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日本銀行記者会見2011年3月14日白川方明, 総裁

総裁定例記者会見(2011年3月14日)要旨

全文

§1Question

本日の決定会合の結果について、東日本を中心に甚大な被害をもたらしている地震の影響の見方や対応方針等も踏まえつつ、ポイントをご説明下さい。

§2Masaaki Shirakawa

まず、今回の地震で犠牲となられた方々に対して心よりお悔やみを申し上げるとともに、被災者の皆様に対して、心よりお見舞いを申し上げます。地震発生後、日本銀行は、金融市場および金融機関の業務遂行への影響を把握するとともに、金融機能の維持および資金決済の円滑を確保するために、万全の措置を講じてきています。また、適切な金融市場調節の実施を通じて、弾力的な資金供給を行ってきています。本日も、即日オペと先日付のオペを合わせて、約 22 兆円という大量の資金供給を行っています。なお、日本銀行は、要員の確保や一部自家発電の活用等により、被災地の支店、計画停電地域にある本支店を含め、業務を通常通り遂行しているほか、わが国決済システムは、これまでのところ、全体として概ね安定的に運営されています。その上で、日本銀行としては、この地震がわが国の経済・金融情勢に与える影響を点検し、金融政策運営方針を速やかに公表していくことが、国民心理の安定や金融資本市場の安定を確保する上で重要であると判断しました。このため、本日と明日の2日間で行う予定としていた金融政策決定会合の日程を変更し、本日中に終了するかたちで会合を行いました。会合での議論の結果、日本銀行は、金融緩和を一段と強化するために、リスク性資産を中心に、資産買入等の基金を5 兆円程度増額し、40 兆円程度とすることとしました。

§3Masaaki Shirakawa

また、次回会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート・オーバーナイト物を、0~0.1%程度で推移するよう促す。」というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定しました。こうした調節方針のもとで、金融市場における需要を十分に満たす潤沢な資金供給を行い、金融市場の安定確保に万全を期していくことも確認しました。こうした決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明します。現時点では、マクロの経済データについては地震発生前のデータしかまだ利用できませんが、そのことをお断りした上で、わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつあります。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、下落幅が縮小を続けており、特に、高校授業料の実質無償化の影響を除いてみると、最近では、前年比が小幅のプラスとなっています。先行きの中心的な見通しについては、後で申し上げるように不確実性が高いわけですが、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくというこれまでの判断を維持しました。消費者物価の前年比は、当面、小幅なプラスに転じていくとみています。ただし、何度も申し上げている通り、本年8月の基準改定に伴い、下方改定される可能性が高いことも意識しています。もっとも、今回の地震は観測史上最大規模のものであり、その被害が地理的にも広範囲に及んでいます。

§4Masaaki Shirakawa

東北地方では港湾等の社会インフラを始め多くの被害が生じているほか、関東地方でも大規模な工場にも被災が及んでいます。このため、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化が懸念される状況にあると認識しています。以上のような情勢認識のもとで、日本銀行は、金融緩和を一段と強化することが必要と判断しました。特に、企業マインドの悪化や金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが実体経済に悪影響を与えることを未然に防止することが、現在、最も適切な政策対応であると考えられることから、リスク性の金融資産を中心に資産買入れの額を増額することとしました。具体的には、5 兆円程度の増額分のうち、CP・社債等とETF、J-REITのリスク性資産を、3.5 兆円程度買入れることとしました。ただし、ETFとJ-REITは、日銀法上の認可取得が条件となります。日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3 つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を、粘り強く続けていく考えです。引き続き、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針です。

§5Question

基金増額という金融緩和の強化を決定されましたが、景気の現状判断は前進しているほか、先行き見通しも緩やかな回復経路に復していくとの判断を維持していますので、政策変更理由は、先行きのリスクが高まるのを未然に防ぐためとのニュアンスであると思います。しかし、今の時点では、日本経済が悪化するリスクの高さを予測するのは、難しい点もあるかと思います。この点について、どのようにお考えでしょうか。

