相当額14を用いた。被説明変数定義コントロール変数① オプション価格に含まれる ERPの変化幅ERP 推計値の前場終値時点から当日終値時点までの変化幅15・ドル円前場終値(前日終値比)・TOPIX 前場終値(前日終値比)・各状態変数の定義で用いた変数② 個別銘柄イールド・スプレッド変化幅東証 1・2 部全銘柄の個別銘柄イールド・スプレッドの週末終値(前週末比)・銘柄別固定効果・時間固定効果局面を表す状態変数には、(a)株価のトレンドからの下方乖離率、(b)(株価がトレンドを下回る状況下での)株式市場のボラティリティ、(c)買入れ実施直前の株価下落率、(d)買入れ額の規模、の4変数を用いた。これらの状態変数を用いて、買入れ効果関数を定義した。

§56

買入れ効果関数(下線部分が状態変数)(a) α + σ×min{0,TOPIX の 100日移動平均からの乖離率}(b) α +(γ+σ×日経VI)×局面ダミー** TOPIX(①は前日終値、②は前週終値)が 100日移動平均を下回ると 1、上回ると 0(c) α + σ×min{0,ETF 買入れ実施直前のTOPIX 変化率}(d) α + σ×TOPIX 時価総額対比のETF 買入れ総額(推計結果)推計Ⅰでは、被説明変数①、②についての2つの推計を、推計Ⅱでは、被説明変数①、②に対して買入れ効果関数(a)~(d)を用いた8つの推計を行った。推計結果は、補論図表5のとおり。推計Ⅰでは、 ETF買入れの効果(リスク・

§57

14 先行研究(例:Charoenwong, B., R. Morck, and Y. Wiwattanakantang (2020), "Bank ofJapan Equity Purchases: The (Non -) Effects of Extreme Quantitative Easing," NBERWorking Paper, No. 25525, forthcoming in Review of Finance)を参考に、日本銀行のETF買入れにおける、TOPIX連動型ETF、日経225 連動型ETF、JPX400 連動型ETFのそれぞれの買入れウエイトと、各ETFの対象銘柄群における当該銘柄のウエイトを用いて、当該銘柄の間接的な買入れ額を試算している。

§58

15 ETF 買入れ効果に関する先行研究(例:Shirota, T. (2018), "Evaluating theUnconventional Monetary Policy in Stock Markets: A Semi -parametric Approach ,"Hokkaido University Discussion Paper Series A, No. 2018-322、Harada, K., and T.Okimoto (2019), "The BOJ's ETF Purchases and Its Effects on Nikkei 225 Stocks ,"RIETI Discussion Paper Series, No. 19-E-014)を参考に、①では、前場終値時点から当日終値時点までの変化幅を使用している。

§59

23 プレミアムの縮小)が、全ての推計で統計的に有意に確認された。そのうえで、推計Ⅱでは、(a)買入れ時点の株価水準がトレンド対比低いほど、(b)(株価水準がトレンドを下回る状況下で)株式市場のボラティリティが高いほど、(c)買入れ実施直前の株価の下落率が大きいほど、(d)買入れ規模が大きいほど、 ETF買入れ1単位当たりの効果が大きくなることを示唆する結果が確認された。 24

§60

(補論6)マクロ経済モデルを用いたオーバーシュート型コミットメントの点検オーバーシュート型コミットメントでは、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースを拡大する方針の継続を約束している。このオーバーシュート型コミットメントは、物価上昇率の実績値が目標を下回る期間が続いた場合には、そうした状況を勘案して金融緩和を行うという、いわゆる「埋め合わせ戦略」の考え方を実践したものである。その背後にある考え方は、物価上昇率が、景気の変動などを均してみて、平均的に2%となることを目指すということであり、日本銀行はこうした方針を明示している(前掲図表1)。ここでは、オーバーシュート型コミットメントで実践している「埋め合わせ戦略」が、適合的な期待形成の影響が大きいわが国経済でも望ましいかどうかについて、小型マクロ経済モデル16を用いたシミュレーションを行うことで分析する17。(シミュレーション概要)今回のシミュレーションでは、政策金利を決めるルール18について、①基本型となるテイラールールのほか、②過去数年間の物価上昇率を参照する平均インフレ目標ルール(ただし、参照する平均物価上昇率が2%を下回る場合のみ従う非対称なルール)の、2つのルールを想定した(下表)。

