← 戻る
日本銀行記者会見2012年2月14日白川方明, 総裁

総裁定例記者会見(2012年2月14日)要旨

全文

§1Question

本日の金融政策決定会合の結果について、ポイントをお聞かせ下さい。

§2Masaaki Shirakawa

本日の決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化するため、以下の 3 点について決定しました。第 1 に、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として、「中長期的な物価安定の目途」を示すことにしました。具体的には、消費者物価の前年比上昇率で 2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることを明確にしました。その基本的な考え方ですが、日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として、金融政策を運営しています。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければなりません。こうした物価の安定に関し、従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を集約する形で示していました。今後は、これに代えて、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入し、日本銀行としての姿勢をさらに明確化することが適当と判断しました。第 2 に、いわゆる時間軸政策を使った日本銀行の金融緩和政策姿勢の明確化です。

§3Masaaki Shirakawa

当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していくことにしました。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件としています。第3 に、資産買入等の基金の増額です。資産買入等の基金を 55 兆円程度から 65 兆円程度に 10 兆円程度増額することにしました。買入れの対象は長期国債とします。現在、資産買入等の基金の残高は 43 兆円程度であるため、今回の増額分と合わせ、本年末までに残高は22 兆円程度増加することになります。今後の長期国債の買入れペースは、基金を始めた時は月間約 1,500 億円、それが現在は月間約 5,000 億円ですが、今後は、これが約 1.5 兆円へと大幅に加速することになります。これを趨勢的な銀行券需要にあわせて買い入れている月間 1.8 兆円の買入れと合わせると、本年末までの間、月間で 3.3 兆円、年率換算で約 40 兆円のペースで大規模に長期国債を買い入れていくことになります。もちろん、こうした大量の国債購入は、物価安定のもとでの持続的成長の実現のために行うものであり、財政ファイナンスを目的としたものではありません。

§4Masaaki Shirakawa

次回会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート・オーバーナイト物を、0 ~0.1%程度で推移するよう促す。」というこれまでの方針を維持することを全員一致で決定しました。以上の決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明します。わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっています。一方、わが国の金融環境については、緩和の動きが続いています。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっています。わが国経済の先行きについては、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きい状況です。もっとも、最近では、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいます。また、米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ個人消費や雇用などで改善の動きがみられています。わが国についても、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っています。日本銀行は、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとすることが必要と判断しました。

§5Masaaki Shirakawa

このため、今回、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定しました。日本銀行としては、引き続き強力な金融緩和を推進していきます。併せて、わが国経済の成長基盤強化にも、中央銀行の立場から取り組んでいきます。この間、欧州債務問題がわが国の金融市場ひいては金融システムの安定を脅かすことのないよう、万全を期していきます。わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面しています。この課題への取組みは、わが国経済の新たな経済成長の基礎を築いていく上で不可欠です。デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものです。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取組みを続けていくことが、重要であると考えています。

§6Question

今回、物価安定の「目途」という言葉にされましたが、これは、これまでの「理解」と何が違うのか、また、金融政策はどう変わっていくのかについてお聞かせ下さい。また、「目標」という言葉を使わなかった理由についてもお聞かせ下さい。

§7Masaaki Shirakawa

まず、「中長期的な物価安定の理解」と、今回の「目途」との違いですが、物価安定の理解については、各政策委員が、それぞれ中長期的にみて物価が安定していると理解している数字、これを政策委員会に提出し、その数字を集める形で範囲を示していました。その数字は2%以下のプラスで中心は 1%程度でした。しかし、この数字は、個々の委員の数字を集めているもので、必ずしも、日本銀行という組織、日本銀行政策委員会としての意思、判断を表すものになっていないのではないかという批判がありました。これに対し、今回の「目途」という数字は、日本銀行政策委員会としての判断を示したものであり、そこが大きな違いです。それから、「目標」との違いについてのご質問ですが、金融政策の「目標」は、日本銀行法に則して言うと、物価の安定を通じて国民経済の発展に資することです。海外の中央銀行における金融政策の目的も、表現は多少違いますが、要すれば、物価の安定であり、持続的な経済の成長に貢献していくということです。物価安定と整合的な物価上昇率をどのような言葉で呼ぶかは、それぞれの中央銀行の置かれた状況によって異なると思います。FRBは、今回、「longer-run goal(長期的な目標)」という言葉を導入しました。ECBあるいはスイス国民銀行は「definition(定義)」という言葉を使っています。