§6Masaaki Shirakawa

日本経済全体については、マクロ経済データで確認することになりますが、先週金曜日の大地震については、当然、現時点ではそうしたマクロのデータがありません。そういう意味で、基本的な経済・物価の見通しについて、現状、これまでの判断を変える材料はないということです。ただ、これだけ大きな地震が発生しており、被災地域も広範囲にわたっています。従って、経済の先行きを巡る不確実性は高いと認識しています。そうした中で、先程申し上げたように、企業や家計のマインドの悪化、あるいは金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりが、経済活動を下押しすることを未然に防止することが、政策運営の構えとして重要であると判断いたしました。4月の決定会合は 2 回あります。私どもとしては、マクロの経済データ、企業や金融機関からの様々なヒアリング情報、金融市場の状況などを総動員して、的確な情勢判断に努め、その上で毎回点検を行っていく所存です。

§7Question

地震発生以降、日本銀行は、災害本部を立ち上げ金融機能の維持や決済の円滑化に努めてこられたと思うのですが、さまざまな取り組み状況について、もう少し具体的に教えて下さい。

§8Masaaki Shirakawa

まず、東北地方太平洋沖地震の決済システムへの影響をみると、東北地方の太平洋沿岸地域を中心に金融機関の一部店舗損壊やATMの稼働停止などが生じています。もっとも、預金の円滑な支払いに応じるため、週末には金融機関の間で休日営業を実施する動きが広がり、日本銀行としてもこうした取組みを支援するため、週末の間、青森、仙台、福島の各支店、盛岡事務所、本店において、金融機関の現金手当てに対応しました。この間、日銀ネットのほか、主要金融機関の資金・決済システムは正常に稼働しており、資金決済や証券決済に大きな混乱は生じていません。また、今回の地震が実体経済に与える影響についてみると、東北地方では港湾や道路などの社会インフラをはじめ大きな被害がみられているほか、首都圏においても大規模な工場の被災が伝えられるなど、地震の被害が地理的にも広範囲に及んでいます。物流面でも暫くの間混乱が続くと予想されるほか、首都圏を含め電力の安定供給に対する懸念も高まっています。このため、当面生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインド悪化が懸念されているということです。決済システム面については、実はご説明したいことが沢山ありますので、後ほどさらに少しブレークダウンしてご質問頂ければ、1つずつお答えしたいと思います。

§9Question

本日、即日オペ 15 兆円を含む大規模な資金供給を実行されました。金融市場の緊張度合いの観点から、このような資金供給の実行を決断された理由と金融市場の評価についてお伺いします。

§10Masaaki Shirakawa

先行きの不確実性が高い状況となったため、金融市場において市場参加者が予備的な資金需要を大きく増やし、金融機関が多くの資金を保有しようとする状況となりました。短期金融市場は全ての金融活動の出発点であり、経済活動にも通じます。従って、中央銀行としては、この金融市場の安定をしっかり確保し、資金面に関する不安を解消させることが非常に重要であると判断しました。そうした判断の下、本日、即日資金供給オペを 15 兆円、先日付の資金供給オペを 6.8 兆円、合計 21.8 兆円となる過去最大規模の資金供給オペを実行しました。即日資金供給オペとしても、過去の最高金額は4.5 兆円でしたが、今回は 15 兆円という、それを遥かに上回る規模で実施しました。このような潤沢な資金供給により短期金融市場の安定が確保されているということです。市場別にみた場合、国債市場では、今回の地震がわが国の経済に及ぼす影響の大きさが不透明であることなどから、安全資産である国債への資金逃避が進み、10年物国債の金利が 1.3%から 1.2%へ、2年物国債の金利が 0.2%強から 0.1%台へと、短中期から長期までのいずれの期間でも国債金利が低下しています。