§61

また、自然利子率について、(a)2000年以降の平均に近い+0.5%と、(b)より低い-0.1%の2つのケースを設定した。そのうえで、わが国経済の実績データから推計した需要ショックと価格ショックの分布を用いたランダムなショックを経済モデルに与えるシミュレーション(10年間分)19を 1000 回繰り返すことで、平均的なわが国の経済・物価の動

§62

16 当分析では、日本経済の特徴を踏まえつつ、繰り返しのシミュレーションを実務的に可能にするため、日本銀行の大型マクロ経済モデル(Q-JEM)の簡易版である「小型マクロ経済モデル」を用いた。このモデルは、①需要関数はIS 曲線のみで、需給ギャップはラグ項と実質長期金利ギャップで決まる、②長期金利は短期金利の期間構造のみで決まる(金利のターム・プレミアムはゼロ)、 ③フィリップス曲線は適合的期待形成のウエイトが大きいハイブリッド型、と定式化している。17 以下の論文では、米国経済における景気回復局面において、テイラールールよりも、過去数年間の平均的な物価上昇率を参照した平均インフレ目標ルールの方が、早期に2%の物価目標を達成できることを示している。Arias, J. et al. (2020), "Alternative Strategies: How Do They Work? How Might TheyHelp?" Finance and Economics Discussion Series, No. 2020-068, Board of Governors ofthe Federal Reserve System.18 本シミュレーションでは、政策ルールをラグ項付きで定式化している<(政策金利)t=q×(政策金利)t-1+(1-q)×(政策ルール金利)t、q=0.9>。

§63

そのうえで、金利の下限は-0.1% (政策ルールで示される政策金利が-0.1%を下回る場合でも、-0.1%)と設定している。19 シミュレーションの初期値は、短期金利=-0.1%、物価上昇率=+0.7%、需給ギャップ

§64

25

§65

きを捉え、各ルールのもとでの平均的な社会厚生上の損失関数20を計算した。シミュレーションで想定した政策ルール① テイラールール物価上昇率と物価目標の差が、政策金利を決定(政策ルール金利)t=(均衡金利)t+1.0×{(物価上昇率)t-物価目標}+0.5×(需給ギャップ)t② 平均インフレ目標ルール(i)N年間の平均物価上昇率 ≦ 物価目標N年間の平均物価上昇率と物価目標の差が政策金利を決定(政策ルール金利)t=(均衡金利)t+ 1.0×N×{(N 年間の平均物価上昇率)t-物価目標}+0.5×(需給ギャップ)t(ii)N年間の平均物価上昇率>物価目標テイラールールで決定(シミュレーション結果)シミュレーションの結果(補論図表6(1)、(2))、テイラールールに比べて、平均インフレ目標ルールの方が、物価目標(2%)を早期に達成できる結果となった。平均インフレ目標ルールの参照年数別に結果をみると、長い年数を参照するほど物価目標を早期に達成できるが、その分、需給ギャップや物価の変動が大きくなることから、社会厚生上のコストも大きくなる。

§66

そこで、各ルールのもとで算出される社会厚生上の損失関数を比較すると、(a)自然利子率が+0.5%の場合は、過去2年間の物価の平均を、(b)自然利子率がより低い-0.1%の場合は、過去3年間の平均を参照することで、損失関数が最小化される結果となった(補論図表6(3))。この分析結果は、わが国経済において、①実績の物価上昇率が目標値を下回っている場合には、ある程度の期間の過去の物価上昇率を参照する金融政策運営を行うことが、早期の物価目標の実現と社会厚生上のコストを勘案したうえで望ましいこと、また、②自然利子率が低い場合は、金融緩和効果が低下するため、より長い期間の過去の物価上昇率を参照することが望ましいこと、を示唆する結果となった。ただし、当分析では、簡易な経済モデルを用いているほか、モデル中

