Minutes of the Monetary Policy Meeting (May 22, 2020)
金融政策決定会合議事要旨(5月22日開催分)
Full text
§1
本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2020年6月15、16日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。 開催要領 1.開催日時: 2020年5月22日(9:00~から9:54) 2.場所:日本銀行本店 3.出席委員:議長黒田東彦(総裁) 雨宮正佳(副総裁) 若田部昌澄(副総裁) 布野幸利(審議委員) 櫻井眞(審議委員) 政井貴子(審議委員) 鈴木人司(審議委員) 片岡剛士(審議委員) 安達誠司(審議委員) 4.政府からの出席者:財務省神田眞人大臣官房総括審議官 内閣府宮下一郎内閣府副大臣(執行部からの報告者)理事内田眞一 企画局長加藤毅 企画局審議役藤田研二(事務局)政策委員会室長松下顕 政策委員会室企画役本田尚 政策委員会室企画役山城吉道 企画局政策企画課長飯島浩太 企画局企画調整課長矢野正康 企画局企画役長野哲平 企画局企画役土川顕 金融市場局長清水誠一 I.臨時金融政策決定会合開催の趣旨説明 冒頭、議長より、今回の臨時金融政策決定会合開催について、以下のとおり趣旨説明があった。 4月27日の金融政策決定会合では、執行部に対して、中小企業等の資金繰りをさらに支援するため、政府の緊急経済対策等における資金繰り支援制度も踏まえた金融機関への新たな資金供給手段の検討を早急に行い、決定会合で報告するように指示した。
§2
本日は、執行部の検討結果について報告を受け、必要な金融調節事項の検討を行うため、日本銀行法第17条第3項に基づき、臨時金融政策決定会合を開催することとした。 II.新たな資金供給手段等についての執行部からの提案 4月27日の金融政策決定会合で議長よりなされた指示に基づく「新たな資金供給手段」についての検討結果を報告する。当該資金供給は、貸付先が報告する適格融資の残高を限度に、共通担保を担保として、期間1年以内、利率ゼロ%で貸付けること、利用残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算すること、利用残高に相当する当座預金へ+0.1%を付利すること、が考えられる。対象となる適格融資については、(1)緊急経済対策における無利子・無担保融資や新型コロナウイルス感染症対応として信用保証協会による保証の認定を受けて実行した融資(制度融資)、(2)融資条件面でこれに準じるプロパー融資とすることとしたい。適格融資の規模感は、約30兆円と見込まれる。また、本措置については、系統会員金融機関等も利用可能とするほか、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ(特別オペ)」と一体的に運営することとしたい。さらに、本措置の導入にあわせて、特別オペ、CP・社債等の増額買入れ等の実施期限を半年間延長して、2021年3月末までとすることが考えられる。
§3
本日、これらが決定されれば、5月末時点の金融機関の融資実績を踏まえて、6月中に資金供給を開始できるよう、準備を進めたい。 III.討議 委員は、企業等の資金繰りを支援する観点から、執行部から提案があったように、新たな資金供給手段を導入するとともに、資金繰り支援のための各種措置の実施期限を半年間延長することが適当である、との見解で一致した。 新たな資金供給手段について、ある委員は、中小企業等への貸出比率が高い系統会員金融機関等を制度開始当初から対象に加えることは、中小企業等の資金繰りをさらに支援するために重要であると指摘した。また、この委員は、最近の経済・金融情勢を踏まえると、今回、臨時の会合を開くことで、新たな資金供給手段を速やかに導入する意義は大きいと付け加えた。別のある委員は、緊急経済対策における民間金融機関による無利子・無担保融資を一段と促進していくために、新しい資金供給手段で金融機関の取り組みをさらに後押しすることが適当であるとの意見を述べた。
§4
資金繰り支援のための各種措置の実施期限について、何人かの委員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は長引く可能性があり、日本銀行として、企業等の資金繰りを、かなり長い期間にわたって支援していく必要が生じる可能性もあると指摘した。そのうえで、これらの委員は、こうした可能性を踏まえると、念のため、期限を延長することが適当であるとの見方を示した。このうちの複数の委員は、今後、新型感染症の影響が長期化すれば、企業の資本が毀損したり、貸出債権が不良債権化したりするリスクがある点にも注意が必要であるとの見解を示した。
§5
続いて、委員は、新たな資金供給手段を含め、新型感染症の拡大を受けて日本銀行が採用してきた諸措置について、市場や国民から十分に理解されるよう、分かりやすく説明していくことが重要であるとの認識を共有した。何人かの委員は、CP・社債等の買入れ(残高上限:約20兆円)と特別オペ(資金供給の対象となる日本銀行に担保として差入れられている民間債務:約25兆円<4月末現在>)に新たな資金供給手段(資金供給の対象となる適格融資:約30兆円)をあわせて、新型感染症の拡大に対応した、総枠約75兆円からなる資金繰り支援のための特別プログラムとして説明していくことが考えられると述べた。このうち、一人の委員は、日本銀行の資金繰り支援策は、大企業から個人事業主まで、幅広い先を対象としていることを、明確に示していく必要があると述べた。また、別のある委員は、3月以降の金融緩和の強化は、(1)上記の企業等の資金繰り支援を企図した特別プログラム、(2)金融市場の安定を維持する観点からの円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れ、の3つの柱に整理されるとの見方を示した。
