田村審議委員記者会見(2025年6月25日)
全文
§1Question
二問ご質問させて頂きます。一問目ですが、本日の懇談会で出た意見など概要だったり、振り返りをお願い致します。二問目の方ですが、挨拶要旨でも触れられてはおりますが、福島県内経済の状況をどのようにみていらっしゃるのか、認識をお伺いできれば幸いです。
§2Naoki Tamura
まず懇談会で寄せられたお話に関してでございますが、私なりに整理して申し上げます。まず足元の福島県経済は足踏み状態にあり、資材・燃料価格の高騰や人手不足などから厳しさが増しているといったお話が聞かれました。話題性が高いところでは、食用米だけではなく加工米の価格も高騰している中で、基幹産業である酒造業者や味噌醸造業者では、希望数量を調達できるか不安であるとの話も聞かれました。また、製造業を中心に人手不足が深刻となっており、生産への影響を危惧しているといったお話や、人材係留を企図して賃上げをする動きが広がっているとの声も聞かれました。一方で、特に、規模の小さい企業を中心に、大企業並みの賃上げは難しい、あるいは賃上げ原資確保を目的とした価格転嫁は容易ではないといったお話も聞かれました。この間、県内企業の倒産件数は高めの水準で推移しており、賃上げについていけない中小・零細企業が価格転嫁できる環境作りが重要であるといったご意見も頂きました。この間、生活に身近な食料品やエネルギー価格の上昇が消費マインドに与える悪影響を懸念しているとの声も聞かれました。米国の関税政策の影響については、多くの企業がマイナス面の影響を危惧しているといったお話や、レアアースなど原材料の調達に実際影響が出ているといったお話もありました。
§3Naoki Tamura
一方、デスティネーションキャンペーンに期待を寄せる声が多くの方から聞かれており、来年のデスティネーションキャンペーン本番に向けた様々な取り組み事例についてのご紹介もありました。金融業界からは、能力増強や省力化に向けた設備資金需要が増加しているとのお話が聞かれました。もっとも、各種コスト上昇が続くもとで、県内企業の業績悪化や倒産・廃業が増えるのではないかといった心配の声も多く聞かれました。この点、経済団体や金融界からは、本業支援や事業承継支援、ビジネスマッチングなど幅広い支援が重要であり、それに取り組んでいるとのお話が聞かれ、心強く感じた次第です。更に、資産形成、犯罪抑止等々の面で金融経済教育の重要性がますます高まっている中、昨年スタートした金融経済教育推進機構、J-FLECと連携し、銀行としても努力したいとの力強いお話もございました。こうした状況のもとで、東日本大震災から年が経過し、福島ロボットテストフィールドなどの研究開発拠点や実証試験場の整備が進められ、民間企業や研究機関等の参入が進んでいるといったお話や、街作りを通じた賑わい創出へのお取り組みなど、福島県経済の更なる発展が期待できるお話なども伺いました。また、日銀の政策に関しましては、地域の状況を十分に踏まえて金融政策を決定してほしいとのお話が聞かれました。
§4Naoki Tamura
私どもとしてはこうしたお話も踏まえつつ、福島県の金融経済情勢について、今後も福島支店を通じてきめ細かいモニタリングを続け、中央銀行の立場から経済の持続的成長の実現や金融システムの安定性の確保を図りながら、福島県経済を支える関係者のご努力が、より大きな成果へとつながっていくようサポートしてまいりたいと考えています。次に二つ目のご質問、福島県経済の現状についてご説明します。福島県経済の現状につきましては、全国と比べると勢いが弱く、足踏み状態を続けています。企業の設備投資は、好調な企業収益に支えられながら、能力増強や省力化などを目的とした投資が増加しておりますが、住宅投資や公共投資は、東日本大震災からの復興需要の反動から、減少傾向が続いています。当地でも賃上げの動きは着実に広がっていますが、個人消費は物価高に伴う生活防衛的な意識の高まりから横ばい圏内にとどまっています。台湾やベトナムからの国際チャーター便の誘致などもあって、インバウンド観光客も増加していますが、消費全体を押し上げるほどの効果には乏しい状況にあります。今後の福島県経済を展望するに当たっては、今年の賃上げが個人消費に波及していくことが期待される一方、海外経済や米国の関税政策等の展開、そしてその影響には注意が必要であると考えています。
§5Question