§67

=+0.3%と設定(物価は、2021年1月の「経済・物価情勢の展望」における政策委員の2022年度消費者物価見通しの中央値とし、需給ギャップは、長期的な需給ギャップと物価上昇率の関係<フィリップス曲線>から推計)。20 損失関数を「需給ギャップの振れ」と「物価の目標からの乖離」で定義した。具体的には、損失関数=(需給ギャップ)2+(物価上昇率-物価目標<2%>)2 としている。 26 の金融政策運営を短期金利の政策ルールのみで表現するなど、実際の経済メカニズムや政策運営を精緻に再現しているものではない点には留意が必要である。特に、損失関数が最小となる参照年数は、モデルのパラメータや損失関数の設定によって変わりうるため、幅を持ってみる必要がある。 27

§68

図表目次1.本文図表(図表 1)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(図表 2-1)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入後の情勢(1)(図表 2-2)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入後の情勢(2)(図表 3)イールドカーブ・コントロールのもとでの国債金利(図表 4-1)国債買入れによる名目長期金利の押し下げ効果(1)(図表 4-2)国債買入れによる名目長期金利の押し下げ効果(2)(図表 5)貸出・CP・社債金利の推移(図表 6)金利低下の波及経路(図表 7)金利低下の経済・物価への影響(図表 8)短期金利引き下げについての市場参加者の認識(図表 9)コロナ対応のもとでの金融環境(図表10)国債市場の機能度(図表11)金融仲介機能(図表12) ETF買入れの効果の推計(図表13) ETF買入れに対する市場参加者の見方(図表14)日本銀行のETF・J-REIT保有状況2.補論図表(補論図表1-1)わが国の物価の変動メカニズム:適合的期待形成の各国比較(補論図表1-2)わが国の物価の変動メカニズム:世代毎のインフレ期待形成(補論図表1-3)わが国の物価の変動メカニズム:企業のインフレ期待形成(補論図表2)マクロ経済モデル(Q-JEM)を用いた政策効果の点検:カウンターファクチュアル・シミュレーション(補論図表3)金利変動が実体経済に及ぼす影響(補論図表4)補完当座預金制度の運営状況(補論図表5) ETF買入れ効果の推計(補論図表6)マクロ経済モデルを用いたオーバーシュート型コミットメントの点検

§69

28 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(1)イールドカーブ・コントロール(2)オーバーシュート型コミットメント (3)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の波及メカニズム マネタリーベースの残高は、イールドカーブ・コントロールのもとで短期的には変動しうるが、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。―― 「物価安定の目標」の実現とは、物価上昇率が、景気の変動などを均してみて、平均的に2%となることを意味する。(2016年9月日本銀行金融政策決定会合公表文)(図表 1)(出所)日本銀行、Bloomberg 29 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入後の情勢(1)(1)名目金利(2)予想物価上昇率 (3)実質金利(4)銀行貸出 (5)CP・社債発行(6)為替・株価

§70

(注)1. <Ⅰ>は「量的・質的金融緩和」導入以降(2013/2Q~)、<Ⅱ>は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入以降(2016/3Q~)、<Ⅲ>は新型コロナウイルス感染症の拡大以降(2020/1Q~)。2. (2)の合成予想物価上昇率は、企業・家計・エコノミスト(コンセンサス・フォーキャスト)のインフレ予想を合成したもの。各主体のインフレ予想として、企業は短観、家計は生活意識に関するアンケート調査、エコノミストはコンセンサス・フォーキャストを使用。3. (3)の実質金利は、10年物国債金利からそれぞれの長期インフレ予想を差し引いた値。4. (4)の貸出残高は、民間銀行貸出の平残前年比。民間銀行貸出には、企業向けのほか、個人向け、地方公共団体向け等も含む。貸出金利は、国内銀行の貸出約定平均金利(新規・長期)。5. (5)のCP・社債残高は末残前年比。CP発行利回りの 2009/9月以前はa-1格以上、2009/10月以降はa-1格。社債発行利回りは、単純平均値、起債日ベース。対象は国内公募社債で、銀行や証券会社などの発行分は除く。社債発行利回りは、後方6か月移動平均。

§71

(出所)日本銀行、Bloomberg、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、QUICK「QUICK 月次調査<債券>」、証券保管振替機構、日本証券業協会、キャピタル・アイ、アイ・エヌ情報センター(図表2-1)