§8Masaaki Shirakawa

BOEは「ターゲット」という言葉を使っています。日本銀行は「目途」という言葉を使っています。わが国では、「インフレ目標」という言葉が、目標物価上昇率との関係で金融政策を機械的に運用することと同義に使われることが――もちろんそれだけではありませんが ――多いように思います。しかし、実際の金融政策運営は、いわゆるインフレーション・ターゲティングを採用している国を含めて、物価の変動と目標との関係で機械的に金融政策を運営するのではなく、今は、中長期的にみた物価や経済の安定を重視した政策運営をするようになっています。日本銀行は、そうした金融政策の運営の仕方を表すのに最も相応しい言葉は何かを考え、「中長期的な物価安定の目途」という言葉を今回使いました。

§9Question

今回資産買入れ等の基金を増額した背景について、もう少し詳しくお聞かせ下さい。

§10Masaaki Shirakawa

先程の説明と多少重複するかもしれませんが、足許のわが国の経済情勢は、海外経済の減速や円高の影響などから横ばい圏内の動きとなっています。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は概ねゼロ%です。先行きを展望した場合には、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きいわけです。ただ、前回会合以降の変化という意味では、これから申し上げるような前向きな動きもみられています。第 1 に、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べれば緩和の動きが続いており、前回会合時点と比べても、若干和らいでいます。第 2 に、海外経済をみると、米国経済については、バランスシート調整の重石はあるものの、生産が底堅く推移する中、雇用や消費にも多少ではあるが好材料が出てきているなど、このところ改善の動きがみられています。第 3に、国内においても、設備投資や個人消費などの内需は、震災復興関連の需要もあって、予想以上に底堅い展開を辿っています。本日の会合では、先程申し上げた、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、こうした最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、日本経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものにすることが必要であると判断しました。

§11Question

先週、予算委員会などで、強い批判を浴びられていたと思うのですが、その中のどういった意見や指摘を受け入れて、今回の決定に至ったのかを教えて頂けますか。

§12Masaaki Shirakawa

日本銀行は金融政策を行うに当たり、最終的に政策委員会の責任と判断において決定するわけですが、そこに至る過程では、国会での議論、エコノミストの議論、あるいは市場参加者の声、そういった幅広い意見に謙虚に耳を傾けながら、その上で日本銀行の使命をしっかり全うしていくことを、いつも心がけています。私どもが、金融政策を通じて経済を支えていくという姿勢であることは非常に明確ですが、これをもっと明確に伝えていく努力は必要であると感じて、先程申し上げた経済情勢を踏まえた上で、対外的な説明――コミュニケーション――という面でも、さらに改善の余地はないかを真摯に検討しました。

§13Question

その中でもどういった指摘、意見が一番真っ当だと受け止めましたか。

§14Masaaki Shirakawa

「真っ当」という言葉を私が使うのは適切ではないと思います。先程、2 問目でお答えしましたが、私どもとして、「中長期的な物価安定の理解」という言葉のもとで、十分、デフレ脱却に向けて強力な金融政策を行っているという自負はありました。しかし、そうした私どもの政策姿勢が、もし十分に伝わっていないのであれば、さらに表現の上でも色々な工夫があり得るし、それから、表現の工夫だけではなく、それを裏付ける政策措置を伴った方が、より効果的に伝わっていくと考えたわけです。

§15Question

2006年3月に「物価安定の理解」を導入するとき、福井総裁は、「理解は、物価目標とは概念が大きく異なる」とご説明されたと思うのですが、今回、「目途」に変えることで、これは物価目標と言って良いのですか。

§16Masaaki Shirakawa

私どもが今回発表したのは、「中長期的な物価安定の目途..」です。先程申し上げた様々なことを考慮した上で、一番相応しい言葉は「中長期的な物価安定の目途」であるとして、この言葉を採用しました。この問いにお答えする時に、ひとつ参考になると思うのは、今回の米国の金融政策運営の枠組みをどういう言葉で表現するのかということです。あの措置が発表された後、日本国内の新聞各紙の報道を見ても、随分、日本語の用語が異なっていたわけですが、バーナンキ議長は「longer-run goal」という言葉を使った上で、記者会見で「インフレーション・ターゲティングではない」と、はっきりとおっしゃっています。ただ、本人の否定にも拘わらず、仮に今回のFRBの金融政策運営の枠組みを「インフレーション・ターゲティング」と呼ぶのであれば、日本銀行の今回の金融政策運営の枠組みは、FRBの金融政策運営の枠組みに近いということは言えるように思います。ただ、私自身の言葉で敢えて言えば、「物価安定目途の金融政策運営の枠組み」ということです。ぜひ、皆さんが親しみを込めて、そうした言葉で呼んで頂ければと思います。ただ、いずれにせよ、金融政策運営の実態に即してみると、日本銀行、FRBも含めて、主要国の中央銀行は非常に収斂してきているという印象を強く持っています。第 1 に、「物価安定」を表わす何らかの数値を示している点です。

