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日本銀行記者会見2013年2月6日佐藤健裕, 審議委員

佐藤審議委員記者会見(2013年2月6日)要旨

全文

§1Question

本日は、群馬県の経済界との懇談会ということですが、地元の経済界からは、日銀の金融政策に関して、どのような意見・要望が寄せられたのでしょうか。また、先般導入された物価安定の目標に関して、特に意見・要望等がありましたらお聞かせ頂きたいと思います。また、その要望について、委員ご自身がどのように受け止められたのか、お聞かせ頂ければと思います。

§2Takehiro Sato

ご質問の趣旨は、本日の金融経済懇談会でどのような意見交換が行われたのか、また、金融政策に関して、どのような要望があったのかということかと思います。群馬県経済の情勢に関しても意見交換をさせて頂きましたので、それについても触れた上で、金融政策についてどのようなご意見があったのか、申し上げたいと思います。まず、本日の金融経済懇談会では、群馬県の経済界や金融界を代表する方々から、地域経済の現状や課題、地域の活性化に向けての取り組みのほか、日本銀行の政策運営に関する率直なご意見等を数多く頂戴し、有意義な意見交換ができました。こうした機会に恵まれまして、ご出席頂いた方々や関係者の皆様方に感謝を申し上げたいと思います。本日の懇談会の場ではたくさんのご意見を頂戴しましたので、私なりに整理してご紹介申し上げたいと思います。地域経済の現状については、一言で申し上げると、輸送用機械産業に支えられて、全国と比べれば好調ということに集約されると思います。輸送用機械産業は裾野が極めて広く、それを多くの高い技術力を持った中小企業が支えているというお話がありました。一方で、輸送用機械産業以外の製造業や非製造業につきましては、全体として厳しい声が多く聞かれました。特に、複数の調査から窺われる中小製造業の業況は悪化しており、先行きも慎重であるように見受けられます。

§3Takehiro Sato

また、小売業等では、街中の商店街が特に大きくダメージを受けており、また、郊外店についても、同業他社との厳しい価格競争に晒されているというお話がありました。また、本日の講演内容を受けて、消費者物価上昇率で 2%を目指すためには、企業収益の改善を通じて、賃金が回復してくることが必要であるということには同意された方が比較的多くいらっしゃったと思いますが、現在の経済情勢を踏まえると、企業経営者の立場からは、賃金の上昇はなかなか展望しづらいといった声も聞かれました。群馬県は、もともと輸送用機械を中心に「ものづくりの県」として定評がある中で、地域経済の抱える課題は、製造業全般の活性化にあるという感想を持ちました。「ものづくりの県」として、中小企業の中には、高い技術力を持つものの、後継者不足に悩まされて廃業する先も散見されるといった残念な話を聞きました。一方で、政府の規制緩和や産業活性化策もあって、太陽光発電や介護事業など新たな成長産業を模索する動きも出てきており、それが県経済の起爆剤になるのではないかと期待する声も聞かれました。こうした状況下で、金融機関からは、民間企業の前向きな活動を支えていくため、積極的な役割を果たすことが重要であるという声が聞かれました。

§4Takehiro Sato

取引先企業に対する経営改善支援やビジネスマッチング、海外展開のサポートなど、民間企業の経営状況やニーズを十分把握し、金融機関の持つ情報力を如何なく発揮して、的確な金融仲介機能を果たしていくことへの決意がみられた点は非常に心強く感じました。日本銀行の金融政策については、より多様な資産を買い入れることを通じて、人々の期待形成に働きかける役割の重要性についてご指摘を頂きました。また、先般の日本銀行と政府の共同声明に関連して、日本経済の競争力と成長力を高めていくためには、日本銀行が、物価安定の目標のもと、金融緩和を推進し、それをできるだけ早期に実現すると同時に、政府が大胆な規制・制度改革に取り組むことも重要との声も聞かれました。以上の意見交換の内容も踏まえて、群馬県の経済情勢について、コメントしたいと思います。群馬県の景気については、海外景気の減速が長引いていることに伴い、このところ持ち直しの動きが一服し、横ばい圏内の動きが続いています。ただ、全国と比べると、輸送用機械が牽引役となって、良好な状況にあると認識しています。先行きについては、海外経済が緩やかな回復に転じていくもとで、輸出が増加し、再び緩やかに持ち直していくことが期待できるのではないかと思います。