§72

30 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入後の情勢(2)(7)企業収益(8)失業率 (9)需給ギャップ(10)賃金 (11)消費者物価指数(CPI) (注)1. (7)の経常利益は、法人季報ベース。金融業、保険業を除く。2009/2Q 以降は、純粋持株会社を除く。2. (10)の所定内給与の 2016/1Q 以降は、共通事業所ベース。3. (11)のCPI(除く生鮮・エネルギー)は、消費税率引き上げ・教育無償化政策、Go Toトラベルの影響を除く(2020/4月以降は、高等教育無償化等の影響も除いた日本銀行スタッフによる試算値)。CPI(除く生鮮)は、2014/4月までの消費税率引き上げの影響を除く。(出所)財務省、総務省、日本銀行、厚生労働省、日本労働組合総連合会(図表2-2)-101234507091113151719ベア所定内給与(一般労働者)時間当たり所定内給与(パート)(前年度比、%)年度 31 イールドカーブ・コントロールのもとでの国債金利(1)国債金利等の推移 (2)日本銀行の国債保有残高(残存期間別)

§73

(注)1. ①「量的・質的金融緩和」導入(2013/4月)、②「量的・質的金融緩和」拡大(2014/10月)、③「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入(2016/1月)、④「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入(2016/9月)、⑤強力な金融緩和継続のための枠組み強化(2018/7月)、⑥新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化(2020/3月)。2. (1)の O/Nは、無担保コール O/N物レート。3. (2)は、国庫短期証券、変動利付債および物価連動債を含まない。(出所)Bloomberg、日本銀行(図表 3) 32 国債買入れによる名目長期金利の押し下げ効果(1)(1)仮想的なパスと実績の差による推計 ① 推計結果 ② 長期金利の仮想的な推計値と実績値

§74

(注)1. **は1%有意、*は5%有意であることを示す。2. 推計に用いた消費者物価は、消費税率引き上げ・教育無償化政策、 Go To トラベルの影響を除く(2020/4月以降は、高等教育無償化等の影響も除いた日本銀行スタッフによる試算値)。(出所)厚生労働省、総務省、Bloomberg日本国債金利(10年物、%)= 0.22* +0.26** × 有効求人倍率+0.10** × 消費者物価(除く生鮮、前年比、%)+0.25** × 米国債金利(10年物、%)推計期間は1997/1月~2013/3月。自由度修正済みR2は0.71。有効求人倍率と消費者物価は1か月ラグ。(図表4-1)○ 「量的・質的金融緩和」導入前までのデータを用いて、日本国債の長期金利(10年物)を被説明変数とし、「有効求人倍率」、「消費者物価」、「米国債の長期金利(10年物)」という3つの説明変数を用いた線形回帰分析を実施。この推計結果を用いて、「量的・質的金融緩和」が導入されなかった場合の、仮想的な日本国債の長期金利のパスを算出。「量的・質的金融緩和」導入以降の国債買入れによる名目長期金利の押し下げ効果は、この仮想的な長期金利のパスと実際の長期金利との差と考えた。○ ②に示したとおり、仮想的な長期金利は、均してみれば1%前後で推移している。

§75

実際の長期金利は、イールドカーブ・コントロールのもとで、0%程度で安定して推移している。その差である政策効果は、概ね▲1%程度と推計される。

§76

33 国債買入れによる名目長期金利の押し下げ効果(2)(2)日本銀行の国債保有割合に基づく推計 ① 推計結果 ② 長期金利の要因分解

§77

日本国債金利(10年物、%)= 0.25* +0.16* × 米国債金利(10年物、%)+0.45* × 実質GDP成長率予想(%)-0.02** × 日本銀行の国債保有割合(%)推計期間は2005/1月~2021/2月。自由度修正済みR2は0.95。標準誤差は、Newey-Westにより算出。(図表4-2)○ 日本国債の長期金利(10年物)を被説明変数とし、「日本銀行の国債保有割合」、「米国債の長期金利(10年物)」、「実質GDP成長率予想」の3つの説明変数を用いた線形回帰分析を実施。このうち、「日本銀行の国債保有割合」で説明される部分を国債買入れによる長期金利の押し下げ効果と考えた。○ ②で、長期金利の変動のうち、「日本銀行の国債保有割合」で説明される部分をみると、日本銀行の国債保有割合の高まりとともに▲1%程度まで拡大した後、概ね同水準の押し下げ効果が続いている。(注)1. **は1%有意、*は5%有意であることを示す。2. 日本銀行の国債保有割合は、日本銀行の保有国債の平均残存期間の変化を勘案して算出。実質GDP成長率予想および日本銀行の国債保有割合は、四半期データ等をもとに月次化。実質GDP成長率予想は、6~10年後の見通し。