私からも二点お願いしたいんですが、午前の講演で足元の物価上振れに言及されまして、先行きにつきましても物価の上振れリスクの方が大きいとお考えなのか。また、物価目標の実現時期につきまして、展望レポートで年見通し期間の後半となっていますが、田村委員も同じようなお考えでいいのかというのが大きく一つです。二点目なんですけども、午前の講演で物価目標の確度や物価の上振れリスクが高まる場合には、不確実性が高くても果断に対応するべきだというふうにご発言されました。関税の影響がですね、明確になる前の段階であっても、物価の上振れリスクが高まる場合には、例えば月会合とか含めてですね、利上げが必要になる局面というのもあり得るとお考えなのか、この二点お願いします。
§6Naoki Tamura
まず、物価の上振れリスクに関してですが、月のMPM時点と比べて、多少霧が薄くなったとはいえ、前がよくみえない状況に大きな違いはないと思っています。そういう中で、企業のヒアリング情報などから私が感じているのは、まだトランプ関税がどうなるか分からないという留保条件付きではありますけれども、当初の時点で私が予想していたほど悲観的にみておられない会社も多いということです。一言で言いますと、過度に悲観的ではないという意味で、な企業スタンスを感じます。例えば、人手不足の中、賃金は引き続き上げていく方針であるとか、能力増強投資は一部様子見する企業もあるものの、 DX や GX 投資、効率化投資は継続的に実施する、不確実な中でも、株主から企業の成長が求められており、収益増強のためには投資をしっかりと行っていく。こういった企業の声が多いと感じております。一方で、消費者物価は月MPM時点の私の想定より上振れて推移していて、インフレが加速してきているというふうに受け止めています。例えば、季節調整済みの前月比年率の話を今日の講演でも致しましたが、ラフな試算ですけれども、今後、前月比の上昇率が急減速したとしても、月の展望レポートで示した見通しは概ね実現できてしまう可能性がある状況です。
§7Naoki Tamura
それから、サービス価格についても、増勢を強めているという話を今日講演でしましたけれども、これまでサービスの品質を調整することで各種コスト増を吸収してきたところ、こうした余地がなくなっていく中で、今後は人件費の増加がサービス価格に反映されやすくなっていくのではないかと考えています。逆に言いますと、これまでサービス価格の上昇が比較的抑えられてきたのは、品質の引き下げによる実質値上げを統計上捕捉しきれていない面があるのではないかとも考えています。それから、食料品の値上げ、家計にとって身近な食品価格の上昇は、予想物価上昇率に大きな影響を与え、持続的な物価押し上げ要因になり得る、あるいは既になっていると考えています。こういうふうに、物価の上振れリスクというのは高まってきているというのが、現時点で私の感じているところです。そういう中で、二つ目の質問に先に答えることになりますけれども、このトランプ関税がどうなっていくのか、それに対して企業がどのように対応するのか、その影響は二重の意味で流動的で、私としては物価の上振れリスクに配意しつつ、予断を持たずに今後の情報・データを分析する必要があると考えていますけれども、そのうえで物価の上振れリスクが一段と膨らんでいった場合、物価の安定、物価の番人である日銀として、果断に動くべき時というのが来る可能性もあり得るというふうに考えているところです。
§8Naoki Tamura
それから、もう一つのご質問の、物価目標の実現時期の話です。私自身いつになったら分かるというのに予断は持っておりません。今後の展開次第では、早いかもしれないし、暫く時間がかかるかもしれません。ただ、そういう意味で、年度後半以降の可能性を否定するわけではありませんけれども、それよりもっと早く物価安定目標が実現したと判断できる可能性も否定できないというふうに考えています。
§9Question
私からも二点よろしくお願いします。ちょっと今の質問と重なってしまうかもしれないんですけれども、不確実性が高い場合でも、一段と物価上振れリスクが高まる場合は、利上げっていうところっていうふうにおっしゃっているかと思うんですけども、それは場合によっては、日米の関税交渉が今継続中ですけども、継続中であっても、この物価の上振れリスクが高まるのであれば、利上げすべきとお考えなのか教えてください。もう一点が、次の利上げに向けて、特に委員が注目しているデータがあれば教えてください。
§10Naoki Tamura