§5Question

3 点質問があります。 1 点目は、日中関係についてです。昨年9月以降、大きな懸念要因だったと思いますが、ここにきて危機のステージが一段上がったという見方もあると思います。今後の日本経済へのインプリケーションを、最悪のシナリオも含めて、今どうお考えか、お聞かせ願います。2 点目は、挨拶の中にあった、100 兆円規模の資金供給をするにあたって、想定外のことにも臨機応変に対応するという箇所についてですが、具体的にどのようなことを念頭に置かれているのか確認させて下さい。 100 兆円積むのが難しいので、前代未聞のオペの奇策も打たざるを得ないということなのか、アベノミクスが失敗した時の対応も日本銀行としては覚悟せざるを得ないということなのか、お聞かせ願います。3 点目は、昨日の総裁の辞任表明を受けて、ご所見が頂けるのであればお願いします。

§6Takehiro Sato

3 点ご質問を頂戴しました。1 点目は、日中関係の日本経済への影響、2 点目は、今後の資金供給について想定外のことが起こった場合にどのように具体的に対処するのかということ、3 点目は、昨日の総裁の辞任表明を受けての感想ということでした。まず、日中関係の日本経済への影響ですが、昨年の一連の出来事を受けて、貿易、あるいは製造業のパフォーマンスが一時的に大きく影響を受けましたが、足もとはその影響を吸収しつつある状況ではないかと思います。先行きに関しては、ご質問の中では、危機のステージが一段上がったといったご指摘がありましたが、果たして本当にそうなのか、もう少し冷静にみておく必要があるのではないかと思います。そのような冷静な状況認識を踏まえた上で、仮に昨年のようなことが繰り返されるのであれば、やはり経済にそれなりの影響が及ぶと思いますが、希望としては、両国政府が冷静な対話を通じて事態の鎮静化に努めていくということに尽きるのではないかと思います。次に、2 点目のご質問で、資金供給について具体的に何を考えているのかということです。午前中に行った金融経済懇談会での挨拶の中でも申し上げましたが、日本銀行は、資産買入等の基金について、昨年末の目標 65 兆円を何とか達成し、さらに今年末に向けて、これを 101 兆円に拡大することを既にコミットしています。これは約束です。

§7Takehiro Sato

プラスアルファで貸出支援基金等があります。これらを合わせた追加の資金供給規模は、先般、総裁からも説明があったように、プラス 50 兆円超になるということです。まずは、年末までに、そうした未曽有の規模の資金供給を行うということをご理解頂きたいと思います。その上で、今後何が起こるのかということですが、基金を 101 兆円まで積み上げると、その過程では、日銀当座預金残高も並行して増えると考えるのが自然だと思います。日銀当座預金残高は、昨年12月20日過ぎだったと思いますが、既往ピークの 48 兆円強という水準でしたが、足もとでも 40 兆円台で推移していると思います。これが、基金残高 101 兆円ということになってくると、おそらく現在の 40 兆円台から、90~100 兆円といった規模に達してくる可能性があるわけです。ただ、それだけの量の日銀当座預金を、本行の取引先である金融機関の方々に持って頂けるかどうかは、不確実性があると思います。日銀当座預金には、超過準備に対して 0.1%の付利をしていますが、0.1%のリターンの資産を何兆円単位で日銀に預け入れておくということが、果たして、金融機関において、コーポレート・ガバナンス上許されるのかという、経済的な要因以外の要因も働いてくる可能性があると思います。