§78

(出所)Bloomberg、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、日本銀行、財務省-1.5-1.0-0.50.00.51.01.512131415161718192021(%)年日本国債金利定数項米国債金利残差実質GDP成長率予想日銀の国債保有割合

§79

34 貸出・CP・社債金利の推移(1)新規貸出約定平均金利 (2)CP発行利回り (3)社債発行利回り (注) 1. 縦線は「量的・質的金融緩和」導入(2013/4月)、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入(2016/9月)。2. (3)の社債発行利回りは、各債券の発行スプレッドの単純平均値に国債流通利回り(5年物)を加えて算出。起債日ベース。対象は国内公募社債で、銀行や証券会社などの発行分は除く。格付けは、ムーディーズ、S&P、R&I、JCRの最高格付で分類。(出所)日本銀行、証券保管振替機構、キャピタル・アイ、アイ・エヌ情報センター、Bloomberg (図表 5) 35 金利低下の波及経路 (1)モデル概要 (2)金利低下による波及経路(概念図) (3)金利低下による需給ギャップ押し上げ経路(累積5年間)

§80

下記8変数の係数制約付き多変量自己回帰(VAR)モデルを推計① 需給ギャップ、② 金利(3か月物)、③ 金利スプレッド(2年物-3か月物)、④ 金利スプレッド(5年物-2年物)、⑤ 金利スプレッド(10年物-5年物)、⑥ 総資金調達コスト、⑦ 円の名目実効為替レート、⑧ 株価推計期間は1998/1Q~2019/4Q。ラグは1期。累積5年間の需給ギャップ押し上げ効果で算出。(注)総資金調達コストは、国内銀行の新規貸出約定平均金利、社債発行金利、CP発行金利を加重平均して算出。(出所)日本銀行、Bloomberg 等(図表 6)○ 係数制約付き多変量自己回帰(VAR)モデルを用いて、金利低下がどの経路を通じて需給ギャップを押し上げているかを推計した。具体的には、波及経路((2)のシャドー部分、変数⑥~⑧)それぞれについて、他の経路の係数をゼロとする制約を付して推計することで、当該経路の押し上げ効果を算出している。○ 金利低下が需給ギャップを改善させる波及経路は、資金調達コスト経路が3割強、金融資本市場経路(為替、株価)が5割強となっている。金融資本市場を通じた経路 36 金利低下の経済・物価への影響(1)年限別の金利変化が需給ギャップに及ぼす影響―― 推計方法の詳細は、「総括的検証」(2016年9月)の補論8を参照。 (2)金利低下に対する消費者マインドの反応

§81

(i)借入金利低下に対する反応 (ii)超長期金利低下に対する反応 下記6変数の多変量自己回帰(VAR)モデルを推計① 有効求人倍率、② 消費者物価指数(総合、季調済前期比)、③ 貸出約定平均金利(新規・長期、前期差)、④ 20年物国債利回り(前期差)、⑤ 株価(TOPIX、前期比)、⑥ 消費者態度指数(季調値)推計期間は1993/2Q~2020/3Q。ラグは2期。(注)(2)は、1σショックに対する反応。バンドは±1.5 標準誤差。(出所)厚生労働省、総務省、日本銀行、Bloomberg、内閣府等(図表 7)○ 金利低下に対する消費者態度指数(消費者マインド)の反応を確認すると、(i)借入金利の低下にはポジティブに反応する一方、(ii)超長期金利低下にはネガティブに反応する傾向がある。 高←消費者態度指数→低高←消費者態度指数→低 37 短期金利引き下げについての市場参加者の認識 (1)エコノミスト調査における追加緩和・短期金利引き下げの予想割合 (2)追加緩和を予想する先のうち短期金利引き下げを予想する先の割合(B/A)