§17Masaaki Shirakawa

第 2 に、先行きの経済・物価見通しを公表している点です。第 3 に、これらを用いつつ、物価の短期変動を機械的にコントロールするのではなく、中長期的にみた物価や経済・金融の安定を重視した政策運営を行っているという点で、かなり類似してきていると思っています。

§18Question

達成の時期、あるいは達成できない場合の手段、あるいは説明責任について、今回の会合で議論はあったのでしょうか。

§19Masaaki Shirakawa

達成の時期ですが、今回の発表文の最後に書いてある通り、デフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現するには、成長力の強化と金融面からの支援、この両方が不可欠です。従って、企業、金融機関、政府、日本銀行それぞれが、その役割に応じて最大限の努力をしていく必要があり、デフレからの脱却は、そうした努力の結果として実現するものだと思っています。この間、日本銀行は日本銀行の役割をしっかり果たしていくということです。「中長期的な物価安定の目途」を示し、目指すべき物価安定の数値を明確に示すとともに、当面、1%の物価上昇率が見通せるようになるまで、強力な金融緩和を推進していきます。その上で、先行きの物価上昇率がどのようになっていくかについて、半期に 1 回の展望レポートやその中間評価を通じて、見通しの数字を示していきます。先月行った中間評価に即して言うと、2012年度は+0.1%、2013年度は+0.5%です。こうした物価の見通し、どういう考え方で政策運営を行っていくかについて、透明性の高い形で ――これまでもそうですが――、これからもしっかりと説明していきたいと思っています。

§20Question

今のご発言に関連して 2 点お聞きします。1 点目は、先般のFRBの発表では、「物価上昇率は、長期的には主に金融政策によって決定される」という声明が出されていますが、この点について、日銀ないし白川総裁はどのように考えているかお教え下さい。もう1 点は、今回、1%が見通せるようになるまで、実質ゼロ金利政策を続けるというお立場をさらに明確化された一方で、先般発表された物価見通しで、2013年度に至っても消費者物価上昇率は 0.5%であり、要するに 1%に満たないわけです。この両者を組み合わせて、市場の一部に「これは、2013年度まで、日銀は実質ゼロ金利政策を続けるという意味である」という解釈が存在するのです。しかし、例えば、日銀が1%の物価上昇率を「達成できるまで」ゼロ金利政策を続けると言っているのであれば、物価見通しが1%に満たない2013年度までゼロ金利政策を続けるという解釈に違和感がないのですが、1%を「展望できるまで」、あるいは「見通せるまで」と言っている以上、2013年度時点で、1%が展望できている可能性は排除していないわけです。そうすると、2013年度までゼロ金利を解除しないと約束しているとの解釈には、違和感があります。そういった市場の解釈について、日銀ないし白川総裁はどう考えているのかお教え下さい。

§21Masaaki Shirakawa

まず、1 問目の長期的には金融政策で決まってくるという命題についてどう考えるのかという問いですが、これは、色々な考え方がもちろんあり得ると思います。大学の講義ではありませんので、そういう話をするのもどうかなと思いますが、非常にインフレ率が高い時にインフレを抑制していくということ、これは、景気への影響等を無視すれば、強力に金融引締めをやればインフレ率が下がっていくということで、そういう意味では、究極的、最終的に、金融政策が物価を決定していく、それはその通りだと思います。また、米国の1930年代のように、中央銀行が最後の貸し手として積極的に行動しなかった結果、金融が大きく縮小する場合には、経済活動を大きく縮小させ、その結果、当時のアメリカは、物価が確か3 割ぐらい下落しました。そういう意味で、金融政策、あるいは中央銀行の行動が、物価の長期的な経路を決めていく上で非常に重要であることは、私はそうだと思っています。しかし、現在問われている問題は、今の日本経済、物価の上昇率が概ねゼロ近傍という世界で、中央銀行がお金の量を供給することだけで直ちに物価上昇率がゼロから 1%、1%から 2%へ上がっていくかという問いであるとすれば、それは必ずしもそうではないと思います。先程申し上げた、日本経済が直面している様々な構造的な問題、これらへの取組みが必要であると思います。

