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日本銀行記者会見2025年1月14日氷見野良三, 副総裁

氷見野副総裁記者会見(2025年1月14日)

全文

§1Question

地元の横浜経済記者クラブを代表して、最初に質問させて頂きます。今日、懇談会で地元の経済界の方と会われて意見交換されたと思いますけど、どのような話があったのか、ということですね。それとあと、この神奈川県経済に対する先行きの見通し、どのような印象を持っておられるか、その二点ちょっと教えて頂けたらと思います。

§2Ryozo Himino

まず一点目の今日の懇談会の模様ですけれども、神奈川県の行政、経済界、金融界を代表する方々から大変貴重なお話を伺えたと思っておりまして、感謝しているところであります。今日伺った話では、足元の神奈川県の景気については少しずつ景況感が改善していて、総じてみれば回復しているという見方が多かったというふうに思います。ただ、実際いろんな経営課題もあって、特によくお聞きしたのは人手不足の深刻化というお話が多かったように思いました。また、賃金の上昇や原材料・エネルギー価格の上昇などのコスト上昇に直面する一方、賃金の引き上げも必要になっている一方で、中小企業を中心として価格転嫁が十分に行えないという声も聞かれたところであります。また、足元倒産が件数的には増えているといった点についても、懸念材料だというお話もありました。そうした中で、人材獲得とか生産性の向上に向けて様々な取り組みを行っておられるといったご紹介も頂いたところであります。日本銀行に対してのご要望としては、物価や為替の安定を通じて経済の成長につながるように、特に中小企業の実情みたいなものもよく把握したうえで、金融政策を適切にやっていってほしいと、そういうお話だったというふうに思います。

§3Ryozo Himino

そのうえで、私どもの神奈川県経済、現状と今後についての印象みたいなものですけれども、神奈川県は産業構造をしなやかに変化させながら発展してきたというふうな印象を持っております。例えば製造業については、海外移転の動きもあって、ウエイトはいくぶん低下しているわけですけれども、半導体関連産業の拠点とか、むしろ維持されているところですし、また大企業の本社移転が増えているとか、あるいは研究開発拠点の進出が積極化しているとか、そういった動きもあると承知しております。また、医薬品、医療機器、健康関連、ロボットの開発などに関係する産業集積を図る取り組みも進んでいるというふうに承知しております。もちろんまた豊富な観光資源もあって、海外からの観光需要も集めているというふうに承知しております。今後も、神奈川県経済が更なる成長に向けて力強く歩んでいかれることを心から期待しているところです。

§4Question

二点あります。一点目は、講演の中で、アメリカの経済について、新大統領の政策の先行きに注目が集まる中、来週のトランプ大統領就任演説で政策の大きな方向が示されるのではないかというご発言ですけれども、これはある程度政策の方向がみえ、またそれによって市場で大きな混乱が起きたりしないのであれば、 1月の利上げも十分可能という趣旨でおっしゃっているのか、少し具体的に説明頂ければと思います。あと二点目は、為替の影響なんですけれども、輸入物価の円安による上昇のリスクっていうのは昨年7月に利上げした際に一つファクターになったと思うんですけれども、最近の動きは、そうした輸入物価の上昇を通じた物価の上昇圧力として、リスクとしてとらえなければならないのか、そこのリスクはこれまで日銀がみていた通りだいぶ減衰しているのか。加えて、賃上げから物価への上押しの働きっていうのも踏まえた全体で、物価は、氷見野副総裁、今、上振れ下振れどちらの方向がより強く意識しなければならないとみてらっしゃるのか。すいません、要は国内の物価の動向についてのリスクの考え方についてお願いします。

§5Ryozo Himino

何かたくさんご質問があったような気がして全部カバーできるかどうか分かりませんけれども、一つは 1月の利上げの話ですけれども、これはそれまでに得られた情報を精査して、経済・物価の見通しの全体像を考えたうえで、政策委員の間でよく議論して、適切に判断していくということでありますので、何か特定の項目でこれがあったらとかこれがなかったらとかいうチェックリストのようなふうには考えておりませんで、全体像としてどう評価するかということになってくわけですが、その中の一つの大事な要素としては、アメリカの話があって、アメリカの経済自体は堅調だというふうにみておりますけれども、[トランプ次期]大統領、もう既にいろいろ発信されているわけですが、就任演説では、一つにはどんなバランスでどんなスケジュールで進めていくのかとか、あるいは、これまでに発信されていないような何か新しいものがあるかとか、そういったところはよくみていこうと思っておりますけれども、何か一対一でその話と、 1月の結論を結び付けるようなつもりはございません。二つ目、物価の状況ということで、まず為替、輸入物価の話がありました。今日の懇談会でも、何人かの方からやはり経営上は為替の安定が重要だというお話がありまして、具体的に数字を挙げて金利と為替でこんなにどっちが大変かと言えば、為替だというようなお話をされた方もあったわけですけれども。