まず一つ目の、日米の関税交渉が継続中であっても、物価上振れリスクが高まった場合には果断に動くことがあり得るか、というご質問ですが、可能性としては、なくはないと思います。なくはない、という意味は、物価上振れリスクがもう明らかに高まって、日銀として早く動かないとビハインド・ザ・カーブになってしまうというような場合には、当然あり得ると思いますけれども、そこまで物価上振れリスクが高まるかどうか、日米の交渉状況がどうかということで、現実問題としてそのような行動をとらないといけなくなる可能性が高いかどうかというと、そんなに高いわけでもないかなと思っています。二つ目の、そういうことを判断するに当たっての注目するデータ。まず一つ私が思っているのは、今日の講演でも申し上げましたけれども、今一番注目しているのは、企業の賃金・価格設定行動、それから企業や家計の予想物価上昇率がどうなっていくのかということです。ですから、データというよりは、そういう企業の考え方、企業マインドがどういうふうに変わっていくのかというのをみていって、もしも仮にそれがデフレ期のような状況に戻っていくんだとしたら、暫く様子をみる必要が出てくるでしょうし、そうじゃない場合には、その他のデータを総合的に判断して、適切な金融政策を考えていきたいというふうに思っています。
§11Question
一点目は、基調的な物価上昇率という考え方なんですが、講演を拝読すると季調済みでみた消費者物価の動き、あとサービス価格、中長期の家計や企業の予想インフレ、どれもに達していたり、かなり強めであるということなので、ここでみると田村委員は基調的なインフレ率は既に%に達しているという理解でいいのでしょうか。というのは、植田総裁はまだもう少しに近づいているが達していないという評価なので、そことのどういう違いがあるのかということを伺いたいのが一点目です。二点目は、展望レポートで示した%、物価目標と整合的な水準に物価が到達する時期について、田村委員は少し時期が前倒しになる可能性に言及されてますが、そうなると、早ければ年内にもう一度利上げするような環境になる可能性があるのか、現時点でいろいろ不確実性は高いですが、どれぐらい前倒しになる可能性があるのかイメージがあれば教えてください。
§12Naoki Tamura
まず、基調的物価上昇率が今何 % ですと明確に申し上げることはできず、様々な指標をみての総合判断になると考えています。基調的物価上昇率に大きな影響を与える企業や家計の中長期の予想物価上昇率、これは概ね% 程度に達していると私は考えています。ただし、トランプ関税がどうなっていくのか、それに対して企業がどのように対応するのか、二重の意味で流動的な状況ですので、基調的物価上昇率が%に達したと言い切るには、あと少し情報・データを分析していきたいというふうに考えています。それから二つ目のご質問、次の利上げが早ければ年内か、ということにつきましては、繰り返しになりますが、トランプ関税がどうなっていくのか、それに対して企業がどのように対応するのか、その影響は二重の意味で流動的ですので見極めに必要な時間について予断は持っていません。今後の展開次第では早いかもしれないし、暫く時間がかかるかもしれないということです。
§13Question
二点ありまして、一問目が、田村委員が考える中立金利の位置付けなんですけれども、前回の金融経済懇談会では年度後半以降にかけて%程度を念頭に利上げすべきとの姿勢を示されていました。その方針は今でも変わっていないでしょうかというのが一点です。あとは現状の金利水準をどうとらえるかということなんですけれども、現時点でも緩和的な金融環境で実質金利がマイナスにあるというお考えは、経済の情勢が変わっていてもそこはお考えは変わっていないでしょうかっていうのも併せて教えてください。
§14Naoki Tamura
一つ目の中立金利、あるいは%ということについてですけれども、ご質問にあった通り、私は中立金利については最低でも%程度だろうとみています。ただし、中立金利の推計値を巡る不確実性は大きいことに加えて、長きにわたってほとんど金利がない世界が続いてきたわが国においては、経済主体が金利にどういうふうに反応するのか、予断を持たずに注意深くみていく必要があると考えています。従いまして、%という水準を念頭に置いて、物価安定の目標の実現確度の高まりに応じて適時かつ段階的に短期金利を引き上げつつ、経済・物価の反応を点検しながら適切に政策を運営していくことが重要だと考えています。従いまして、これは従来から考え方を変えているわけではありませんが、必ず%まで引き上げると決めつけているわけではない一方で、%が天井だと考えているわけでもありません。あくまで今後のデータと情報次第だと考えております。それから二つ目は、いろいろ不確実性が高まる中でも、現在の実質金利は引き続きマイナスかというご質問です。今、政策金利は%、先ほど申し上げたように中長期の予想物価上昇率は概ね%程度に達していると。