§22Masaaki Shirakawa

これは決して中央銀行の役割が小さいということではなく、むしろ、中央銀行の役割はしっかりあると思っていますが、成長力を引き上げていく努力と、それを支える金融面の支援、その両方が相俟って、デフレからの脱却は実現していくものだと考えています。2 問目については、私がご質問の意味を正確に理解しているわけではありませんので、的確な答えかどうかは分かりませんが、はっきりしていることは、金融政策には効果波及のタイムラグがあり、従って、かなり長い先の経済・物価の見通しを持った上で、現在の金融政策を運営していくということです。現在行っている実質的なゼロ金利政策をいつまで続けるのか、少なくともいつまでは解除しないのかについては、展望レポートで示している私どもの先々の見通しが、今回の「中長期的な物価安定の目途」である1%が見通せる状態になるまでは解除しない、ということを言っているわけです。その後、どのような政策運営を行っていくのか、これはもちろん、その時の政策委員会で決定するわけですが、いずれにせよ、物価安定を通じて、国民経済の健全な発展に資することが日本銀行法に定められた使命ですから、その使命に即して点検作業を行っていくことになります。

§23Question

先程からご説明頂き、「中長期的な物価安定の理解」と「目途」のそれぞれの考え方、数字の置き方は理解できたのですが、では、「目途」としたことで、今後の金融政策の進め方が、今までの「理解」に基づく運営とどのように変わってくるのか、それをイメージできるようにご説明下さい。

§24Masaaki Shirakawa

まず、「目途」と「理解」という、その言葉の違いだけで、私ども自身の政策が変わるということではありません。この部分については、日本銀行のデフレ脱却に向けた姿勢を明確に伝えるため、日本銀行の意思、判断を明確に示す言葉は「理解」より「目途」であるという意味で使いました。それから、今のご質問の点については、「目途」か「理解」か、ということよりも、実質的なゼロ金利政策を続けていく時に、消費者物価上昇率1%が見通せるようになるまでということをはっきり書いています。従来は、「中長期的な物価安定の理解」に即した表現をしており、日本銀行の「理解」それ自体に意思が感じられないという批判がありました。今回、その言葉を変え、具体的な数字を示し、その数字は日本銀行の意思、判断を反映した数字になっています。従って、そうした私どもの意図が市場に伝われば、その分、金融緩和政策の効果も高まると判断しています。

§25Question

資産買入れ等の基金の増額に関して、2 点ご質問します。1 点目ですが、先程総裁は、基金の増額は、物価安定のもとでの持続的経済成長のために行っているものであって、財政ファイナンスが目的ではないと明確におっしゃいました。しかし、月額 5,000 億円の国債買入れを月額 1 兆 5,000 億円と 3 倍に拡大するということは、総裁が如何にそうおっしゃっても、マーケットからは、財政政策に一段と近づいているのではないかと受け取られるリスクがあると思います。日本銀行がこれまで一番避けてきたマネタイゼーションに近づいているのではないかという疑念をマーケットが持つ可能性について、総裁はどう思われますか。2 点目ですが、総裁は今回の会合前に連日国会に呼ばれて、金融緩和や物価安定の理解について与野党から厳しい質問を受けました。このため、今回の金融緩和について、マーケットの一部には、政治的な圧力に屈したのではないかという見方もありますが、総裁はこの見方についてどのようにお考えでしょうか。

§26Masaaki Shirakawa

まず、2 点目からお答えしますが、政治的な圧力に屈して日本銀行が本来考えていないことをしたということは全くありません。日本銀行の金融政策の使命は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することと明確に定められています。現在の厳しい状況のもとで、どのようにすれば中央銀行としての責任をしっかり果たせることになるのか、日本銀行法に定められた使命に則して、どのようにすれば最も責任を果たしたことになるのか、ということを真摯に考えるというのが、政策委員会のメンバー全員に共通した気持ちです。中央銀行が政治的な圧力に屈して本来行うべき政策を行わないということになると、最終的に通貨の信認が損なわれます。従って、日本銀行の使命達成にも大きな障害が出るわけですから、2 点目のご質問に関しては、そういうことは全くありません。そう申し上げた上で、この政策が財政ファイナンスを目的としたものではないという趣旨を明確にするために、一昨年の秋に基金を設けて、日本銀行のバランスシート上、分別管理の上、透明性の高い形で運営しています。中央銀行による国債の買入れが、金融政策運営上の必要性から離れて財政ファイナンスを目的として行われていると受け止められると、財政規律に対する市場の信認が低下し、却って長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招きかねません。