§11Masaaki Shirakawa

一方、社債の流通市場あるいはCP市場をみると、社債金利の対国債スプレッドやCP金利の対短期国債スプレッドが幾分上昇していることに加えて、市場での取引が成立しにくい流動性の低い状態が続いており、潜在的なスプレッドの上昇圧力はこれまでよりも高くなっているとみています。株式市場をみても、わが国経済や企業収益を巡る先行きの不透明感から株価は大きく下落し、本日の日経平均は昨年12月初以来の1 万円割れになったことはご承知の通りです。以上、各市場についてみてきましたが、私どもとして、まず出発点の短期金融市場、それからCP、社債あるいは株式関連市場、そうした市場でリスク回避姿勢が強まることを防ぐことが非常に大事だと判断し、本日の措置に至りました。

§12Question

先程、総裁は4月に 2 回の決定会合があると述べられたうえで、データやヒアリングを総動員するとお話しされました。これは、短観の内容等を踏まえたうえで、政策の見直しを現時点で視野に入れているという理解でよいのでしょうか。

§13Masaaki Shirakawa

先程申し上げたのは、マクロの経済統計データは現時点では利用可能ではないが、私どもは、政策当局として先々を展望して手を打っていく必要があるということで、今回それを実行したということです。その上で、先行きの経済については、様々なデータがこれから入ってくるわけですから、それを基に点検を行っていくことになります。また、一般的な政策運営に対する構えについては、先行きの経済・物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には適切な措置を講じていく方針だということは先程申し上げた通りです。こうした姿勢を今後ともしっかりと維持して政策の判断を行っていきたいと思います。

§14Question

本日行われた大規模な即日オペ等の資金供給について、明日以降も、同様の措置が取られるという理解でよろしいでしょうか。

§15Masaaki Shirakawa

短期金融市場がどのような状況にあるかを、丹念に点検して判断していきたいと思います。私どもの目的は、短期金融市場の安定が損なわれることを防止することにありますので、明日のオペは予め金額を固定的に決めておくものではなく、短期金融市場の状況をみて判断をしていくものです。はっきりしていることは、金額ではなく、市場の安定を図るという私どもの姿勢です。

§16Question

本日、大量の資金供給が行われ、札割れとなったにもかかわらず再度の供給をし、もう 1 度札割れが起きました。これは、金利の上昇を抑え込む、混乱を抑え込むという、断固たる決意の現れであると私は受け止めました。そういう理解でよろしいでしょうか。

§17Masaaki Shirakawa

短期金融市場で不安心理が広まると、各金融機関は資金を抱え込むことになるので、資金が市場の中で回らなくなるわけです。個々の金融機関においては、十分に資金を確保している先があっても、別の先では確保できないということも考えられます。すなわち、札割れとなっていても、金融市場の参加者の中には資金が十分ではないと感じる先もあります。このため、私どもとしては、札割れが起きても、市場の安定を確保するために必要であれば断固実行するという意味で、資金供給を行ったものです。

§18Question

リーマン・ショックの時は、各国の中央銀行が協力するという動きがありましたが、今回の地震を受け、海外の中央銀行との協力をお考えなのでしょうか。

§19Masaaki Shirakawa

リーマン・ショック以降、世界的にドル資金の不足、ドル資金市場の流動性が枯渇するという状況、あるいはそうしたことが懸念される状況になりました。そうした下で、米ドルスワップを組み、ドル資金供給オペを各国で行うことになりました。ドル資金市場を含め外貨の資金市場を私どもは丹念にみていますが、現在はドル資金市場に問題が起こっているわけではないので、本日は円の資金市場で問題が起きないようにするということで対応しました。また、各中央銀行間の協力という面では、リーマン危機後の経験を経て中銀間の協力は一段と強化されています。今回の地震が発生した当日、欧米だけでなく新興国も含め、主要な中央銀行総裁に直接メールで状況を連絡しましたが、多くの中銀総裁から、まず日本国民の皆様に対しお見舞いの言葉を頂戴しました。そのことをこの場でご報告したいと思います。それと同時に、多くの中銀総裁の方々から、「自分たちにどのような協力ができるか遠慮なく言ってほしい」とのメールを頂いています。今、何か具体的なオペレーションを考えているわけではありませんが、このように、中央銀行の協力関係は従来から盤石です。

