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日本銀行記者会見2026年3月2日氷見野良三, 副総裁

氷見野副総裁記者会見(2026年3月2日)

全文

§1Question

二点お伺いしたいんですけども、副総裁に。今日の懇談会の中で話し合われたテーマ、話題はどういったものがあったのかということと、副総裁が今、和歌山県経済についてですね、ご認識というのはどんなものなのかっていうのをお聞かせ頂きたいなと。

§2Ryozo Himino

懇談会の模様と県経済についての認識と二点頂きましたが、二つ関連し合っておりますので、まとめてお答えさせて頂ければと思います。今日の懇談会では、かなり充実した議論になったというふうに思っておりますけれども、当地の行政や経済界、金融界を代表される方々から地域経済の現状や直面する課題、あるいは金融政策運営に関するご意見、ご要望を数多く頂き、大変有意義な意見交換ができたと考えております。懇談会にご出席頂いた方々には、この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。席上で伺ったお話について私なりに整理して、いくつかご紹介致します。まず当地の景気については、観光インバウンド需要の堅調さなどを背景に緩やかに持ち直しているとの見方を伺いました。ただ業種や事業規模などによっては業況感にはばらつきがあり、とりわけ当地経済の大宗を占めておられる中小企業、小規模事業者の方々におかれては、引き続き厳しい環境にあるという声も聞かれたところです。こうした厳しさの背景としては、円安やエネルギーなどの各種コストが上昇する一方で、そうしたコストを価格に転嫁することが難しく、利益が圧迫されているとのご意見が多く聞かれたところであります。また、企業の賃金設定についてのお話もたくさんございました。

§3Ryozo Himino

人手不足、賃上げのお話が多く聞かれたテーマですけれども、経済界の皆さまのご尽力のもと、これまで積極的な賃上げが行われてきたことを伺いました。ただし、これについても業況の厳しい中小企業、小規模事業者の方々の間では、他社との人材獲得競争の中でやむを得ず賃上げを実施する、いわゆる防衛的な賃上げに追い込まれているという声もあったところです。こうした中、今後とも継続的な賃上げを実施していくために継続的な生産性の向上に取り組む必要があるとのご意見も多くありました。この点、AIを活用した生産性向上への期待についても聞かれたところです。経済団体や行政機関、金融機関のご尽力されている企業の効率化支援等の取り組みについても詳細にご紹介頂き、私としましても改めて取り組みの状況について認識を新たにした次第であります。この他、当地の持続的な発展に関する話題として、航空宇宙や再生エネルギーといった新たな産業の育成などに地域を挙げて取り組んでおられることを伺いました。産官金の関係者が連携しながら、今後の発展に向けて取り組まれている姿を心強く感じたところです。最後に企業金融を巡っては、企業規模や業種などのばらつきへの配慮や安定した金融環境への期待、企業に対する投資促進の重要性などについてお話を頂きました。

§4Ryozo Himino

日本銀行としては、本日頂いたご意見などを踏まえて引き続き適切な金融政策運営に努めていく方針でありますことを、改めて私の方から申し上げた次第です。

§5Question

米国とイスラエルはイランへの攻撃に踏み切り、原油価格が高騰しています。地政学リスクなど不透明感が高まっている中では、これは利上げに慎重になる要因になるのか、それとも供給要因であってもインフレ期待や基調物価に影響する可能性もあるので、必ずしも利上げを慎重化させる要因にならないのか、副総裁のお考えをお願いします。

§6Ryozo Himino

まず、今後の展開次第のところがかなりあるかというふうに思いますけれども、今後の展開については見極めがたいものがまだたくさんありますので、特定の展開を前提としてどういうふうに働くといったお答えをすることは差し控えさせて頂きたいと思います。いずれにしましても、政府とも密接に情報交換を行いながら状況をしっかり注視してまいりたいと考えております。

§7Question

二点お伺い致します。まず一点目がですね、物価目標に対する距離感について伺いたいのですけれども、本日の講演でですね、2%の物価目標は確実に達しているとまではまだ言えないけれども、既に概ね 2%近傍であるというご認識を示されたかと思います。日銀はですね、これまで物価目標の達成時期には、既に中立金利に達しているというような説明をされてきたと思うのですが、併せて考えると、物価目標に今近いということは中立金利にもだいぶもう近いというようなご認識を氷見野さんはされているのでしょうか。関連してその物価目標までの距離感とか、利上げのペース、ゴールについての考え方をお聞かせください。二点目ですけれども、金融環境について伺います。こちらも本日の講演でですね、利上げによる影響はこれまでのところ限定的で、金融環境は依然緩和的な領域であるということをご指摘されていたと思います。これをいつまで見極めるのかといった質問なのですけれども、利上げの影響が出てくるかを、ずっと今のところ大丈夫だけれども、いつぐらいまで判断をして、これなら大丈夫だというところで次の利上げの判断材料とされていくのか、その辺りのですね、時間軸についてですね、お考えを伺えればと思います。