§27Masaaki Shirakawa

従って、日本銀行として、今後とも財政ファイナンスを目的とした国債の買入れは決して行いません。それから、ご質問は、マネタイゼーションを行わないという日本銀行の意思だけで、本当に日本銀行が考える状況が実現するのか、という趣旨だと受け止めています。これについては、中央銀行の独立した判断というものを社会が尊重しないようになると、先程申し上げた長期金利の上昇という形で、結局、国民自身に降りかかってくるわけです。日本の社会において、中央銀行が独立した判断で金融政策を行っていく、その必要性については、十分理解があると私は思っています。

§28Question

2 点あります。1 つは、なぜ今の時期なのかということです。「物価安定の理解」に対して、日銀の意思が感じられないという批判が強まったからなのか、それとも、景気認識の中で前向きの動きが出てきたからなのかを伺います。2 つ目は、なぜ1%なのかという根拠について改めてお伺いしたいのと、1%の物価上昇は、デフレ脱却の認定との関係ではどのように位置付けられるのかをお伺いします。

§29Masaaki Shirakawa

なぜ今なのかについては――先程お答えしたつもりですが――、経済の先行きの不確実性は大きいわけですが、幾分明るい動きが出てきているこのタイミングで、この動きを後押ししていきたいということです。それから、そうしたことを行っていく時に、日本銀行の政策が正しく理解されていくことが大事です。この点では、FRBが 1月末に新しい枠組みを発表し、それを機に色々な議論が起きており、またそうした議論が起こること自体は極めて自然なことと思います。金融政策の運営の仕方について、各国の中央銀行は、お互いに学びあっていると感じます。日本銀行自身も海外の中央銀行の経験から色々と学んできています。それから、海外の主要国の中央銀行の政策運営のやり方をみていると、随分と日本銀行のゼロ金利以降の経験が活かされていると感じます。各国の金融政策の目的が同じである以上、お互いに切磋琢磨してやっていくことは自然です。そういう意味で、繰り返しになりますが、明るい材料、動きが少し出てきたこのタイミングで後押しをしていきたい、それから、FRBの今回の措置もあって、政策の透明性ということについても議論が高まっている段階で、私どもとして、両方をしっかり議論して今回の決定に至ったということです。次に、1%の根拠は何かということです。

§30Masaaki Shirakawa

細かい技術的な説明は、スタッフに聞いて頂きたいと思いますが、消費者物価指数の計測誤差、のりしろ、それから物価観の 3 点を踏まえて決定しました。このうち、物価観について申し上げると、わが国の消費者物価上昇率は、現在のデフレに陥る前――つまり1990年代後半以前から――、海外の主要国に比べて、ほぼ一貫して低い状態が続いています。例えば、バブルのピークの時期、バブル景気過熱期に相当する 1980年代後半の消費者物価の上昇率を見ると、わが国は、あの時期ですら、実は年平均で1.4%、時期によってはゼロ%台でした。同じ時期の米国の上昇率は4.0%、ドイツは 1.4%、G7の平均が 3.4%でした。それがバブルの時の経験でした。そうした状況がずっと続いている中で、今、海外が 2%だから日本も 2%だと出した場合、それは現実の日本経済の特徴あるいはそのもとで形成された家計や企業の意識から離れていくことになります。国民の物価観から離れ、一気にこれまでに経験したことのない数字を出した場合、家計や企業が却って大きな不確実性に直面する可能性があるほか、長期金利の上昇を招く惧れがあります。仮に2%という数字を文字通り、国民が信用した場合には、長期金利が上がってしまうことにもなります。

§31Masaaki Shirakawa

そういう意味で、「中長期的な物価安定の目途」を具体的な数値として示すに当たっては、先程挙げた 3 つの観点を踏まえて検討することが必要と思います。その際、日本経済の構造変化や国際的な経済環境――大変大きな変化に直面しています――を巡り、先行きの不確実性が大きいことに留意する必要があります。そういう意味で、「中長期的な物価安定の目途」について、2%以下のプラスの領域にあるという形で、ある程度幅をもって示すこととし、当面は1%を目途にすることにしました。この目途については、経済・金融の構造が変わっていきますから ――FRBもそうですが ――、日本銀行も原則として毎年1 回点検していくことにしました。

§32Question

2 点お伺いします。1 点目は、今回、基金による買入れを 10 兆円増やすに当たり対象資産を長期国債にした理由を、もう一度説明して下さい。2 点目は、マネタイゼーションかどうかの議論はひとまず置いて、今回の措置に伴う月間の長期国債の買入れ額が 1.5 兆円、従来の成長通貨オペが 1.8 兆円ということで、合計 3.3 兆円の国債を買い入れるということは、国債の新規発行ないし純発行額に対して日本銀行のウエイトはどのくらいになるのでしょうか。仮に、そのウエイトが高くなった場合、国債市場の価格形成に対する影響をどのように理解すればよいでしょうか。