§15Naoki Tamura
政策金利、オーバーナイト物ですので、足元の物価上昇率%程度としたら、実質金利は-%という大きなマイナスですし、あるいは中長期の予想物価上昇率でみても、-%ということで、いずれにしても現在の金利水準は実質金利でみれば大きなマイナスで、非常に緩和的な金融環境のままにあるということは言えると思っています。
§16Question
月には日銀さんの出す短観ですとか、支店長会議とかございますけれど、その内容、中身についてですね、今後の金融政策判断、利上げをするときに、その中のどういうデータ、どういう声を中心に確認されていって、もしそこでどういうデータや声があれば政策金利を引き上げられるというふうに考えているかというのをちょっとお聞かせください。もう一つがですね、前回の金融政策決定会合で決めた国債減額計画のことについて、田村委員はペースをダウンするのを反対されてたと思うんですが、この午前の講演の中で大規模緩和の後遺症が暫く残るという発言をされていたと思うんですけど、この億円のペースに下げると具体的にはどのような悪影響が出ていくのでそういうふうに反対されたかっていうのをこの二つをお聞かせください。
§17Naoki Tamura
まず、一つ目の月、短観の公表があり、支店長会議がある中、何を確認したいのかということについて申し上げます。今日の講演でも申し上げましたけれども、私が一番注視したいと考えているのが、企業の賃金・価格設定行動が変わっていくのか、変わっていかないのかという点です。従いまして、短観でも、例えば販売価格の予想ですとか、あるいは予想物価上昇率がどうなるのか、そういった点について確認していきたいと思っていますし、支店長会議で各地の中小企業を含めた企業の考え方が、その辺り変わってるのか、変わってないのかを確認していきたいというふうに考えております。どういう声があれば利上げするのかという、これはもう一概には言えなくて総合的に判断していきたいと。ヒアリングの声だけで金融政策判断するわけではありませんので、そのときまでに得られるデータも併せて検討・分析して判断していきたいと考えています。二つ目のご質問、国債買入れの減額計画について、私は反対しました。まず、私の考えと日銀の公式見解とは、そんなにずれているわけではないということを最初に申し上げておきたいと思います。日本銀行としての減額計画の基本的な考え方については、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、日本銀行による国債買入れは国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切ということです。
§18Naoki Tamura
そのうえで、金融市場において長期金利がより自由なかたちで形成されていくようにするためには、国債買入れ額を更に減額していくことが望ましいと考えられる。その一方で、国債買入れの減額が進展する中、今後の減額ペースが速過ぎると市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性もあると。これが日銀の基本的な考え方で、ここまでは私も全く同意見です。そのうえで、私としては、年月以降も引き続き四半期毎に億円ずつ減額していくべきというふうに考えました。これは、市場の状況などを踏まえれば、減額ペースを変更する必要がなく、長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべきであり、可能な限り早く日本銀行の国債保有残高の水準を正常化すべきと考えたからです。市場機能が改善してきたとはいえ、まだまだ水準として低いと言わざるを得ない状況です。平常時から市場の流動性が低いと、何らかのショックが生じた際にボラティリティが増幅され、市場が不安定化するリスクが大きくなります。グローバルな通商政策等を巡る不確実性のある中で、今後大きなレジームチェンジが進む可能性もある、そういう中で金融市場のショック吸収力を一刻も早く高めておくことが重要だというふうに考えているところです。億円の減額と億円の減額、億円の減額だと取り返しのつかないようなことになるかというと、そういうふうには私も全く考えておりません。