§8Ryozo Himino

一つ目のところは、例の階段の絵が書いてある絵みたいな話になると思うのですけれども、物価安定目標に確実に基調物価が達しているというふうにまではまだ断言できないということで、現状では緩和的な政策を今後徐々に調整していくと、利上げを行って中立に近づけていくということだというふうに思いますけれども、現時点では緩和的な領域の中でやっていることで適切だと思いますし、ということは中立金利よりは低い状態にあっておかしくないということで、今後物価の基調が2[%]で安定していく過程の中で、中立に近づけていくということになると思うわけですが、そのうえで距離感というご質問だったんですが、今日申し上げたのも、その距離というのを緻密・精密に測定して特定することができないということに現状ありますので、中立金利、あるいは自然利子率についての見方と、物価の基調についての見方と、あと現状での金融環境の状況等をみながら、ある意味総合的に判断していくしかないというふうに考えております。そのうえで、では金融環境の方はいつどこまで見極めたらはっきり答えが出るのかということですけれども、これは継続的にみていくとしか申し上げられません。今日の意見交換会でも、現状、金融環境が緩和的でないという感じのご意見はなかったと思うのですけれども、ただ、今後一体どこまでいくのだろうかというのは気にされてる方も多かったと思います。

§9Ryozo Himino

私どもとしても、そこはどこまでどういうタイミングで利上げするとどういう影響があるかということは、できるだけ的確に見極めながら判断していきたいと思っておりますけれども、これもさっきの基調とか自然利子率と同じで、各時点において精密に何か特定できるということではありませんので、今日のお話しした中身で言えば、曼荼羅の全体像をみたうえで、特に一つの部分だけ取り上げてこれがここまで来たからこの時点で判断ということではなくて、全体を評価しながら考えていくということにするのがいいのではないかと私は思っております。

§10Question

先ほどの中東情勢については、この段階では見極めがたいということだったのですけれども、企業のですね、日本の情勢の中で、企業の価格設定行動が積極化している中で、原油価格上昇がですね、物価の基調に与える影響、これについて今の時点で副総裁どのようにお考えか、というのが一点目です。二点目は、午前の講演で、物価の基調とですね、物価目標の差、これについてはインフレギャップというふうに表現されましたけれども、今後の物価目標の実現が近づく中で、このインフレギャップというものに対する説明というのがより重要になってくるというふうにお考えなのか、このインフレギャップという概念を言われたこの部分の狙いについて教えてください。

§11Ryozo Himino

一つ目ですけれども、これは結局、原油価格の今後の展開についての前提次第になるわけですが、これもなかなか現時点ではどういう展開になっていくのか、どういう水準にどういう期間動いていくのか、といったことはなかなか見極めがたいですので、この場合はこう、この場合はこうと全部ご説明できればよいのですが、なかなか特定の展開を前提としてお答えするということは差し控えさせて頂きたいと思います。二つ目は、インフレギャップの概念を曼荼羅に持ち込んだことは、何か新しい金融政策説明の重要なキーコンセプトとして持ち込んだのかというと、全くそういう意図はございません。従来通り、物価安定目標、物価の基調、そういうものをみて、政策判断をしていくということを、単にステップとして、ある意味、絵で矢印の本数があんまり多くなり過ぎないように整理しようとしたらこういうことになった、という程度の話でありまして、何か新しいキーコンセプトを持ち込んで今後やっていこうとかそういう気持ちではありません。

§12Question

二点ご質問させて頂きたいと思います。確認なのですけど、これまで日銀は経済・物価情勢の改善に応じて政策金利を引き上げていって、金融緩和度合いを調整するということを表明してきたわけですけれども、今回の中東情勢の緊迫化を受けても、この方針自体は変わりがないのでしょうかというのが一点目です。二点目ですけれども、こういった中東情勢を巡るこの不透明感の高まりですとか、今日も日経平均一時 1,000 円超下がるなどして市場変動が大きくなっているという状況ですが、このように市場変動が大きなとき、こういったときにはやはり利上げをしていくということには慎重にならざるを得ないのでしょうか。この二点をお願い致します。