§6Ryozo Himino

円安、経済の様々なところに影響があるわけですけれども、今ご質問のあった物価との関係ということになりますと、直近で輸入物価指数をみますと、ドルベースではかすかに下がっているんですが、円ベースでは10月、11月と、前月比でみるとかなり高い伸びになっております。ですので、そういったものが物価にどう影響していくかというのはよくみていかなければならないと思っております。そのうえで、更にいろんな賃金はじめとした様々な要素を含めて、物価について全体に上下どちらのリスクの方が大きいと思っているかということでしたけれども、そこがなかなか微妙でありまして、ヘッドラインの上昇率は、今いろんな政策的なものを除くと 3%ぐらいですので、ちゃんと下がっていかないと困るわけですけれども、他方インフレ予想みたいなものをみると、あるいは例えば私どもが出してる基調的な物価の動向をみるための指標とかいうのをみると、これは今度は低いということで、両方をみてやっていくしかないというふうに思っております。

§7Question

午前の講演で政策判断の注目点として、国内の賃上げ動向というのを挙げられました。そのうえで昨年度に続いて強い結果が期待できるとの言及もございましたが、そうした中で3月の春闘のですね、1 次集計を確認する必要性というのを、副総裁ご自身どのようにお考えなのか。その強い内容がですね、既に予想されている中で、緩和調整が遅れてしまうことのリスク、これについて現時点で副総裁はいまどのようにお考えか、教えてください。

§8Ryozo Himino

賃上げは賃金と物価の好循環の非常に大きな要素ですので、注目点ではあるわけですけれども、全体を評価したうえで、賃金の話だけではなくて、全体を評価して判断していくということになると思います。そのうえで、ではどこまでみて判断するかということになりますが、これについては来週の決定会合でよく議論して判断していくということになると思いますけれども、足元の状況、足元で得られた情報でどうかということであれば、12月の時点で得られた情報に比べれば、あるいは支店長会議であれ、新年の要人の発言であれ、また 12月末にいろいろ出たアンケート調査の結果であれ、比較的前向きの、去年と比べて前向き度が同じか強いくらいのものが多かったということは言えると思います。そのうえで、賃金以外の部分も含めて経済物価の見通しを考えて、トランプさんの演説もみて、2日目の朝出る CPIも見て、しっかり判断していきたい、というふうに考えております。

§9Question

二点お伺い致します。一点目は、実質賃金の位置付けについてお伺い致します。直近ではまたマイナスとなりまして、プラス圏定着がなかなかいかない状況ですけれども、要因として何が考えられるのか、また今後の見通し、ないし、またその実質賃金の今の動向が利上げ判断に及ぼす影響についてお伺いできればと思います。もう一つは、円安、先ほども出た円安なんですけれども、輸入物価が直近は落ち着いている、前月比で見ると、副総裁おっしゃったように上昇してるんですけれども、よく前年同月比で落ち着いてるっていうような説明も聞くんですが、一方で、前年までに 4 割程度上昇した中での減少であるとも言えます。円安の影響というのは、ここ数年のスパンでの水準の変化っていうものもみるべきだとの指摘もありますけれども、改めてその経済に与えるプラマイの影響について、副総裁の見解をお伺いできればと思います。

§10Ryozo Himino

実質賃金は名目賃金と物価上昇率の関係で決まりますので、物価上昇率がまだ十分落ちてきてないということと、名目賃金がそれを打ち消す水準にないということの組み合わせで、実質賃金のマイナスが続いているということで、それは大変残念なことだと思いますけれども、実は雇用者の数は増えておりますので、家計が受け取る賃金の総量みたいなものは実質ベースでも増えてるということは言えると思います。ただ、これは総量だけでなくて一人当たりでみても、プラスになっていくことが望ましいわけですし、それは消費が持続性を保てるかといったところにも関わってくるわけですので、一つ、来年度の賃上げについてはよく議論することになるだろうというふうに思っております。また、円安、輸入物価ということで、これは輸入物価、上がって戻って、また上がって戻ってというような動きですので、いつのものがいつどう転嫁されて出てきてというのは、いろいろ業種によっても違うと思いますし、単純ではないというふうに思います。そういったうえで、従来に比べて輸入物価が転嫁されて消費者物価指数に反映されてく度合いも高まってきてるんではないかという分析もあるところですので、影響についてはよくみていかなければならないというふうに考えております。

