亀崎審議委員記者会見(2011年2月2日)要旨
全文
§1Question
本日の金融経済懇談会において、どのような意見交換が行われましたか。地元の出席者から要望等はありましたか。
§2Hidetoshi Kamezaki
本日は金融経済懇談会を開催し、その席上で自治体や金融・経済界を代表される方々から色々なお話を伺いました。地域経済や金融政策に関する貴重なご意見を数多く頂き、大変有意義な意見交換ができたと思っています。まず、景気の現状につきましては、全体としては、厳しいながらも持ち直している、とのご認識でした。すなわち、足許では景況感が悪化しているとの指摘が昨年より減っており、持ち直しの方向にあるとの指摘がありました。具体的には、自動車や半導体関連の生産、あるいは住宅着工、設備投資などに明るい動きがみられるとのことです。もっとも、設備投資は更新需要が中心で盛り上がりに欠ける、また、銀行貸出は一般事業法人向けを中心に減尐していると伺いました。このほか、新卒採用が絞られているなど、雇用の厳しさを指摘された方も多くおられました。やや切り口を変えて、自動車や半導体、郊外大型スーパーといった中央の出先はまずまずである一方、建設業、街なかの商店といった地場企業、特に中小企業は厳しいと指摘された方もおられました。要すれば、二極化のもとでの持ち直しということだと思います。こうしたお話から、マクロの指標だけでなく、経済の中身も踏まえて景気判断をしていかねばならないとの思いを、改めて強くした次第です。
§3Hidetoshi Kamezaki
こうした中にあって、行政としては、中小企業に対する「経営改善サポーター」制度、中心市街地活性化のための対策、雇用創出のためのマッチングなどを通じ、経済をしっかりと支援しておられることを伺いました。このような努力を通じて、二極化を克服していかれることを希望します。また、地域活性化の取り組みとして、佐賀空港の夜間貨物利用などによって機能度を向上させていこうとの声もありました。また、筑後川両岸地域、すなわち福岡県南部と佐賀県との交流を、今以上に深めていくことなどを通じて、これら地域経済全体の浮揚に繋げていくべきとの声もありました。そのほかに興味深かったのは、現在の難局を乗り切っていくには、他力本願ではなく自助努力が不可欠という指摘がいくつか聞かれたことです。そのための方策として、例えば、企業の持続的な成長のためには新卒採用は継続すべきとして、足許の業況は悪くとも、景気が厳しい今こそ採用の好機とする意見もありました。また、リスクを恐れない若者にチャレンジのチャンスを与えていきたい、との意見もありました。私も、こうしたことは、経済活力の維持・向上のためには、非常に重要なことだと思います。このように、現在の難局を自らの手で乗り越えていきたいという前向きなご発言が聞かれたことは、大変心強いことです。こうした意識を強く持ち、実践に繋げていけば、必ずや成功に結びつくものと信じています。
§4Question
佐賀県経済に対する現状認識についてお聞かせください。
§5Hidetoshi Kamezaki
本日の意見交換の内容も踏まえ、佐賀県の経済情勢についての現状認識を申し上げます。佐賀県の経済情勢をみますと、当地の景気は、厳しいながらも、全体としては緩やかな回復基調にあります。特に生産では、足許全国と同様にエコカー補助金終了に伴う駆け込み需要の反動などの下押し圧力はみられるものの、当地ではこうした反動を新車関連部品の生産開始に伴う増産効果で打ち消しつつあるほか、電気機械や一般機械等も堅調な生産をみせるなど、生産全体として緩やかな増加基調を続けている点が大きな特徴だと思います。先行きにつきましては、不透明感が残る中、振れを伴いつつも、緩やかな回復基調が続く可能性が高いとみられます。また、やや長い目で佐賀県経済の将来的な姿を展望しますと、まず九州全体として、高い成長を続ける東アジア諸国と近接する地理的優位性を有し、かつ自動車や半導体関連企業を中心に「生産の九州シフト」とも言える流れもみられています。こうした中、関連の製造業が集積している佐賀県においては、一段の経済発展に繋がる地の利があるように思います。加えて、豊富な自然資源やアジアとの歴史的交流によって培われた独自の文化など多様な魅力にも溢れています。本日の金融経済懇談会でも申し上げましたが、当地は、その時々の先端技術を積極的に取り入れた「ものづくりの文化・歴史」を有しておられます。
§6Hidetoshi Kamezaki
こうした「ものづくりの文化・歴史」や魅力を活用し、先ほど申し上げた地の利を活かしながら、国内および海外、特に成長著しいアジアの需要を的確に捉えて、一段と発展していかれることを祈念しています。