§13Ryozo Himino

一つ目ですけれども、方針自体に変化があるとは考えておりません。ただ、その方針の中に入っております、経済・物価情勢の改善に応じて、というところがどうなっていくかには今後影響はあり得る話だと思いますけれども、それがどういう影響が今後出そうかということについては、何か現時点で予想申し上げるということは差し控えたいと思いますし、また、考え方の枠組み自体が何か変わるということではないというふうに思っております。二つ目は、不透明感が高まって市場変動が大きいときには慎重に金融政策を運営するのかどうかということですけれども、これは市場変動が大きい場合、不透明感がある場合、そのときなりに必要なことはしっかり判断してやっていく必要があると思います。市場変動が大きいときには必ず政策変更をしない、ということとは限らなくて、市場変動が大きいために、対応するために、政策変更が必要だと考えるシナリオもあり得ないわけではありませんので、何か市場の動向と、政策の運営の仕方について、カテゴリカルに結びつけて法則を述べることは差し控えたいと思います。

§14Question

二問よろしくお願いします。一つが先ほどのイラン情勢の関係なのですけども、こちらは今日のご説明の中でいうと、今既に原油ですとか円安というところに影響が出てますけども、供給ショックに影響し得るものというふうに整理していいのでしょうかというのが一点目の質問です。二つ目は、先ほどの和歌山県内の企業への影響のところでも言及がありました円安についてなんですけども、輸出企業にとっては追い風かと思うんですけども、中小を中心に結構円安が業績を圧迫するような材料になってるというような見方もあるかと思います。今回のお話を聞いてですね、想定通りのものなのか、この円安の影響についての認識っていうのが、今現状どういうふうにあるのかっていうのを伺えますでしょうか。

§15Ryozo Himino

一つ目に、その原油高、円安は供給ショックとして整理して考えるのかというご質問だったと思います。一通りそういうふうに考えることはできると思いますけれども、いろんな影響があります。交易条件の悪化という性格を原油高は併せて持つわけですし、円安についてはおっしゃった通り様々な方向から影響があるわけですので、一応議論の整理のために図をお示ししましたけれども、そこから直接具体的な状況についての答えが出てくるというふうなものではないという点についても、併せて申し上げさせて頂ければと思います。もう一つは、円安の中小企業に対する影響、今日聞いた意見は想定通りだったかということですが、私、これまでに5 回こういう金融経済懇談会(注)に出ておりますけれども、中小企業の方から円安によるコスト増で経営が大変だというお話はほぼ全ての会合で繰り返しご指摘があるところでありまして、その意味では驚くようなことではなかったかもしれませんけれども、改めて円安が物価にどの程度効くかという議論もよくあるわけですけれども、物価に響かない場合には途中で誰か吸収してる人がいるわけですので、そうすると中小企業とか内需型企業の方が被っているということになると思います。

§16Ryozo Himino

なので、その円安の影響、もちろんインバウンドが増えるとかそういったようなところもみないといけませんし、併せてコストがどう転嫁されていってるのかで、物価だけみて影響が大きい小さい、中小企業の収益に対する影響だけみて影響が大きい小さい、というだけではなくて、ある意味その二つが組み合わさっている、どっちかが増えればどっちが減る関係にあるみたいなところもよくみていきたいというふうに考えております。

§17Question

二点お尋ねさせてください。一点目、まず先行きの不透明感で言うと、米国の新たな追加関税について、こちらも先月の下旬に報道がありました。イラン情勢も同様の背景があるかと思いますけれども、今後の、再び不確実性が高まっているということに関して、この米国関税が与える利上げ判断への影響を教えてください。二つ目が新しい日銀の審議委員の人事案が先日国会に提出されました。新しいお二人を迎えるにあたって、ざっくりと所感というか、そもそもご面識があるお二人だったのかといったところを教えてください。

§18Ryozo Himino

一つ目につきましては、アメリカの最高裁の判決を受けての米政府の新しい関税政策についてですけれども、もちろん不確実要因が一つ出てきたというふうには位置付けることになると思いますし、また今後どういうふうになっていくかっていうのは、よく注視していきたいと思っておりますけれども、今のところでは、日本経済についての大きなシナリオを変えるところまでは来ていないのかなというふうに思っております。ただ、今後よくみていきたいと思っております。審議委員につきましては、日銀法 23 条 2 項で両議院の同意を得て内閣が任命するとされていますので、私からはコメントは差し控えさせて頂くのが適切だろうというふうに考えております。

§19Question

本日、質問で、不確実性についてイラン情勢と米国の関税と今出たわけですけれども、昨年は金融政策の変更にあたって米国の関税の影響を見極めるというような、判断までに見極める必要があるというようなことがあったと思うんですけども、今回イラン情勢はかなり不透明感強いんですけれども、次の政策変更にあたってその見極められるまで待つ必要があるのか、それとも見極められないけども政策変更ということもあり得るのか、お考えをお聞かせください。