§11Question

副総裁、午前中の講演の中で、利上げを行うかどうか政策委員の間で議論し判断する、という来週の決定会合についてのご発言ありましたけれども、もちろん主な意見はもう 12月の主な意見は発表されていて、その中でも、利上げをするかどうか議論されている。当たり前といえば当たり前なんですけれども、このタイミング、来週に決定会合控えたタイミングで執行部である副総裁がこういった発言をされるというのは、利上げの可能性をそれなりにみていらっしゃる、というふうに受け止める向きもあると思います。副総裁として、可能性としては利上げを決定することがあるというふうにみてらっしゃるという理解でいいのかどうかお願い致します。

§12Ryozo Himino

これは政策委員の講演が一度に固まったり、ばらばらになったりする、というのが非常に評判が悪いので、均等にしようということのわけで、ところが 1月というのは非常にやりにくくてですね、 1月最初の週に地元の経済界の方に集まって頂くというのはちょっと迷惑ですし、来週になるともう決定会合の週ですし、その後になると、今更何を言いに来たということにもなりかねませんので、今週にならざるを得なかったと。そうすると、黒船が来ただの何だのというのは私がいくら言いたくてもですね、それだけで話が終わると、ややお集まりの方にもご不満が出るかということで、来週の決定会合についても一言言おうと。でも、そこで議論して決まることなので、政策委員の間で議論し判断したいと思いますというふうに申し上げたという経緯でございます。

§13Question

先ほどのちょっと質問にもあったんですけれども、来週の決定会合で議論して、もちろん見送るということもあるかと思うんですが、見送った場合、来月は決定会合ございません。それでちょっと時間が空くと思うんですけれども、副総裁、講演の中でも実質金利がマイナスであるというのは普通の状態じゃないと、そういった物価への面も含めて、見送ることのリスクっていうのは現時点でどのようにとらえられているか、教えてください。

§14Ryozo Himino

金融政策は、実際に効果が完全に出るまでには1年、1年半かかるというふうに言われておりまして、そのうえで政策変更していくわけですので、適切なタイミングが来たら、それは遅れずにやるというのが一般論としては大切であって、ただ問題は、適切なタイミングがいつかという見極めが難しいというところになるわけですけれども、取りあえず1月の会合で議論する焦点というのは、1月に利上げをするかどうかというところが、議論の焦点になるだろうというふうに思います。

§15Question

今日の講演でもありましたけど、経済・物価情勢はオントラックで推移してますと、春闘の賃上げも期待が持てると、アメリカの大統領も就任後にある程度方向性がみえるんじゃないか、というようなお話ありました。状況を考えると、利上げに赤シグナルが灯っているものって、やや見当たらないと思うのですが、その辺り何か副総裁ご自身が気になっている点とかありましたらお願いします。

§16Ryozo Himino

これは全体像を見たうえで判断しますので、赤シグナルが 1 個あったらやらないとか、実はその赤シグナルも 1 個あってやめるような場合もあり得ると思うので、なかなかチェックリストみたいにして、これがあったらどう、ということを申し上げるのは非常に難しいですけれども、これまでに出ているデータ、情報についての考え方は、ある程度、今日申し上げたわけですけれども、トランプさんの就任演説でどんなお話があるのか、あるいは、決定会合の 2日目の朝には全国のCPIの数字も出ますし、それまでに起こること全部みたうえで、よく議論して判断していきたいというふうに思っております。

§17Question

二点お伺いしたいんですけれども、足元で世界的にというか長期金利急上昇してまして、日本の 10年金利も今日 1.245%ということでかなり上昇急ピッチなんですけれども、金融政策運営への影響はどのようにみてらっしゃいますでしょうか、というのが一点目。二点目ですけれども、氷見野副総裁は日本の景気・物価の現状について、加速感があるというふうにお考えでしょうか。そのうえで、この近いうちに利上げをしないと加速感が出てきてしまう、あるいは強まってしまうリスクがあるというふうにお考えでしょうか。