§33Masaaki Shirakawa

1 点目については、今回、リスク資産の買入れを増額には含めなかったわけですが、含めるか含めないかは、その時々の金融経済情勢に依存すると思います。典型的には、昨年3月の東日本大震災発生直後の決定会合の時のように、非常に不安心理が拡がり、リスク回避姿勢が強いということが懸念される時には、リスク資産の買入れが有効だと判断し、専ら、リスク資産を中心に買入れを行いました。現在、金融市場をみると、CP、社債等の企業の資金調達状況は、非常に円滑に進んでいます。従って、今、日本銀行がリスク資産を買わなければならないという状況ではないと判断しました。そのように考えると、金利のベースとなるリスクフリーの国債を買うというのが一番自然であると判断しました。2 点目については、非常に難しい問いだと思います。中央銀行は、金融市場を通じて金融緩和政策の効果を発揮していくわけですから、金融市場が円滑に機能していくことが大事な前提条件です。中央銀行のプレゼンスが大きくなると、そのことによって金融市場の価格形成が歪んでくるのではないかという問題意識でのご質問だと思いますが、私どもはもちろんそうしたことも意識しています。先程申し上げた通り、買入れ金額が相当大きくなってくるため、そのことも意識しています。

§34Masaaki Shirakawa

ただ、日本経済が直面している物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰という大きな課題に対し、日本銀行としてできることは何かということを考えた場合に、他の政策手段と比べてこの方法が相対的に効果的であると判断しました。

§35Question

これまで日本銀行は、景気見通しが下振れた時に追加緩和を実施することが多かったと思います。今回、「中長期的な物価安定の目途」により日本銀行の意思を明確化したということは、極端な例ですが、非常にファンダメンタルズが良くても物価が上がらないというような時でも、緩和する時には緩和する、という意味合いがあるのかご説明下さい。

§36Masaaki Shirakawa

私どもの経済の見通しは、足許、横ばい圏内の動きですが、この先は、新興国・資源国の景気回復あるいは復興需要に支えられ、緩やかな回復経路に復していくというのが基本的な見通しです。この見通しは不確実性が大きいということはかねがね申し上げている通りです。そうした状況の中で、今、内外で少し明るい動きが出てきていることを考えると、この明るい動きを何とか確かなものにしていくことを考えることは、先程申し上げた標準シナリオの実現可能性を高めていくものだと思います。そうした考え方で、今回の措置を採りました。過去の金融政策について振り返ってみた場合、今申し上げたような考え方の意味合いを込めながら金融緩和を行ったことも、何回かあったように思います。もちろん、一般的には景気が悪くなっていく時に金融緩和を強化するというのがオーソドックスですが、今申し上げたような形で、より確かなものにするという思想でやったことも無いわけではありません。それから、今回、「中長期的な物価安定の目途」を出すという形で私どもの姿勢を示す時に、言葉だけでも目的を達成できるのではないかという議論もありますが、言葉と併せて政策的な行動を採った方が、言葉にもより重みが出てきて、金融緩和の効果も高まってくると判断したわけです。

§37Question

2 点お伺いします。1 点目は、今回の「中長期的な物価安定の目途」についてです。これまで総裁が国会等で行った説明を何度か聞きましたが、日米で表現は違うが目的は一緒、ヨーロッパもイギリスも言い方は違うが思うところは同じ、ということを説明されていたと思います。お話を伺う限り、日銀はFRBがやっていることを既にやっているということだと思いますが、そこを敢えて今回、かなり急に表現を見直したことについて、総裁はいつ頃からこれを変えなければいけないと思われていたのか、どういう経路でこうした思いが強まっていったのか。 FRBの決定があったからなのか、予算委員会等で色々な指摘があったからなのか、どのような形で変更の機運が高まっていったのかについて、もう少し丁寧にご説明下さい。2 点目は、これは色々な報道がありますが、物価目標を定め、それに従って日銀が金融政策を行うことで景気が良くなるかのように言われている向きもありますが、はたしてそうなのか、そうでないのか、総裁はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。目標の意味付けにより国民生活が一体どのように変わるのか、その辺の説明をお願いします。