§82

(注)1. Bloomberg 社が各金融政策決定会合前に実施している調査に基づく。(1)の「追加緩和方向への予想」は、時期を問わず、次の政策変更が追加緩和と予想する先を集計。「短期金利引き下げを予想」は、先行き短期政策金利の引き下げを予想する先を集計。2. (2)は、(A)次の政策変更が追加緩和と予想する先数に対して、(B)先行き短期金利の引き下げを予想している先数の割合。すべての(B)の先が(A)の先に含まれるとは限らないが、ここでは含まれると仮定して試算。2016年については、マイナス金利政策導入前の1月調査は除く。(出所)Bloomberg (図表 8)○ 市場参加者へのサーベイで、追加緩和を予想する先((1)のA)のうち、短期金利の引き下げを追加緩和の選択肢として予想する先((1)のB)の割合をみると、(2)に示したとおり、マイナス金利政策導入直後(7割程度)と比べて、最近は低下している(2割程度)。○ また、ヒアリング情報などからは、その理由として、金融仲介機能への影響を指摘する市場参加者が多くなっている傾向が窺われる。 38 コロナ対応のもとでの金融環境(1)日本銀行のコロナ対応(2)貸出態度判断DI (3)貸出残高とCP・社債残高(4)ドル資金調達プレミアム

§83

(注)1. (2)は全産業。2. (3)の民間銀行貸出は平残前年比、CP・社債計は末残前年比。民間銀行貸出には、企業向けのほか、個人向け、地方公共団体向け等も含む。3. (4)は、円資金を用いた3か月物のドル資金調達金利とドルLIBOR3か月物との差。(出所)日本銀行、証券保管振替機構、日本証券業協会、アイ・エヌ情報センター、Bloomberg(図表 9)国債のさらなる積極的な買入れETF :上限年間約12兆円ペースETF・J-REITの買入れJ-REIT:上限年間約1,800億円ペース企業等の資金繰り支援新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム新型コロナ対応金融支援特別オペCP・社債等の買入れ金融市場の安定確保米ドル資金供給オペ拡充 39 国債市場の機能度(1)国債金利(2)イールドカーブの変動域 (3)国債市場の取引高(4)債券市場サーベイ(市場の機能度) (5)国債金利の感応度(対米長期金利)(6)国債金利の感応度(対独長期金利)

§84

(注)1. ①「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入(2016/9月)、②強力な金融緩和継続のための枠組み強化(2018/7月)、③新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化(2020/3月)2.(2)は、後方6か月間における金利の最大値と最小値の差。3.(3)は、銀行、投資家、債券ディーラーのグロス購入額。4.(5)および(6)は、過去 90日間のローリング推計値。バンドは±1 標準誤差。(出所)Bloomberg、日本証券業協会、日本銀行(図表10) 40 金融仲介機能(1)国内預貸利鞘(2)国内銀行のバランスシート (3)銀行の当期純利益① 大手金融グループ ② 地域銀行

§85

(図表11)(注)1.(1)の縦線は「量的・質的金融緩和」導入(2013/4月)、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入(2016/1月)、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入(2016/9月)。2.(2)は国内店勘定。3.(3)の大手金融グループは連結ベース。2012年度以降、投資信託解約益をコア業務純益から除く。(出所)Bloomberg、各社開示資料、日本銀行02004006008001,0001,2001,4001,600貸出金国債国債以外の有価証券その他資産預金その他負債資本(兆円)2012年末 2020年末2015年末-3-2-1012306081012141618その他税金関連費用株式関係損益債券関係損益信用コストコア業務純益当期純利益年度(兆円)-6-4-2024606081012141618年度(兆円) 41 ETF買入れの効果の推計 <推計Ⅰ>ETF買入れが、株式市場のリスク・プレミアムに有意な効果を持つか検証。⇒ 有意に押し下げ効果があることを確認。<推計Ⅱ>ETF買入れによる株式市場のリスク・プレミアムに対する効果が、買入れ時の市場の局面や買入れ方(4つのケース)に応じて、変化するのかを検証。⇒ 市場が不安定な時ほど、買入れ規模が大きいほど、買入れ1単位当たりの効果が大きいことが示唆される。(図表12)(注)詳細は補論5を参照。 42