§18Ryozo Himino

長期金利も市場で決まるものですので、内外の長期金利の変動の背景みたいなものについては、コメントは差し控えたいと思いますけれども、市場はいろいろ上がったり下がったりするものですので、1日、2日、1 週間の動きだけをもって政策の判断のベースにするということにはならないのではないかというふうに思います。あと、加速感、あるいは過熱感みたいなものが出得るかどうかということですけれども、基本的には、今までのところ私どもの見通しで描いておった道筋オントラックできているということですので、そのオントラックが上にも下にも外れないように進めていくにはどういう判断したらいいかというところを考えていくということで、上下双方向リスクはあり得ると思いますけれども、今のところ見通し通りに進んでいく確度というのは、徐々に高まってきているというふうに受け止めております。

§19Question

今後の政策運営について一点伺います。今回の講演内容をみますと、国内外の経済・物価情勢に対して若干の解釈の余地は残しているんですけれども、踏み込んだり、強い表現が並んでいる印象を受けます。加えて、構造的な課題についても解消していたり、解消に向かっているという、結構前向きな言及が多くみられました。2年ほど前なんですけれども、国会での所信表明で論文集紹介されて、確かタイトルが、人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか、だったと思いますけれども、その国会でも構造問題について触れられていました。既に 2年近く経っているんですけれども、そうしたその長年続いた大きな問題が解決したり解消に向かった場合、今後 1 回とか2 回の利上げで済むものなのか、現状の認識を伺えればと思います。

§20Ryozo Himino

今日午前中申し上げた話というのは、黒船来航から始まって来週の決定会合まで時間軸がだんだん変わっていく話になっております。そのうえで、いろんな構造的な課題がなくなったわけではないけれども、かなり解決している部分もあるし、残っている部分についても必ずしも悲観一方であるべき話ではないんじゃないかという、やや時間軸の長いお話をしたわけですけれども、それと、例えば、 1月なんですか、3月なんですかとか、あるいはターミナルレートがどこにあるかとか、そういった話とは関係しないわけではないんですが、直結するということにはならないだろうと思います。大きな評価としてはそういったところをみておく必要があると思いますけれども、併せて経済は、常にいろんな攪乱要因で変動しながら進んでいくものですので、足元のいろんなことにも注意しながらやっていかなければならないというふうに思います。なので、また更に、結局人口減少とかグローバル化の課題にどう解決を見出していけるかというところに長い目で見た場合の不確定性があって、それによって実質金利がマイナスの状態が続くかどうかも変わってくるというふうに申したわけでありますので、そこのとこはまた別途見極めが必要になって、そこから直ちに今後何回利上げが必要になるかといったところまでは、話は飛べるほどの内容のことは申し上げられなかったというふうに自分では思っております。

§21Question

午前の講演で、アメリカの経済と賃上げについて、アメリカの経済の方については、少なくとも当面は強いパフォーマンスが続くとの見方が多い、あと賃上げについては、いくつかあるんですけれども、年初から各界の発言で前向きな話が多かったとか、支店長会議でも中計に盛り込むようなことで印象に残ったということで、何というか、見方を説明している、紹介しているようなかたちで、これらの見方なりですね、市場の見方を受けて氷見野副総裁自身はアメリカ経済と賃上げについてどういう見方を持っているのか、改めて詳しく教えて頂けますでしょうか。

§22Ryozo Himino

アメリカの経済については堅調で推移しているし、引き続き堅調で進むというのがメインシナリオだというふうに思っておりますけれども、例えば、トランプさんの就任演説とかもみたうえで、そのメインシナリオの確度みたいなものについては確かめていきたいというふうに考えております。賃上げについても、私の受けた印象では、昨年(注)に匹敵するような強い賃上げになるというのが今までに得られた情報からは、メインシナリオではないかというふうに思っておりますけれども、これについても、更に幅広く情報を集めながら、来週の決定会合では、よく議論して評価していきたいと、その結果は展望レポートにまとめてお示ししたいというふうに考えております。

§23Question

すいません、また同じところの質問で恐縮なんですけれど、今日の講演の 11 ページの、利上げを行うかどうか、政策委員の間で議論し、判断をしていきたいということなんですけども、これは執行部として利上げの議案を提案するというようなことまで含意していらっしゃるのでしょうか。それとも、メンバーの中で利上げについてふわっと話すよという程度のことぐらいしか示唆していないのか、どの程度の指し示しなんでしょうか。

§24Ryozo Himino

通常、議案の提出は議論を踏まえて行いますので、議論の結果次第かなというふうに思います。(注)会見では「今年」と発言しましたが、正しくは「昨年」です。以上