§38Masaaki Shirakawa

1 点目については、これまでの答えと相当重複してしまいますが、物価安定の状況を数字でどのように表現するかということは、日本銀行に限らずどの中央銀行にとっても非常に重い課題です。FRBが今回の「長期的な目標(longer-run goal)」に至る過程を振り返ってみても、ここに至るまでに10年、20年の長い経緯があります。毎回少しずつ改善を図りながら、新たに生じた問題の改善を図っていくという絶えざる進化の過程だったと思います。日本銀行も 2000年10月に「『物価の安定』についての考え方」というペーパーを公表し、その後、何回かそのような文書を出して少しずつ改善を図ってきました。2006年3月の「中長期的な物価安定の理解」を示した時は、私自身、理事として関与しましたが、あの段階で初めて数字を出すということを行いました。しかし望ましい物価上昇率が幾らであるかということは、海外でもそうですが、今でもエコノミストの間で色々な議論があります。そうした中で、日本銀行として、できるだけ透明性の高い形で、目指すべき状態を数字で表した方が良いということで、政策委員会のメンバーの見解を集合的に集めるという方式を採りました。これは一歩前進だったと思います。

§39Masaaki Shirakawa

しかも、そのもとで行ってきた日本銀行の金融政策運営は、各国の中央銀行で非常に似通っているという感じもありますが、一方で分かりにくいという批判があったのも事実です。私どもは決してドグマティックに考えているわけではありませんので、私どもの意図が正確に伝わる方法を常に模索しています。2 点目ですが、デフレ脱却、物価安定のもとでの持続的な成長ということについて、金融政策だけで実現できるとは考えていません。しかし、金融政策も大きな役割の 1 つだと思っています。従って、日本銀行はその役割をしっかり果たしていくということです。その際、物価の上昇率についてどのような目途を持っているのかを示すことは、企業にしても家計にしても、投資や支出の決定を行う時に有益な情報になると思います。

§40Question

先程、なぜ1%かというところで、日本は歴史的にインフレ率が低いからと、その通りだとは思うのですが、ただその一方で、政府は緩やかに2%程度を目指すとしています。今後、政府と連携しながらデフレ脱却を目指す上で、目標というか、目途となる数字をすり合わせていく必要があるのかないのか、総裁のお考えをお願いします。

§41Masaaki Shirakawa

政府との間で、物価安定の数値について認識の差があるとは、全く思っていません。政府と同じ認識に立っていると思っています。政府は、今年1月に公表した「経済財政の中長期試算」の中で、消費者物価上昇率の試算結果について 2 つ出しています。1 つは、現在の経済・物価情勢を前提とすると「1%近傍、平均では1.1%」、それから、「日本再生の基本戦略」において示された成長戦略等が着実に実施され、2020年度までの平均的な成長率が 2%まで引き上げられることを前提とすると「2%近傍、平均では 1.7%」という認識を示しています。つまり、2020年度までの平均的な物価上昇率について、政府のいわゆる慎重シナリオ―― 政府は今これをメインにしていると思いますが――は1.1%。それから、色々な構造改革が進んだ場合、これについて 1.7%という認識をしています。いずれにせよ、後者のケースである「2%近傍」という数字は、現在の経済構造を前提にしたものではなく、「日本再生の基本戦略」における成長戦略等の着実な実施により、「我が国の構造転換を進め、日本再生をさらに力強く進めていく」ことを織り込んだものと認識しています。このように考えた場合に、日本銀行が今回発表した、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス、当面は 1%、という内容と整合的だと思っています。

§42Question

今回、消費者物価の前年比上昇率で1%が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策に加えて金融資産の買入れ等の措置により金融緩和を推進していく、という言葉があると思います。今回増額した基金は、本年末までに増額させることになると思いますが、それ以降、残高を維持することを約束しているのか、どういうことをコミットしているのかをご説明頂けますか。

§43Masaaki Shirakawa

本日の公表文では、本年末までの買入れについて発表しています。先行きの物価の見通し、これは展望レポートでもちろん示していくわけですが、そうした先々の経済見通しを踏まえて来年以降の運用についてはまた考えていくことになると思います。いずれにせよ、これだけの残高を積み上げているわけですから、売却は考えていません。

§44Question

本日、日銀がこのような政策を発表し、その前にFRBも時間軸を強化し、ECBもかなり大量に資金を供給していますが、先進国各国が一斉に金融緩和を強化している状況で、世界経済への影響、特に新興国に対する影響については、どのようにお考えになっているでしょうか。