§8Takehiro Sato

仮に金融機関が、日銀当座預金への積み上げのスタンス、あるいは基金による買い入れに対するスタンスを消極化する、すなわち、本行の買い入れオペへの応札スタンスを消極化するということであれば、日本銀行としては、何らかの対応を考えなければならないだろうということです。結局のところ、本行の取引先である金融機関がオペのオファーに応じてくれるかどうかは、金利水準次第という面があると思います。例えば、日本銀行が市場実勢対比低い金利で、すなわち若干有利な条件でオペのオファーをするのであれば、金融機関としては応札するニーズも顕れてくるということです。今後、基金の積み上げの過程で、積み上げが非常に難しくなってくる、オペの未達で難しくなってくる事態も想定されますが、そこは金利で調整されていくことになるのではないかと思います。すなわち金利の低下効果が、基金の積み上げに伴って顕れてくるということです。何が起こるかは、実際のところ分かりませんが、そういった想定外の事態、あるいは不測の事態に対しては、オペの条件を臨機応変に見直していくことで、確実に基金の積み上げを図っていきたいというスタンスです。3 点目の、昨日の総裁の辞任表明についてのご質問ですが、これについては、昨日、総裁から説明があったとおり、総裁・副総裁の新しい体制が同時にスタートすることが可能になるように、総裁ご自身が判断されたものと聞いています。

§9Takehiro Sato

私からは、それ以上に特に付け加えることはありません。

§10Question

3 点伺います。まず 1 点目ですが、講演の中で、2%の物価安定の目標の実現は、「先行きますます厳しいチャレンジとなってきている」とおっしゃっていますが、政府の求める「できるだけ早期に実現」というのは、正直ちょっと難しいと考えていらっしゃるのか、教えて下さい。2 点目ですが、講演の中で物価上昇が 2%でアンカーされるためには、日銀の政策運営に対する信認確保が非常に重要と指摘されています。佐藤委員ご自身は、前回会合で、信認が毀損する惧れを理由に物価目標に反対票を投じられていると思うのですが、その考えに変化が無いのか、教えて下さい。3 点目は、先ほどの質問にもあったように、資産買入等基金の残高が今年末で 100 兆円という未踏の領域に入りますが、その時の長短金利は、どのような金利形成になるとお考えなのか、お持ちになっているイメージがもしあるのであれば、お答え頂きたいと思います。

§11Takehiro Sato

まず、2%の実現は、「先行きますます厳しいチャレンジとなってきている」ということに関して、2%の達成は難しいのかというご質問ですが、今のうちから不可能であると決めつけることは不適切だと思います。実際、日本経済には、例えば人口減、あるいは労働力人口の減少、就業者数の減少など、諸々の逆風が吹いています。これに伴って、講演でも触れたように、毎年1%弱人口が減少していくという経済のもとでは、何もせずに放っておけば、GDPが毎年1%弱ずつ減っていくということになります。そういう中では、2%の物価上昇に見合うような経済の実力をつけるためには、やはり従来に比べてかなり高い生産性の伸びを想定する必要があります。それについては、政府・日銀の連携によって、先行き、競争力あるいは成長力の強化に取り組むことで対処すると宣言していますので、我々の取り組みも含めて、一連の取り組みを見守って頂きたいと思います。2 点目の、信認確保が重要という考えに変化が無いかというご質問ですが、もちろん、政策の遂行にあたっては、その政策そのもの、あるいは日本銀行の信認が維持されていることが重要であるという考えに、特に変わりはありません。

§12Takehiro Sato

3 点目の、基金を 101 兆円に積み上げていく過程で、長短金利の水準を具体的にどのようにイメージしているかというご質問ですが、特に水準について私どもの立場から申し上げることは賢明でないと思いますので、コメントは控えたいと思います。ただ、先ほど申し上げたように、金融機関の日銀のオペに対する応札姿勢が消極化するということであれば、それは金利を通じて調整されていくことになると思います。従って、一般論として、仮にオペの未達が増えるということであれば、それは一段の金利の低下を通じて、オペの未達を埋めていく形になっていくのではないかと思います。具体的な水準については、コメントは控えたいと思います。

§13Question

2%の物価安定の目標に反対した理由について、「持続可能な物価の安定と整合的であると判断される物価上昇率を大きく上回る」と講演で述べておられます。佐藤委員は、具体的にどの程度の物価上昇率が整合的な水準とお考えなのか、お教え下さい。