§20Question

決済システムについてお伺いします。今回の大規模な地震でも、日銀ネット、全銀システム、民間の各種決済システムは正常に稼働していると理解しています。これは、わが国の決済システムの強靭性、また、関係者が日頃から業務継続体制の構築に取り組んできた効果の現れと思いますが、今回の地震を受けて、わが国の決済システムの今後の対応のあり方について教えて下さい。

§21Masaaki Shirakawa

まず、今回の地震による決済システムへの影響について説明します。地震の被災地では甚大な影響が出ているものの、日銀ネットは地震発生後もシステムの稼働や業務処理を通常通り続けています。民間の決済システムの中には、東北地方の手形交換所の一部で交換業務を一時的に休止せざるを得なくなっていますが、それ以外の決済システムについては、資金決済、証券決済とも通常の業務を継続しています。決済システムに参加している個々の金融機関については、多くの先がシステムの稼働や業務の処理を通常通りに行っています。この間、地震発生当日にシステムトラブルが発生した先が散見されましたが、いずれも代替手段の活用等により、必要な決済を完了したほか、被災した金融機関以外は昨日までにシステムの復旧を完了しました。この結果、本日の資金、証券の決済も、被災地域以外では予定通り行われています。被災地域では、関係機関が緊密に連絡・調整を行っており、日本銀行としては、引続き日銀ネットの円滑な運用に万全を期すとともに、民間決済システムや参加金融機関の状況把握に努め、円滑な決済を確保するために適切な対応をとっていきたいと考えています。今回、これだけの地震が発生したにもかかわらず、決済システムが正常に稼働していることについては、日本銀行を含めて関係者全員が大変な努力をしてきたためと思います。

§22Masaaki Shirakawa

しかし、今回の地震の経験を通じ、この先、見直すべき多くの材料があるのも事実です。当面、決済システムの安定運行が最優先の課題ですが、少し落ち着いた段階で、今回の経験を活かして更に強固で安定的な決済システムの構築に向けて、努力をしていく必要があると強く感じています。

§23Question

2 点お伺いします。1つ目は、日銀単独の対応以外に、政府との連携のもと、どのような対応を取り得るのでしょうか。2 つ目は、今回 5 兆円の増額を決定しましたが、この規模感、また基金の増額という政策手段を選んだ背景について伺います。

§24Masaaki Shirakawa

まず、政府との関係についてですが、地震発生以来、決済システムの担い手という面でも、それ以外の面でも政府と非常に緊密な連絡をとっています。また、昨晩は官邸で「経済情勢に関する検討会合」があり、私も出席しました。このように、経済金融情勢や、この地震を巡る様々なインフラの問題も含めて、政府とは緊密な情報交換・意見交換を行っています。今、政府におかれても、最大限の努力をされてこの難局に取り組んでいると思いますし、日本銀行もこの難局に取り組んでいます。こうした協力関係のもと、共通の目的に向かって今私どもは邁進しています。次に、今回公表した増額の規模についてですが、私どもが最も意識したことは、不安心理の高まり、あるいはリスク回避姿勢の強まりが実体経済に影響を与えることを未然に防ぐということです。その目的に照らして考えると、買入れ対象はリスク性資産が中心であることが適切であると判断しました。方程式でぴったりその金額が出てくるという性格のものではありませんが、これまでの買入れ規模は 5 兆円、今回の増額も同じ金額の5 兆円としました。国債とリスク性資産の割合の面からみると、前回は 3.5 兆円と 1.5 兆円、今回はそれ(リスク性資産の割合)を逆転し 1.5 兆円と 3.5 兆円という非常にはっきりとしたメッセージでお伝えしたいと思いました。

