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日本銀行記者会見2025年5月22日野口旭, 審議委員

野口審議委員記者会見(2025年5月22日)

全文

§1Question

私からは二点質問させて頂きます。まず、一点目は今日の懇談会ではどのような議論がなされたのでしょうか。二点目は宮崎の金融経済情勢について、どのように意識をされているか。この二点について、お伺いできればと思います。

§2Asahi Noguchi

まず、最初のご質問ですけれども、本日の懇談会では、宮崎県の行政や経済界、金融界を代表する方々から、地域経済の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関していろいろなご意見を賜りました。きわめて有意義な意見交換ができたと認識しております。まずはこの場を借りて、ご出席頂いた方々に御礼を申し上げます。本日の懇談会では、ご意見が多岐にわたったため、全てを網羅してご紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題等を整理して申し上げます。まず、宮崎県の足元の景気については、物価上昇の影響はあるものの、緩やかな回復が続いている、生産は弱めの動きではあるものの観光はインバウンドが増加傾向にあり、緩やかに回復しているといった話が聞かれました。一方で、全国よりも早いペースで人口減少や高齢化が進むもとで、人手不足が深刻化している、あるいは当地企業が原材料やエネルギーコストの上昇などの経営課題を抱えているもとで中小・零細企業、とりわけ零細企業を中心に価格転嫁が十分に進んでおらず、企業収益が圧迫されているといった懸念も聞かれたところであります。また、米国の関税政策については、先行きの動きを不安視する声や、宮崎県にとっても相応の影響が及ぶのではないかと動向を注視しているとの声が聞かれました。

§3Asahi Noguchi

私どもは、中央銀行の立場から物価安定のもとでの経済の持続的成長を実現していくことや金融システムの安定性を確保することを通じて、当地関係者のご努力がより大きな成果へとつながっていくようサポートしてまいりたいと思っております。それから二番目のご質問についての答えでありますけれども、宮崎県の景気は緩やかに回復しているとみております。個人消費は緩やかな回復が続いているほか、韓国、台湾からのインバウンド需要の増加もあり、観光も緩やかに回復しております。また、宮崎中心市街地の再開発が進められており、更なる賑わいの創出とともに、大学の新たなキャンパスでは、産学共働の取り組みが期待されています。また、企業の設備投資は、製造業を中心に高水準で推移しているほか、2027年に第81 回国民スポーツ大会・第 26 回全国障害者スポーツ大会などが予定されていることから、同大会に向けた施設整備など公共投資が増加しております。先行きについては、今春の賃上げの個人消費への波及や企業部門における価格転嫁等を通じた収益の改善に期待をしております。この点、宮崎県においても関税政策の影響や海外経済の動向など不確実性は高い状況のため、その影響は注意深くみていく必要があるというふうに考えています。

§4Question

私から国債買入れでいくつかお伺いします。午前の講演で来年4月以降の国債買入れの方針につきまして、より長期的な視点から検討する必要があると発言されました。このより長期的な視点の意味するところについて、もう少しちょっと具体的に説明をお願いしたいということと、来年4月以降の国債買入れにつきまして現行計画のですね、毎四半期 4,000 億円ずつ減額していくと、そういうペースになっているのですけども、それを維持するべきなのか、または加速すべきか減速すべきか、来年度の国債買入れに関する野口委員の現時点のお考えをお聞かせください。もう一点、関連で足元超長期金利が急ピッチで上昇しておりまして、市場には日銀による超長期ゾーンの国債買入れの増額や買入れ区分の統合などを求める声が出ております。野口委員は超長期金利の安定に向けて、オペや減額計画などで配慮する必要性についてどのようにお考えか、大まかに二点よろしくお願いします。

§5Asahi Noguchi

まず国債買入れ減額計画についてでありますけれども、これは私午前中のお話の中でも説明させて頂きました通り、基本的には予見可能性、もちろん柔軟性を伴った予見可能性ということでありますけれども、それが一番非常に重要であると。つまり、それは長期国債、昔のようにYCCのように長期国債の金利というものを日銀がある意味一つの政策目標にしていた状況とは全く違っておりまして、現在はあくまでも短期金利の操作によって金融政策を遂行している。そういう意味で言えば、国債買入れの金額から長期金利というような経路を通じた、その経路というものは、少なくとも政策としては考えていないということであります。ただ、これまで日銀がYCCを行っていく過程の中で、国債買入れ額というのは相当の規模になっておりますので、これをある種縮小していくということは当然のことであると考えております。それは市場にとってもある程度のボリュームをもって、その売買が行われる状態というものが重要だと考えておりますので、そこに向けて基本的にはマーケットをできるだけ荒らさないようにということは、つまり日銀が政策的な意図を持って何かその国債買入れの増減を行うということはないということが一番基本であるというふうに考えております。