§6
この間、委員は、当面の金融政策運営について、今回の会合では上記の執行部提案に関連する論点に絞って討議し、その他の論点については、6月15、16日に開催を予定している次回の金融政策決定会合で、改めて経済・物価・金融情勢を点検したうえで、しっかりと議論することが望ましいとの見解で一致した。 IV.政府からの出席者の発言 財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。 新たな資金供給手段は、政府が導入した無利子・無担保の資金繰り支援を実施する民間金融機関に、日本銀行が積極的に資金供給を行うものであり、政府・日本銀行の新たな連携を示すものと評価。新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムとして、全体像を構成したことは、対外説明のうえで有効と思料。 政府は、事業規模117兆円の緊急経済対策および第1次補正予算を速やかに実行に移しており、政策金融機関、民間金融機関による無利子・無担保融資を含め、総額45兆円規模の強力な資金繰り支援を講じている。さらに総理の指示に基づき、資金繰り対策の積み増しと資本性資金の活用等による金融機能の強化を含む第2次補正予算案の編成を行っているところである。 日本銀行には、引き続き、企業金融の円滑確保や金融市場の安定維持等に万全を期すとともに、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。 また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。
§7
2020年1~から3月期の実質GDP成長率は-0.9%(年率換算-3.4%)と、わが国経済の厳しい実態を示すものとなった。緊急事態宣言発出後、個人消費等はさらに厳しくなっているほか、海外経済も低迷が続いており、当面、わが国経済は、相当程度落ち込むことが想定される。感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクにも十分注意する必要がある。 政府は、緊急経済対策および第1次補正予算を迅速に執行している。また、総理の指示に基づき、第2次補正予算案を直ちに編成したうえで、早期の国会提出・成立を目指すとともに、経済や国民生活への影響を見極めつつ、臨機応変に対応していく。 新たな資金供給手段は、政府の経済対策における資金繰り支援を日本銀行の立場からさらにしっかりと支えるものと認識している。日本銀行には、事態の推移を注視して、今後も、適切な金融政策運営を行うことを期待する。 引き続き、政府との間で危機感を共有しつつ、緊密な連携を行っていただきたい。 V.採決 1.「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領」の一部改正等 前記執行部提案を内容とする「『新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション基本要領』の一部改正等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。 2.金融市場調節方針
§8
議長から、金融市場調節方針について、前回4月27日の金融政策決定会合での決定を維持するとの議案が提出され、採決に付された。 採決の結果、賛成多数で決定された。 金融市場調節方針に関する議案(議長案) 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。 記 日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。 採決の結果 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員反対:片岡委員 片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。 3.資産買入れ方針 議長から、資産買入れ方針について、CP・社債等買入れの増額措置については執行部提案どおり期限延長し、それ以外については前回4月27日の金融政策決定会合での決定を維持するとの議案が提出され、採決に付された。 採決の結果、全員一致で決定された。 資産買入れ方針に関する議案(議長案) 長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。 記
§9
ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。 CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年3月末までの間、それぞれ7.5兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。 採決の結果 賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員反対:なし VI.対外公表文(「中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入」、「当面の金融政策運営について」)の検討 以上の議論を踏まえ、議長からは、2つの対外公表文(「中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入」<別紙1>および「当面の金融政策運営について」<別紙2>)が提案され、採決に付された。採決の結果、何れも全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。 VII.議事要旨の承認日程と「主な意見」の取り扱い