§86

ETF買入れに対する市場参加者の見方 ① 株価・ボラティリティ ② 「企業年金・公的資金」に対する株式市場参加者の注目度 ③ 「企業年金・公的資金」の株式市場へのインパクト (図表13)(注)②、③は、QUICK 社による市場参加者に対するサーベイ調査に基づく。②の注目度は、今後6か月程度において最も注目している投資主体として、各投資主体(個人、外国人、投信、金融法人(企業年金・公的資金を除く)、企業年金・公的資金、事業法人、自己(裁定取引を含む))のうち、「企業年金・公的資金」を選んだ回答の比率。③の指数は、今後6か月程度において、「企業年金・公的資金」が株式相場にどのようなインパクトを与えるかについて、5段階(強いプラス、プラス、中立・不明、マイナス、強いマイナス)で予測した回答の比率に、それぞれ 100、75、50、25、0を掛けて指数化したもの。(出所)Bloomberg、QUICK「QUICK 月次調査<株式>」 ○ 2016年のBrexitや2020年の感染症拡大時のように、株価が下落し、ボラティリティが高まる局面では(①)、注目度が上昇し(②)、株式市場へのインパクトとしては、プラスとの評価が高まっている(③)。―― 2014年の注目度の上昇は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による基本ポートフォリオ見直しの影響が大きいと考えられる。 43

§87

日本銀行のETF・J-REIT保有状況(1)ETF (2)J-REIT(図表14)(出所)JPX、不動産証券化協会、日本銀行 44 わが国の物価の変動メカニズム:適合的期待形成の各国比較 (1)推計式 (2)推計結果(各予想物価上昇率のうち現実の物価上昇率で説明される割合)① 1年先予想物価上昇率(θ1) ② 6~10年先予想物価上昇率(θ2) 推計式①:1年先予想物価上昇率のうち、現実の物価上昇率で説明される割合θ11年先インフレ予想=θ1×前期の実績インフレ率+(1-θ1)×6~10年先インフレ予想推計式②:6~10年先予想物価上昇率のうち、現実の物価上昇率で説明される割合θ26~10年先インフレ予想=θ2×前期の実績インフレ率+(1-θ2)×中銀物価目標(2%)推計期間は、日本・米国が2000/1Qから、ユーロ圏が2003/2Qから、英国が2005/1Qから凡例に表記の時点まで。実績物価上昇率は、「コア指標」を使用。

§88

(補論図表1-1)(出所)Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、総務省、BLS、Eurostat、ONS○ 人々の予想物価上昇率は、中央銀行の物価目標による「フォワード・ルッキングな期待形成」と現実の物価上昇率の影響を受ける「適合的な期待形成」の2つの要素で形成される。○ 下記のとおり「総括的検証」と同じ手法を用いて、各国の1年先予想物価上昇率および6~10年先予想物価上昇率が、現実の物価上昇率で説明される割合(θ)を、最近までのデータを用いて、再推計した。○ θは、「総括的検証」時点と大きく変わっておらず、わが国では、引き続き、「適合的な期待形成」のウエイトが高いことが示された。 45 わが国の物価の変動メカニズム:世代毎のインフレ期待形成 (1)推計式

§89

(2)推計結果① 水準の世代差(β) ② 感応度の世代差(γ)(予想物価上昇率)i,t=α+Σβm(世代ダミー)m,i,t+Σγm(世代ダミー)m,i,t×(物価の実感)i,t+θ(コントロール変数)i,t推計期間は、2006/3Q~2020/4Q。サンプル数は、約6万。世代ダミーは、各調査時点における回答者の年齢階級に基づき試算。予想物価上昇率、物価の実感は、量的質問の回答値(予想物価上昇率が-5%超+5%未満のサンプルを使用)。コントロール変数は、「景況感」、「収入」、「性別」等。(注)1.(2)①は、「1940年代前後生まれ」を 0に基準化。2.(2)①、②のバンドは、±1.5 標準誤差。(出所)日本銀行(補論図表1-2)○ わが国家計におけるインフレ期待形成の世代毎の違いを、「生活意識に関するアンケート調査」の個票を用いた分析で確認した。下記のとおり、景況感等をコントロールしたうえで、回答者の世代によって、①予想物価上昇率の水準がどの程度異なるか(β)、②実感する物価(実際の物価)が予想形成に与える影響度(感応度)がどの程度異なるか(γ)について、分析を行った。○ インフレを経験していない若年世代ほど、①予想物価上昇率の水準が低く(β)、②実際の物価変動に対する予想物価上昇率の感応度も鈍い(γ)ことが示された。 46 わが国の物価の変動メカニズム:企業のインフレ期待形成