§6Asahi Noguchi

ただ、より長期的に考えていきますと、最終的に日銀がどういうところで着地をするのかというのは、要するに中央銀行のバランスシートが最終的にどの規模に落ち着いていくのが最適かという問題になってくるわけであります。これは実はまだどこの中央銀行も同じだと思いますけれども、量的緩和というものを行った中で、国債の買入れが膨れ上がったものを正常化してどこまで縮小していくのかというところですね、ここはまだ明確にはなっていないという状況の中で、手探りでそれを探っていくということになるわけでございます。その中で日本銀行としては、当面の計画というものは決めておいた、それを今後は実行していくと、少なくとも来年[3月]の時点まではそれをやっていくというようなことにおそらくなっていくわけであります。その後のことを考えますと、その最終的な姿に向けて、どういうふうにスムーズにそこに持っていくのかということを考えて行く必要もあるという、そういう意味で長期的な観点ということをお話したわけであります。

§7Asahi Noguchi

ただし、具体的にそれがどういう金額になるのかというような具体的な数字ということに関しては、ようやく市場関係者からのヒアリングというのも終わってですね、それをわれわれとしても踏まえた上で、なるべくマーケットに予見可能性というものを乱さないようなかたちでこれまでの計画を大きく変えることはおそらくはないと思いますけれども、それで最終的なところにうまく着地していくような、そういうような新たな計画というものが必要になるというふうに考えております。これが最初のご質問に対するお答えであります。それから、4,000[億円]というような金額を維持すべきかどうかというようなことに関しては、これは今後の検討次第、検討を経た上で決めるということになると思います。超長期の金利水準がこれまでの水準を考えると非常に金利が引き上がっていくペースが速いというようなことが最近生じているわけでありますけども、これと今度のこの 6月に行われるような新たな計画というものが、私自身は少なくとも直接リンクするというふうには考えておりません。これはある意味で、長期金利はマーケットに委ねるというようなことを決めたわけでありますから、その中にはマーケットというのは様々な情報を消化していく中で、金利というものが形成されていくということだと思います。

§8Asahi Noguchi

最近の長期金利の動きというのも、おそらく背後にいろいろな要因があって、その中には米国の政策の不安定性あるいは米国の長期的な財政状況というもの、こういうものは特に超長期金利、長い方の金利にいけばいくほどですね、長くなればなるほどそういう世界的な連動性というのがどうしても高まってきますので、そういうものの影響というのも日本の超長期金利も受けざるを得ないという中で起きている現象であると。それ自身ですね、急激ではありますけれども、それが非常に何か異常な動きであるかどうかというのは、私は一概にそういうふうに決め付けることはできない。そこにはやはりマーケットなりの判断がその背後にあるわけでありますから、それをむやみに介入をして何か操作するというようなことは私は適切ではないというふうに考えています。

§9Question

午前の講演の方でも少し触れられていたようなんですけれども、今後の不確実性という意味で、アメリカのトランプ政権による関税措置についての影響について、懸念というか危惧するというふうな話も出てたんですけども、警戒感というか、先行きの不透明感が漂う今の状況について、改めてご見解を伺いたいのと、それが今後の日本銀行の追加の利上げ措置に与える影響について、今、現時点でのお考えを教えてください。

§10Asahi Noguchi

これは、正直申しまして、4月2日以前の状況と、それ以降の状況というのは、世界的なマクロ経済状況が大きく変わってしまったということは認めざるを得ないというふうに考えております。その 4月2日の結果として金融市場というのが大きく変動をしたわけであります。しかし、その後の状況をみていきますと、さすがに最初のトランプ関税ショックの状況がいろいろな情報が新たに付け加わることによって、少しずつ解消されてきているというのも事実であります。しかし、そうは言ってもこれからどうなるかというのは、まだはっきりとしていないということです。日本にとってみれば、一番大きいのが自動車関税だというふうに思いますけれども、それがどういうふうに落ち着くのか、それからやはり中国と米国との関税の協定というのも、日本においても非常に中国経済と日本経済との結びつきはそれなりに大きいわけでありますから、中国あるいはアメリカ、米中関係というものが大きく毀損されるということになると、その影響を日本も受けるということでありますけれども、これも一時の非常にほとんど貿易が途絶するような状況が予想されるような状況からは、かなり解消されてきているということを考えますと、少しずつ霧が晴れてきているというような状況だというふうに考えております。その中で金融市場の方も少しずつ落ち着きを取り戻していると。