§19Naoki Tamura
いずれにしても、市場の流動性を高めて、国債保有残高を正常化するには長い時間をかけざるを得ないという状況で、その中でも少しでも早く、なのか、市場の安定に配慮するか、そこのバランスの総合判断の違いがあるだけだと思っています。
§20Question
ハードデータに関しては、結構夏に、今、駆け込みの需要があって、秋にですね、日米ともに、こう下押しで出てくるんじゃないかと言われている中で、企業の賃金・価格設定行動が変わるのかを見極めるとするならば、それまでやはり待つべきなのかということをどう考えるのかというのが一点目です。二点目なんですが、日銀のバランスシートの正常化の観点からは、 ETFの扱いも重要な論点だと思うんですが、そもそもその中央銀行によるETFの大量買入れ、保有をどう評価されているのかと、どういうタイミングで考え方や出口を議論していくべきだと考えているのかについてお願いします。
§21Naoki Tamura
まず、ハードデータ、悪くなるハードデータが秋になると出てくると言われているという点に関してですけれども、私の考えでは、この年の後半、従って月以降のデータでもう出てくるんじゃないかと。~月駆け込みもあり、~月も引き続き駆け込みがあるので、それの反動が~月に出てくると。反動ですので悪くなる可能性はきわめて高いんですけれども、駆け込みとその反動とトータルでみたときにどうなるのか、その辺りをきちんと評価していく必要があると考えています。企業の賃金・価格設定行動との関係については、われわれが考えている基調的物価上昇率への影響というのを考える必要があると思っています。具体的には、トランプ関税によって景気が下押しされる、あるいは企業収益が下押しされて賃金上昇率が低下する、といった経路でヘッドラインの物価を押し下げる可能性はありますけれども、それが基調的な物価上昇率を押し下げるのかどうかというのは少し別の問題だと私は考えています。景気の振れ幅に応じて、表面的な物価は当然上下に振れることになりますけれども、基調的物価上昇率を考えるうえで重要なのは、企業や家計の予想物価上昇率や企業の賃金・価格設定行動だと考えています。これまでのところ、非常に分かりにくいのは、実際の物価は% とかで、でも基調的物価上昇率は% までまだ少し。
§22Naoki Tamura
これがひょっとすると、もう少し先には逆転して、ヘッドラインの物価は%を下回るけれども基調的物価上昇率は% っていうことも、ロジックとしてはあり得るというふうに思っています。ご質問に戻りますと、ハードデータを確認することは重要ですし、そういったハードデータがまた基調的物価上昇率を押し下げる、あるいはインフレ予想を押し下げる可能性もありますけれども、直接リンクするものでもないんじゃないかというふうに考えています。それから、次がETFについてのご質問でした。そもそものETFを買い入れたことに対する評価という点については、多角的レビューなんかのときにも私もいろいろ考えたんですけれども、一般論として申し上げると、やっぱり市場のことは市場に任せるべき、価格は市場で決めるべきというのを私自身の考えとしては持っています。ただ、当時の状況を考えたときに、そういうべき論で金融政策を行っていた場合に、実際どうなっていたのかというのは評価が難しいところがあるなと思っているところです。その保有しているETFをどうするのかという点については、そういったものの処分をすぐに行うことは考えておりませんで、ある程度時間をかけて検討する必要があるというふうに考えているところです。
§23Question
利上げによる地域経済、地方経済の影響について、ちょっとご意見お伺いしたい。福島県は特に実質賃金は月、か月連続下がっています。地方は特に福島は最低賃金が低く、東京との円の格差があってですね、地域ではそれに伴って人口流出が止まりません。福島は特に女性の流出がですね、全国ワースト位で、結婚の機会も男性から失われている状態です。その反面、金利上げによって、倒産件数が過去年でワースト、件を超えています。地元の経営者の方に聞くとですね、申し訳ないですが利上げは、物価の上げは、十分効かなくて止まらなくてですね、反面一部の金融機関の利益を上げてるんじゃないかという指摘もあります。これまでの過去年で利上げによるですね、地域経済への影響と、今後利上げした場合にですね、地域経済にどんな影響が出るかというのをちょっとご質問させてください。
