← Back
Bank of JapanReleaseDec 19, 2024

(参考)金融政策の多角的レビュー:主なポイント

Original in Japanese

Full text

§1

金融政策の多角的レビュー2024年12月日本銀行主なポイント 1金融政策の多角的レビューにおける主な取り組み日本銀行内部での分析日本銀行外部の多様な知見調査・分析46本の論文を公表金融政策経済・物価金融市場金融システムアンケート債券市場サーベイ・特別調査(金融機関70先)有識者講評意見募集学界の有識者による本レビューの講評(8名)企業行動等に関するアンケート調査(地域の中小企業を含む2,509社)意見交換金融経済懇談会17回(地域の企業・金融機関等)コンファレンス・ワークショップ6回(国内外の学界の有識者等)インターネット・郵送による意見募集(172件)生活意識に関するアンケート調査(家計)• 経済がデフレに陥った1990年代後半以降、「物価の安定」の実現が課題• 2023年4月に、この間の金融政策運営について理解を深め、将来の政策運営にとって有益な知見を得るため、金融政策運営について、多角的にレビューを行うことを決定

§2

2金融政策の多角的レビューの構成 1990年代後半以降のわが国の経済・物価・金融情勢 2010年代初頭までの金融政策運営 2013年以降の大規模な金融緩和の経済・物価への影響 大規模な金融緩和の市場機能度や金融仲介機能、成長力等への影響 大規模な金融緩和の効果と副作用の評価 非伝統的な金融政策運営の考え方 2%の「物価安定の目標」 財政政策と金融政策 個々の政策手段を巡る論点過去25年間のわが国の経済・物価・金融情勢と金融政策運営先行きの金融政策運営への含意

§3

• 自然利子率が低下するもと、需要不足が慢性化 名目金利の実効下限制約から、伝統的な金融政策では十分に経済を刺激できず 自然利子率低下には、バブル崩壊後の資産価格下落や成長期待の下方屈折、金融危機等による企業のリスクテイク姿勢の慎重化、人口動態の変化等が影響• グローバル化の進展やITの技術革新による物価下押し圧力• 賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方の定着31990年代後半以降のわが国の経済・物価・金融情勢1990年代後半以降:緩やかなデフレが長期にわたって継続• 大規模な金融緩和や財政刺激策、外部環境の変化などから、慢性的な需要不足が解消• 予想物価も幾分上昇、物価上昇率はプラスとなったが、2%を下回る状況が継続 女性・高齢者等の労働供給余地の残存 賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方の転換に時間2013年以降:デフレではない状態が実現• 企業の賃金・価格設定行動に積極的な動き 人手不足感の一段の強まり(追加的な労働供給余地の縮小、金融緩和等から就業者数増加) 輸入物価の大幅上昇、価格転嫁や賃上げをサポートするための政府による施策2020年代:コロナ禍以降の変化

§4

-==+大規模な長期国債買入れ2%の「物価安定の目標」への強く明確なコミットメント「量的・質的金融緩和」人々の予想物価上昇率実質金利名目金利金融環境改善を通じ経済活動押し上げ適合的な期待形成フォワード・ルッキングな期待形成に働きかけ金利を低位に安定させる現実の物価上昇率人々の予想物価上昇率需給ギャップの改善• 予想物価上昇率に一定の影響 ただし、2%にアンカーするほどの有効性はなかった42013年以降の大規模な金融緩和の影響(1)期待への働きかけ• 大規模な金融緩和は経済・物価を押し上げ• ただし、期待への働きかけの難しさなどから、導入当初に想定していたほどの効果(注)は発揮せず(注)2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現経済・物価への影響• 大規模な長期国債買入れ等により、イールドカーブ全体に下押し圧力 2016年以降、長期金利を-1%pt程度押し下げ名目金利の押し下げ効果実質GDP(水準)消費者物価(前年比)マクロモデル(Q-JEM)+1.3~+1.8% +0.5~+0.7%pt時系列モデル(FAVAR) ―― +0.6~+1.1%pt大規模な金融緩和の効果(2013年度以降の期間平均)

§5

52013年以降の大規模な金融緩和の影響(2)大規模な金融緩和の副作用等大規模な金融緩和の効果と副作用の評価• 金融市場や金融機関収益などの面で一定の副作用はあったものの、現時点においては、全体としてみれば、わが国経済に対してプラスの影響• ただし、今後、なお低下した状態にある国債市場の機能度の回復が進まない、あるいは副作用が遅れて顕在化するなど、マイナスの影響が大きくなる可能性には留意 日本銀行の国債保有比率は、暫くはきわめて高い状況が続くと見込まれ、国債市場の機能度の回復には時間を要する可能性 貸出のなかには、債務者の収入減少や貸出金利の上昇に対する耐性が相対的に低い案件が存在。金融機関の与信や保有債券のデュレーションは長期化。外部環境が大きく変化した場合に、金融仲介活動を阻害する要因になる可能性金融市場の機能度国債市場の機能度にマイナスの影響 大規模な買入れが長期化するなか、長短金利操作による金利抑制効果がより顕在化した局面で、機能度が低下する傾向に強まり金融仲介機能貸出等の利鞘は縮小も、金融仲介活動を阻害した証左はみられない 貸出等の利鞘を縮小させる一方、信用リスクの低下等を介して、金融機関の自己資本比率を押し上げ。

§6

景気の改善等を通じて、企業の資金需要を拡大経済の供給サイド(成長力等)プラス・マイナス両面で明確な結論が得られず 理論的にはプラス(資本蓄積の促進等)、マイナス(低生産性企業の滞留などによる資源配分の歪み等)両方向の可能性

§7

• 非伝統的な金融政策手段は、経済・物価を押し上げる効果を発揮。ただし、その定量的な効果は、伝統的な金融政策手段(短期金利の操作)に比べて不確実。非伝統的な金融政策手段を大規模かつ長期間にわたって継続する場合には、副作用をもたらしうる• 今後、非伝統的な金融政策手段を用いる必要が生じた場合には、その時点の経済・物価・金融情勢のもとで、ベネフィットとコストを比較衡量していくことが重要• 現時点においては、将来の政策運営を考えるうえで特定の手段を除外するべきではないが、今後、各手段の採用を検討する際には、留意点等を勘案し、可能な限り副作用を抑制しながら効果を発揮できるよう、制度設計していく必要6先行きの金融政策運営への含意• 引き続き、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、金融政策を運営していくことが適切 非伝統的な金融政策手段は、短期金利操作の完全な代替手段にはなりえず、可能な限りゼロ金利制約に直面しないような政策運営が望ましい。

§8

景気悪化時に実質金利を引き下げることができるように、小幅のプラスの物価上昇率を安定して実現していくことが重要 消費者物価指数のバイアス 主要先進国の多くは物価目標を2%に設定 デフレ・低インフレ環境下では、個々の品目の価格や賃金が動きにくかったことが資源配分の歪みや企業の前向きな投資の抑制につながっていた可能性非伝統的な金融政策運営の考え方2%の「物価安定の目標」