§25Question

東京電力の計画停電の影響について、これにより企業活動もかなり制限されると思いますが、どのようにみておられるか教えて下さい。

§26Masaaki Shirakawa

計画停電が、主として実体経済活動へ与える影響についてのご質問としてお答えします。停電の影響だけを抽出してお答えすることは、なかなか難しいように思いますが、電力は生産活動の基本的なインフラですから、生産活動を中心に少なからぬ影響を与えることは、私どもも十分意識しています。ただ、どの程度の規模になるのかは、現状まだ十分には分かりません。私どもとしては、定量的な影響がいくらかと現時点で論ずるよりも、そうしたことも含めて不安心理が実体経済活動に影響を及ぼすことを未然に防止することが大事であると考えています。それから一言、計画停電と決済システムとの関係について申し上げたいと思います。日銀ネットは、日本の決済の根幹をなすものです。これはグローバルにも影響を及ぼし得るものです。こうした決済の大もとを担う日銀ネットは、電力の安定供給の対象として頂いています。また、他の本支店の業務は、自家発電も活用しながら、確実に業務を遂行していく体制をとっています。日本銀行としては、我々自身の業務について、この日銀ネットの運行や現金の供給体制を引き続き確実なものとすることにより、わが国決済システム全体に対する停電の影響ができる限り小さくなるよう、全力を尽くして参りたいと考えています。

§27Question

2 つ質問です。1 つは、被災地の金融機関への現金輸送について、昨日までに 550 億円実施したとのことですが、今後の計画の規模感や輸送インフラ面での工夫があれば、教えて下さい。2 つ目は、復興需要に伴う今後の財政支出についての総裁の見方です。総裁は、再三、財政再建の重要性を強調されていますが、今回の震災はどういうインパクトがあるとお考えですか。

§28Masaaki Shirakawa

まず、現金に関するご質問ですが、金融市場に対する資金供給は日本銀行が能動的に資金供給オペレーションを行い、それに対して金融機関が応じるわけです。一方、現金は、民間金融機関が日本銀行に預けている当座預金を引き出して現金化するという、金融機関からの要望に応えて、日本銀行が供給するものです。先ほどの550 億円という金額は、金融機関が最終的に予想される被災地のお客様の預金引出しニーズを想定しながら、預金の引出しを行いたいと日本銀行に要望し、これに応えた数字の合計です。従って、明日以降、これがどの程度の金額になるかは、日本銀行は基本的には受身です。ただ、日本銀行としては、どのような金額、地域、時間帯でそうした要望を頂いても、しっかり応えられるように万全の体制をとっています。また輸送面での工夫ですが、高速道路において、日本銀行の現金輸送車両はこうした状況下では緊急扱いとして頂いており、被災地への現金供給に万全を尽くしています。そういう意味で、現金の供給という点についての心配は一切なく、被災地の皆様には安心して頂きたいと、是非お伝え頂ければと思います。次のご質問は、今回の地震に関する復興関連の財政支出とその財源についての質問と思いますが、これらについては、現在政府において検討を進められていると認識しており、私の立場から、具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。

§29Question

資産買入れについて、今回、国債とリスク性資産の規模を逆転したということですが、これは民間企業の資金繰りを全面的に支援していく狙いという理解でよろしいでしょうか。

§30Masaaki Shirakawa

現時点で民間企業の資金繰りが窮迫しているという情報が入っているわけではありません。地震の発生前も民間企業の資金繰りは着実に改善に向かっており、特に大企業については、手許のキャッシュが豊かな状態にあると認識しています。リスク性資産の買入れは、資金繰りを円滑にするという効果もありますが、リスクプレミアムの拡大が様々な企業の経済活動に悪影響を及ぼすことを防ぐ方に主眼があります。

§31Question

基金の増額についてお伺いします。リスク回避の動きが拡大することを封じるためにリスク性資産を買増すとご説明されましたが、そうであるなら、長期国債まで買増す必要があるのでしょうか。須田審議委員も資産買入れ全てをリスク性資産とすべきだと言っておられたと思います。

§32Masaaki Shirakawa

包括緩和の下での資産買入れについて、どのような資産の買入れが適切かについては、昨年10月の決定会合でも随分議論をしました。その結果は議事要旨に掲載されていますが、そこにも示されているように様々な議論の結果、私どもとしては、やや長めの金利に働きかけることと、リスクプレミアムに働きかけるという 2 つの観点から国債、CP、社債、J-REIT、ETFの買入れを決定しました。そうした大きな考え方を今回変える必要があるとは判断していません。ただ、リスク回避姿勢の強まりを未然に防止することに力点をおいていることから、その内訳を変えることが適切と判断しました。