§24Naoki Tamura
まず、利上げが経済に与える影響というのは、かつてと比べて大きく低下しているのが現状だと思います。なぜかというと、一つには、企業の借入金の比率というのが非常に下がっていて、実質無借金企業、あるいは本当の無借金企業の割合が非常に大きくなっています。それから家計においても、住宅ローンを抱えている世帯は確かに借金の方が多いですけれども、そうじゃない世帯の方が多くて、マクロでみたときには、預貯金の方が多い。従って、そういった層は金利が上がった方がむしろメリットを得られるということですので、経済学的に言うほど金利の影響が大きく出てくるわけではないと思っています。一方で、例えば先ほどお話の出た、価格が上がって消費が抑えられてしまっていると。それの解決策として、例えば金利を上げることによって需要と供給をもう少し均衡させて、価格を抑えることによって、持続的な消費回復につなげることができるという側面もあると考えています。今日の講演でも申し上げましたけれども、私は現状、需要と供給を考えたときに、人手不足から供給力が不足していて、実質的に需要が超過している、従って、それが物価押し上げにつながっていると考えております。
§25Naoki Tamura
先ほど申し上げた金利があまり効かないというのと少し矛盾する面はあるんですけれども、その辺りの微調整を行うことによって、福島県経済を含めた、日本経済全体も同じだと思うんですけれども、持続的な安定成長に戻していくことが必要な局面がどこかで出てくる可能性があるというふうに考えています。
§26Question
今の質問、ご回答とかに少し被ってしまうかもしれないんですけれども、冒頭の県内景気についてどうみてるかっていうところで、足踏みを続けているということで、今後上向くために個人消費っていうのをポイントに挙げていらっしゃったかと思います。この個人消費、じゃあ上げていくためには県内経済どんなことが必要なのか。賃上げとか、やっぱり地方だとなかなか実感乏しい方も多いかと思います。そういう中でどんな視点が必要なのか。あとそれに対して日銀として求められる役割というか、こんなことをしていかなきゃいけないという役割などありましたら、お聞かせください。
§27Naoki Tamura
まず、消費に関して、先ほどのご質問にもありましたけれども、最大の問題点というかネックになっているのが物価の上昇で、それに負けない賃上げっていうのが求められているところです。一方で、中小企業は賃上げがしんどい、あるいはもう限界だという声が聞こえてくるのも確かです。その中小企業の賃上げに関して私が思うのは、人手不足の世の中で、従来は人手不足に至る前の段階だと、企業が収益を上げて、その中から賃金を支払うというメカニズムが働いていたと思うんですけれども、人手不足になったことによって、パラダイムシフトが生じているんじゃないかというふうに考えています。というのは人手を確保するためには、賃金を上げないと人が来てくれない、あるいは今働いている人も別の企業に行ってしまうと。賃金を上げて、人を確保して、それで企業は回っていくようなビジネスモデルにしなきゃいけないし、あるいはそういう難しいことを言わなくても、価格転嫁を頑張らなきゃいけないし、あるいは効率化を図って賃金を上げても営業利益を出せる体質に変えていかなきゃいけない、そういう時代に変わってきているんじゃないかというふうに考えます。
§28Naoki Tamura
あるいは、今ビジネスモデルの改革とか申し上げましたけれども、どこかの企業と一緒になって更に効率化を図るという方法もあるでしょうし、最近M&Aで増えてきているのは、人手確保のためのM&A、人手を確保するために、どこかの企業を買って人手を確保していく、そういうふうな方法もあると思います。ですから、現在の人手不足、年には今の日本の人口が半分になってしまう。そういうことを前提に、じゃあどういうビジネスを行っていくのがいいのか、それを考えていかないとならない時代になってきてるんだというふうに考えています。そういう中での日銀の役割というご質問については、日銀の役割は物価の安定を実現すること。物価を安定させることによって、経済が持続的、国民生活が持続的に向上していく。それが日銀の役割ですので、物価の状況を踏まえながら、%程度の物価安定目標というのを実現するべく、金融政策を適切に発揮できるように努力していきたいというふうに考えています。以上