§90

(1)物価の期待形成に関する3つの仮説完全情報下の合理的期待・現時点で利用可能な情報を全て利用して、期待形成。・これまで多くのマクロ経済モデルで仮定されてきたが、近年のミクロ・データを用いた実証研究では、説明力の限界が指摘されている。粘着情報仮説・情報の取得・処理には費用が生じるため、経済主体は、予想を必ずしもアップデートしない。合理的無関心仮説・人間の情報処理能力には限りがあるため、合理的な選択の帰結として、必要性の低い情報に無関心となる。(2)各予想形成メカニズムに従うわが国企業の割合(北村・田中[2019]) (出所)北村冨行・田中雅樹(2019)、「合理的無関心や粘着情報の企業のインフレ予想形成に対する含意―小型マクロモデルを用いた分析―」、日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No.19-J-10(補論図表1-3)○ わが国企業のインフレ予想の形成過程を検証した分析によれば、・約6割の企業が、情報の予想への織り込みに時間を要する(粘着情報制約)・約5割の企業は、必要性の低い情報を用いずに予想を形成(合理的無関心)⇒ 現時点で利用可能な情報を全て利用して予想形成する「完全情報下の合理的期待」に従う企業は2割程度しかいない。 47 マクロ経済モデル(Q-JEM)を用いた政策効果の点検:カウンターファクチュアル・シミュレーション(1)実質GDP (2)需給ギャップ

§91

(3)消費者物価(除く生鮮食品(4)政策による押し上げ効果・エネルギー)(「量的・質的金融緩和」導入以降の平均) (補論図表2)(注)シミュレーションA~Eの詳細は、補論2本文を参照。(出所)内閣府、日本銀行、総務省等 48 金利変動が実体経済に及ぼす影響(1)イールドカーブの変動域(後方6か月間の最大値-最小値) (2)金利変動が設備投資に及ぼす影響(実質金利ギャップの感応度(β1+β2)) 0.25% 0.25% 0.36% 0.51%以下~0.36% ~0.51% 超(補論図表3)(注)(2)の実質金利ギャップは「均衡イールドカーブモデル」により算出(10年物)。バンドは、±1.5 標準誤差。(出所)Bloomberg、Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、Economic PolicyUncertainty、内閣府金利変動域← 小さい金利変動域大きい → 49 補完当座預金制度の運営状況(1)マクロ加算残高枠等の未利用分および政策金利残高の推移 (2)マクロ加算残高枠およびその内訳の推移 (3)基準比率の推移 (補論図表4)(注)(1)のマクロ加算残高枠等の未利用分は、基礎残高枠の未利用分を含む。(出所)日本銀行 50

§92

ETF買入れ効果の推計被説明変数(株式市場のリスク・プレミアム)① オプション価格に含まれる株式リスク・プレミアムの変化幅② 個別銘柄イールド・スプレッド変化幅推計I 買入れ量指標の係数θ:-5.06* 買入れ量指標の係数θ:-0.85*推計:買入れ効果関数(状態変数)(a)株価のトレンドからの下方乖離率状態変数の係数σ:0.69* 状態変数の係数σ:0.18*(b)株式市場のボラティリティ状態変数×局面ダミーの係数σ:-0.49* 状態変数×局面ダミーの係数σ:-0.07* (c)買入れ実施直前の株価下落率状態変数の係数σ:-1.51 状態変数の係数σ:0.22* (d)買入れ額の規模状態変数の係数σ:-137.71 状態変数の係数σ:-16.66* (注)*は統計的に有意(有意水準5%)であることを示している。(出所)Bloomberg、QUICK、JPX(補論図表5)Ⅱ 51 マクロ経済モデルを用いたオーバーシュート型コミットメントの点検(1)自然利子率+0.5%の場合① 需給ギャップ ② 物価上昇率 (2)自然利子率-0.1%の場合① 需給ギャップ ② 物価上昇率 (3)各ルールのもとでのシミュレーションにおける損失関数の平均値

§93

損失関数(a)自然利子率:+0.5% (b)自然利子率:-0.1%① テイラールール 5.407.21② 平均インフレ目標ルール1年平均 5.317.022年平均 4.846.013年平均 5.015.834年平均 5.345.86 (補論図表6)(出所)日本銀行、総務省等