§11Asahi Noguchi

ただし、そうは言っても、また何か新しい状況が出てきて、それがかなりネガティブなものだったりすると、またそこに反応するということは起きておりますので、まだ完全にその 4月2日以前に戻ったとは全く言えないと。暫くはこの不確実な状況は続くだろうということだと思います。そのうえで、日銀の金融政策についてでありますが、これはやはり 4月2日当時の状況は、これはいったんとにかく状況を、関税がどういうところに落ち着いていくのかを見極めるしかないというような時期が一定程度続いたわけでありますが、少しずつその帰趨というのが明らかになっていく中で、とはいってもかなりの下押し効果というのは、最善の、例えば各国別の追加関税っていうのがかなりなくなったというようなかたちでも、アメリカの 10%の基本的な関税は残るわけですから、その分に関してはかなり下押しが生じるということを考えますと、ある程度の見通しのずれというのはやむを得ないというふうに思っております。けれども、これが場合によっては思っていたよりも元の軌道に戻っていく時期が早くなる可能性もあるかもしれないというのが今の状況だと思います。

§12Asahi Noguchi

ただ、そうは言っても、やはりまだ不確実性は非常に大きいので、見通しというのがはっきりしないとなかなかわれわれとしては次のステップというのを踏むというのはリスクが非常に大きな状況であり、あえてリスクを取るという選択肢はあり得ません。そういうふうに考えますと、私は午前中にほふく前進的なアプローチというふうにお話しましたけれども、そういうような考え方で暫くは弾丸が飛び交うような状況でむやみに動かないで、状況をまず注視していくというのが現状では基本になるというふうに考えております。

§13Question

今のところに関連してなんですけども、おっしゃってるのは今トランプ政権は 90日間の相互関税の停止がありますけれども、これは日本だけじゃなくて世界について言ってることだと思うんですけども、日米に関わらず、世界の関税交渉の帰趨について見極める必要があって、もっともっとそれを見極めるには、日米だけじゃなくて世界をみたときに時間がかかるというそういう認識なんでしょうか。

§14Asahi Noguchi

これは、全体を通じてということですね。これもはっきり言いまして、どういうスピードで何が優先されているかということも、アメリカのトランプ政権は何を優先しているのか、どの程度その優先順位をつけて問題を解決しようとしているのかと。最終的にどういうところに着地しようとしているのかというのが、はっきり言って、われわれとしては分からないという状況なのです。われわれにとって直接的に重要なのはもちろん、日[本]と米[国]の間の関税がどういうふうに決着するかということでありますけれども、世界経済、貿易というのは、全て密接に結びついているわけでありますから、サプライチェーンで結びついているわけでありますから、どこかに非常に大きな障壁というのが残れば、その影響ってのは当然日本も間接的には受けるということになります。そういうことも含めながら、全て状況の進展を確認するということだと思います。

§15Question

26年4月以降の国債買入れの減額ペースについて、再度お伺いしたいんですけれども、昨日まで行われた債券市場参加者会合では国債の 26年4月以降の買入れ減額ペースについて、四半期 4,000 億円を維持すべきといった意見や減額ペースを落とすべきといった意見が相対的に多かったようなんですけれども、野口委員の午前の挨拶の中で今の政策レジームが潤沢な準備預金を前提としているものであって、バランスシートの縮小というのは十分な時間をかけて進めていくことが可能というふうにおっしゃってまして、この言葉を踏まえますと、26年4月以降の買入れ減額というのは四半期 4,000 億円よりも落としたかたちでやっていってもいいのではないかというふうに感じますが、改めてこの点いかがでしょうか。

§16Asahi Noguchi

それは先ほどのお答えと重なってしまいますけれども、具体的な数字というのをですね、それをその 4,000 億[円]っていうのを更にどういうふうに変えるかという方向というのは、あくまでもこれから検討するということになりますけれども、今おっしゃったことは私は重要だと思います。要するに焦る必要はないということは事実です。つまり、われわれ確かに多くの金額の国債を日本銀行が保有していると、これは大き過ぎるので、これは落としていかなければいけないということは、それは事実でありますけれども、あるペースで落としていかないと何か困ったことが起きるということはほとんどないということだと思います。重要なのは、そうやって落としていくことがマーケットに混乱をもたらすとか、何か非常に間違ったバイアスをもたらすとかですね、そういうことがむしろ非常に問題になるわけでありますから、なるべくマーケットを荒らさないかたちで縮小していくというのが基本だというふうに考えております。具体的な数字というのは、私は、今はそのままはっきりこうだと申し上げることはできないということだと思います。