§10
本日の臨時金融政策決定会合の議事要旨は、6月15、16日に開催を予定している次回の会合で承認し、6月19日に公表することとされた。また、本日の会合の「主な意見」については、(1)議事要旨を公表する次回会合までの期間が短いこと、(2)本日の会合では、執行部提案に絞って討議が行われたこと、を踏まえ、政策委員会議事規則の規定に関わらず、作成しないこととされた。 以上 別紙 1 中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入 日本銀行は、4月の政策委員会・金融政策決定会合において、新型コロナウイルス感染症拡大に対応する観点から、中小企業等の資金繰りをさらに支援するため、「新たな資金供給手段」の検討を早急に行うこととしたが、本日開催した臨時の金融政策決定会合において、その具体的な内容を決定した(全員一致、別紙)。
§11
これにより、企業等の資金繰り支援のための日本銀行の措置として、(1)CP・社債等の買入れ(残高上限:約20兆円)、(2)新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ(資金供給の対象<担保として差入れられている民間債務>:約25兆円<4月末現在>)に、(3)新たな資金供給手段(資金供給の対象<緊急経済対策における無利子・無担保融資を中心とする適格融資>:約30兆円)、が加わることとなった。日本銀行は、この3つの措置をあわせて「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」(総枠約75兆円)とし、期限を半年間延長して、2021年3月末までとすることとした(全員一致)。 加えて、日本銀行では、金融市場の安定を維持する観点から、国債買入れやドルオペなどによって、円貨および外貨を上限を設けずに潤沢に供給しているほか、ETFおよびJ-REITの積極的な買入れを行っている。 日本銀行は、引き続き、上記の措置をしっかりと実施していくことにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。そのうえで、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。 以上 (別紙) 新たな資金供給手段 概要 貸付先が報告する適格融資の残高を限度に、共通担保を担保として、期間1年以内、利率ゼロ%で資金供給を行う制度。 対象となる適格融資
§12
(1)制度融資 緊急経済対策における無利子・無担保融資や新型コロナウイルス感染症対応として信用保証協会による保証の認定を受けて実行した融資 (2)(1)に準じるプロパー融資 プロパー融資のうち、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業等に対して行う、融資条件面で(1)に準じる融資(1先当りの上限:1,000億円) 「マクロ加算残高」への加算措置 利用残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算する。 当座預金への付利 利用残高に相当する当座預金へ+0.1%を付利する。 対象先 系統会員金融機関等も利用可能とする。 実施のタイミング 本措置による資金供給は、5月末時点の金融機関の融資実績を踏まえて、6月中に開始する予定。 その他 本措置については、「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」と一体的に運営する。 以上 別紙 2 当面の金融政策運営について(注1) 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融市場調節方針および資産買入れ方針について、以下のとおり決定した。 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注2) 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
§13
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に-0.1%のマイナス金利を適用する。長期金利: 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする1。 資産買入れ方針(全員一致) 長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。 (1)ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う2。 (2)CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年3月末までの間、それぞれ7.5兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。 以上 (注1)今回の金融政策決定会合の「主な意見」は作成しないが、議事要旨は、6月15、16日に予定されている金融政策決定会合で承認し、6月19日に公表する。本文に戻る (注2)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。本文に戻る
§14
金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。本文に戻る ETFおよびJ-REITの原則的な買入れ方針としては、引き続き、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行い、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。本文に戻る