§33Question

2 つ質問です。前代未聞の災害が起きている割には、買入れ額の規模感やリスク性資産の内訳が、ちょっと「しょぼい」というか、小さいような気がするのですが、どのように受止めているのか教えて下さい。また、復興に当たって、仮に、日銀の国債引受けの議論が国会で出てきた場合、総裁はどのようにお考えかお聞かせ下さい。

§34Masaaki Shirakawa

今、「しょぼい」という言葉を使われましたが、私も含めて政策委員会メンバーの誰一人として、そうは思っていないということを、強く申し上げたいと思います。我々は今回、リスク性資産の買入れを相当増やし、これまで資産買入総額が 5 兆円程度の中で 1.5 兆円であったものを、今回はさらに 3.5兆円に増額しました。ご質問は、買入金額をご覧になってのことだと思いますが、本来は、保有対象となる金融資産にどれだけのリスクがあるのか、その民間のリスクをどれだけ中央銀行が肩代わりするのかというリスク量換算で評価すべきものです。買入金額という量の多寡で話をすることは、あまり好ましくないと思っていますが、ご質問がありましたので敢えて申し上げます。以前の記者会見でも申し上げましたが、ETF・社債等は、保有に伴うリスク量が国債に比べてかなりの倍数になります。正確な倍数は、その時々のボラティリティ、すなわち価格の変動によって違ってきますから、今はその数字を申し上げませんが、国債とは異なって格段に大きくなります。従って、決して小さくありません。次に、国債引受については、現在、財政法によって国会の議決がない限り、できないこととなっています。日本銀行がどう考えるかという前に、引受は原則できないことになっています。

§35Masaaki Shirakawa

何故、財政法で日本銀行の国債引受について厳しい制約をおいているのかについて、たち返って考える必要があると思います。一旦、中央銀行が国債の直接引受という道に踏み出すと、それが、中央銀行の物価コントロール能力に対する信認の低下に繋がって、その結果、激しいインフレになったというのが内外の経験です。そのような内外の経験に鑑みて、国会において引受を原則禁止するという規定を設けていると理解しています。いずれにせよ、日本銀行が現に法律で与えられている手段を使って、物価安定のもとでの持続的な経済成長への復帰について全力を挙げていきたい、そのことだけを答えとして申し上げたいと思います。

§36Question

2点伺います。1 点目は、首都圏でも石油製品の生産・出荷が非常に滞っていてガソリン不足が表面化しそうになっており、物流に影響が出そうだという見方があります。電力の計画停電等もあいまってかなり生産を下押しする可能性があると思います。総裁は、「具体的なデータが無い」とおっしゃったのですが、その影響の程度についておおよその見通しをお聞かせいただけないでしょうか。2点目は、今回の政策変更により基金を増やされました。市場のリスク回避の動きを抑制するとおっしゃったのですが、為替市場のことも念頭におかれたのでしょうか。つまり、足許では、日本企業のリパトリによる円買いが噂されていましたが、そういうことも意識されてリスク回避姿勢を抑制するという反射的効果もお考えになった上で今回の判断をされたのでしょうか。

§37Masaaki Shirakawa

まず、ご質問の1 点目については、私どもも十分認識しています。マクロの統計データはまだ入手できないわけですが、日本銀行は本支店を通じて、ミクロヒアリング、企業ヒアリングに相当力を入れており、色々な情報が入ってきます。ただ、そうした影響を合算して数字で何%というように、私が申し上げることは必ずしも適切ではないと思います。私どもとしては、この物流面への影響が生産活動を中心として景気に少なからぬ影響を与えていくと認識しておいた方がいいと思っています。次に、為替相場に関連して、いわゆるリパトリをどの程度意識したのかという点です。今回のリスク性資産の買入れは、全体として金融市場参加者のリスクテイク姿勢にも好影響が及んでいくことを期待しています。最終的には企業の経済活動に好影響を及ぼしていく、悪影響を小さくしていくということですが、金融市場参加者にも当然好影響が及ぶことを期待しています。以上