§17Question

今の質問の関連なんですけれども、野口委員ご自身は、国債の買入れの減額自体はですね、26年4月以降もペースはともかくとしてですね、買入れを減らし続けるっていうこと自体は続けていくべきだというふうにお考えでしょうか。

§18Asahi Noguchi

それは、要するに今のままの大きなバランスシートを維持し続ける必要があるかどうかといえば、おそらくそれはないので、どういうかたちであれ、それを縮小していくという方向になるのが、これはごく自然なことではないかなというふうに思います。ただ、問題はそのペースで、それをなんか慌ててやる必要もないし、そうかといって全く今のままを維持するというのもこれも不自然ですから、それは慌てないで少しずつ縮小していくというかたち、できるだけ平穏なかたちでやっていくというのが一番重要だということですので、これをずっと維持するというふうには考えておりません。

§19Question

午前の講演の中で、最後の方ですかね、慎重な楽観論というふうに表現を使って示していらっしゃったのは、この意味するところをちょっと聞きたくて、慎重は何となく分かるけど、この楽観論というのがどういう意味合いなのかを教えて頂けないでしょうか。

§20Asahi Noguchi

楽観論というのは、今こんなに関税で大変なのに、これからもしかしたらリセッション的な状況も起きかねないのに、そんな楽観的でいいのかというお叱りを受けるかもしれないなとは確かに考えました。しかし、今、コロナ禍があって非常に大きな落ち込みがあって、それから持ち上がってきた過程を振り返ってみますと、やはりわれわれが思い描いた想定とかなり違った形になった部分もあれば、しかし予想以上に早く進展していた部分もあるというふうに考えております。例えば、賃金上昇というのもこの 2年、3年で、2%の物価目標というのは安定的に達成されるためには、おそらくは 3%を超えるぐらいの名目賃金の上昇が必要だというふうに私も個人的に考えておりましたけども、だんだんとそこの世界に近づいている。少なくとも名目賃金の上昇に関してはですね。そういうのもこれは重要な事実であります。それから、もう一つは、その上で、しかし賃金が上昇しても、結局なかなか価格転嫁が進まないというようなことも言われてきたわけであります。特に中小企業の場合は、価格転嫁が進まないので賃上げといっても、1 回か2 回はできても持続的にはできないというようなことも言われてきたわけであります。

§21Asahi Noguchi

しかし、その中小企業も、もちろんまだまだ苦しい中小企業もたくさんあるわけでありますけれども、そういうところも含めて、賃上げの価格転嫁というのも進んできて、サービス価格の方も、徐々に上がり続けていると。これは、われわれが想定していた姿というものがある程度は実現できているということも事実であります。ですから、いろんなリスクというのがあることも事実でありますし、あるいは最近の米の値段の上昇とかですね、生鮮品の価格上昇、これはかなり予想外の部分がありましたけれども、そういった影響ももちろんあったわけでありますが、しかし、われわれが思い描いた通りに進んできた、あるいは思い描いた以上に進展していた部分というのもあるということを考えれば、将来をあまりにも悲観的にみるよりは、そのポジティブな部分というのがこれまで上がってきたので、そこは進展していくことを今後も期待していいんじゃないかというところは持ちながら、リスクというのを見極めていくというのが適当なスタンスで、ちょうどいいくらいのスタンスではないかなというふうに個人的には考えております。

§22Question

度々繰り返しとなって、恐縮なんですけれども、足元の長期金利、超長期金利の国内の上昇について、今上昇ペースが広がってますけれども、これは国債買入れ減額の見直しにあたって金額の増減を判断する、機動的に対応するような例外的な状況ではないっていうご認識でよろしいでしょうか。

§23Asahi Noguchi

私の個人的な今の見方では、これまで日本の金利というのは動かない世界にあった、長期金利もマイナスの時期もあったぐらいなわけでありますから、そういう意味で言えばイメージとしてですね、これだけ上がりますと非常に急激だというようなイメージがあるわけでありますけれども、もともと金利というのはいろいろな将来の予想や思惑というものを反映してかなりボラタイルに動くというのが金利というものであります。そういうふうに考えますと、それが一概に、何か異常なものと決め付けるというのも難しいわけであります。もちろん状況によっては、中央銀行として金融市場を安定化させるために積極的に何かをやらざるを得ない状況というのは、当然あると思いますけれども、現状では少なくともそういうような状況にはないというふうに私は考えております。以上