§14Takehiro Sato

具体的にどの程度の水準かと言うことを、2%という物価安定の目標が決定された後に申し上げることはあまり適切ではないと思いますので、特定の水準を申し上げるのは差し控えたいと思います。

§15Question

先ほど、オペが未達の場合には、金利水準で調整するという臨機応変な対応が必要だとおっしゃいました。金利水準の調整といっても、現在、0.1%を下回るような非常に低い水準にあるので、先行きの下げ幅といっても限定的だと思います。先行き、超過準備への付利撤廃ということも含めて、「マイナス金利」ということの実現可能性、あるいは「マイナス金利」にすることによるメリット、デメリットについてお聞かせ下さい。もう一つは、講演で、限られた金融政策手段の中で、為替や資産価格への間接的な働きかけというチャネルを重視したいということを繰り返しおっしゃっています。現状、為替の水準は 93 円になっていますが、それでもなお、このように為替を通じたチャネルを重視したいということを繰り返し主張されているということは、やはり 2%という物価上昇を実現させるためには、現状よりももっと円安の方が望ましいとお考えなのでしょうか。具体的な為替水準ということにも関わりますが、より曖昧な聞き方をすれば、円安の方が望ましいということなのかをお聞かせ下さい。

§16Takehiro Sato

2 点ご質問があったと思います。一つは、超過準備への付利撤廃も含めて、「マイナス金利」の可能性があるのかということ、もう一つは、為替のチャネルに関してということです。まず、1 点目の付利の撤廃に関しては、そのプロコン(メリットとデメリット)について、私自身はもう少しよく考えてみる必要があると考えています。現時点では、現行の付利体系を維持するもとで、資産買入等の基金を着実に積み上げることが、緩和効果を最大限発揮する上で、一番効果的な方法と考えています。仮に付利を撤廃すると、日本銀行が資産買入れのオペのオファーをしても、金融機関がオペのオファーに応じなくなり、基金の積み上げが難しくなる可能性があります。ただ、先ほど申し上げたように、金融機関がオペのオファーに応じるかどうかは、金利水準次第です。従って、日本銀行が市場実勢対比で有利な条件を提示することで、金融機関がオペに参加するインセンティブを与えることが出来るかもしれません。仮定の話ですが、付利を撤廃したとしても、日本銀行が、例えばマイナス金利で国債を買い入れれば、オペは成立するかもしれません。ただ、先ほどと同じ問題があると思います。金融機関が、リターンを全く生まない日銀当座預金という資産を、果たして数兆円単位のオーダーで置いてくれるのかという疑問があります。

§17Takehiro Sato

利息を生まない資産を寝かせたままにしておけば、コーポレート・ガバナンスの観点から、金融機関の側で問題になってくる可能性があります。また、仮に日本銀行がマイナス金利で国債を買い入れることになれば、金融機関に対して利益供与しているという見方もあり得るわけです。さらに、国債等にマイナス金利が付くような世界になると、例えば、MMF等のような短期の元本保証型の金融商品が、商品として成り立たなくなります。そういう意味では、金融市場に不測の混乱が起こる可能性もあるということです。こういったことを考えると、付利のない世界では、政策効果の不確実性は高いと思います。従って、付利撤廃は、オプションの一つではありますが、今申し上げたようなプロコンを踏まえる必要があると考えています。2 点目の、為替のチャネルを重視するのかというご質問ですが、講演でも触れたとおり、円安だけで無理やり 2%の物価上昇にもっていくという考え方を採っているわけではありません。そこは誤解のないように強調しておきたいと思います。むしろ、円安だけで物価を押し上げるという考え方は、非常にバランスを欠いています。仮に、円安だけで物価が上昇し、所得の上昇と整合的な物価上昇にならない場合は、単に購買力が低下して、経済全体としては却って厚生が低下します。

§18Takehiro Sato

為替チャネルは引き続き重要だと思いますが、「もっと円安にしたい」といったように、為替水準に引っかけて為替チャネルを重視するということではないと思います。金融政策で出来ることは、先ほど申し上げたたように、資産買入等の基金の積み上げを通じて長短期金利に影響を及ぼしていくということですが、それによって間接的に、例えば、円の逃避通貨としての「買われ易さ」を除去していくことには繋がると思います。そういう意味で、もっと円安が必要といった為替水準の議論ではなく、円の買われ易い状況を是正していこうということです。それがひいては、物価の安定にも繋がり得るということです。