§20Ryozo Himino

どの程度見極めが必要になるかの見極めも、現時点ではできておりませんので、それも今後の展開次第だろうというふうに思います。ですので、今の時点で見極めに必要になる時間軸について予想を申し上げることは差し控えさせて頂ければと思います。

§21Question

午前の方で、物価上昇と、あとインフレ予想の関係について言及されておられまして、足元での物価がですね、消費者物価 2%割るぐらいの状況になってきているわけですけども、これがインフレーションに与える影響について、副総裁どのようにお考えか、お願いします。

§22Ryozo Himino

1月の全国の[生鮮食品を除く総合の]CPIが確か 2%ということだったと思います。今後暫く 2%を割る時期も続くのではないかというふうに思っております。今後どういう感じになっていくかということですけれども、それが物価の基調に影響を与えるところまで行くかどうかっていうふうになりますと、そこはそうなるとまでは予想してないのですが、物価の基調は引き続き緩やかに上昇していくだろうというふうにはみておりますけれども、一定の影響がある可能性はありますので、そこはよくみていきたいというふうに思います。

§23Ryozo Himino

そのうえで、物価の基調とヘッドラインのインフレ率の関係について、従来は 3%ぐらいのヘッドライン、2%を上回るヘッドラインのインフレ率がかなり続いているけれども、基調はまだ 2%に達していませんということで、緩和的な金融環境を続けますという説明を私どもしてまいりまして、分かりにくいというご批判もかなりあったと思うのですが、今後はもしかすると 2%をヘッドラインが下回っているけれども、基調は 2%にどんどん近づいているので、緩和度合いを狭めて中立に近づけていきますというようなことを申し上げる局面が来る可能性がかなりあるんじゃないかなと思うのですが、そうしますと、新しいこの組み合わせも分かりにくさでは同じなわけですけれども、ある意味私どもの言ってること自体は一貫してるというところは、ちょっとこの機会に訴えさせて頂きたいと思います。

§24Question

先ほど国会の人事で、審議委員の人事そのものについてはですね、コメント難しいということだったかと思います。ただ高市政権がですね、リフレ派とされる二名を今回選ばれたということなのですけれども、これがいろいろと政権側の意図といいますか、日銀へのプレッシャーかもしれませんが、そういったものが込められているのではないかと言われてます。副総裁としましては、高市政権の日銀に対する理解が今進んでいるのかどうか、あるいは高市政権とコミュニケーションは今良好といえるのかどうか、その辺りについての考え方をお聞かせください。

§25Ryozo Himino

あまり政府のご意図を忖度して申し上げようというつもりはないのですけれども、日銀法 4 条にあります通り、政府とは十分に意思疎通を図ってまいりたいというふうに考えております。私どもとしては、物価を安定させてそれによって経済を息の長い成長軌道に乗せていくことを目指しているわけですので、政府が目指されている姿の実現に私どもなりの役割から寄与するかたちになるというふうに考えております。また情勢認識についても、政策運営の考え方についても、様々なレベルで充実した意思疎通、情報交換ができているというふうに私どもの方としては考えているところです。

§26Question

経済指標の中で、例えば不動産でありますとか、日経平均株価でありますとか、一部の指標で、昨今で急激な上昇といいますか、この 1、2年ですね、そういったものもあるかと思うのですが、緩和的な状況を続けるというところの中で、こういった今急激に上がっているもののボラティリティが大きくなる何かショックがあったときにですね、大きくなるのではないかという見方もあるかと思いますが、それと経済全体の今の状況をみられて緩和的を続けるというのはどのようにみてらっしゃるのかお聞かせください。

§27Ryozo Himino

私ども金融政策を考える上では、二つのレンズで考えるというふうに言っておりまして、主なシナリオと、あと例えば資産価格とか金融システムに生じている不均衡とか、そうしたリスク要因と両方をみながら判断していくという考え方でおります。そのうえで、不動産価格や日経平均が上昇している背景をどうとらえるかということになるわけですけれども、これは様々な要因が働いているだろうと思います。不動産価格については、建設コストの上昇ですとか、あるいはライフスタイルが変化してより職場に近いところに皆住みたくなっているといったようなこととか、様々な要因が影響していると思いますし、また日経平均につきましても、基本的には日本企業の業績が好調であるということは根っこにあるうえに、また政府による成長戦略などへの期待みたいなものも入っている可能性があるというふうに思っております。そのうえで、緩和的な金融環境もその背景要因の一つにあるということは十分考えられることでありますので、そうした資産価格の動向についてもよく見守っていく必要があると思っておりますけれども、何か現状で金融政策で格段の対応を取らなければならない状況にあるとまでは考えていないところです。(注)会見では金融懇話会と発言しましたが、正しくは金融経済懇談会です。以上