§7Question
2 点お伺いします。1 点目は、講演の中で踊り場局面が短期間で終わるとの見通しを話されていますが、踊り場を脱して回復に復していく時期は具体的にいつ頃とみていますか。もう 1 点は、足許じりじりと円高が進んでいますが、その背景・原因と日本経済への影響についてどのようにみているかお聞かせください。
§8Hidetoshi Kamezaki
1 点目の具体的にいつ頃踊り場から脱するかとの質問ですが、本日の金融経済懇談会の挨拶でも申し上げた通り、日本経済は緩やかに回復しつつあるものの、昨年の秋以降は、海外経済の減速、エコ関連施策の段階的な打ち切り、円高進行の影響から景気は踊り場局面にあります。もっとも、最近の経済指標をみますと、海外経済は減速局面を乗り越えたとみられることから、輸出は早晩回復してくるものと思います。また、エコ関連施策打ち切りの影響は、自動車メーカーが補助金終了後に新型車を投入するなどの戦略によって生産や販売が幾分持ち直していることなどからすると、いつまでも経済の足を引っ張ることはないと思います。このほか、円高の進行が一服していることもあります。実際、11月、12月の鉱工業生産指数、それから 12月の実質輸出がプラスに転じております。こうしたことから、日本経済は「一服」の状態を短期間で終えて、再び緩やかな回復経路に復していく可能性が高いと考えています。その時期について、ピンポイントで何月と確定的なことは申し上げられませんが、これから春頃にかけて徐々に「一服」の状態から脱していく可能性が高いとみています。それから円高進行の問題ですが、円高が急激に進んでいくという一頃の状況からは一服感があります。
§9Hidetoshi Kamezaki
確かにここ数日、81 円台の状況まできておりますが、為替の影響というのは企業収益とか、企業や家計のマインドに与える影響が大きいと考えますので、注意深くみていきたいと思います。為替については、急激な変動は望ましくないと考えています。この点、今後とも注意深くみていきたいと思っています。
§10Question
佐賀県の経済関係者から、日本銀行の金融政策に対する意見、注文は出ませんでしたか。
§11Hidetoshi Kamezaki
本日の懇談会では、しっかりと色々な手を打って金融緩和に努めているというご評価を頂いたと認識しています。また、こうしたご意見は複数頂きました。
§12Question
エジプトの政治情勢が混乱していて、また、原油価格も上昇していますが、これが世界経済や日本経済に与える影響について、どのようにお考えかお聞かせください。
§13Hidetoshi Kamezaki
エジプトの政治情勢の混乱については、チュニジアに始まった政治情勢の変化がエジプトに波及したものであると思います。これがさらに北アフリカおよび周辺の中東産油国を含む他の国々に波及していくのか、また政情不安をもたらすのか、極めて緊迫した状況であり、懸念しています。さらにスエズ運河の航行に影響が出ないかどうかにも注意しなければならないと思っています。このところ、米欧の株式市場が影響を受けているほか、原油の急騰がみられています。私としては、一刻も早く事態の沈静化を望むとともに、この先金融市場や商品市場が不安定さを増していかないか注意深く見守っていきたいと考えています。
§14Question
先週、アメリカの格付会社が日本国債の格付けを引き下げましたが、日本国債の信用力に対する見方が厳しくなっていることについて、どのようにお考えか、教えてください。
§15Hidetoshi Kamezaki
先週、格付会社の一つが、日本の外貨建て・自国通貨建て長期ソブリン格付けを AA から AA-に格下げしたことは承知していますが、このこと自体について、私の立場からコメントすることは差し控えたいと思います。そう申し上げた上で、格下げ公表後の市場の状況をみますと、為替市場では、いったん円安方向に振れたのち、再び幾分円高方向の動きとなっています。また、株式市場も日経平均株価が先週末から今週初めにかけて下落しましたが、昨日それから今日、再び上昇しています。この間、国債市場では、10年利付国債金利が 1.2%台程度ときわめて安定して推移しています。このように、金融市場は、格下げに対して落ち着いた反応を示していると私は評価しています。金融経済懇談会における挨拶でも述べましたが、政府債務は膨れ上がって、今年度末の国と地方の長期債務残高は、名目GDPの実に約 1.8倍にまで達する見通しです。このように、日本の財政状況が厳しいにも関わらず、格下げに対して、金融市場が冷静に反応している背景には、今後の財政再建に向けた取り組みに対する市場の信認が引き続き確保されている証左だと受け止めています。もっとも、現在の欧州ソブリン問題をみても、金融市場は、経済・財政状況が大きく変わらない中で、突然変動するという非連続的な変化を時として示す場合もあります。