§45Masaaki Shirakawa

このご質問は、この記者会見の席でも私の記憶している限り何回か提起されていますが、非常に重要な論点だと思います。一般論で言うと、先進国の金融緩和は、先進国の中ではバランスシート調整が進行中ですから、なかなか国内的に景気を刺激する力が乏しい。そういう中で、新興国あるいは資源国に資金が流れていく。一方、そうした国の多くはドルペッグを採用しているので、結果的に先進国――特に米国――の金融緩和が、そうした新興国における金融緩和効果をさらに強めていくことになります。そうすると、短期的には景気の拡大要因になり、商品市況が上がっていきますが、それは、やがて先進国自身にも商品市況の上昇に伴う実質購買力の減少という形で跳ね返ってくることになります。そういう意味で、バランスシート調整とゼロ金利制約に直面し、かつ金融経済がグローバル化しているという経済のもとでは、先進国の金融緩和政策の他国への波及と、それがまた自らにフィードバックしてくるということの意味合いも考えていく必要があると思います。現在、新興国の状況をみると、昨年末は欧州債務危機の関係で資本が流出する方向に動いていましたが、年明け後、最近はまた資本が流入しており、株価や為替も上がってくるという方向になっています。ただ、この状況は、ご質問の趣旨にあるような懸念される状況ということではありません。

§46Masaaki Shirakawa

一般的な論点としてのご質問として受け止めると、そのことは先進国も新興国もしっかり受け止めて考えていくべき重要な課題だと思っています。

§47Question

政府側から日銀に対して、様々な強いメッセージが打ち出されてきましたが、そういった経過を踏まえると、今回のステートメントの6(最後の段落)に、「民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割」と強調されており、私どもからするとこのメッセージが、「日銀としては、必要な対策を行った」、「次は、政府の番だ」と聞こえなくもないのですが、その辺の思いをあらためて教えて下さい。

§48Masaaki Shirakawa

記者の方が、「今度は、政府の番だ」とおっしゃいましたが、私どもは経済・金融政策について、ゲームと言いますか、こちらがやったから今度はそっちだという意識には立っていません。日本銀行としては、どういう状況であれ、中央銀行として行うべきことはしっかりやるし、中央銀行として行うべきでないことはやらないということ、この原理原則をしっかり持っており、そこは一切変わっていません。その上で、日本の経済を考えてみた場合に、急速な高齢化、あるいは少子化、そのもとで労働人口が減少していく、このことが様々な形で日本経済に問題を投げかけています。これは、日本銀行から論文も出ていますが、日本の場合、潜在的な成長率と長期的な予想インフレ率との間に非常に高い相関関係があります。今、なかなかデフレが克服されていかないのは、潜在成長率が低下していることも原因の 1 つであるわけです。物価をどう高めていくかという時に、繰り返しになりますが、潜在成長率を高めていく取組みが必要です。これは、誰か一人の努力でできることではなく、そういう問題意識を共有した上で、民間企業、金融機関、政府、日本銀行が、それぞれの役割に即して行動していくことが重要です。こちらがやったから今度はそっちだというような思考様式には立っていません。

§49Question

先程、政策委員会としての意思を示すという話がありました。安住財務相も「事実上のインフレ目標」というように発言していますが、これが達成できなかった時、中央銀行の信認が低下したり、政府の関与が強まったりという副作用については、どのようにお考えでしょうか。

§50Masaaki Shirakawa

インフレーション・ターゲティングを採用している各国の運営をみても随分変わってきています。例えば、ニュージーランドは、目標インフレ率が達成されなかった場合の規定が入っていますが、多くの国では、物価上昇率が目標等から乖離した場合に、なぜそれが乖離しているのかを、しっかり国民に対して説明していくとともに、政策の決定過程を明らかにしていくことを通じて、責任を果たしていくというのが今の主流になっています。日本銀行もそうした努力をこれからもしっかり続けていきたいと思っています。

§51Question

英語の表記では、物価安定の目途は「 goal」としていますが、先程、各国の表現を「definition」とか「goal」とか、それに日銀は「目途」とおっしゃっていました。英語では「goal」となると、FRBと同じになると思うのですが、この「goal」の方が「目途」よりも若干言い方が強いような気がするのですが、その辺りはどのような考えで「goal」になったのでしょうか。

§52Masaaki Shirakawa

各国の言葉に、完全に対応している言葉がないわけです。私どもからすると、一番、私どもの思いに近い言葉は「目途」です。「目途」に対応する英語、100%それに対応する英語がない以上、それに一番近い言葉は何だろうかと考えた場合に、「goal」という言葉が近いと判断しました。もっと良い言葉があれば、その言葉をもちろん採用します。以上