§19Question

本日の講演の中で、「2%という数字はなかなか現実感を持って受け止めにくく、これまでとは次元の異なる相互の取り組みが必要とされている」とおっしゃっていて、政府側の取り組みと、賃金の 4%程度の伸びが肝要だということを明快に述べていらっしゃるのですが、日銀の金融政策の側の「次元の異なる取り組み」というのが、ちょっとはっきりと見えてこないイメージを持っています。基金の残高の積み上げはこれまでも行われてきていますし、リスク性資産の買入れや外債購入についても留保条件があり、円安だけで達成するのは経済厚生的に問題があると見解を示されている中で、一体、「次元の異なる」とはどういったことを想定されているのか、お考えを聞かせて頂ければと思います。

§20Takehiro Sato

2%の物価安定目標は日本銀行だけの努力では達成不可能な数字であり、幅広い経済主体による極めて強い努力が必要だと思います。もちろん、これは日本銀行を含めてということです。金融政策の面で「次元の違う取り組み」と言った場合は、今申し上げた基金の積み上げを図っていくということに尽きると思います。ご質問の中では、基金の積み上げはこれまでと変わらないとおっしゃいましたが、これから、基金の残高は、これまでとは段違いのレベルに入っていくということです。講演では「未踏の領域」と申し上げましたが、年末までには 101 兆円、その後はオープンエンド方式で買入れを続けていくことにコミットしています。そういう点では、そういった「未踏の領域」に入っていく基金の積み上げは、正に「次元の違った取り組み」であるとご理解頂ければと思います。その過程で、先ほど申し上げたように、市場における金利形成等に何らかの変化が生じてくる可能性もあると思いますので、基金の積み上げとともにモニターしてまいりたいと思っています。

§21Question

講演の中で、2%の物価上昇を達成するには賃金の上昇が必要であり、具体的には 4%程度の賃金の伸びが作られるような経済が必要と指摘されていますが、足もとマイナスで、先ほども言われていたように、企業経営者の方は賃上げに関しては慎重だと思います。物価上昇 2%を目指すにあたって、4%の賃金の上昇は相当先の話で、なかなかイメージが湧かないのですが、賃金の上昇が難しければ、2%の物価上昇の達成というのはさらに遅れるというか、道筋が相当長い気がするのですが、そのあたりについてどのようにお考えですか。

§22Takehiro Sato

道筋がどの程度長いのかは、今後の経済のパス次第だと思います。講演の図表の中で、日米のフィリップスカーブの比較をお示ししていますが、過去の関係からみると、消費者物価指数の前年比上昇率で 2%に相当する労働市場の状況は、完全失業率で 2%前後だと思います。これは、構造的失業率をどうみるかにもよりますが、一般的には、完全雇用を通り越して、雇用市場が過熱状態にある状況だと思います。そういった状況になって初めて 4%程度の名目賃金の上昇が期待できるということが、過去の賃金、物価、労働市場の関係から言えることです。どの程度時間がかかるかは、先行きの経済のパス次第ですが、講演の中でも触れたように、内外経済の情勢は、昨年とは違って、まず、世界経済は、少なくとも見通しがどんどん切り下がっていく状況ではなくなってきています。また、国内経済も、昨年は 4月以降 11月頃までミニリセッションであったと思われますが、足もと、少なくとも製造業に関しては、下げ止まりの兆しが出てきており、非製造業の方も、製造業がこれまで悪かった割には持ちこたえてきており、先行き製造業がピックアップしてくれば、それなりのプラスの波及効果も見えてきます。一言でまとめると、足もと、経済の転換点と言うか、ちょっとした変局点に差し掛かってきているのかなと思われます。これは一つのチャンスであることは事実です。

§23Takehiro Sato

従って、そのチャンスをものにするべく、日本銀行も経済を全力で支えていく、それに尽きると思っています。以上