§16Hidetoshi Kamezaki
その意味で、市場の信認が確保されているうちに、日本の財政が再建への道筋をしっかりつけていくことがきわめて大事な課題であると認識しています。
§17Question
冒頭のお答えにもありましたが、県内の経済関係者は、どちらかというと緩やかな回復という部分で前向きな発言が多かったのでしょうか。出先企業と地場企業で二極化との発言もありましたが、大勢としては前向きな発言が多かったのでしょうか。
§18Hidetoshi Kamezaki
達観して申し上げれば、厳しいながらも持ち直しているという、お話でした。いずれにせよ厳しいわけですが、そうした状況の中で、「もうどうしようもない」ということではなく、むしろそれに「どう立ち向かっていこうか」という前向きな姿勢を私は感じ取りました。特に、印象に残っている言葉としては、「他力本願ではだめだ」、「行政頼みではだめだ」、「自らが切り開いていかないとだめだ」、「従来型の同じやり方ではもうだめだ」と、進取の気風に満ちたご発言がありまして、非常に感銘を受けました。こういった長い経済の停滞の中で、「どうやって成長に繋げていこうか」という気持ちが今のような言葉に表れているのではないかと思いました。
§19Question
ここ数か月、国際商品市況の上昇がみられていますが、CPIへの影響のほか、交易条件の悪化を含め景気への影響が懸念されるところです。一方で、商品市況の上昇が新興国の好調な需要に支えられているとすれば、日本の輸出にとってポジティブな要因であると思います。全体を踏まえて、日本経済への影響をお聞かせください。
§20Hidetoshi Kamezaki
このところの国際商品市況の上昇は、ベースには新興国の強い実需、そして天候不順等の供給ショック、さらには投機資金の流入といった金融要因等、複合的な要因によってもたらされていると思っています。そのうえで、経済・物価に与える影響ですが、資源価格をはじめとする国際商品市況の上昇が日本の経済に及ぼす影響については、資源価格の上昇の背後にある新興国・資源国の高成長に伴ってわが国の輸出や生産が増加する効果と、一方では、交易条件の悪化によって資源国に所得が流出する効果を、よく点検することが大事だと思います。私は、今回の中間評価にあたっては、こうした両面の効果を点検した上で、先行き、緩やかな回復経路に復していくという10月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移すると評価しました。物価に及ぼす影響については、直接的な物価上昇圧力としての影響、実体経済への影響を通じたもの、消費者の予想物価上昇率や企業の価格設定行動を通じた影響などを、あわせて考慮する必要があります。今回の中間評価では、国際商品市況高の影響から、2011年度の国内企業物価と生鮮食品を除くCPIがともに、10月で示した見通し対比、やや上振れて推移するものと予想しました。資源価格をはじめとする国際商品市況の動向と、これがわが国の経済・物価に与える影響について、今後とも注意深く点検していきたいと考えています。
§21Question
国際商品市況の状況に関連して、特に新興国などからは、過剰流動性があって、ヘッジファンドなどが値を吊り上げているのではないかとの指摘があり、フランスなども次のG20 でこの問題を取り上げる意欲をみせていますが、今の市場の動きに対して何らかの規制を加えることに関してどのようにお考えになっているか、はたしてそれが可能なのかも含めてお聞かせください。
§22Hidetoshi Kamezaki
国際商品市況の上昇は複合要因であり、必ずしも金融要因だけではないことは先ほど申し上げた通りです。そのうえで、商品市況をコモディティごとにみますと、取引量の尐ない商品の上昇幅が大きい傾向がはっきりと出ています。これをみますと、投機資金の動きは複合要因の一つではありますが、特にそういった商品市況の動きに比較的大きな影響を与えているのではないかと思います。そういう意味において、投機資金があまりにも大きな動きをしてしまうのは、望ましい姿ではないと思います。投機資金によって実需とあまりに違った動きが生じてしまうという状況は好ましくないと思っています。また、G20 でもこういった動きを規制するのか、見守っていくのか、コントロールするのか、これが一つの課題となっています。今後、この点について議論が深まっていくと思いますので、私もそれが望ましい方向ではないかと思います。以上